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【咲SS:久咲】咲「部長にドッキリをしかけるよ!」【あまあま】

<あらすじ>
珍しく部内の罰ゲーム麻雀でラスをひいた咲。
罰ゲームボックスから引いたのは、
何も書かれていない真っ白な紙。

さて、咲に命じられた罰ゲームの内容とは…?

<登場人物>
竹井久,宮永咲,片岡優希,原村和,染谷まこ

<症状>
あまあま砂吐き

<シリーズ>
白久さんと白咲ちゃんシリーズ。
最近真っ黒な二人が多かったので、
定期的なお口直しにどうぞ。

<その他>
※当ブログ本来のテーマからは完全に外れてますので、
 興味ない方はそっとページを閉じてやってください。

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その日は、優希が絶好調だった。


「ツモ!親の三倍満で36000だじぇ!」

「…飛びました」


それを受けて、珍しく咲が飛んだ。

といっても、別に咲自身が下手を打ったわけじゃなく、
咲が親の時に、でかい手をツモられただけ。
麻雀を運で片付けるつもりもないけど、
さすがにこれは、運が悪かったとしか言いようがない。


そう、よりにもよって罰ゲーム麻雀の時に。


我が清澄高校麻雀部では、
負けることに対する緊張感を忘れないために、
定期的に罰ゲームを導入している。

それは、麻雀でラスだった人が、
罰ゲームボックスから罰ゲームが書かれた紙を引いて
その命令に従うっていう単純なもの。


「うぅ…和ちゃんのが来ませんように…
 和ちゃんのが来ませんように…」


咲は文字通り祈りながら罰ゲームボックスに手を入れる。
ちなみに、過去に和が入れた罰ゲームは

「一週間咲さんが原村和にご奉仕」

というものだった。
その時は引いたのが優希だったから
ノーカンになったけどね。


「和ちゃんのが来ませんように!」


気合を入れて、一枚の紙を引き抜く咲。
というか、どんだけ怯えられてるのよ和。


「あ、あれ…?」

「ん?どったの咲」

「えと、何も書かれてないんです」


そう言って見せられた紙は、確かに白紙。


「おお、さすが咲ちゃん!
 それを引くとはお目が高いな!」

「え?これ…優希ちゃんのなの?」

「いかにも!」

「あぶり出しとか?」

「ノーだじぇ。隠し罰ゲームって言うのもありかなと思って、
 あえて何も書かなかったんだじょ」

「罰ゲームは、咲ちゃんだけに、
 私がこっそり伝えるじぇ!
 さあ、咲ちゃんはこっちにくるじょ!」

「えぇー…いやな予感しかしないよぉ…」


困惑の色を隠せない咲を引っ張りながら、
二人は部室の隅に寄っていく。
なるほど、そういうのも面白いかもね。
今度私もやってみましょう。


「えぇ!?そんなの無理だよ!」

「無理を押し通す、それが罰ゲームだじぇ!」

「で、でも…」


咲と優希がチラチラとこっちを見る。

せっかく隅っこに行ったのに、
全然隠し通せてない二人。
私つながりの罰ゲームなのかしら?
まあ、見て見ないふりをしてあげましょうか。


「う、うぅ…」


戻ってきた咲は、やたら私の様子をうかがっていた。
これは、何だか面白いことになりそうね!



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「というわけ、咲ちゃんの罰ゲームは、
 『ドッキリで部員の誰かに告白』だじぇ!」

「えぇ!?そんなの無理だよ!」

「無理を押し通す、それが罰ゲームだじょ!」

「で、でも…」


私は部長の方を盗み見た。


「あれ〜?私は別に誰とは言ってないじょ〜?
 咲ちゃん、もしかして…」

「ち、違うよ?だって、
 他に告白できそうな人がいないでしょ!」


発案者の優希ちゃんは除外だろうし、
京ちゃん…は、優希ちゃんが怒りそうだから除外。
染谷先輩は、逆に優希ちゃんが怒られちゃいそうだし、
和ちゃんは…うん。確実にバッドエンドだよ。


