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【作品設定紹介】【咲SS:菫淡+照】淡「私なんか、死んだ方がいいんだ」【自傷】
本ブログのSSは、無駄に長くなるので
記事の中に後書きなどは入れないようにしています。
とはいえ、作中で全ての設定や伏線を
回収しているわけではないので、
細かく知りたいという奇特な方もいるかもしれません。
何より、SSを書いている本人が
続き物の設定を忘れるという愚挙を犯す可能性があります。
というわけで、作品の記事とは別枠で
そのSSの作品紹介を掲示します。
興味のない人は退散を。
※これだけ読んでも意味不明なので
ぜひ先に本編をお読みいただけると幸いです。
淡「私なんか、死んだ方がいいんだ」
※ここで紹介している設定はあくまで
当ブログ作品に関する設定のため、
原作世界とは全然関係がないのでご注意ください。
※興味のある奇特な方は、
当ブログ内の検索で【作品設定紹介】で検索すると
まとめて読みやすいと思います。
※かなり詳細に記述しているので
むしろ食傷気味になる方の方が多そうですが、
質問などがあればコメント欄に記述いただければ
そのうち回答するかもしれません。
--------------------------------------------------------
【淡「私なんか、死んだ方がいいんだ」】
テーマは自傷。テーマ自体が重いので、
軽い気持ちで自傷を始めさせるのは抵抗がありました。
このため、自傷に至った経緯も切なく、
全体として重く沈んだ話となっています。
------------------------------------------
【作中より前の人物設定】
------------------------------------------
以下、作中以前の時系列上の人物設定です。
<大星淡>
本作品における中心人物です。
開始時点の性格面は原作と大きく変わりはありません。
ただし、開始時点ですでに
弘世菫に淡い感情を抱いており、
その裏返しでいたずらを
繰り返すようになっています。
<弘世菫>
本作品における中心人物その2です。
性格面では原作と大きく変わりはありません。
ただし、開始時点ですでに
大星淡を特別な存在と感じています。
<宮永照>
本作品における中心人物その3です。
性格面では原作と大きく変わりはありません。
ただし家族との離別を経験したために、
家族で仲良く暮らす事に対して
特別な思い入れを持っています。
------------------------------------------
【作中の解説】
------------------------------------------
本作品では、大星淡が弘世菫に対して
悪戯をしかける場面からスタートします。
これは作中にもある通り
弘世菫の気をひく事が目的です。
このため、大星淡は弘世菫が本気で怒るような
ひどい悪戯は仕掛けていません。
仕掛けられた弘世菫もその事は理解しており、
大星淡の悪戯は一種のかわいいスキンシップとして
問題なく機能しています。
しかし、実際にはこの時点で
すでに自傷は始まっていました。
学年が異なる大星淡が弘世菫に会えるのは、
放課後くらいしかありません。
にも関わらず、作中で弘世菫は
すでに4回も悪戯を仕掛けられています。
『可愛い悪戯』で済ませるには、
あまりにも頻度が高すぎるのです。
さらに、この時点で大星淡は
弘世菫と宮永照が恋人関係にあると誤認しており、
その二人の間に割って入るこの行為に
密かに罪悪感を感じています。
自身の行為に罪悪感を感じつつも、
救われるために悪戯を繰り返す。
それは、自傷とたいして差はないのですが、
大星淡は気づいていません。
なお、実際には弘世菫と宮永照は
恋人関係でもなんでもなく
健全な親友関係に過ぎなかったのですが、
その事実を大星淡が知るのは
末期になってからの事でした。
------------------------------------------
そんな大星淡はある日、
部室で大学選びをしている二人を見つけます。
当然のように同じ大学に進学する相談をしている事、
そしてその進学先を選ぶ話し合いに
自分が含まれていない事から、
大星淡は自分と二人との距離感を感じ
強く打ちのめされます。
しかし、実際のところ弘世菫と宮永照は
むしろ大星淡を中心に置いて物事を考えていました。
この会合から大星淡が外れていたのは、
単純に彼女が掃除当番で部室に来るのが
