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【咲SS:小霞】小蒔「霞ちゃんの逃亡を阻止します!」【ヤンデレ】

<あらすじ>
<その他>のリクエスト説明があらすじ代わり。

<登場人物>
神代小蒔,石戸霞,薄墨初美,狩宿巴,滝見春(永水女子)

<症状>
・ヤンデレ
・狂気
・依存
・あまあま

<その他>
以下のリクエストに対する作品です。
・小蒔霞であまあま。無事役目を終え
 霧島神境を出ることになった霞さん。
 それをなんとかして阻止したい
 ヤンデレ頑張り屋な小蒔ちゃん。

※原作以外の情報を知らないので
 霧島神境のお役目についての詳細は抑えてません。
 どこか(公式)で言及されていたら教えてください。

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神代(じんだい)の天倪(あまがつ)。


実は、それは終生に渡り務めるお役目ではなく、
途中で辞めることができるお役目だったりする。

その理由は、天倪となる巫女も
若く清らかな乙女であるのが望ましいこと。
あまりにも一人で悪しきものを降ろし続けて、
巫女が穢れてしまうことを避けること。

などなど、まあいろいろあるのだけれど…

結局のところ、天倪の系譜の者も、
子を成さないと次世代にしきたりを
繋ぐことができないから、だったりする。

そんなわけで、今までは私が小蒔ちゃんの
天倪を務めていたのだけれど…
私の高校卒業という節目を契機に、
もう一人の適任者である明星ちゃんに
代役を任せることになった。


この神境でおつとめする日も、残すところ後一か月。
その後、私はこの神境を出る。


「もうすぐ霞ちゃんも出境ですかー」

「そうねえ…初めて神境にやってきたのは
 八つの頃だから…もう10年にもなるのね」


目を閉じると思い起こされる神境での生活。
私にとってここは、第二の故郷と呼べる場所になった。

修行がつらくて泣いたりしたこともあったけど。
いろんな人に助けられて、
小蒔ちゃんや六女仙の皆と一緒になって遊んで。
楽しかった思い出が、きらきらと輝いて
後から後からあふれ出てくr


「思い出に浸っているところ悪いですけど、
 問題は解決してませんよー?」

「う…」

「お外に出るんだったら、姫様の問題を
 解決してからにしてくださいねー」


珍しく、私をたしなめるような口調で話す初美ちゃん。
そう、私には神境を出る前に、
片付けておかなければいけない問題がある。

それは、小蒔ちゃん…
あまえんぼうで私にべったりのお姫様のこと。



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「許しません!」


それが、話を聞いた時の小蒔ちゃんの反応だった。

小蒔ちゃんにしては珍しく強い口調での拒絶。
駄々をこねられることは覚悟していたけれど、
まさか許さないと来るとは思わなかった。


「ええと…小蒔ちゃん?許さないと言っても…
 これはこれでしきたりだから、仕方ないのよ?」

「嘘です!霞ちゃんは嘘をついてます!」

「嘘?」

「天倪が交代可能なことは知っていますけど…
 終生務めることも可能なはずです。
 まして、明星ちゃんも居て二人とも健在なこの状況で、
 霞ちゃんが急いで婿探しに出る必要はないはずです」

「それは…」

「霞ちゃんは、何か別の理由があって、
 私から逃げようとしています」

「だから、許しません!」


ぷっくりと頬を膨らませて、
ぷいっと明後日の方向を向く小蒔ちゃん。

実は、小蒔ちゃんの指摘は的を射ている。
そう、私が神境を出る理由には、
しきたりとは別の、本当の理由がある。

でも…


(本当の理由を打ち明けるなんて
 とてもできないのよ)


だってそれは、酷く醜くて浅ましい理由だから。


結局その日、私は小蒔ちゃんを
説得することはできなかった。



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「第八回『霞ちゃんの逃亡を阻止しよう』
 会議を始めます!」