「じゃあ、ターゲットは部長だな!
 なーに、部長はモテまくってるから
 きっと軽く流してくれるじぇ」

「うーん…それはそれで普通にショックなんだけど」

「あれあれ?やっぱり咲ちゃん、
 部長の事好きなんじゃないのか?」

「だから違うよ!?いくらドッキリだって言っても、
 告白を軽く流されたら凹むでしょ」


私は再度部長を覗き見る。私が部長に告白かあ…
確かに、部長ならうまくかわしてくれそうだけど…


「別にやらなくてもいいけど、
 もう一つの罰ゲームはもっとひどいじょ?」

「…一応聞いておくよ」

「のどちゃんのゴスロリ服で一週間過ごす」

「それ、もう拷問のレベルだよ…」


清澄高校麻雀部において、罰ゲームは絶対。
難易度的にも、部長ならどっちでも
OK出しちゃいそうだし。
あの服を着るのだけは死んでも避けたい。


「わかったよ…まあ、当たって砕けてくるよ」

「おう、その意気だじぇ!」


はあ…気が重いなぁ…
私は大きなため息をついた。



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一週間後。私は部長を屋上に呼び出した。

ドキドキと胸と高鳴らせながら部長を待つ。
いくら罰ゲームとはいえ、多分振られるだろうとはいえ。
さすがに、告白をするというのは勇気がいるわけで。
私は、なけなしの勇気を奮い立たせるのに必死だった。


「やっほー。どうしたの?こんなところに呼び出して」

「ぶ、部長と二人っきりでお話ししたいことがあったんです」

「そっか」


優しい笑みを浮かべる部長。
勘のいい部長の事だから、なんで私が呼び出したのか、
薄々わかっているのかもしれない。
よし、さっさと終わらせちゃおう!


「すっ…好きです!付き合ってください!!」


言っちゃった!言っちゃったよ!!
顔に熱がたまっていくのを感じる。
きっと、私の顔は今真っ赤になっているだろう。
私は、おずおずと部長の顔を見やる。

部長は一瞬きょとんとした表情を浮かべると…
そのまま私に背を向けた。


「ぶ、部長…?」

「さ、さき…ちょっと待って」


あれ?部長の様子がおかしい。

私に背中を向けたまま、小刻みに震える部長。
もしかして、完全に意図がバレていて、
笑いを堪えてたりするのかな?

なんて希望的観測をした私だったけど、
実際にはそうじゃなくて。


「ご、ごめんなさい…涙が…」


そう言って、目をこすりながら振り向いた部長は
うっすらと目に涙を浮かべていた。


え…えええぇ!?


予想外の事態に、私は動揺を隠し得ない。
こんなの考慮してないよ!?


「ぶ、部長…?」

「う、嘘じゃ…ないのよね?」

「し、信じていいのよね…?」


震える声で念押しする部長。
うぅ…この雰囲気で
『残念!罰ゲームでした!』なんて言えないよ…
私は答えに窮して(きゅうして)、つい頷いてしまう。


「あ、えと、その……はい」

「うれしい!」


次の瞬間、私は部長に抱きしめられていた。
わ、わわ…部長に、抱きつかれてる!?


「ずっと、ずっと好きだったの…」

「まさか、両想いだったなんて…」

「うれしい…本当に、うれしい…!」


私を抱きしめながら、矢継ぎ早に想いをぶつけてくる部長。
余りにストレートな告白に、
私まで胸の動悸が激しくなってしまう。

ど、どうしよう…まさか、部長が
本当に私のことを好きだったなんて…!
これじゃ、撤回なんてできないよ!

