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【咲SS:咲久】ヤンデレごっこ 【前編】

『ヤンデレごっこ』【久咲,咲久】 【前編】

<あらすじ>
清澄高校麻雀部恒例の罰ゲーム麻雀で負けた竹井久。
引いた罰ゲームはヤンデレごっこ(被害者側)。
軽い気持ちで相手に宮永咲を指定したことが、
とんでもない事態を引き起こす。

…はずだったんだけどなぁ。


<登場人物>
宮永咲,竹井久,片岡優希,原村和,染谷まこ

<症状>
前編はただの甘々です。
どうしてこうなった。

<その他>
※特になし。若干のどっちがピンク。

<キーワード>
宮永咲,竹井久,染谷まこ,原村和,片岡優希,清澄,久咲,咲久,染谷まこ,SS,咲-saki-

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「あーもうっ!完敗よ、完敗!」


私は白旗を上げて卓上に突っ伏した。
はぁ…ヤキトリなんて、いつぶりのことだっけ?

いつもだったら引いてくる一発ツモもなかったし、
優希にツモられて当然のように裏ドラが乗った上親っかぶり。
結局一度も上がることなくラス終了。
もう、ぐうの音も出ない完敗だった。


「ふっふっふ…ついにこの時がやってきた!!
 部長!罰ゲームボックスから
 お好みのオーダーを1枚引いていただくじぇー!!」


してやったりと言わんばかりの優希が、
いそいそと罰ゲームボックスを差し出してくる。
くっ…あなただって3位だったくせに…!

とはいえ、今日の3位と4位では、
その価値には天と地ほど差があるのよねぇ…


そう、今日はよりによって罰ゲーム麻雀の日。
我が清澄高校麻雀部では、
負けることに対する緊張感を維持するために
毎週これを開催してたりする。

内容はその日ラスだった人が、
罰ゲームボックスから
罰ゲームが書かれた紙を引いて
その命令に一週間従うっていう単純なもの。

罰ゲームボックスには
いろいろな命令が書かれている。
みんながそれぞれ思い思いの内容を書いて入れるから、
自分が入れたもの以外は
どんな命令があるのかはわからない。

これまでのケースを紹介すると、

「一週間お昼はタコス限定だじぇ!」
「一週間広島弁縛り」
「一週間咲さんが特定の人物にご奉仕」
「一週間毎日読書して読書感想文を提出」

などなど。

ゆるすぎても罰ゲームの意味がないから、
それなりのきつさになっている。
うーん…改めて並べると
どれもけっこうきっついわ…
ていうか和、罰ゲームに
個人の欲望をぶつけるのはやめなさい。


「部長がラスって珍しいね」

「言われてみれば…罰ゲーム麻雀でラスって、
 初めてじゃないですか?」


そう、実は私はこの罰ゲーム麻雀で
まだ一度も罰ゲームをくらったことがない。
まぁそこは土壇場に強い私最強っていうことで。
…最強、だったんだけどなぁ。

まぁ、なっちゃったものはしかたない。
いいでしょう、いさぎよく
罰ゲームを受けましょう!


「えーいっ、南無さんっ!!」


気合を入れながら引いた紙には、
短くこんな一文が書かれていた。


-----------------------------------------
一週間ヤンデレごっこ(被害者側)
-----------------------------------------


「…何これ」

「おぉっさすが部長!まさか
 今日入荷したばかりの新作を
 一発で引くとはお目が高いじぇ!」


にやにやした笑みを浮かべる優希。
…これ、あなたが須賀君とやりたかっただけでしょ!?
こういうのは須賀君がいる時に入れなさいよ!


「えーと、そもそもヤンデレって何?」


頭に疑問符を浮かべながら咲が尋ねる。
うん、普通の子は知らないわよね。
あなたはそのままでいてちょうだい。


「相手のことが好きすぎてつい
 心を病んじゃった子のことだじぇ!
 病んでてデレデレ、ということさ!」

「なるほど…つまり咲さんのことですね!」

「え、私そんなに病んでるかな…」


我が意を得たり、と言わんばかりに和が頷く。
咲、狂人の戯言は無視していいわよ?


