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【咲SS:久咲】咲「あれ?気づいたら私…部長がいないと生きていけなくなってる」【前編】

<あらすじ>
宮永咲です。
優しい部長に支えられながら、インターハイを目指しています。
お姉ちゃんと仲直りするために頑張ります!

<シリーズの趣旨>
黒久さんと白咲ちゃんシリーズ。黒久さんの
天然真っ黒さに触れているうちに、
徐々に白咲ちゃんも黒く染まってしまいます。

※リクエストの「精神的に咲を縛る部長」を書いたつもりなのですが、
 思ったよりそうならなかったかも。
 最近「どうしてこうなった!」多いなぁ…

<登場人物>
竹井久,宮永咲

<症状>
共依存
異常行動

<その他>
※2014/08の、宮永家の事情が判明してない時期に書いてます。
今後の原作とは大きく矛盾するであろう点にご注意を。
※原作と大きくキャラが乖離しています。ご注意を。

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その日、私はひどく落ち込んでました。


何の気なしに手伝いに行った雀荘で
カツ丼さんにこてんぱんにされて。
強くなるために始めたネット麻雀でも、
ぐうの音も出ないくらい負け続けて。
そしてどれだけ続けても、牌が全く見えなくて。

熱くなる目頭を必死に抑えながら麻雀を打ち続ける日々。
頑張らなくちゃいけない、それはわかってはいるけど…
それでも、心は少しずつ摩耗していく…


部長に声をかけられたのは、そんな時でした。


「どうしたの?」


その声音は、とても優しくて。
思わず、胸中に秘めた弱音を吐き出したくなってしまいました。
でも、最初で最後のインターハイを心底楽しみにしている部長に、
私の愚痴で水を差すのは申し訳なくて。
結局私は、ぐっと口をつぐみました。

でも、押し黙った私に対して部長がかけた言葉は、
とても意外なものだったんです。


「ありがとね」

「…な、何がですか?」

「私のわがままにつきあってくれて、よ。
 咲からしたら、別にインターハイに何か
 思うところがあるわけじゃないでしょ?
 なのに、特訓までつきあってもらっちゃってさ」

