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【咲SS:久咲】久「私のことだけ考えなさい」 【ヤンデレ】

<あらすじ>
私は、手遅れだった。咲は、まだ間に合いそうだった。
でも、咲も手遅れになった。だから、私たちはお似合い。

<シリーズの趣旨>
黒久さんと白咲ちゃんシリーズ。

以下の久視点での独白です。

咲「あれ…気づいたら、部長がいないと生きていけなくなってる」

<登場人物>
竹井久,宮永咲,染谷まこ,原村和,片岡優希

<症状>
共依存
異常行動

<その他>
※2014/08の、宮永家の事情が判明してない時期に書いてます。
今後の原作とは大きく矛盾するであろう点にご注意を。
※途中から原作と大きくキャラが乖離しています。ご注意を。

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7月。

インターハイに向けて始動した清澄高校麻雀部は、
私の裏での手引きもあって、
それぞれが自身の課題を乗り越えるために
邁進していた。

もちろん咲もその中の一人。
私は咲に、ネット麻雀での練習を課した。

咲はネット麻雀で負け続けた。
それ自体は、予想通りだったけど。

私にとって予想外だったのは、
咲は、負け続け目に涙を浮かべつつも、
決してそれをやめようとはしなかったこと。

これが、和なら話は分かる。
あの子は元々麻雀を愛しているし負けず嫌いだから。

でも、咲には頑張る動機がない。
いくら勝つ楽しみを覚えたからと言って、
つい最近まで「麻雀が好きじゃない」と言っていた咲。

そんな彼女は、なんで悔しさに涙しながらまで
つらい特訓を続けるのだろうか。


私はその動機が知りたくて、
負けがこんで落ち込んでいる咲に声をかけた。


「どうしたの?」


努めて優しく聞いてみる。
私の優しい声に、咲は何かを抱えながらも、
それをぐっと飲み込んだ。

ならばと、あえて彼女が予想しないだろう
言葉をかけて反応を見てみる。


「わ、私は…そんな、部長に
 お礼を言われるような人間じゃないんです…」


世間すれしていない咲は、
私の釣り針にあっさりひっかかった。

咲が、訥々(とつとつ)と語り始める。


咲にはお姉さんがいるけれど、
姉妹との関係は崩壊してしまっている。

姉は、あの宮永照。
昔は毎日のように、家族で麻雀を打っていた。
でも今は、もういない。


咲の話に、私は衝撃を受けた。
咲も私と同じで、家庭の崩壊を経験していたのだ。
私の中に、過去を抉られる痛みと、
悲しみを共感できる喜びが同時に去来した。
咲との距離が、一気に近くなったような気がした。


とはいえ、その後続いた咲の話に、
私は思わず眉をよせる。


咲は…麻雀で全国まで行って、
麻雀を打つ中で語り合うことで、
お姉さんとの関係を修復できたらと考えていた。


私には、それがうまくいくとは思えなかったのだ。


確かに、私は宮永照の人となりをよく知らない。
だけど、彼女は今や有名人で、
今年優勝すれば悲願の全国三連覇を
成し遂げるということは知っている。

仮に宮永照が勝つことに執着しないタイプだとしても、
わざわざ全国の舞台で自分の前に立ちはだかって、
泥をつけようとしてくる妹をよしとするだろうか。
関係を修復するどころか、
逆効果になりかねないと思った。


でも、私にはそんな冷たい事実を、
咲に突きつける事はできなかった。


事情を知った今ならわかる。
咲はもう、この方法にすがるしかないのだ。
だからこそ、こんなに追い詰められている。
追いつめられてもなお、麻雀を打とうとする。


そして、そのひたむきで一途な姿に、
確かに私は胸を打たれた。
だとしたら、ひょっとすればそれは、
お姉さんにも響くのかもしれない。


ふと、脳裏に自分の過去が蘇る。
私の家庭が崩壊した、中3の夏。
その時の私はただ、離れていく親の姿を、
呆然と眺めるだけだった。


もし、今の咲のように、その背中を追いかけたら。
死に物狂いで追いかけていたら。
私はそれを、手放さずに済んだのだろうか。



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私は積極的に咲を守ることにした。
咲が辛そうにしている時は、
さりげなく助けるようにした。
咲が麻雀に専念できるように助力した。