遅れていたというだけの事です。
『麻雀ができて白糸台から近ければ』
宮永照のこの言葉は、自分たちが卒業した後
一人残される大星淡を気遣っての事でした。
実はこの時点で二人はルームシェアする事を考えており、
大星淡が望むなら三人で住むつもりだったのです。
そして、もしこの時大星淡が怪我をしなければ、
この計画は直後に大星淡に伝えられていました。
そして三人は狂気に染まる事なく、
関係を継続する事ができるはずでした。
しかし、実際には大星淡は怪我をしてしまい、
新しい自傷方法を見つけてしまいます。
------------------------------------------
大星淡は怪我をした時に
優しくされた多幸感を忘れられず、
自傷を繰り返すようになります。
その方法は、あえて怪我をしやすい行動を取り、
特に回避行動を取らないというものでした。
例えばそれは、バレーボールでわざわざ
ボールに対して突き指するように手を出す。
凸凹した砂利道で足元を気にせず
全力疾走する。
カッターを使う時に手元を見ないで
一気に引き抜くなどです。
それらは一見すれば、普通の行動の中で起きた
事故とも受け取る事ができるものです。
もっとも、冷静に注意深く彼女を観察していれば、
これらが意図的に行われている事に
気づく事ができたでしょう。
事実、宮永照は作中で大星淡の異変に気づいています。
しかし肝心の弘世菫は、特別に大切に思っている
大星淡の事故に冷静でいる事はできず、
結局彼女の真意に気づく事はできませんでした。
また、大星淡はそんな弘世菫の苦しみを
正確に読み取っており、痛烈な罪悪感に苛まれています。
しかし彼女は自分の行為を止める事はできず、
良心の呵責から卑屈な性格に変わっていってしまいます。
------------------------------------------
この時点で状況を冷静に観察して、
的確に判断できているのは宮永照だけでした。
そして、良識も備えている彼女は、
弘世菫に以下の事を指摘しました。
それは、大星淡が意図的に怪我をしている事。
その行為の裏には、
彼女が抱える悩みが隠れている事。
宮永照はこれらの事を伝えた上で、
大星淡と話し合って悩みを解決する事を提案します。
可能であれば、この時二人が事実を知って
結ばれればよいと考えていました。
作中では彼女のこの行動がさらなる悲劇を引き起こし、
彼女は自責の念に苦しむ事になります。
しかしながら、それでも
彼女の行動は正しかったのです。
なぜならば、ここで彼女が歯止めをかけていなければ
大星淡の自傷はさらに加速の一途を辿っていました。
そして、最終的には大星淡の死という
より救いのない結末を迎えていたからです。
------------------------------------------
自らの自傷行為を指摘された大星淡は、
これから起こるであろう糾弾を恐れて
逃げ出してしまいます。
そして、盲目に走り続けた末に、
階段から身を投げ出してしまいました。
実際にはこの時、本来の大星淡であれば
回避行動を取る事で
無傷に済ませる事すら可能でした。
足を滑らせたならともかく、
宙に身を投げ出したのであれば、
冷静に対処すれば意外と何とかなるものです。
しかし、実際には大星淡は
大怪我を負ってしまいます。
それは作中で宮永照が述べたように、
大星淡が「もう自分はここで死のう」と考えて
あえて危険な体勢を取ってしまったためでした。
そして、その様を目の当たりにした弘世菫は、
自らの発言が引き金となって
大切な人を死の危険に
脅かしてしまった事実からパニック状態となり、
半狂乱で大星淡を揺り動かします。
しかし、彼女のこの行為は致命的なものでした。
大星淡は頭を強打しており、
意識はあるものの混濁しているという
きわめて危険な状態だったのです。
その状態で頭を激しく動かされた大星淡は、
死こそなんとか免れたものの、
結果として左手の制御を失ってしまいました。
------------------------------------------
こうして、三人は揃って壊れてしまいます。
大星淡は自らを断罪するために
自傷を繰り返すようになります。
彼女は自傷なんてもうやめようと考えていますが、
実際にはもう自身の罪に耐えきれなくなっており、
無意識のうちに自らを死に至らしめようとしています。
弘世菫は一生治らない後遺症を
大星淡に植えつけた自責から、
彼女以外の事を考えられなくなってしまいます。
宮永照は一見正常なようでしたが、