「だから、ありがと」


そう言って、部長は穏やかな笑みを私に向けました。
それを見た私は、何だか急に胸が苦しくなって、
思わず声を張り上げてしまいました。


「ちっ、違うんです!!」

「へ?」

「わ、私は…そんな、部長に
 お礼を言われるような人間じゃないんです…」


私は結局、部長に全部打ち明けました。

疎遠になってしまったお姉ちゃんとの関係を修復したい。

でも、普通に話しても相手をしてもらえない。

だから、二人の共通の思い出である、
麻雀を通してなら、会話できるのではないか…

そういう利己的な思惑があること。

私はみんなのインターハイを、
自分のための道具として使おうとしていること。


全部、全部ぶちまけてしまいました。


私の話を黙って聞いていた部長は、
一瞬眉をひそめました。

それも当然ですよね…
部長は純粋に競技としての麻雀を楽しもうとしているのに、
私はそこに、家庭内不和を持ち込んでいるんですから。


でも、部長は、すぐ優しい顔になって。


「咲…つらかったわね」


って、私の頭を撫でてくれたんです。
傷ついた私をいたわるように、とても優しく。


「あなたがこのインターハイに賭ける思い、よくわかったわ。
 でもね、せっかくなんだから、
 もっと麻雀自体を楽しんでほしいの」

「あなたがお姉さんとの対話に麻雀を選んだのも…
 心のどこかで、麻雀を楽しんでいたからでしょう?」

「だったら、もっと楽しまないと駄目」

「お姉さんと、仲直りするためにも」


ね?なんて、片目をつぶる部長。
私は、思わず胸が熱くなって。
こみあげてくる何かを抑えきれなくて。
部長の前で泣いてしまいました。


後から考えてみれば、
ちょっと恥ずかしい思い出なんですけど。
でもそれからは、急に肩の荷が下りたように
楽になったんです。



--------------------------------------------------------



その日からだったと思います。
部長が私に優しくしてくれるようになったのは。


いえ、元々優しかったんですけど…
なんというか、他の人よりも
ずっと大切にされているっていうか…
そんな感じを受けました。


例えば、少し気分が悪い時。

「咲、ちょっと体調が悪いんじゃない?」

「じ、実は昨日ちょっと寝れなくて…」

「無理しちゃだめよ?
 ほら、ベッドに連れてってあげるから寝てなさい」


例えば、何だか心がささくれ立っている時。

「はい咲、あーん♪」

「わわっ、わぷっ……んっ…何ですか、これ?」

「お菓子を買ったら期間限定で
 増量してたから、おすそわけ!」


例えば、ちょっとだけ寂しい気分になった時。

「咲…ちょっと眠いから、抱き枕になって」

「い、いきなり、なんですか…」

「眠いと人肌恋しくなるのよねー、おやすみ!」


何か、特別のことをしてくれるわけではないんです。

でも、ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ…
誰かにあまえたいな、って思った時…

部長はいつも、さりげなく私に近づいて、
それとなく支えてくれました。


でも、私にはその理由がわかりませんでした。
確かに、私がインターハイに力を入れる理由は話しましたけど…
でも…ただ同情しただけで、
ここまでよくしてくれるものなのでしょうか?



だからある日、私は聞いてみたんです。



「部長は、どうして私に優しくしてくれるんですか?」

「…私に、同情してくれてるんですか?」

「いやぁ、そんなご立派な理由じゃないわよ?」

「じゃぁ、どうしてですか?」


「……」

「……」


部長は口をつぐみました。

あたりに突然流れ始めた、重苦しい雰囲気。
突然雰囲気が変わったことに戸惑っていると、
部長は再び沈黙を破りました。

でも、その言葉は…



「私には、もう家族はいないから」



予想をはるかに超えた、悲愴なもので。

私は思わず息をのみました。
いつも明るくてあっけらかんとした部長に、
そんな暗い影があるなんて気づきもしませんでした。


「だからね、逆なのよ。
 私が咲に優しくしてあげてるんじゃなくて、
 私が咲をかまいたいだけなの」

「もし、咲はまだ間に合うんだったら…
 どうか、私の代わりに救われてほしい…ってね」


何てことのないようにさらっとそう語りながら、
部長は穏やかに笑いました。
でも私には、その笑顔が何だかとても
悲しいものに見えたんです。

私には、部長になんて声をかければ
いいのかわかりませんでした。

でも、なんとかしたくて。

なんとかして、部長にいつもみたいに
笑ってほしいと思いました。

だから…部長のそばに近寄って、
そっと手を握りました。

部長は一瞬驚いたような顔になって…
でもその後すぐ、こぼれんばかりの笑みを浮かべて…
一言、私にこう言ったんです。



「ありがとう」



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それからは、部長と私の関係は少しだけ変わりました。


私は、部長にあまえることに気兼ねしなくなりました。
私は部長にあまえたくて、部長は私をかまいたい。

それだったら、何も気後れする必要はないと思ったんです。


「はい、ココア」

「あ、ありがとうございます!」

「最近頑張ってるわね」

「はい!どうしても、全国に行きたいですから!」

「きっとお姉さんも、勝ちまくる咲を見て
 びっくりするわよ?」

「えへへ…でも、お姉ちゃん…
 私のこと、受け入れてくれるかな…」

「ま、そこはわからないけどね」

「えぇ!?そこは嘘でも大丈夫って
 言ってくださいよー!?」

「まぁまぁ、もし駄目だったら
 私が慰めてあげるから。…こんな風にね!」

「わわっ、部長!?」


部長にあまえながら、お姉ちゃんと仲直りすることを夢見て、
ひたすら麻雀に打ち込む日々。
それは、とってもあたたかな日々で。

この時の私はそう、確かに幸せでした。



--------------------------------------------------------







もっとも、結論だけ言ってしまえば…
そんな私の努力は、全て無駄に終わりました。







--------------------------------------------------------



お姉ちゃんはあの時と同じように、
一言も口をきいてはくれませんでした。

それどころか、お姉ちゃんは私に対して、
あの時よりも明確な敵意を露わにしました。


でもそれは、当たり前のことだったんです。


お姉ちゃんは私のいない間、
白糸台の人たちと絆を深めあってきたわけで。
そんな人たちと共に成し遂げようとした全国三連覇には、
とても、とても大切な意味があって。

そして私は、それが達成されようとしている時に、
絶妙なタイミングで立ちふさがったんです。
目標達成の前に、わざわざ邪魔しに来た疎遠な人間を、
どうして快く受け入れてくれるでしょうか。


私が、悪かったんです。
私が、馬鹿だったんです。



だからもう…
そんな目で、見ないでください


(後編に続く:2014/8/30 16:00公開)
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posted by ぷちどろっぷ at 2014年08月29日 | Comment(2) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
咲さん……。
続きが気になるけど…あらすじ見る限り救いはないのか…orz
Posted by at 2014年08月29日 22:34
いいぞ〜久咲いいぞ^〜
Posted by at 2014年08月30日 18:10
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