それは、咲のためではなく、他ならぬ私自身のためだ。


咲の努力の結果を見てみたいと思った。
私と同じように、大切な人を失った咲。
その咲が、努力の末にその絆を取り戻せるというのなら、
それを見てみたいと思った。
願わくば、そうなってほしいと思った。


でも…心のどこかで、
そうはならないだろうと思う自分もいた。


「えへへ…でも、お姉ちゃん…
 私のこと、受け入れてくれるかな…」


なんて言ってはにかむ咲。
そんな咲に対して、
「人生はそんなご都合主義じゃない」と
冷たく吐き捨てる私がいた。


だから、私がしたことは。


「まぁまぁ、もし駄目だったら
 私が慰めてあげるから。…こんな風にね!」


こうやって保険をかけること。
咲が、お姉さんに拒絶された時のために。



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そして私の予想通り、咲は拒絶された。








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咲は、特訓の成果を余すことなく見せつけた。
結果は清澄高校の初出場全国優勝。
咲の驚異的な追い上げによる成果だった。


会場全体が騒めく中、咲を迎えに行った私は
控室に繋がる廊下で一部始終を目撃することになった。


大声で号泣する大星さん。
宮永照は、彼女の震える肩を抱きながら、
同じく目に涙を浮かべていた。

彼女は近寄ろうとする咲の姿を目にすると、
驚くほど冷たい目を向けて…
ただ一言こう言った。


「なんで…こんなことができるの…!」


刺すような鋭い視線に晒された咲は、
同じく目に涙を浮かべながらあたふたするだけで。


「ち、ちが…わた、わたし…そんなつもりじゃ…!」


宮永照はそれ以上何も言わないで踵を返し、
大星さんを連れてその場を後にする。
それは、明確な拒絶だった。


「あぁっ……!」


残されたのは、咲一人。


咲は遠ざかる姉を追いかけることもできず、
その場にぺたんと座り込んだ。


「咲!」


ここに来て私はようやく我に返り、咲に駆け寄る。
私の呼びかけに、咲は反応しなかった。
ただ、全身を大きく震わせながら嗚咽していた。

静かに、静かに嗚咽していた。



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予想通り、咲は壊れた。

そして、予想外に私も壊れた。


この結末は予想していたのに。
むしろ、こうなる可能性の方がずっと高いと
わかっていたのに。

それでも、私は自分が思っていた以上に、
咲に感情移入していたらしい。


糸が切れたように動かなくなり、
ただ涙を流す咲を見て、
私も涙が止まらなかった。


あぁ、なぜあんなにも頑張っていた咲が、
こんな目にあわなければいけないの!?

なぜ、あんなにも一途に想い続けた咲が、
拒絶されなければいけないの!?

なぜ、一人ぼっちになって…
泣き続けなければいけないの!?


私だったら…絶対に
咲を拒絶なんてしないのに!


いつしか、悲しみは怒りに変わり、
怒りは、狂気に変わっていった。


そうよ、咲は私を求めればいいのよ
あなたを拒絶したお姉さんなんかよりも、
私の方が絶対咲を幸せにできる

咲は、お姉さんに捨てられた
私も、家族に捨てられた
だったら、私が咲をもらってもいいわよね?


咲…私を見て頂戴
もしあなたが望むなら
私があなたを…幸せにしてみせるから



--------------------------------------------------------



咲は、家に引きこもるようになった。
眠ることもせず、食べることもせず、
ただ、ずっと部屋の隅でうずくまっていた。

私は咲のそばに付き添いたかったけど、
私の立場はそれを許してはくれず。

インターハイの事後処理に奔走した私が
咲のもとに訪れることができたのは、
私たちが長野に戻ってから3日後のことだった。


咲のお父さんは私の姿を見るなり、
頭を下げて私に頼み込んだ。


「どうか、咲を救ってほしい」


言われるまでもない。
私は案内されるままに足早に咲の部屋に向かう。


咲の部屋に入るなり、異臭が私の鼻をつく。
そこにあったのは、変わり果てた咲の姿。


咲は、からっぽになっていた。


服は、帰ってきた時のまま。
頭もぼさぼさ。
目はうつろで生気を宿してはいない。


それでも私はほっとした。
咲は、まだ生きていてくれた。


私は、座り込んだ咲をそのまま包み込む。
反応はなかった。
それでも、咲の体はまだ体温を持っていて。
私は心から安堵した。



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数時間はそうしていただろうか。
不意に、私のおなかが空腹を告げた。
意外にも、咲はそれに反応した。


「…何か、食べた方がいいです」


その言葉に、私は思わず泣きそうになる。


この子は…こんな時まで、他人のことを考えている…!
自分の方こそ、今にも消えてしまいそうなのに…!