彼女も実際には壊れていました。
------------------------------------------
宮永照が弘世菫に指示した事は、
大星淡を24時間監視する事でした。
そして、弘世菫は言われた通りに
大星淡を監禁します。
その際、宮永照は二人の間に割り込みませんでした。
しかし実際には、二人の生活は
彼女のサポートなしには
成立しないものになっています。
引きこもり状態の二人に食事を届けるのも、
生活している間に出たごみなどの処理も、
全て宮永照の仕事です。
また、作中で弘世菫が使用しているカッターは
宮永照の特別製です。
このカッターは刃先が取り替えられており、
切れないようになっている代わりに
赤色の線が引かれるようになっています。
また、線を引く際に食紅が
滲むように作られていました。
大星淡の左手はすでに感覚がなくなっていますし、
二人とも狂っているため、
ある程度ごまかせれば代用できると考えたためです。
作中では語られていませんが、
実は、大星淡は1時間に1回という異常な頻度で
自傷をせがんでいます。
宮永照のこの対策がなければ、
健康を維持する事は不可能だったのです。
------------------------------------------
宮永照の対処は的確なものでしたが、
それは彼女の滅私奉公の姿勢の上で
成り立つものでした。
彼女から説明を受けた渋谷尭深はその事実に気づき、
宮永照が狂っている事を指摘します。
これについては作中での説明が
不足しているのでわかりにくいのですが、
宮永照の生き方を自分に
置き換えてみるとわかりやすいかと思います。
互いに愛し合う友達が引きこもっている。
自分はその二人から何の見返りも期待せず、
金銭面、健康面でのサポートだけを引き受ける。
それは、二人が卒業しても続行され。
自分は、顔を見る事もできない友達が
愛し合うために独りだけ寂しく働き、
寝床と居場所と食事を供給し続ける。
友達が死ぬまで一生。
これだけの重荷をあっさり背負える人がいたとして、
その人は一般的な感覚を持っているとは
言えないでしょう。
さらに言えば、それだけの重荷を背負うのに対し、
彼女が犯した罪は見合うでしょうか。
彼女はただ、
「今の状況は良くないから話し合うべき」
と告げただけなのです。
それは罪とすら呼べないものでしょう。
にも関わらず、宮永照は別に
二人が必ずしも治る必要はないと断言します。
それによって、二人が社会から切り離される事はもちろん、
自らが救いのない人生を送る事になると知りながら。
さらには、彼女は仮に二人が
自立できるようになった際には、
その時には自らの罪を清算して
この世を去るつもりでいます。
引きこもっている二人とは別のベクトルで、
宮永照も正常とは言えません
ただそのベクトルが、『今は』
有益な方向を向いているというだけの事です。
これらの事を正確に理解した渋谷尭深は、
「あなたが…可哀想すぎます」
と宮永照を評したのです。
------------------------------------------
しかし、実際には渋谷尭深が考えたように、
宮永照が救われない一生を
送る事はありませんでした。
宮永照がとった対処は大星淡と弘世菫に
顕著な回復をもたらし、
結果、二人は宮永照の想定よりも早く
外に出られるようになります。
また、大星淡と弘世菫も
宮永照の事を愛しており、
三人で暮らす事を打診しました。
それは宮永照が求めてやまなかった
温かい家族としての愛情でした。
そして、三人は一緒に暮らし、
平和で温かい家庭を築くに至ります。
------------------------------------------
作中においては、大星淡はひどい自傷を繰り返し、
重苦しい展開がひたすら続く事になります。
しかしその結末はどうでしょうか。
元々病的な気質を備えていた大星淡は、
その気質を乗り越えた上で幸せになります。
宮永照も、心の奥底に抱え込んでいた
あたたかな家族への渇望を満たす事ができました。
雨降って地固まる。
二人の病的な人間が健常に戻った上で
幸せな結末を迎えたのです。
この物語は当ブログの中でも珍しい
純然なハッピーエンドと言えるでしょう。
記事の中に後書きなどは入れないようにしています。
とはいえ、作中で全ての設定や伏線を
回収しているわけではないので、
細かく知りたいという奇特な方もいるかもしれません。
何より、SSを書いている本人が
続き物の設定を忘れるという愚挙を犯す可能性があります。