姫様が声高らかに宣言し、今日も会議が始まりました。
霞ちゃんが神境を出ると宣言してから、
姫様は毎日この会議を開いています。


「今回ははるるも参加ですかー」

「…無理矢理連れてこられた」


そう言いながら、ポリポリと
大量の黒糖をむさぼるはるる。
言葉とは裏腹に満足げな笑み。
これは買収されましたねー。


「やはり一番大切なのは、霞ちゃんが
 神境を出ようとする本当の理由です!」

「これを突き止めて解決すれば霞ちゃんは
 神境に留まってくれるに違いありません!」


息も荒く熱弁する姫様。
その意見は私も賛成ですけど…


「質問です」

「はい、巴ちゃん!」

「霞さんっていつも姫様のことを
 一番に考えてますから…
 今回も、姫様のことを思っての
 行動じゃないんですか?」


おお、さすが常識人の巴ちゃん。
質問というか、かなり解答に近い意見です。
これはいい指摘ですよー。

ですが、それを聞いた姫様は
ぷんぷんと怒り始めます。


「…仮にそうだったとして、
 それは霞ちゃんの間違いです!」

「理由が何であろうと、霞ちゃんが離れたら
 私が幸せになることはありません!」

「私のためというのであれば、霞ちゃんは、
 私から一生離れたらいけないんです!」


ぐっと拳を握りしめながら語る姫様。

割といつものことですけど、
姫様は霞ちゃんのことになると
けっこうきわどい発言を平気でします。

今のも、怒り方が可愛いのでほんわかしますけど、
言ってる内容は重すぎです。
完全に病気の世界ですよー。


「…はい」

「はい、春ちゃん!」

「本当の理由を聞き出すことは、
 できそうなんですか…?」

「…何度かあの手この手で
 霞ちゃんに聞きましたけど…
 はぐらかされて教えてくれませんでした」


はるるの質問に対して、悲しそうに目を伏せる姫様。
もっとも、私はその答えを知っていたりするのですが。
まあ、霞ちゃんからそれを聞き出すのは
至難の業でしょうねー。