それでも、それはいい兆候だった。
咲は、私の存在を意識できるようになっている。
そこに復活の可能性を垣間見ることができた。

もっとも。


「あなたが死を選ぶなら、私もそうする」


これも私の本音だった。
咲が、もう生きることを諦めるというのなら、
無理に延命させようとも思わなかった。
その時は、私も一緒についていく。
それだけのことだ。


私の言葉を聞いた咲の目から、
涙がひとしずくこぼれた。
そしてそれはみるみるうちにあふれだし、
気づけば咲は号泣していた。



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咲の回復は思ったより早かった。

何か月でも、何年でも付き添うつもりだったけど、
実際には数日でご飯を食べられるようになり、
それからまた数日で散歩にも行けるようになった。

もっともそれは、私がいる時に限定した話だけど。

咲のお父さんに聞いた話では、
私が帰った後の咲は、
トイレを除けばほとんど動かないらしい。

無表情のまま、
ただじっとうずくまっているらしい。

そして、私が来た時だけ、
表情を取り戻し、しゃべることができるのだ。


私はそれを聞いて嬉しくなった。


そうよ、それでいいの
あなたは、私だけ見ていればいい
私なら、絶対にあなたを見捨てないのだから


調子に乗った私は、散歩の時に咲の手を握り、
やがて指をからめるようになった。

それで咲の目に活力が戻るものだから、
私は余計に舞い上がった。

空っぽだった咲が、少しずつ私で満たされて、
自分を取り戻していく。
それが私には、この上なく嬉しかった。



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学校が始まってしまった。

正直に言ってしまえば、
私は学校には行きたくはなかった。

純粋に咲のことが心配という気持ちもある。
今の咲が私抜きで学校生活を送れるとは思えなかった。

でも、何よりいやだったのは…
咲が私以外の人に触れられること。

せっかく私で満たされ始めた咲に、
不純物が混ざるのは避けたかった。


とはいえ、すでにある程度回復している咲に、
学校をやめさせるほどの影響力は、
その時の私にはまだ無くて。

仕方なしに、私は代替案を採用することにした。


使ったのは、携帯とノート。


携帯は言うまでもなく、
少しでも私と触れる機会を増やすため。
もちろん、私以外の人間と
触れる余地をなくす意味もある。


そして、ノートは…
携帯が使えない時に咲を落ち着かせるためであり…
私以外のことを考えないようにするため。

人間は、単純作業を繰り返すことで
落ち着くという習性がある。
だから私がいない時に、私の名前を書き続けることで
咲を落ち着かせることにした。

これなら、咲が私以外のことを
考えなくなる効果もあって一石二鳥だ。


咲に渡したこの道具は、
どちらも立派に役目を果たしてくれた。


携帯を渡して、咲を自宅に送り届けてからたった数分。
私の携帯が咲からの着信を告げた。
即座に応答すると、明らかに安堵した咲の声。
その日は携帯を充電しながら一晩中話した。


でも、それよりも驚いたのはノートの方。
ノートを渡した翌日、咲はさっそく
私の名前をノートに綴ったらしい。

しかも、どうやら咲も3ページ書いたらしい。
それは、私が綴った枚数と一致していて。


ああ、やっぱり私たちは、同じなんだ


と胸が熱くなった。


ただ、一つだけ誤算だったのは、
ノートに名前を書くという行為について、
咲が恐怖を感じていたこと。

それは、咲の中で健常者が持ちうる体面や
常識を気にする余裕が出てきたという事でもあり、
喜ばしいことではあるんだけど。

できればそんなことは気にしないで、
私の名前を書くことに没頭してほしいと思う。

そのうち、対策が必要だなと思った。



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その日、私は咲を伴って部室を訪れた。
咲以外の部員と直接会うのは、
インターハイ以来のことだった。