というわけで、作品の記事とは別枠で
そのSSの作品紹介を掲示します。
興味のない人は退散を。
※これだけ読んでも意味不明なので
ぜひ先に本編をお読みいただけると幸いです。
淡「私なんか、死んだ方がいいんだ」
※ここで紹介している設定はあくまで
当ブログ作品に関する設定のため、
原作世界とは全然関係がないのでご注意ください。
※興味のある奇特な方は、
当ブログ内の検索で【作品設定紹介】で検索すると
まとめて読みやすいと思います。
※かなり詳細に記述しているので
むしろ食傷気味になる方の方が多そうですが、
質問などがあればコメント欄に記述いただければ
そのうち回答するかもしれません。
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【淡「私なんか、死んだ方がいいんだ」】
テーマは自傷。テーマ自体が重いので、
軽い気持ちで自傷を始めさせるのは抵抗がありました。
このため、自傷に至った経緯も切なく、
全体として重く沈んだ話となっています。
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【作中より前の人物設定】
------------------------------------------
以下、作中以前の時系列上の人物設定です。
<大星淡>
本作品における中心人物です。
開始時点の性格面は原作と大きく変わりはありません。
ただし、開始時点ですでに
弘世菫に淡い感情を抱いており、
その裏返しでいたずらを
繰り返すようになっています。
<弘世菫>
本作品における中心人物その2です。
性格面では原作と大きく変わりはありません。
ただし、開始時点ですでに
大星淡を特別な存在と感じています。
<宮永照>
本作品における中心人物その3です。
性格面では原作と大きく変わりはありません。
ただし家族との離別を経験したために、
家族で仲良く暮らす事に対して
特別な思い入れを持っています。
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【作中の解説】
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本作品では、大星淡が弘世菫に対して
悪戯をしかける場面からスタートします。
これは作中にもある通り
弘世菫の気をひく事が目的です。
このため、大星淡は弘世菫が本気で怒るような
ひどい悪戯は仕掛けていません。
仕掛けられた弘世菫もその事は理解しており、
大星淡の悪戯は一種のかわいいスキンシップとして
問題なく機能しています。
しかし、実際にはこの時点で
すでに自傷は始まっていました。
学年が異なる大星淡が弘世菫に会えるのは、
放課後くらいしかありません。
にも関わらず、作中で弘世菫は
すでに4回も悪戯を仕掛けられています。
『可愛い悪戯』で済ませるには、
あまりにも頻度が高すぎるのです。
さらに、この時点で大星淡は
弘世菫と宮永照が恋人関係にあると誤認しており、
その二人の間に割って入るこの行為に
密かに罪悪感を感じています。
自身の行為に罪悪感を感じつつも、
救われるために悪戯を繰り返す。
それは、自傷とたいして差はないのですが、
大星淡は気づいていません。
なお、実際には弘世菫と宮永照は
恋人関係でもなんでもなく
健全な親友関係に過ぎなかったのですが、
その事実を大星淡が知るのは
末期になってからの事でした。
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そんな大星淡はある日、
部室で大学選びをしている二人を見つけます。
当然のように同じ大学に進学する相談をしている事、
そしてその進学先を選ぶ話し合いに
自分が含まれていない事から、
大星淡は自分と二人との距離感を感じ
強く打ちのめされます。
しかし、実際のところ弘世菫と宮永照は
むしろ大星淡を中心に置いて物事を考えていました。
この会合から大星淡が外れていたのは、
単純に彼女が掃除当番で部室に来るのが
遅れていたというだけの事です。
『麻雀ができて白糸台から近ければ』
宮永照のこの言葉は、自分たちが卒業した後
一人残される大星淡を気遣っての事でした。
実はこの時点で二人はルームシェアする事を考えており、
大星淡が望むなら三人で住むつもりだったのです。
そして、もしこの時大星淡が怪我をしなければ、
この計画は直後に大星淡に伝えられていました。
そして三人は狂気に染まる事なく、