「とりあえず、明日はその答えを
 聞き出す方法を考えましょう!」


ポンッと手を叩いて姫様が締めくくり、
会議はお開きになりました。
どうやら明日も開催されるようです。


はあ…この分では、この会議は
当分終わりそうにありませんねー…



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私にとって小蒔ちゃんは、
可愛い妹のような存在だった。

神と鬼。降ろすものこそ違えど、
お役目の内容に大差はなくて。

私達は互いに励まし合いながら、
厳しい修行に耐えてきた。


そして、小蒔ちゃんは私より一つ下。


境遇が似ていることもあって、
つい、私は小蒔ちゃんを
必要以上にあまやかしてしまった。


始まりは、修行が終わった後の軽い触れ合い。
年相応の純真無垢なやりとりだった。


『小蒔ちゃん、修行お疲れ様』

『はい、頑張りました!なでなでしてください!』

『はいはい、よくできましたー♪』なでなで

『えへへ…霞ちゃんの手、あったかいです…』


……


そうしたやり取りを続けて
小蒔ちゃんが懐いてくるにつれ、
普段の生活でも触れ合う機会が多くなった。


『霞ちゃん…』

『小蒔ちゃん…枕を持ってどうしたの?』

『えと…今日見たテレビが、怖くて…』

『眠れなくなっちゃったんだ?
 じゃあ、今日は私と一緒に寝ましょうか』

『はい!』

ぎゅっ

『ふふ…小蒔ちゃんはあまえんぼうなんだから』


……



そんな小蒔ちゃんが、私にべったりとなるのに
時間はかからなくて…
いつしか横に、小蒔ちゃんがいるのが
当たり前になっていた。


『小蒔ちゃん?そろそろお部屋に戻る時間だよ?』

『霞ちゃん、聞いてないんですか?』

『何を?』

『今日から私は、霞ちゃんと相部屋なんです!』

『私達は、二人で一つですから!』


……


それでも、単に仲睦まじいだけだったら
よかったのだけれど…

いつの間にか、私達の触れ合いは、
健全な方向から、少しずつ歪んでいってしまう。


『霞ちゃん!今日、私は大変なことを知りました!』

『あらあら、何かしら?』

『巷では、大切な人とはちゅーするのが
 正しいしきたりだそうです!』

『だから、私達もちゅーしないといけません!』

『まあ、そうなのね…知らなかったわ』

『というわけで、さっそくお願いします!』

『はいはい』


ちゅーっ…


『ぷはっ…これでいいかしら?』

『駄目です!もっともっといっぱいしないと!
 大切さはちゅーに比例するそうです!』

『これからは毎日たくさんしましょう!』


……


世俗から隔離されていて、情報に疎い私達。

そんな私達は、自分たちの行為が
性的な領域に踏み込んでいることに、
何の疑問も抱かなかった。

そして、歪みが決定的になってしまったのは、
あの日のこと。


『霞ちゃん、お風呂の時間ですよ!』

『あら…もうそんな時間?』

『はい!というわけで、脱がせますね!』

『こ、小蒔ちゃん…。いつも言っているけど、
 自分で脱げるからね?』


その日は、やたら小蒔ちゃんが積極的だった。

もっとも、お風呂自体は
いつも一緒に入っているから、
別に問題はなかったのだけれど。
…ええ、高校生にもなった女の子が、
二人きりで毎日一緒にお風呂に入るのが
普通かどうかは置いておいて。


『やっぱりお風呂は生き返りますね…』

『こ、小蒔ちゃん?せっかく広いお風呂なんだから、
 もう少し身体を伸ばしたらどうかしら?』

『霞ちゃんとくっついている方が
 気持ちがいいです!』


火照った体で私に絡みついてくる小蒔ちゃん。
それは私の中に、それまで感じたことがなかった
もやもやとした複雑な感情を生み出した。


しかも、その日の小蒔ちゃんの触れ合いは、
それだけに留まらなくて…


『えへへ…霞ちゃん…してください』

『えーと…ここで?』

『駄目ですか?』

『えーと…』

『…だめ、ですか…?』

『もう、仕方ないわね…』


口づけをねだる小蒔ちゃん。
それ自体はいつものことなのだけれど、
頬は上気して、瞳は潤んでいて…


チュッ…


『んっ…んっ…』

『はぁっ…』


気づけば私達は、一糸纏わぬ姿のまま。
お互いの身体をすり合わせながら唇を貪っていた。


……


その日を境に、行為はどんどん
激しさを増していって…

小蒔ちゃんとの関係に問題があると悟った頃には、
私達はその行為にどっぷりと溺れてしまっていた。



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「というわけでね?このままの関係を
 続けるのはよくないと思ったのよ」

