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【咲SS:咲久】 ヤンデレごっこ【Side 咲】
<タイトル>
ヤンデレごっこ 解説編
<あらすじ>
『ヤンデレごっこ』に関する咲視点の独白です。
先にこちらを読んでおかないと
よくわからないかと思います。
<登場人物>
宮永咲,竹井久,片岡優希,原村和,染谷まこ,天江衣
<症状>
ヤンデレ。(依存、狂気)
<その他>
※咲が原作と著しく異なります。
キャラ崩壊注意。
--------------------------------------------------------
小さいころから、私は周りと
ほんのちょっとだけ違っていた。
多くの人は、たくさんの人と
交流することをよしとするけれど、
私はただ一人の人と、
深く心を通わせることをよしとした。
私の場合、それはお姉ちゃん。
どちらが間違いという事はないと思うけど、
少なくとも少数派だった私は、
周りから奇異の目で見られ、虐められた。
それでも自分の意思を貫こうとした私は、
お姉ちゃんとの別離という形で絶望を迎えた。
その時私は悟ったんだ。
私は、人と深く関わるべきじゃないって。
これからは、本と共に生きよう。
本の中なら、どれだけ感情移入しようと、
誰も咎めはしないから。
--------------------------------------------------------
高校に入っても、私は生き方を変えるつもりはなかった。
そんな私を、無理矢理人の渦に引きずりこんだのは、
例のあの人。
学生議会長。
私は最初、この人がちょっとだけ苦手だった。
人の上に立つ才覚を持ち、皆に慕われ、
それでいて、裏が読めない人。
この人の目には、周りの人間はどう映っているんだろう。
関わる人の数が多すぎて、
一人一人に深く接することはとてもできないだろうから、
私なんかは路傍の石ころみたいに見えるんじゃないだろうか。
− それなら、いっそのことほおっておいてほしい −
最初は、そんなことを考えていた。
--------------------------------------------------------
そんな部長に対する評価は、
触れ合うことで少しずつ変わっていった。
部長は、私のことをよく見ていた。
私のプラマイゼロに、一番に気付いたのも部長。
私に勝つ喜びを教えてくれたのも部長。
私が対局中に見ているものが、
普通の人と違うことに気付いたのも部長。
心の機微を捉えられた例は、枚挙にいとまがない。
私の心がほんの少し曇っただけで、
それを察知して助け舟を出してくれた。
何度も、何度も。
その中には、私自身まったく
気づいていなかったものも多分に含まれていて。
どうしてそんなことができるんだろう?
部長は、あんなにもたくさんの人に囲まれているのに。
私なんて、その中の一人にすぎないはずなのに。
触れ合ってる時間なんて、本当にごくわずかなのに。
多くの人の中にいながらにして、
一人一人を大切にできる人。
私は、そんな人に初めて出会った。
私は部長に、興味を持った。
--------------------------------------------------------
そんな時、新たな転機が訪れた。
ヤンデレごっこ。
パソコンや携帯を持ってなくて、
テレビもあまり見ない私は、
そこで初めてその言葉を知った。
聞けば、相手のことが好きすぎて
心を病んでしまった人を指すらしい。
それは、私にとって目から鱗が落ちる事実だった。
− あぁ、私みたいな人が他にもいるんだ −
そんな言葉ができるくらいには、
私みたいな異常者の存在は認知されていて。
こんなごっこ遊びが提案されるくらいには、
許容されているんだと。
態度にこそ現さなかったけど、
私は人知れず泣きそうになった。
思わぬ僥倖はさらに続いた。
「じゃぁ、咲っ!あなた、私にデレなさい!」
なんと、部長はよりによって私を指名したのだ。
異常者であるこの私を。
実は私には、最近ずっと思い描いてた空想があった。
これだけ人に囲まれて、
それでいて個々に気を配れる部長が、
誰か一人にだけ傾倒したらどうなるんだろう?
そして、もし「誰か一人」が私だったら、
それはどれだけ幸せなことだろう?