ひとしきり抱き合った後、
部長は改めて私を離すと、真剣な顔でこう言った。


「私も、好きです…付き合ってください」


陽に照らされて、部長の瞳がキラキラと涙で光る。
それが、あまりにも綺麗すぎて。
私は、冷静な判断ができなくなって。


「は、はい…これから、よろしくお願いします…」


私はつい、うわ言のように。
承諾の返事をしてしまっていた。



--------------------------------------------------------



私は咲に、屋上に呼び出されていた。


「すっ…好きです!付き合ってください!!」


(なるほど、そういうことですか)


これがもし本当なら、さすがに動揺するところだったけど。
私はすぐに、これが罰ゲームだと気づいた。
いやだって、あの日からずっと挙動不審だったし、
やたらとチラチラ目があったし。

咲はおどおどしながら、上目遣いで私を見つめる。
うーむ、なかなかの演技派ね。
いや、咲なら素かもしれないけれど。

さてはて、私はどうしたものか。
これが罰ゲームである以上、
サクッとネタばらしというのも
ちょっと面白みに欠けるわね。

というわけで、この際だから思いっきり、
乗っかってみることにしましょうか!


「さ、さき…ちょっと待って」


不自然じゃないように後ろを向いて、
息を吸ってあくびを誘発。
あくびをできるだけ噛み殺し、
目をしぱしぱさせて涙を出す。

よし、うるうる久さんのできあがり!


「ご、ごめんなさい…涙が…」

「ぶ、部長…?」


私は目をこするふりをしながら咲に向き直る。
咲は私の涙を見て、あからさまに動揺した。
うん、成功。
後は、早めに逃げ道を塞いでおきましょうか。


「う、嘘じゃ…ないのよね?」

「し、信じていいのよね…?」

「あ、えと、その……はい」


あらま、認めちゃった。
咲って本当に押しに弱いわね。


「うれしい!」


私はボロが出る前に、咲をぎゅっと抱きしめる。
そして、ひとしきり愛の言葉をささやいて…
改めて、私からも告白した。


「私も、好きです…付き合ってください」

「は、はい…これから、よろしくお願いします…」


まるで熱に浮かされたように、
ぼんやりとした顔で頷く咲。

ありゃま…咲ってば、本当に受け入れちゃうんだ。
よーし、そっちがその気なら、
こっちも頑張っちゃうわよー?



--------------------------------------------------------



部長は、その日のうちに私たちの関係を部員に公表した。


「と、言うわけで…
 私たち、付き合うことになりましたー!」

「えぇ!?」

「…お前さんら、いつの間に…」

「咲さん!ドッキリですよね!絶対そうに決まってます!」

「あ、あはは…」


和ちゃん大正解。その助け舟に乗っかりたいところだけど、
さすがにここで言い出す勇気はないよ…


「お前さん、誰かと付き合うの初めてじゃないか?」

「ええ。今までは全員振っちゃったからね」


今明かされる衝撃の事実。
部長、付き合った人いなかったの!?
なんでよりによって私の告白受けちゃうの!?


「ぶ、部長は…どうして私なんかを選んでくれたんですか?」

「そ、それを皆の前で聞いちゃうかー…」

「あ、その…ご、ごめんなさい!」


恥ずかしそうにもじもじする部長。
部長のこんな顔、初めて見たよ…
なんだかこっちまで恥ずかしくなってしまう。


「何か部長らしからぬ初々しさですね」

「そりゃそうよ。初めてできた彼女だもの」

「これから何しようかしら?」

「咲は本の虫だから、やっぱり最初は図書館デートとか?」

「それとも、公園とかで穏やかに散歩?」

「でも、咲がいれば、きっとどこでも楽しいわよね!」


パタパタと跳ね回る部長。
その様子は、本当に楽しそうで。
うぅ、どんどん後戻りできなくなってくよ…

私は思わず天を仰いだ。



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そんなわけで、恋人ごっこ始めました。

とはいえ、咲は引っ込み思案だから、
少しずつ段階を踏んでいくことにしましょうか。


やっぱりまずは軽いジャブから。
森の中を、二人で散策することにした。

私は咲の手を取って、努めて優しく話しかける。
まずは緊張をほぐしてあげないとね。


「恋人同士になったからって、
 別にそんなに気負わなくていいのよ?」

「は、はぁ…」

「二人で遊びに行ったり、お話したり、
 そういうことでいいの」

「は、はい!」


うっかりドッキリに乗っかっちゃった私だけど、
だからといって咲を悲しませるのは本意じゃない。
できれば、咲にも目いっぱい楽しんでほしいものね。


「ふふ、わかってくれてありがとう。
 じゃ、ここから本番という事で」


そう言って、私は咲の手を離すと、
今度はしっかりと手を絡ませる。
そう、俗に言う恋人つなぎ。
このくらいならいいでしょ?