「は、はぁ…そうですかー…」


霞ちゃんと私はお互いに最上級生ですし、
お役目の内容が似ていることも手伝って、
特別仲がよかったりします。

そんなわけで、霞ちゃんは
他の人には話さないような悩みでも
私には打ち明けてくれたりするのですが…

さすがに、こんなどぎつい相談が来るとは
思いませんでした。


「もっと言ってしまうと…このままじゃ、
 私の指で小蒔ちゃんの純潔を散らしかねないのよ」

「もう少しオブラートに包んでくださいよー」


そう、これが霞ちゃんが神境を離れる本当の理由。

要は、姫様が可愛くて辛抱たまらんので
間違いを起こす前に離れよう、ということなのです。


「だったら素直にそうやって言っちゃえば
 いいじゃないですかー」

「言えるわけないでしょ…
 そもそも小蒔ちゃんは、
 あの行為の意味すらわかってないんでしょうし」


そう言ってため息をつく霞ちゃん。
まあ言いにくい気持ちはわかりますけど。


「ちなみにどこまでやっちゃったんですかー?」

「…『それ』以外は全部」

「もう手遅れじゃないですかー!?
 どんだけエロっちいんですかー!」

「うぅ…私も自分が普通じゃないって
 気づいたのは最近だったのよ…」


まさか『全部』なんて回答が来るとは思いませんでした。
さすが悪しきものを降ろすだけのことはあります。
色情狂です。


「それで、小蒔ちゃんの様子はどうなのかしら?」

「聞く耳持たずですよー?
 このまま出て行ったら間違いなく
 何か問題が起きますよー?」

「…まあ、そうでしょうね…
 でも、やっぱり距離を置くしかないのよ。
 しばらく間を置けば、小蒔ちゃんも
 きっと今までが異常だったことに気づいてくれるはず」

「そんなにうまくいきますかねー」

「それはまあ、しばらくは問題が続くと思うけど…
 最終的には、これでよかったと
 思える日が来ると思うわ」


珍しく歯切れの悪い霞ちゃん。
結局、相談も終始そんな感じで、
画期的な案が出ることもなく
時間切れになってしまいました。

霞ちゃんは、このままなし崩しに
自然消滅を図るみたいですけど…

まあ、あの姫様がそんなことを
許すはずがありませんよねー。



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「第十五回『霞ちゃんの逃亡を阻止しよう』
 会議を始めます!」


姫様が声高らかに宣言し、今日も会議が始まりました。
一日欠かさず毎日開催するとは、
姫様も本当に精が出るものです。

これまでは特に成果が出ていないのですが…
今日の姫様はいつもと違い、
目に強い輝きが宿っていました。


「ついに、私は解決策を見出しました!」

「…ということは、霞さんが
 神境を出る理由が判明したということですか?」

「…それについては教えてもらえませんでしたけど、
 そもそもそれを気にする必要がなくなりました!」


そう言って胸を張る姫様。
あ、これとっても嫌な予感がします。


「結界を張って、神境を外界から切り離します!
 そうすれば、霞ちゃんも出ていけないはずです!」


あー、やっぱり。

霞ちゃーん。二人の痴話喧嘩のせいで、
神境が日本地図から姿を消そうとしてますよー?


「い、いくらなんでもそれは
 やりすぎじゃないですか…?」

「霞ちゃんが悪いんです!
 私のことを置いていく霞ちゃんが悪いんです!」

「霞ちゃんは、一生私の側に居ないと駄目なんです!」


幼い子供のように駄々をこねる姫様。

しかも、さっきまでは確かに
ともっていた目の輝きが、
見る影もなく消えてしまってます。

それは神代にあるまじき、
どろりとした欲望に濁った禍々しい目で。

日頃鬼門に晒されて、
その手の邪気には慣れっこの私でも、
思わずゾクリと鳥肌が立つほどでした。


あー、これはもう止まりませんねー。


「まあ、やってみたらいいんじゃないですかー?」

「はい!早速、今日結界を張ります!」

「ちょ、ちょっとハッちゃん!?」


私の投げやりな対応が予想外だったのか、
わたわたと慌てふためく巴ちゃん。
対照的に、姫様は瞳の輝きを取り戻しました。

ま、この際姫様の好きなように
やらせてあげたらいいんですよー。


さすがに、こんな自分勝手なお願いを
神様が叶えるとも思えませんし。



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早朝というにはまだ早い時間。
漂う空気に違和感を感じて目を覚ました。