もっとも、私たちの状況は
まこに逐一報告していたから、
特に非難されることもなく、
私たちは温かく受け入れられた。


それでも、深くは知らない優希が
咲を麻雀卓に誘うと、咲はびくりと大きく身を震わせた。

そう、これこそが私が部室に来た目的。


咲の中で、麻雀はあの女との
決別の象徴になってしまっている。
それを、何とか上書きしたい。

さらに言えば、もうあんな女のことは
きれいさっぱり忘れてほしい。

だから、あえてあの女のことを想起させる
ここに連れてきたのだ。


「お姉さんのことは、もう忘れなさい」


私にそう言われた咲は、表情を失った。

それを見て、私は軽い憤りを覚えた。
咲の中で、あの女はまだ息づいている。
許しがたいことだった。

でも、私が咲を抱き寄せると、
咲は逆らうことなく身をゆだねた。


そう、それでいい


あなたを捨てた女のことなんて、忘れてしまいなさい
あなたは、私のことだけ考えていればいい



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それからしばらくは、特に何もなく日常を繰り返した。
そんな日々は、確実に咲を変化させていった。


咲と私は毎日電話し続けたし、メールもいっぱい打った。
そうすると当然、こんなことも起きる。


「咲さん、携帯を買ったんですね」

「え?ああ、これは違うよ。部長にもらったの」

「ぶ、部長が…ですか?」

「うん。私が心配だからって」

「…私も心配なので、
 連絡先を教えてもらってもいいですか?」

「ごめんね、これ部長専用なんだ」

「え?」

「部長以外のアドレスは、入れちゃダメなの」

「そういうルールだから」

「さ、咲さん…」


狼狽する和。でも、咲はそんな和の様子を見ても
意に介することなく。むしろ

「え、と…何か変なこと言ったかな?」

とでも言わんばかりに疑問符を頭に浮かべていた。


ノートにも毎日名前を書かせた。
咲はその行為を少し恐れて、
1日1ページを守り続けていたけど。

でも、日に日に私の名前は小さくなっていき、
1ページに刻まれる名前の量は増えていく。

最初のページと最後のページを比較する。
それは同じ1ページでも、
書かれている名前の数は数倍は違っていて。
私はそれを見て密かに喜んだ。


とはいえ、咲は依然として、ノートに名前を書く行為に
抵抗を持っているようだった。

そして私の方も、だんだん活力を取り戻した咲が
私以外の人にも普通に対応できるようになってきたことに
強い違和感を感じるようになってきた。

だから、私はひと手間かけることにした。



--------------------------------------------------------



ある日、咲の部屋で抱き合いながら、
私はこう切り出した。


「実はね、遠い親戚の法事があるから、
 明日はちょっと離れちゃうけど、頑張れる?」

「え!?」

「…やっぱり無理かな?」

「…い、いえ…大丈夫です」


ちょっと離れる。それだけのことで、
咲の顔がわかりやすく曇る。
その姿に罪悪感を感じながらも、私は撤回はしなかった。


もちろんこれは単なる嘘だ。


私には、もう家族なんていないのだ。
親すらいないのに、遠い親戚なんかのために
わざわざ法事なんて出ることはない。
それでも、私の事情を深くは知らない咲は、
その嘘を疑うことなく信じた。



当日、私は携帯の電源を切り、
咲からの接触を一切遮断した。
『法事』の開始設定は10時から。
移動時間や食事の時間を考慮して、
9時から15時まで不在ということにした。


私は自宅の自分の部屋で、
ノートに咲の名前を書きながら、
ひたすら時間が過ぎ去るのを待った。


……


15時になった瞬間、私は携帯の電源を入れる。

携帯が待ち受け状態になったそばから、
膨大な量のメールと着信通知が舞い込んでくる。

私は、最後の方のメールだけ確認した。


『From:咲
 ---------------------------------------------------
 助けてください、さみしいです            』

『From:咲
 ---------------------------------------------------
 このままじゃおかしくなってしまいます        』

『From:咲
 ---------------------------------------------------
 ぶちょうがいないの、むり              』

『From:咲
 ---------------------------------------------------
 たすけて                      』