関係を継続する事ができるはずでした。
しかし、実際には大星淡は怪我をしてしまい、
新しい自傷方法を見つけてしまいます。
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大星淡は怪我をした時に
優しくされた多幸感を忘れられず、
自傷を繰り返すようになります。
その方法は、あえて怪我をしやすい行動を取り、
特に回避行動を取らないというものでした。
例えばそれは、バレーボールでわざわざ
ボールに対して突き指するように手を出す。
凸凹した砂利道で足元を気にせず
全力疾走する。
カッターを使う時に手元を見ないで
一気に引き抜くなどです。
それらは一見すれば、普通の行動の中で起きた
事故とも受け取る事ができるものです。
もっとも、冷静に注意深く彼女を観察していれば、
これらが意図的に行われている事に
気づく事ができたでしょう。
事実、宮永照は作中で大星淡の異変に気づいています。
しかし肝心の弘世菫は、特別に大切に思っている
大星淡の事故に冷静でいる事はできず、
結局彼女の真意に気づく事はできませんでした。
また、大星淡はそんな弘世菫の苦しみを
正確に読み取っており、痛烈な罪悪感に苛まれています。
しかし彼女は自分の行為を止める事はできず、
良心の呵責から卑屈な性格に変わっていってしまいます。
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この時点で状況を冷静に観察して、
的確に判断できているのは宮永照だけでした。
そして、良識も備えている彼女は、
弘世菫に以下の事を指摘しました。
それは、大星淡が意図的に怪我をしている事。
その行為の裏には、
彼女が抱える悩みが隠れている事。
宮永照はこれらの事を伝えた上で、
大星淡と話し合って悩みを解決する事を提案します。
可能であれば、この時二人が事実を知って
結ばれればよいと考えていました。
作中では彼女のこの行動がさらなる悲劇を引き起こし、
彼女は自責の念に苦しむ事になります。
しかしながら、それでも
彼女の行動は正しかったのです。
なぜならば、ここで彼女が歯止めをかけていなければ
大星淡の自傷はさらに加速の一途を辿っていました。
そして、最終的には大星淡の死という
より救いのない結末を迎えていたからです。
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自らの自傷行為を指摘された大星淡は、
これから起こるであろう糾弾を恐れて
逃げ出してしまいます。
そして、盲目に走り続けた末に、
階段から身を投げ出してしまいました。
実際にはこの時、本来の大星淡であれば
回避行動を取る事で
無傷に済ませる事すら可能でした。
足を滑らせたならともかく、
宙に身を投げ出したのであれば、
冷静に対処すれば意外と何とかなるものです。
しかし、実際には大星淡は
大怪我を負ってしまいます。
それは作中で宮永照が述べたように、
大星淡が「もう自分はここで死のう」と考えて
あえて危険な体勢を取ってしまったためでした。
そして、その様を目の当たりにした弘世菫は、
自らの発言が引き金となって
大切な人を死の危険に
脅かしてしまった事実からパニック状態となり、
半狂乱で大星淡を揺り動かします。
しかし、彼女のこの行為は致命的なものでした。
大星淡は頭を強打しており、
意識はあるものの混濁しているという
きわめて危険な状態だったのです。
その状態で頭を激しく動かされた大星淡は、
死こそなんとか免れたものの、
結果として左手の制御を失ってしまいました。
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こうして、三人は揃って壊れてしまいます。
大星淡は自らを断罪するために
自傷を繰り返すようになります。
彼女は自傷なんてもうやめようと考えていますが、
実際にはもう自身の罪に耐えきれなくなっており、
無意識のうちに自らを死に至らしめようとしています。
弘世菫は一生治らない後遺症を
大星淡に植えつけた自責から、
彼女以外の事を考えられなくなってしまいます。
宮永照は一見正常なようでしたが、
彼女も実際には壊れていました。
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宮永照が弘世菫に指示した事は、
大星淡を24時間監視する事でした。
そして、弘世菫は言われた通りに
大星淡を監禁します。
その際、宮永照は二人の間に割り込みませんでした。