風の流れを感じない。

まるで、時が止まったかのように
辺りは異様な静寂に包まれている。

この感覚には覚えがあった。
間違いない。これは、結界を張られている。


案の定外に出ると、山の向こうに
現実的にはありえないはずの
真っ黒な壁がそそり立っていて。

この地域一帯が外界から
切り離されていることが確認できた。


「こ、ここまでするの…小蒔ちゃん」

「もちろんです」


独り言に返事が返ってきた。
驚いて振り向くと、そこに居たのは小蒔ちゃん。


「霞ちゃんが出て行くのをやめるまでは、
 結界は解きません」

「小蒔ちゃん…それは、いくらなんでも
 わがままが過ぎるわよ?」

「わがままにもなります。
 私にとって、霞ちゃんがいない世界は
 何の意味もありませんから」

「神境を出て行く理由すら教えてくれないのに、
 納得しろという方が横暴です!」


徹底抗戦の姿勢を貫く小蒔ちゃん。
いっそ本当の理由を話してしまいたくなるけど…
それを話したら、小蒔ちゃんの
巫女としての人生が終わってしまう。


きっと小蒔ちゃんは、みだらな私を
易々と受け入れてしまうだろうから。


霧島の巫女として、
何より小蒔ちゃんを守るお姉さんとして。
それだけは、絶対に避けないといけない。


「仕方ないわね…」

「じゃぁ!」

「違うわ…小蒔ちゃんが強硬手段に出るというのなら、
 私も同じようにするというだけよ?」


意識を集中させ、脳裏の楔(くさび)を解き放つ。
刹那、天から稲光が降り注ぎ、私の身体を直撃した。
瞬く間に視界が暗くなり、辺りに魔の気が充満する。


「結界…破らせてもらいましょうか!」


悪しきものをその身に宿し、
私は力任せに拳を突き上げた。

拳から真っ黒な光線のような気が放たれると、
それは一直線に山の向こうの結界に突き進み…
結界にほんのわずかな傷をつける。


ピキピキピキッ…パキィィィンッ…!!