「こがぁなん、相手がおらんとできんのじゃ?」

「しかも、部長が被害者側だから…
 相手の人が病まないといけないんだよね?」


まこと咲が的確なツッコミを入れる。
うん、おっしゃる通り。
罰ゲームはラスを引いた人がやるものだから、
基本的にはおひとり様用の罰を入れるのが大原則。


「うん、やめましょう。この罰ゲームは無効!」

「ちぇっー、じゃぁ代わりにもう一枚の、
 一週間語尾に『じぇ』をつけるに
 変更させていただくじぇー」

「ヤンデレ、いいじゃない!!」

「朝令暮改!?」


いやいや、一週間ずっと
意味不明な語尾を付け続けるくらいなら
まだ誰かに病まれた方がましだわ。


「じゃぁ、咲っ!あなた、私にデレなさい!」

「えぇっ!?」

「いっ異議を申し立てます!
 なんでよりによって咲さんなんですか!?」

「この中で一番無害そうだからよ!」

「それは間違いないじぇ」


迷うことなく咲に白羽の矢を立てる。
そりゃぁこのメンバーの中だったら咲一択でしょ。
麻雀では確かに魔王だけど、
日常生活では人畜無害な小動物だもの。


「えっ…えっと、その…じゃぁ…お願いします?」

「咲さん!?断ってもいいんですよ!?
 代わりに私が部長を完璧に病み殺しますから!」


え、何これ私さらりと殺人予告受けてるんだけど。
まぁでも、この受け答えからしても
やっぱり咲が適任ね。


「えーと…とは言ったものの、私、
 ヤンデレってどんなものか、
 まだよくわかってないんですよね…」

「そうね…私も具体的に
 やってみろと言われると、
 何をすればいいのかわからないわ」


咲が戸惑うのもごもっとも。

私だって単語自体は聞いたことがあるものの、
別になじみがあるわけじゃないし。


「…今、パソコンでヤンデレの行動について
 検索してみたのですが…」


何をすればいいのか考えあぐねている私達に、
和がパソコンの画面を覗きながら
とまどいの声をかける。

和が言いよどむなんて珍しいわね?
みんなで揃ってパソコンの画面を
覗きこむ。どれどれ…?


-----------------------------------------
 1.一日100件を超えるメールを送信する
 2.一日30件以上通話履歴を残す
 3.相手の携帯の中身をチェックする
 4.24時間一緒にいることを主張
 5.相手をストーキングする
 6.想い人に近づく相手を排除する
 7.想い人を監禁する
 8.想い通りにならない想い人と心中する
-----------------------------------------


「…なんじゃこりゃ」

「半分以上犯罪じゃない…」

「ゆーき…」

「優希ちゃん…」


え、何?優希はこんなのを
須賀君にやろうとしてたの?


「い、いやいやいや!?
 ここまでは要求してないじょ!?
 ちょっとした病みエッセンスが
 含まれてればいいんだじぇ!?」


ぶんぶんとかぶりを振る優希。
まぁ、そりゃそうよね…
これ全部やったら私達天に召されちゃうし。


「先頭の3つくらいならまだ
 許容範囲なんじゃないですか?」

「うーん…でも、咲って携帯持ってないでしょ」

「その辺は二人で相談しながら
 アレンジすればいいじぇ」

「そうですね…一日10通手紙を書くとか?」

「それけっこう負担じゃない?主に咲が」


そんなこんなで、二人で仲良く
ヤンデレの内容を決める。

「そんなわけで、
 最終的にこんな形で落ち着いたわ!」


-----------------------------------------
 1.一日5通手紙を書いて渡す
 2.携帯の中身をチェックする
 3.お昼ご飯を一緒に食べる
 4.土日も一緒に過ごす
-----------------------------------------

バンッ

「ただのカップルじゃないですか!!」

「2だけ辛うじてヤンデレ要素じゃな」

「メールと電話が使えないのは痛いじぇ」

「な、なんかごめんね…手紙で挽回するから…」


うーん、オーディエンスの反応はいまいち。
私的には一日5通の手紙って
けっこうアレだと思うんだけどなぁ。

でも、逆にこれ以上やっちゃうと
急に難易度が跳ね上がるのよね…
正直巻き込まれただけの咲に
あまり負担をかけたくはないし。

今更ながら、これ人選ミスったわ。
これが優希とかだったらむしろこっちから
無理難題ふっかけてやるのに。


「ま、相手が咲ちゃんじゃしょうがないじぇ。
 この案を承認するじぇ!」

「はいはい、承認ありがとうございます。
 じゃぁ咲、よろしくね?」

「あっ…はい!」


そんなこんなで、ようやく咲と私による、
一週間のヤンデレごっこが始まったのだった。


--------------------------------------------------------



「あ、おはようございます部長。
 これ、一通目の手紙です」

「おー、おはよー。なんか悪いわねー」

「いえ、書くのはけっこう好きですから」


ヤンデレ初日。軽いあいさつをしながら
咲から手紙を受け取る私。
…これ、何気に咲の罰ゲームになってない?