しかし実際には、二人の生活は
彼女のサポートなしには
成立しないものになっています。
引きこもり状態の二人に食事を届けるのも、
生活している間に出たごみなどの処理も、
全て宮永照の仕事です。
また、作中で弘世菫が使用しているカッターは
宮永照の特別製です。
このカッターは刃先が取り替えられており、
切れないようになっている代わりに
赤色の線が引かれるようになっています。
また、線を引く際に食紅が
滲むように作られていました。
大星淡の左手はすでに感覚がなくなっていますし、
二人とも狂っているため、
ある程度ごまかせれば代用できると考えたためです。
作中では語られていませんが、
実は、大星淡は1時間に1回という異常な頻度で
自傷をせがんでいます。
宮永照のこの対策がなければ、
健康を維持する事は不可能だったのです。
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宮永照の対処は的確なものでしたが、
それは彼女の滅私奉公の姿勢の上で
成り立つものでした。
彼女から説明を受けた渋谷尭深はその事実に気づき、
宮永照が狂っている事を指摘します。
これについては作中での説明が
不足しているのでわかりにくいのですが、
宮永照の生き方を自分に
置き換えてみるとわかりやすいかと思います。
互いに愛し合う友達が引きこもっている。
自分はその二人から何の見返りも期待せず、
金銭面、健康面でのサポートだけを引き受ける。
それは、二人が卒業しても続行され。
自分は、顔を見る事もできない友達が
愛し合うために独りだけ寂しく働き、
寝床と居場所と食事を供給し続ける。
友達が死ぬまで一生。
これだけの重荷をあっさり背負える人がいたとして、
その人は一般的な感覚を持っているとは
言えないでしょう。
さらに言えば、それだけの重荷を背負うのに対し、
彼女が犯した罪は見合うでしょうか。
彼女はただ、
「今の状況は良くないから話し合うべき」
と告げただけなのです。
それは罪とすら呼べないものでしょう。
にも関わらず、宮永照は別に
二人が必ずしも治る必要はないと断言します。
それによって、二人が社会から切り離される事はもちろん、
自らが救いのない人生を送る事になると知りながら。
さらには、彼女は仮に二人が
自立できるようになった際には、
その時には自らの罪を清算して
この世を去るつもりでいます。
引きこもっている二人とは別のベクトルで、
宮永照も正常とは言えません
ただそのベクトルが、『今は』
有益な方向を向いているというだけの事です。
これらの事を正確に理解した渋谷尭深は、
「あなたが…可哀想すぎます」
と宮永照を評したのです。
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しかし、実際には渋谷尭深が考えたように、
宮永照が救われない一生を
送る事はありませんでした。
宮永照がとった対処は大星淡と弘世菫に
顕著な回復をもたらし、
結果、二人は宮永照の想定よりも早く
外に出られるようになります。
また、大星淡と弘世菫も
宮永照の事を愛しており、
三人で暮らす事を打診しました。
それは宮永照が求めてやまなかった
温かい家族としての愛情でした。
そして、三人は一緒に暮らし、
平和で温かい家庭を築くに至ります。
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作中においては、大星淡はひどい自傷を繰り返し、
重苦しい展開がひたすら続く事になります。
しかしその結末はどうでしょうか。
元々病的な気質を備えていた大星淡は、
その気質を乗り越えた上で幸せになります。
宮永照も、心の奥底に抱え込んでいた
あたたかな家族への渇望を満たす事ができました。
雨降って地固まる。
二人の病的な人間が健常に戻った上で
幸せな結末を迎えたのです。
この物語は当ブログの中でも珍しい
純然なハッピーエンドと言えるでしょう。
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繊細に物語が進んでいたんだなあと思います。やっぱりこの3人組が大好きです!
三角関係>
菫「これを三角関係と呼んでもよいのか…」
照「ただ、私が書く話は普通に淡や菫二人で
三人一組でくっつく話も多い」
淡「あわてるすみれ!」
ハッピーエンド>
菫「言われて気づいた。
いろんなものを失っているな」
淡「それでも、愛する人と結ばれることに
比べたら些細なことだよ!」
照「…そんな恋、してみたいな」