結界に刻まれた傷は小さなものだったけれど、
そこから大きな亀裂が入り、
あっという間に結界は瓦解した。


「あぁっ!せっかく張ったのに…!ひどいです!」

「神境全部は欲張りすぎたわね。
 さすがにこの強度の結界なら
 私の力でも何とか壊せるわ」

「うぅ…それでも私は諦めません!
 霞ちゃんが破るなら、
 私は結界を張り直すまでです!」

「もう…小蒔ちゃん。そんな強硬手段じゃなくて、
 もっとちゃんと話し合いましょ?」

「だったら、出て行く理由を教えてください!」

「……ごめんなさい。それは言えないの」

「むうぅー!」

「…ともかく、まだ夜中だから
 もう一度眠りましょ?」


説得の材料を持たない私は、
苦し紛れに小蒔ちゃんを抱き寄せると、
その唇にくちづけた。

それでも、小蒔ちゃんは
鎮まってはくれなくて。

結局、小蒔ちゃんをなだめるために、
私は一晩中口づけを続ける必要があった。



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「まさか小蒔ちゃんがあそこまでするなんて…」

「むしろ私は、神様があの願いを
 叶えたことに驚きですよー」


ほとほと参ったと言わんばかりの霞ちゃん。
参ってるのは痴話喧嘩に付き合わされる私の方ですよー。


「というか、なんで最後
 キスしちゃってるんですかー」

「え、ええと…いつもの癖で…ね?」


癖になるくらいしょっちゅうしてるんですか…。
姫様だけかと思ってましたけど、
霞ちゃんの方もけっこう重症みたいです。


「私だってね?好き好んで小蒔ちゃんから
 離れたいわけじゃないのよ?」

「でも、このままくっついてたら…
 間違いなく小蒔ちゃんを食べちゃうんだもの」

「でもそれは、霞ちゃんが必死で我慢すれば
 すむんじゃないですかー?」

「私が我慢しても、近いうちに
 小蒔ちゃんが私を襲うわよ。
 最近の小蒔ちゃんすごいんだから」

「最近はもう毎日お風呂でせがんできてね?
 とろんとした目で私の」

「あー、もう全部話しちゃいませんかー?
 ぶっちゃけめんどくさくなってきましたよー」


どうせ相思相愛でどっちも盛ってるなら
もういいじゃないですか。


「小蒔ちゃんは、神の子としてこれまで
 辛い修行に耐えてきたのよ?」

「それを、私の一時の煩悩なんかで
 無に帰すようなことはしてはいけないの」


姫様の将来を考えて、
自分の思いを押し殺す霞ちゃん。
それは、姫様と同じ過酷な修行に
耐えてきた霞ちゃんだからこそ。

つらい修行の成果を台無しにしてはいけないと
考えるのは理解はできます。


でも。


「…それで、姫様は幸せになれますかー?
 神様の力を維持するために、
 愛する人と別れて幸せになれるんですかー?」

「…それは…」

「霞ちゃん、もう逃げるのやめませんかー?」

「…逃げる?」

「霞ちゃんも本当はわかってるはずですよー。
 霞ちゃんなしで姫様が幸せになれるわけありません」


はっきり言って、姫様は病気です。
霞ちゃんなしで正気を保てるとは思えません。

霞ちゃんが居なくなったら、
間違いなく後を追うはずです。
それが叶わないなら命を絶つでしょう。

結局、姫様の幸せを考えるなら、
霞ちゃんが姫様を自分のものにするしかないんです。
例え、どれだけ周りに迷惑をかけようとも。


「霞ちゃんは臆病なだけです」

「本当に姫様の幸せを望むなら、
 神境を敵に回すくらいすればいいんですよー」

「……」


私の言葉に思うところがあったのか。

霞ちゃんは、長い間黙り込んだ後、
絞り出すように一言だけつぶやきました。


「ちょっと…考えさせて頂戴」


その顔は苦渋に満ちていていました。

あーもう、いつもはお母さんみたいなのに、
こういうところではヘタレなんですから。


これはもう、私が一肌脱ぐしかありませんねー。



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「初美ちゃん。今日も
 『霞ちゃんの逃亡を阻止しよう』会議をやるので
 いつもの広間に集まってください」

「あー、それなんですけど…
 できれば今日は、姫様と二人で相談したいですよー」

「二人で、ですか…?」

「はい」



「我に、秘策ありですよー!」



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ついに、この日がやってきた。
そう、私が神境から巣立っていく日。