期せずして、それを体験できることになった。
人生がぱあっと華やいだような気持ちだった。
部長が挙げたヤンデレ項目は、
私にはちょっと物足りないものだったけど。
それでも、一週間、私が部長を独り占めできる。
思わず舞い上がらざるをえなかった。
--------------------------------------------------------
楽しくて仕方なかった。
これまで抑圧していた行為が、心置きなく実行できる。
それでいて、相手もそれを受け入れてくれている。
そんな事態は、私の中で初めてだった。
ごっこが始まってからは、初日から驚きの連続だった。
あの飄々としていた部長が、頬を赤らめ、
うろたえて、恥じらっている。
そんな部長らしからぬ振る舞いは、
間違いなく私が引き起こしたものだった。
かっこいいだけじゃなくて、
こんな可愛さまで隠し持っていたなんて。
私は、瞬く間に部長に惹きこまれてしまった。
部長はさらに私に携帯まで与えてくれた。
「咲の文章を、もっと読みたいの」
嫣然(えつぜん)と笑う部長。
もしかして、この人なら。
この人なら、本当に。
私の異常な愛情を、全て受け入れてくれるかもしれない。
私の中に、大きな希望が見えてきた。
--------------------------------------------------------
私の重たすぎる愛情を、
部長は余すことなく受け止めてくれた。
メールの件数が100件を超えても、
全て返信してくれた。
手紙をいっぱい渡しても、
全部読んで感想を教えてくれた。
お弁当の量を増やしても、
全部食べ切ってくれた。
どれか一つでも、他の人なら満たしてくれただろうか。
多分無理だったに違いない。
それだけじゃない。
「…もし私が、もっとヤンデレっぽくなったら、
部長は、受け入れてくれますか?」
「…もし私がまた負けて、
かつ同じ罰ゲームを引いたら、考えてあげるわ」
− あぁ、もう間違いない −
部長には、きっと私の全てを
受け入れてくれるだけの許容量がある。
そう直感した私は、もう
部長以外のことが考えられなくなった。
問題は、部長がこれを
『ただのごっこ遊び』と考えていることだ。
ごっこを、本物にできるだろうか。
--------------------------------------------------------
私は、ある一つの賭けをすることにした。
合宿中、私は自分の全てをさらけ出そう。
私の醜いところも、異常なところも、全部見てもらおう。
それでもし、部長が私を拒絶したなら、私は部長を諦める。
でも、もし…部長が私を受け入れてくれたなら…
私は、全てを捨てて、部長を手に入れよう。
私は欲望のままに行動した。
部長のそばを決して離れず、抗議は無視した。
近づくものは全力で追い払った。
例えばマホちゃん。
あの子からは、私と同じにおいがした。
本能的に「敵だな」って思った。
だから、徹底的に心を折った。
あれなら、原因を作った部長にはもう近づかないだろう。
私の行為が、部長を悩ませていることは気づいていた。
それは心苦しくはあったけど、
そんなところが、私が部長を愛してやまない
大きな理由の一つでもあった。
部長は悩みに悩んだ上で、
最終的には私を受け入れてくれるのだ。
それは、淡々と事実を受け止められるよりも、
よっぽど安心感があった。
今もほら、部長はかぶりを振りながらも、
私を抱き寄せてくれた。
− うん、決めたよ。
部長を、独り占めしちゃおう。 −
--------------------------------------------------------
「本当にやるのか、嶺上使い」
「うん、やるよ」
「お前は、籠の中の小鳥となる」
「望むところだよ」
「彼の者は、慨然(がいぜん)として
流涕(りゅうてい)するかもしれないぞ」
「その時は、諦めるよ…何もかも」
「不惜身命(ふしゃくしんみょう)ということか」
「うん」
「…望蜀(ぼうしょく)だな」
「違うよ」
「私がほしいのは、部長。それだけだよ」
「他には、何もいらない」
「…衣ちゃ…さんなら、わかるんじゃないかな?」
「…衣は…わからないよ」
--------------------------------------------------------
私は、龍門渕さんを頼った。
人を一人社会から消すことができる人なんて、
私は他に知らないから。
条件を出された。
でも、それは非常に簡単なもの。
私が今後、衣ちゃんと一生を共にすればいい。
衣ちゃんが部長に必要以上に近づかないなら、
なんら問題ない。
こうして、舞台は整った。
--------------------------------------------------------