そんなことを考えながら、受け取った手紙を
その場で開封しようとすると


「ちょ、ちょっと待ってください!
 あ、開けるのは後で!」


頬を真っ赤に染めながら、咲があたふたする。
なにこの子、かわいいんだけど。

このまま慌てふためく咲の前で
手紙を読み上げたい衝動にかられたけど、
今回は大人しく引き下がっておきましょうか。
もう十分咲には負担をかけてるし。


席について、改めて咲からもらった手紙を眺める。
どことなくあの子に似つかわしくない、
ちょっと華やかな封筒。
…もしかして、このために
わざわざ買ってくれたのかしら。

なんとなく大切にしなくちゃいけない気がして、
できるだけ綺麗に封筒を開けると、
これまたかわいい便箋が出てきた。

どれどれ…?



--------------------------------------------------------



『拝啓、新緑が芽吹き
 生命の力強さを感じる季節となりましたが、
 いかがお過ごしでしょうか。
 
 今回部長と恋仲になったことについて、
 恥ずかしながら胸の鼓動が
 早鐘のように鳴り響いております。
 
 ややもすれば、部長の傍らに唯いるだけで、
 頬が朱に染まり言の葉を告げることすら
 ままならなくなってしまうやもしれませんが
 どうかお許しくださいませ。
 言の葉は紡げずとも貴女のことを
 お慕い申し上げております。
 
 つきましては、本日十時頃に伺わせていただきます。
 
                         敬具
 
                 平成○○年◇月▽日
                      宮永 咲』



--------------------------------------------------------



「……」


え、何?あの子、このレベルの手紙を
一日5通×7日で35回も書き続けるつもりなの?


と、言うか…こ、恋仲って…早鐘って…!
いつの間に私達カップルになってるのよ!?
あ、ヤンデレだからこれでいいのか。

でも、こんな本気の手紙ずっともらってたら
本当に変な気持ちになっちゃうじゃない!
もう少し手心を加えなさいよ!


予想外に本気だった咲の攻撃。
不意打ちを受けた私は、
頭からぷしゅーっと湯気をたてながら
机に突っ伏すしかなかった…



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「竹井さーん、麻雀部の子が来てるよー」

「あ、ありがとー、い、今行くわ!」


休み時間。

結局、気持ちの整理をつけることができないまま、
次の手紙の時間がやってきてしまう。

重たい足を引きずりながら廊下に出ると、
そこには手紙に書かれた通り
頬を朱に染めた咲がいた。


「え、えーと…二通目の手紙、
 届けに来ました…」

「あ、ありがと…」

「えと…手紙、読んじゃいました?」

「あ、うん…」

「あ、あはは…」

「えへへ…」


二人してぎこちなく笑いあう。
我ながら、何してんだか…。


「こっ、これ、手紙です!!」


なかば押し付けるように二通目の手紙を渡すと、
逃げるように走り去る咲。

私はそんな咲の後ろ姿を呆然と
見送ることしかできなくて。


今の私達って、周りから見たら
どんな風に見えるのかしら?


私はふいそんなことを想像して、
これまた真っ赤になって
慌てて教室に引っ込んだ。



--------------------------------------------------------



さて、手に残されたのは、一通の新しい手紙。

読むべきか、読まざるべきか。
いや、読むしかないんだけど、
私は咲のさらなる攻撃に耐えられるんだろうか。


「これはごっこ遊び…これはごっこ遊び…!」


念仏のように自分に言い聞かせながら、
二通目の手紙の封を切る。
…そこに入っていた便箋には。


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           好きです
           
                    宮永 咲
                          』



--------------------------------------------------------



「〜〜っ!」


あまりにも直球過ぎる、
たった一言しか書かれてない手紙に、
私は悶絶させられる。

何なの!?あの子何なの!?
おかしいでしょ!?そこは
例の文学風の手紙を続けるところでしょ!?

不意打ちにもほどがあるわよ!
本気で私のこと
落としにかかってきてるんじゃないの!?