「わ、わわ、わぁ…」


それでも、咲は真っ赤になってうつむいた。
うーん、可愛い。こういう彼女が欲しいわね!
あ、今は私の彼女だったか。


その日はゆっくり咲と歩いた。
最初はおっかなびっくりだった咲も、
最後には何とか慣れたみたいで。
咲からもぎゅっと握り返してくれたのが心地よかった。



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咲も慣れてきたみたいなので、
今度はおしゃれなカフェに連れていったりした。
あ、もちろん手を繋いだまま入店ね?


「わぁ…私…こういうところ来るの初めてです!」

「ふふ…実は、私もなのよねー」

「そうなんですか…?なんか、
 行き慣れてるようなイメージが」

「初めては好きな人と来ようと思って、
 リサーチだけしておいたのよ」

「そ、そうなんですか…」


これまた頬を朱に染めて、もじもじする咲。
それでも、満更でもない様子。


「こういう所で、当たり前のように
 お茶できるようになると、
 大人になったなって感じがしますよね…」

「ふふっ…じゃぁ、私たち
 大人の階段を上っちゃったわね」

「もう、部長ったら…言い方がいやらしいですよ」


咲もだいぶ落ち着いてきて、
軽口に笑みを見せる余裕が出てきたようだった。

カフェを出ると、どちらからともなく
自然と手がくっついて。
そのまま、私達はお互いの手を絡ませた。

うん。この徐々に仲良くなっていく感じ、
けっこう好きかも。



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お次はやっぱり、図書館デート。
二人で同じ本を選んで、読んだ後に感想を伝え合う。
本は事前に調査して、先輩と後輩の恋物語を
ピックアップしておいた。

私の横で、ボロボロと涙をこぼし始める咲。
私はそっとハンカチでその涙を拭ってあげる。
咲は大人しくされるがまま。
やがて、私の肩に身を寄せる。


「それじゃ読めないでしょ」

「じゃあ、部長がめくってください」

「まったくもう、あまえんぼうね」

「えへへ…」


本に感化されたのか、素直にあまえ始める咲。
私達は寄り添いながら、二人で一冊の本を読む。
もっとも、読むそばから咲が泣き出すから、
結局読み終わらなかったんだけど。

こりゃ、感想発表会は次のお楽しみかしら?



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そんなわけで、私たちは順調に愛を育んでいった。
最初は、もっと早いタイミングで
ネタばらしする予定だったんだけど、
なんだか思いのほか居心地がよくって。
気がつけば、告白された日から
二週間が過ぎようとしていた。



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「咲ちゃんが私を誘うのは珍しいな!
 最近はいつも部長にべったりなのに」