そして、部長は私を受け入れてくれた。
--------------------------------------------------------
今日も、私は部長と過ごす。
この、離れにある小さな屋敷で。
もう、何年も、部長と衣ちゃん以外の人と話してない。
部長に至っては、最後に私以外の人と話したのが
いつだったか、もう思い出せないらしい。
衣ちゃんは、ここのことを
根之堅州國(ねのかたすくに)だと表現した。
私たちは、もう死んでいるって。
私は思わず笑みをこぼした。
ここが死者の世界なのだとしたら、
なんて天国なんだろう。
− あぁ、願わくばこの天国が、
いつまでも続きますように −
(完)
ヤンデレごっこ 解説編
<あらすじ>
『ヤンデレごっこ』に関する咲視点の独白です。
先にこちらを読んでおかないと
よくわからないかと思います。
<登場人物>
宮永咲,竹井久,片岡優希,原村和,染谷まこ,天江衣
<症状>
ヤンデレ。(依存、狂気)
<その他>
※咲が原作と著しく異なります。
キャラ崩壊注意。
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小さいころから、私は周りと
ほんのちょっとだけ違っていた。
多くの人は、たくさんの人と
交流することをよしとするけれど、
私はただ一人の人と、
深く心を通わせることをよしとした。
私の場合、それはお姉ちゃん。
どちらが間違いという事はないと思うけど、
少なくとも少数派だった私は、
周りから奇異の目で見られ、虐められた。
それでも自分の意思を貫こうとした私は、
お姉ちゃんとの別離という形で絶望を迎えた。
その時私は悟ったんだ。
私は、人と深く関わるべきじゃないって。
これからは、本と共に生きよう。
本の中なら、どれだけ感情移入しようと、
誰も咎めはしないから。
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高校に入っても、私は生き方を変えるつもりはなかった。
そんな私を、無理矢理人の渦に引きずりこんだのは、
例のあの人。
学生議会長。
私は最初、この人がちょっとだけ苦手だった。
人の上に立つ才覚を持ち、皆に慕われ、
それでいて、裏が読めない人。
この人の目には、周りの人間はどう映っているんだろう。
関わる人の数が多すぎて、
一人一人に深く接することはとてもできないだろうから、
私なんかは路傍の石ころみたいに見えるんじゃないだろうか。
− それなら、いっそのことほおっておいてほしい −
最初は、そんなことを考えていた。
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そんな部長に対する評価は、
触れ合うことで少しずつ変わっていった。
部長は、私のことをよく見ていた。
私のプラマイゼロに、一番に気付いたのも部長。
私に勝つ喜びを教えてくれたのも部長。
私が対局中に見ているものが、
普通の人と違うことに気付いたのも部長。
心の機微を捉えられた例は、枚挙にいとまがない。
私の心がほんの少し曇っただけで、
それを察知して助け舟を出してくれた。
何度も、何度も。
その中には、私自身まったく
気づいていなかったものも多分に含まれていて。
どうしてそんなことができるんだろう?
部長は、あんなにもたくさんの人に囲まれているのに。
私なんて、その中の一人にすぎないはずなのに。
触れ合ってる時間なんて、本当にごくわずかなのに。
多くの人の中にいながらにして、
一人一人を大切にできる人。
私は、そんな人に初めて出会った。
私は部長に、興味を持った。
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そんな時、新たな転機が訪れた。
ヤンデレごっこ。
パソコンや携帯を持ってなくて、
テレビもあまり見ない私は、
そこで初めてその言葉を知った。
聞けば、相手のことが好きすぎて
心を病んでしまった人を指すらしい。
それは、私にとって目から鱗が落ちる事実だった。
− あぁ、私みたいな人が他にもいるんだ −
そんな言葉ができるくらいには、
私みたいな異常者の存在は認知されていて。
こんなごっこ遊びが提案されるくらいには、
許容されているんだと。
態度にこそ現さなかったけど、
私は人知れず泣きそうになった。
思わぬ僥倖はさらに続いた。
「じゃぁ、咲っ!あなた、私にデレなさい!」
なんと、部長はよりによって私を指名したのだ。
異常者であるこの私を。
実は私には、最近ずっと思い描いてた空想があった。
これだけ人に囲まれて、
それでいて個々に気を配れる部長が、
誰か一人にだけ傾倒したらどうなるんだろう?
そして、もし「誰か一人」が私だったら、
それはどれだけ幸せなことだろう?