ガンッ、ガンッ、と
頭を机に打ち付ける私を見て、
クラスメートの友達がいぶかしげな表情を私に向ける。
うん、ありがとう。
その変人を見るような視線でちょっと落ち着いた。


気を取り直して、冷静に考えましょう。

むしろ、こうは考えられないかしら。
ぶっちゃけ一通目で
「これ続けるのきついわ」とか思って
手抜きに走ったとか。
うん、これは十分に考えられる。

そう理論武装して、例の手紙を改めて見てみると…


あ。


私は気づかなくてもいいことに気づいてしまう。


例の文字が書かれている箇所だけ、
なんだかへこんでる…?


よく見ると、そこには何度も同じ文字を
書いては消して、書いては消してを
繰り返した跡があった。

つまり、咲は一番の「好きです」を私に届けるために
何度もそれを繰り返したってことで。



「〜〜〜っっ!!」



咲が顔を真っ赤にしながらその作業を
繰り返す様を想像すると、
もう、なんというか、
身悶えるしかないっていうか。


…こんな手紙もらった後で、
どんな顔して咲に会えばいいのよ……!


朝から頭に血が上りっぱなしの私は、
ため息をつきながら
ぐったりと背もたれにもたれかかったのだった。



--------------------------------------------------------







放課後。







--------------------------------------------------------



放課のベルが鳴り響くなり、私は麻雀部の部室に飛び込むと、
そのままベッドにダイブした。
正直、もういろんな意味で限界だった。



…もう、あの子、何なのよ!?



咲の猛攻撃は、その後も留まることを知らなかった。

お昼は言うまでもなく手作り弁当が振る舞われた上、
これまたすごい手がかかっていることが
一目でわかるようなお弁当だったり。

その後に続いた手紙も、
もう本気で私のことが好きとしか思えないような
歯の浮くような台詞が所狭しと並べられていて。

それでいて、咲はひたすらにもじもじしながら
こちらの顔色を
上目遣いで窺って(うかがって)くるのだ。


…あの子、実は本気なんじゃないの?


なんて考えが頭をよぎって離れない。
そして、それは、私の胸の鼓動を高鳴らせて。
そんな自分の反応に、これまた狼狽してしまう。



そんな時だった。


「ちわーだじぇ!」

「お邪魔します」

「おじゃまします」


咲が、和と優希を連れだって部室に入ってきたのは。
私は思わず息をひそめる。
いや、別に隠れる必要はないんだけど。

果たして効果があったのか、
三人は私がいることに気づいていないようで、
姦しく(かしましく)雑談を続けている。


「そういえば、ヤンデレはどうだったんだじぇ?」

「あ、うん…部長、すごい動揺してたよ」

「あの部長が!?咲さん、一体何をしたんですか!?」

「え?えっと…昨日決めたやることリスト通りだけど」

「ということは、手紙とお昼をご一緒くらいですか」

「うん」

「それで部長が動揺するとか信じられないんですけど!?」

「え、えへへ…けっこう頑張っちゃったから」

「…咲さん、何だか楽しそうですね」

「うん…こういうの初めてだから…
 なんか、ちょっと楽しいかも」




『楽しい』



咲は確かにこう言った。
そう、それは彼女が本気で恋愛していたら、
出てこない台詞なわけで。
咲の今日の全てが
演技だったことを示していた。


ふーん…咲、楽しかったんだ?


咲の言葉は、私の火照りを急速に冷めさせて、
それでいて、再度私を別の意味で燃え上がらせる。


そっかー、咲、楽しかったんだー。

ふーん…咲がそういう気なら、
私にも考えがあるわよー?


ようやく本来の調子を取り戻した私は、
ある一つの決心をする。



よーし決めた。残り6日間…
咲、あなたを逆に身もだえさせてあげるわ!



いや、咲は私に命じられた通り
自分の役目を果たしているだけなんだけど。
なんて冷静なセルフツッコミは頭の隅に追いやって。

私は一人、にたりと悪魔的な笑みを浮かべた。





(続く!)
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posted by ぷちどろっぷ at 2014年08月06日 | Comment(5) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
いいと思います。
Posted by at 2014年08月07日 01:11
ありがとうございますです。この調子で書き続けますです。
Posted by 管理人(ぷちどろっぷ) at 2014年08月07日 23:08
部長のモノローグがとにかく可愛い!
咲さんの敬語はいじらしくていいですね。
Posted by at 2014年08月14日 01:47
咲……、まじ悪魔だ……
Posted by at 2017年05月14日 10:23
本当にあまあまなのか疑ったけど、ガチだった最高です
Posted by at 2020年10月28日 19:23
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