「姫様、ついに来ませんでしたねー」

「それでいいわ…寂しいけど、
 会うと別れがつらくなっちゃうし」


小蒔ちゃんは見送りにやってこなかった。
というより、結界を解いた日以来、
おつとめを除けば小蒔ちゃんを見ていない。


「小蒔ちゃんが追いかけてくる可能性があるから、
 絶対に外に出さないようにしてね?」

「わかってますけどー…」


一途で頑張り屋さんな小蒔ちゃんが、
これで諦めたとは考えにくい。
だとすれば今この場に居ないのは、
一緒に旅立つ準備をしている可能性が高い。


「霞ちゃん…私が言ったこと覚えてますかー?」

「…覚えてるわ。ただ、
 もう少しだけ一人で考える時間が欲しいの」

「必ず、結論を出して戻ってくるから」

「…まぁ、そういうことなら今は見逃しますよー」

「……」ボソッ

「初美ちゃん?」

「なんでもないですよー。
 じゃあ、御達者でですよー」


初美ちゃんは笑顔で見守ってくれた。
手を振りながら、神境を後にする。
これで、これからはしばらく一人きり。

私は電車に乗り込んで、
とりあえずは故郷を目指す。

窓の外には、目まぐるしく変わる景色。
私はそれを楽しむわけでもなく
ただぼんやりと眺め続ける。


『もう逃げるのやめませんかー?』


初美ちゃんの言葉が、棘のように鋭く刺さって、
私の頭から離れてくれなかった。


「…本当に、これでよかったのかしら」


当初の予定では、しばらくは実家で何も考えず
のんびりと過ごすつもりだったけど、
そうも言っていられない。

早めに、自分の中で決着をつけなければ。


「明日から、頑張ろう…」


慣れない寝床でそう独り言ちながら、
私は一人布団をかぶった。



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『霞ちゃんに、明日なんて来ませんよ?』








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次の日。


目を覚ました私は、一目でその異常さに気づいた。

視界に広がるのは見覚えのある部屋。
そう、そこは…神境での私の部屋だった。


「…夢かしら?」

「夢ではありませんよ」


背後から聞こえた声。

私はばっと振り返り…そして、はっと息を呑んだ。


「こ…小蒔ちゃん?」


そこには、表情をなくした小蒔ちゃんの顔。
とても正気とは思えないその顔のまま、
小蒔ちゃんは抑揚のない声で私に告げる。


「時を、戻しました」

「霞ちゃんが神境を出るたびに、
 私は時を巻き戻します」

「この世界の時を止めたくなければ…
 神境から出るのを諦めてください」

「私は、諦めません。あなたを、絶対に…」


背筋が凍り、ぞくりと悪寒が走った。
初めて、小蒔ちゃんを怖いと思った。


「こ、小蒔、ちゃん……」

「霞ちゃんが神境を出ようとする理由も、
 初美ちゃんから聞きました」

「っ!?」

「このままでは、私を穢してしまうからだそうですね」

「……そうよ」

「だとしたら、手っ取り早い解決法があります」

「…な、なにかしら」

「私が、霞ちゃんを穢します」

「なっ…!」

「優しい霞ちゃんは、私のことを
 穢すことはできないんですよね?」

「だから、私が霞ちゃんを穢します。
 もう、我慢なんてできなくなるくらい…」


「覚悟してください」


そう言って、ゆっくりと私に
のしかかってくる小蒔ちゃん。


抵抗しようにも、うまく力が入らない。
入ってくれない。

小蒔ちゃんは、ゆっくりと私の装束を脱がしていく。
それでも、私はそれを止めることができない。


「抵抗しなくて、いいんですか…?
 私は、本気ですよ…?」

「……」


なぜ、身を守ることができないのか。
恐怖?ううん、違う。
だって、本当は私だって…


「霞ちゃん?」

「……」

「聞か、ないで…」


こうなることを、
本当はいつも夢見ていたのだから。



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朱に染まった指をちろりと舐めながら、
小蒔ちゃんは妖艶な笑みを浮かべた。


「…霞ちゃんの血、おいしいです」


ぞくりっ。

その笑みの前に、私は抑えがたい本能的な恐怖と、
それを上回る甘い疼きを覚えた。


「…こんな小蒔ちゃん、初めて見たわ」

「霞ちゃんが、私のことを子ども扱いし過ぎなんです」

「私は、全部知ってたんです。
 今まで私達がしてきた行為が、
 普通ではないことも」

「それが、情愛にまみれた行為であることも」

「その意味では、霞ちゃんの方が
 お子様だったんですよ?」

「…そうだったみたいね」


今思えば。

そういった行為を最初に始めるのは、
いつも小蒔ちゃんだった。
初めてのちゅーも、舌を這わせるような口づけも、
色を纏わせて絡みついてきたのも…


「霞ちゃんと一生一緒にいるためにはどうすればいいか、
 一生懸命勉強したんです」

「一番確実なのは、夫婦関係になることでした」

「だから、頑張って勉強したんです。
 夜の営みについても」

「……」

「私は、霞ちゃんがいないと生きていけません。
 一人の女性として、霞ちゃんを愛しています」

「霞ちゃんは…どうですか?」


小蒔ちゃんが上目遣いに私の顔を覗き込む。
その目は、色の余韻に潤んでいて…
でも、有耶無耶にすることを許されない
強さも含んでいた。

もっとも私も…この期に及んで
答えを先延ばしにするつもりはない。


私だって、もうこの気持ちを
抑えきれそうにないのだから。


「私も…」

「私も、小蒔ちゃんを愛してる」

「小蒔ちゃんと、結ばれたい」


「たとえ、神境の皆を
 裏切ることになってしまっても」



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--------------------------------------------------------