期せずして、それを体験できることになった。
人生がぱあっと華やいだような気持ちだった。
部長が挙げたヤンデレ項目は、
私にはちょっと物足りないものだったけど。
それでも、一週間、私が部長を独り占めできる。
思わず舞い上がらざるをえなかった。
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楽しくて仕方なかった。
これまで抑圧していた行為が、心置きなく実行できる。
それでいて、相手もそれを受け入れてくれている。
そんな事態は、私の中で初めてだった。
ごっこが始まってからは、初日から驚きの連続だった。
あの飄々としていた部長が、頬を赤らめ、
うろたえて、恥じらっている。
そんな部長らしからぬ振る舞いは、
間違いなく私が引き起こしたものだった。
かっこいいだけじゃなくて、
こんな可愛さまで隠し持っていたなんて。
私は、瞬く間に部長に惹きこまれてしまった。
部長はさらに私に携帯まで与えてくれた。
「咲の文章を、もっと読みたいの」
嫣然(えつぜん)と笑う部長。
もしかして、この人なら。
この人なら、本当に。
私の異常な愛情を、全て受け入れてくれるかもしれない。
私の中に、大きな希望が見えてきた。
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私の重たすぎる愛情を、
部長は余すことなく受け止めてくれた。
メールの件数が100件を超えても、
全て返信してくれた。
手紙をいっぱい渡しても、
全部読んで感想を教えてくれた。
お弁当の量を増やしても、
全部食べ切ってくれた。
どれか一つでも、他の人なら満たしてくれただろうか。
多分無理だったに違いない。
それだけじゃない。
「…もし私が、もっとヤンデレっぽくなったら、
部長は、受け入れてくれますか?」
「…もし私がまた負けて、
かつ同じ罰ゲームを引いたら、考えてあげるわ」
− あぁ、もう間違いない −
部長には、きっと私の全てを
受け入れてくれるだけの許容量がある。
そう直感した私は、もう
部長以外のことが考えられなくなった。
問題は、部長がこれを
『ただのごっこ遊び』と考えていることだ。
ごっこを、本物にできるだろうか。
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私は、ある一つの賭けをすることにした。
合宿中、私は自分の全てをさらけ出そう。
私の醜いところも、異常なところも、全部見てもらおう。
それでもし、部長が私を拒絶したなら、私は部長を諦める。
でも、もし…部長が私を受け入れてくれたなら…
私は、全てを捨てて、部長を手に入れよう。
私は欲望のままに行動した。
部長のそばを決して離れず、抗議は無視した。
近づくものは全力で追い払った。
例えばマホちゃん。
あの子からは、私と同じにおいがした。
本能的に「敵だな」って思った。
だから、徹底的に心を折った。
あれなら、原因を作った部長にはもう近づかないだろう。
私の行為が、部長を悩ませていることは気づいていた。
それは心苦しくはあったけど、
そんなところが、私が部長を愛してやまない
大きな理由の一つでもあった。
部長は悩みに悩んだ上で、
最終的には私を受け入れてくれるのだ。
それは、淡々と事実を受け止められるよりも、
よっぽど安心感があった。
今もほら、部長はかぶりを振りながらも、
私を抱き寄せてくれた。
− うん、決めたよ。
部長を、独り占めしちゃおう。 −
--------------------------------------------------------
「本当にやるのか、嶺上使い」
「うん、やるよ」
「お前は、籠の中の小鳥となる」
「望むところだよ」
「彼の者は、慨然(がいぜん)として
流涕(りゅうてい)するかもしれないぞ」
「その時は、諦めるよ…何もかも」
「不惜身命(ふしゃくしんみょう)ということか」
「うん」
「…望蜀(ぼうしょく)だな」
「違うよ」
「私がほしいのは、部長。それだけだよ」
「他には、何もいらない」
「…衣ちゃ…さんなら、わかるんじゃないかな?」
「…衣は…わからないよ」
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私は、龍門渕さんを頼った。
人を一人社会から消すことができる人なんて、
私は他に知らないから。
条件を出された。
でも、それは非常に簡単なもの。
私が今後、衣ちゃんと一生を共にすればいい。
衣ちゃんが部長に必要以上に近づかないなら、
なんら問題ない。
こうして、舞台は整った。
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そして、部長は私を受け入れてくれた。
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今日も、私は部長と過ごす。
この、離れにある小さな屋敷で。
もう、何年も、部長と衣ちゃん以外の人と話してない。
部長に至っては、最後に私以外の人と話したのが
いつだったか、もう思い出せないらしい。
衣ちゃんは、ここのことを
根之堅州國(ねのかたすくに)だと表現した。
私たちは、もう死んでいるって。
私は思わず笑みをこぼした。
ここが死者の世界なのだとしたら、
なんて天国なんだろう。
− あぁ、願わくばこの天国が、
いつまでも続きますように −
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咲ちゃんが幸せそうで何よりです!
元々解説編は被害者視点からでは
伝えきれなかった部分を補完するつもりで書いてたのですが、結局設定説明編を別に書いてますしね…「SIDE 咲」いいですね!次からはそうします。
衣ちゃんは病んでません。病んでるとしたら、
むしろその周りです。この辺は興味がおありならそのうちアップする作品設定をお読みいただければ明らかになります。
これは面白かったです。とてもドキドキしました。
こういう忘れられたころにポロッと
コメントいただけるとすごくうれしいです!
これからもがんばりますよー!