予想以上に追いつめられた咲のメール。
改めて罪悪感に押しつぶされそうになりながらも、
ほの暗い喜びが私の身体を駆け巡る。


私は居てもたってもいられなくなって、
法事用と設定した黒い服を着て、咲の家まで駆けつける。


チャイムを鳴らすと、寸刻もたたず玄関の扉が開き…
顔をぐしゃぐしゃにした咲が飛びついてきた。


「ぶちょうっ…ぶちょうっ…!」


うわごとのようにつぶやきながら、
私に顔を擦り付ける咲。

私がハンカチで涙をふくと、
一瞬離れようとしたけれど、
手を引いてあげたらまた素直に私の中に納まった。



--------------------------------------------------------



ひとしきり再会を喜んだ私たちは、
その居場所を咲の部屋に移す。


「…わぁ」


扉を開けた私は、思わず感嘆の声をあげた。

乱雑に散らかった部屋。
そこには、至るところに私の名前が刻まれていた。

机の上に置かれたノートは、
全ページを使い切ってしまっていた。
書くものがなかったのか、次は広告の裏。
その次は、教科書。

それでもおさまらなかったのか、
やがてその舞台は壁に移り。
壁の一部が私の名前で埋め尽くされていた。


それを見られた咲は、しまった、
と言わんばかりに青ざめる。

でも、私はそんな咲を抱きしめると…
耳元で優しく囁いた。


「いいのよ」

「これでいいの」

「あなたは、私のことだけ考えてなさい」


私の言葉を聞いた咲の顔が、だらしなく弛緩する。
それは、咲が健常者の鎖から解放された瞬間だった。
私は、『ひと手間』の効果に満足した。



--------------------------------------------------------



『ひと手間』の効果は、
私の期待をはるかに超えたものだった。


咲は、片時も私から離れることを嫌がった。
私は家に帰ることを許されず、咲の家に泊まることになった。

そのうち満足して離れる時が来るかと思ったけど、
そんな時はこなかった。
そう何日も、何日も。


ここに来て、私は咲のお父さんに二者択一を迫った。


「咲は、もう私を離してくれません」

「私の家で預かるか、もしくはいっそ、
 精神病院の閉鎖病棟に送り込むか」
 

「どちらかを選んでいただけますか?」


咲のお父さんは目に見えて狼狽しながらも、
私が咲の家に引っ越すことを提案した。

それはそれで悪くないけれど、
できれば咲と二人きりでいたかったから断った。


最終的に、咲のお父さんは前者を選んだ。



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こうして、私は咲を手に入れた。


学校はやめた。携帯も解約した。

それでもしばらくの間は、
私の家にまこや和や優希が押しかけてきたけれど、
来るたびに居留守を使ってやり過ごすうちに…
そのうち彼女たちも諦めた。


これで、私たちは完全にふたりぼっち。


一日中、ただ咲と一緒に過ごす。
家でごろごろしたり、散歩に行ったり。


この生活が、いつまでも続くとは思っていない。
いずれは親の援助もなくなるだろう。
そうなった時、私たちはどうしようか。


もちろん、無策にその時を待つつもりはない。
今の時代、能力さえあれば家にいながらにして
働くことはそこまで難しくないし、
咲を不幸にすることは絶対に許されない。


でも…


「もしもの話だけどね?
 このまま、行けるところまで行ってみて、
 維持できなくなる時が来て…
 私にもどうにもできなかったとしたら」

「その時は、二人で逝くってことでいいかしら?」

「はい」


私の問いに、咲は迷うことなく頷いた。

咲は、この生活が駄目になったら、
迷わず一緒に死んでくれる。
だとすれば、そんな結末も悪くはないかな
とつい思ってしまった。
もちろんそんな結末は、
本当に選んだりはしないけど。


重い話だったにも関わらず、
咲は何てことないように
私の腕の中でくつろいでいた。

咲にとっては、もう私以外のことは
自分の命さえも、どうでもいいことのようだった。
そんな咲を見て、私は思わず笑みがこぼれる。


そう、それでいいの

あなたは、私のことだけ考えてなさい

私が、あなたを幸せにしてあげるから


私は咲をぎゅっと抱き締めた。

咲は、幸せそうに目を細めて…
そのままゆっくり目を閉じた。




(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2014年09月07日 | Comment(4) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
久の鮮やかな手口にゾクゾクする
Posted by at 2014年09月07日 18:29
こーゆー重い話し大好きです!
Posted by at 2014年09月07日 20:13
いや〜戦略的な久さんは、やっぱり魅力的ですね
変なリクエストに答えてくれて、ありがとうございます
Posted by at 2014年09月08日 17:35
コメントありがとうございます!

>重い話
最近だんだん話が重くなってきて
受け入れられるかドキドキだったので
うれしいです。

>手口、リクエスト
やっぱり部長は裏で謀略するのが似合いますね。
またリクエストあれば気軽に書きこみください!
応えられるかは不明ですか!

Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2014年09月13日 21:00
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