「えへへ…だって、部長といると楽しいんだもん」

「おーおー。ノロケごちそうさまだじぇ」

「…実は、それなんだけど…」

「私たちって、本当の恋人同士に見えるのかな?」

「じょ?どういうことだじょ?」

「えと、その…」

「ホントに…好きになってきちゃったから」

「どうしよう…って」

「んー。それって何か困るのか?」

「むしろ、ドッキリが本当になったんだから
 ベストな終わり方だじぇ?」

「部長、勘がいいから…
 もしかしたら、ドッキリに気づいてて、
 合わせてくれてるだけなんじゃないかなって」

「あー…部長ならありえるじぇ」

「だ、だからね…どうしようかなって」

「難しい問題だじょ。
 もし部長が気づいてなかったら、
 つつかなくていい藪をつつくことになるし」

「かといって、気づかれてたら…
 そのうちおしまいになっちゃうよね」

「そうだじょ!じゃあ、
 もっかい告白したらどうだ!?」

「えぇ!?もう一回!?」

「うむ!もし、部長が気づいてなかったら、
 そのまま受け入れられておしまいだじぇ。
 でも、部長が気づいてたら、
 今度は本気なんだってわかるはずだじょ!」

「これなら、どっちに転んでも問題ないじぇ!」

「そ、そんなの、無理だよ…」

「じょ?なんでだじょ?」

「こ、告白して、振られたら…」

「もう一回終わらせてるのに?」

「ドッキリでするのと、
 本気でするのは全然違うよ…」

「あー、確かにそれはわかる気がするじぇ」

「でも、咲ちゃん」

「私はあんまり経験ないけど、
 私には、最近の二人が本当のカップルに見えるじょ」

「仮に、ドッキリに気づいてたとしても、
 部長が楽しんでることは間違いない!」

「ゆ、優希ちゃん…!」

「だから、当たって砕けてこい!」

「えぇ!?そこは『大丈夫!私が保証する』
 とかじゃないの!?」

「えー、だって相手が部長だしー」

「うぅ…まあでも、ちょっとは勇気出たよ…」

「お、じゃぁ、言っちゃうのか?」

「うん。元々は自分の撒いた種だし、頑張ってみるよ」

「その調子だじぇ!もし駄目だったら
 のどちゃんをくれてやるじょ!」

「うん、ちょいちょいやる気を削いでくるの
 やめてくれないかな?」



--------------------------------------------------------



私は咲に、屋上に呼び出されていた。
前回は、ここで咲から告白を受けたわけだけど、
今回は一体何が待っているのかしら?


まあ、普通に考えたら、
『ごめんなさい、ドッキリでした』
って打ち明けられる可能性が高いのだけど。


今の咲の様子を見ると、それが来るとも考えにくい。
だって、どう考えても咲は本気になってるし。

だとしたら、考えられる可能性は…


「部長…改めて、もう一度言います。
 私と、付き合ってください」


なるほど。やっぱりそう来るのね。

今度は私も考え込んだ。


前回はドッキリだとわかっていたから、
軽い気持ちで乗っかった。

でも、今、目の前にいる咲は、あの時とはまるで違う。
膝はガクガクと笑っていて、
目には不安の色が色濃く映っていて。
振られる恐怖に怯えながら、
私の返事を待っている。

これは、間違いなく本気の告白。
なら、私も本気の返事を返さないといけない。


とはいえ、実は私も、
自分の気持ちがわからなかった。

咲との恋愛ごっこを、本気で楽しんでいたのも事実。
こんな彼女がいたらいいな、と思ったのも事実。
だから、OKを出すのは別に問題ないのだけれど。


でも、私は本当に咲が好きなのかしら?
咲と、気持ちが釣り合っているのかしら?


「じゃ、試してみましょうか」

「…え?」


私は咲を抱き寄せる。咲は抵抗しなかった。
私はそのまま咲を見つめる。

咲も、私がしようとしていることがわかったみたい。
意を決したように、ぎゅっと目をかたくつむった。

さて、咲からのお許しは出たから、
後は私ができるかどうか。


私はそのまま近づいて。


5cm。

4cm。

3cm。

2cm。

1cm。






「…これからも、よろしくね」

「はっ…はい!」



…普通に、できちゃった。

どうやら私も、咲のことが
本気で好きになっちゃってたみたい。



--------------------------------------------------------



「と、言うわけで…
 私たち、付き合うことになりましたー!」

「知ってるじょ?」

「…ちょっと前にも同じセリフを聞いたんじゃが」

「嫌がらせですか!?私に対する嫌がらせなんですね!?」

「あ、あはは…」

「あの時のはドッキリだったからねー」

「えぇ!?やっぱり気づいてたんですか!?」

「むしろどうして気づいてないって思えたのよ」

「罰ゲームになってからずっと挙動不審で
 キョロキョロして、私の顔をうかがってたじゃない」

「そもそも本当に私のことが好きだったら、
 もっと前からわかりやすく顔に出てるはずだもの」

「じゃあ、お前さんはドッキリじゃとわかっとりながら
 それにつきあっとったんか?」

「ええ」

「そんな…本当にドッキリだったなんて…!
 じゃあ、今回も実はドッキリじゃないんですか!?」

「あ、ごめん。今度のはホント」

「そんな!?」



--------------------------------------------------------



そんなわけで、名実ともに恋人同士になった私たち。
といっても、今までとやることは変わらないけれど。
ちょっとだけ。本当にちょっとだけ、
くっつく機会が多くなった。