結局、私は神境を出ることを諦めた。


「はい…神境を出るのは取りやめます。
 お手数をおかけして申し訳ありませんでした…」


ガチャッ…


「ふぅ…」

「ようやく諦めたんですねー」

「出たわね、今回の黒幕さん」


電話が終わるのを見計らったかのように、
ひょっこりと初美ちゃんが姿を現した。


「失礼ですねー。恋のキューピッドと
 言ってくださいよー」

「そのキューピッドさんとやらのおかげで
 私は巫女の資格を失ったのだけれど…」

「霞ちゃんがいつまでも
 煮え切らないから悪いんですよー」


初美ちゃんがじとーっとした目を私に向ける。
それを言われてしまうと返す言葉がないのだけれど。


「霞ちゃんは、きっと距離が近すぎて
 気づかなかったんでしょうけどねー」

「姫様の一途な思いは、
 もう完全に病気レベルですよー?」

「姫様を病気にした責任は、
 ちゃんと取ってくださいねー?」


そう言って、にっこり笑う初美ちゃん。
私も同じく笑顔を返した。


「ええ。今度は逃げないで、
 ちゃんと責任を取るわ」



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「第一回霞ちゃんをその気にさせよう会議を始めます!」


姫様が声高らかに宣言し、今日も会議が始まりました。


「え、なんですかこの会は。
 二人はもう結ばれたんじゃないんですかー?」

「霞ちゃんの純潔はいただきました!
 でも、霞ちゃんが私の操を奪ってくれません!」

「だから、どうやったら霞ちゃんが私を
 食べてくれるかを考える必要があるんです!」

「もう少しオブラートに包んでくださいよー」

「と、いうか…そういう主旨なら、
 私が参加しちゃ駄目なんじゃないかしら…」


何故か参加している本人からツッコミが入ります。
霞ちゃーん。姫様の管理はしっかりお願いしますよー。


「あれ?でも、そもそも神境出ようとしたのだって
 霞ちゃんが辛抱できなくなったからじゃないですかー?」

「リミッターが切れた以上、
 もうとっくにそういう関係に
 なってると思ってたんですけどー」

「実は私、される側だったみたいなのよね…
 小蒔ちゃんにされるだけで満足できちゃうの」

「そ、そんなのずるいです!
 私だって霞ちゃんにしてほしいです!」

「オブラートに包んでくださいよー!」

「そうは言っても…小蒔ちゃんまで純潔を失ったら
 神様が降りられなくなっちゃうでしょ」

「私は神様より霞ちゃんを選びます!
 霞ちゃんを愛してますから!」

「私も愛してるわよ、小蒔ちゃん」

「霞ちゃん…」

「小蒔ちゃん…」


言い争いを始めたかと思ったら
二人で抱きあって頬をすり寄せる二人。
あれ、これってもしかして…
私、ノロケられてるだけですかー?


「というわけで、初美ちゃん!何かいい案をお願いします!」

「私は、今のままでも満足なんだけど…」

「……」

「がー!!」

「そんなの知りませんよー!こちとら
 付き合った経験すらありませんよー!」

「じゃあ、明日はどうやったら霞ちゃんが
 その気になってくれるかの案を持ち寄りましょう!」


ポンッと手を叩いて姫様が会を締めくくりました。
どうやら、今回の会議も長引きそうです。
私は二人に隠れてため息をつきました。


「まあ、それでも…
 二人が幸せならいいんですけどねー」


私は苦笑しながら、
仲良く寄り添う二人を眺めるのでした。



(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2014年11月06日 | Comment(5) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
後ろの穴ならセーフ(暴論)
でも、それ意外は全部って言ってたから後ろも経験済み…?
Posted by at 2014年11月06日 16:40


待ってました!
もうみんなヤンデしまえばいいんだよ(笑)
Posted by at 2014年11月06日 19:10
リクエストにお応え頂き、感謝します!
会議で頑張る姫様可愛い過ぎる!そして異能全開姫様ヤンデレかっこいい!(謎
Posted by at 2014年11月07日 01:43
いいカップリングだ・・・しみじみ
Posted by at 2014年11月08日 12:45
コメントありがとうございます!

後ろ>
霞「詳しく説明してくれるかしら?」
初美「この人に余計な事教えないでくださいよー!」

みんなヤンデ>
初美「まあ常人の方が苦労しますよねー」
巴「私なんか被害を受けてばっかりですよ」

姫様>
初美「姫様が頑張るとスケールがでかすぎるので
   やめてほしいですよー」
霞「初美ちゃんはちっちゃくてかわいいわよ?」
初美「そんな話してませんよー」

いいカップリング>
小蒔「霞ちゃんの相手は私です!」
初美「私もありだとは思いますけどねー」
霞「いっそ二人とも食べようかしら?」
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2014年11月09日 21:09
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