「咲はすっかりあまえんぼうになっちゃったわねー」

「えへへ…だって、今度は、本当ですもん」

「割と早い段階で本気になってたくせに」

「うぅ…なんで部長は、そんなに鋭いんですか…」


ドッキリも最初から見抜いてたらしいし、
その後本気になっちゃったのもすぐわかったらしい。
部長に嘘はつけそうにないよ…


「そういえば…あれ、どういう意味だったんですか?」

「ん?あれって?」

「『試してみましょうか』って…」

「ああ、あれ?言ってもいいけど、怒らない?」

「怒るような内容だったんですか!?」

「いやね、私も咲のことを
 好きだったのは事実なんだけど。
 でも、自分でも本気だったのかまでは
 わからなかったから」

「キスできたら、本気だろうなーって思ってね?」

「そ、そんなの…好きじゃなくても
 キスできる人なんてたくさんいますよ?」

「私はそういうタイプじゃないもの。
 麻雀遍歴見てればわかるっしょ?」


そう言って、部長はけらけらと笑った。
確かに、部長は一途なタイプだと思う。


「でも、罰ゲームから実る恋っていうのも
 なかなか面白いわねー」

「まさか自分がそうなるとは思いませんでしたけどね…」

「じゃあ、もっかいドッキリしてみましょうか?」

「えぇ!?」

「咲さん!私と結婚してください!」


そう言って、にこにこと笑う部長。
そこからは、真剣みがまったく感じられない。


「…もう」


明日、ドッキリ返しで婚姻届を持って行こうかな?
でも、きっと部長の事だから、
笑ってサインしちゃいそうだけど。
そして、驚く私を見ながら、


「じゃ、早速提出してくるわね!」


とか言っちゃうんだろうな。
それはそれで悪くないかも。


「それ、ドッキリで終わらせてあげないよ?」


膨らむ妄想に胸を高鳴らせながら、
私は部長に口づけた。



(完)

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posted by ぷちどろっぷ at 2014年09月28日 | Comment(8) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
こういうのも書けるのか…
Posted by at 2014年09月28日 22:11
必死なのどっちの反応がいちいち可愛いくて笑った
Posted by at 2014年09月28日 22:27
咲さんかわいい
そしていつものごとくピンク乙
Posted by at 2014年09月28日 22:37
いつもいつもごちそうさまです
Posted by ななし at 2014年09月29日 00:39
乙です!
Posted by at 2014年09月29日 11:42
優しい世界だ……
あまあま久咲いいね
Posted by at 2014年09月29日 16:07
二人で一冊の本を寄り添いながら読んでる久咲か…のぞきに行きたいです
Posted by at 2014年09月30日 12:27
コメントありがとうございます!

>書けるのか
咲「愛情がたっぷりという点ではあまあまも
  ヤンデレも変わりません」
久「受ける側が受け入れるかの違いよね…」
咲「部長が受け入れてくれれば、ヤンデレも
  あまあまに変わりますよ?」

>のどっち、ピンク
和「このブログにおける私の扱いがひどすぎます!」
久「ごめんね!」
和「止める気なしですか!?」
咲「明確なリクエストが来たら
  和咲も考えるんだけどね…ヤンデレになるけど」

>二人で一冊の本
和「あの二人、ほとんど本読んでませんでしたよ?
  くっついてただけです」ギリッ…
まこ「なんで知っとるんじゃ」
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2014年10月05日 11:59
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