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【咲-Saki-SS:久咲】咲「自信のない私と自信たっぷりな部長」【あまあま依存】
<あらすじ>
優希「弱虫咲ちゃん三部作だじぇ」
久「弱気な咲を、私がひたすらかっこよく救うわよ!」
和「キザとかタラシとも言いますよね」
久「ひどい!?」
<登場人物>
宮永咲,竹井久,片岡優希,その他
<症状>
・だだあま
・依存
<その他>
次のリクエストに対する作品です。
・咲さんから告白して付き合うようになったけど
部長の態度に同情で付き合って貰っていると
疑心暗鬼になって衰弱していく咲さん、
そんな咲さんを部長が救出する話
(カッコいい部長)
≪普通かあまあま≫
※インターカレッジやプロの条件などは
本作品の独自設定です。
原作とは異なるかもしれません。
※本当はSide−久も書く予定でしたが
思った以上に長くなったので削りました。
Side−久が読みたい方は
久さんかわいい!とコメントで書き込んでください。
(ヤンデレあまあまになる予定)
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『第一章 誕生日』
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ありきたりな屋上への呼び出し。
意外性も何もない展開。
使い古された味気ない台詞。
それが私、宮永咲なりの。
精いっぱいの告白でした。
「す、好きです!付き合ってください!」
そんな私の告白に、私の想い人である部長…
竹井久さんは、特に動揺する事もなく。
ただ、穏やかな目で私を見つめます。
一瞬の沈黙。でも、まるで
永遠かと思えるほどの長い沈黙。
そんな沈黙の後、部長は
優しい笑みを浮かべて言いました。
「いいわ、咲。その告白、受けてあげる」
そして、部長は私を抱き締めてくれました。
壊れ物を扱うかのように優しく。
それでいてしっかりと。
「これから…よろしくね?」
目と鼻の先で微笑む部長。
私は、何が起きたのか理解できなくて。
部長に包まれたまま、
たっぷり数秒はきょとんとした表情を浮かべた後…
ようやく事を理解して、
ぽろぽろと涙を零しました。
「っ……はいっ…!」
これが、私の人生で最良の日。
部長と私の道が交わった最初の日でした。
でも、それは…
私の不安が始まる最初の日でもありました。
この日から私は…
不安にさいなまれるようになったんです。
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本当は、受け入れてもらえるなんて
思ってなかったんです。
振られる前提で告白したんです。
だから、部長が受け入れてくれた時、
私はそれを飲み込む事ができなくて。
成就した事自体が、何かの
間違いなんじゃないかって思いました。
何度も夢じゃないのかなって、
自分のほっぺたを引っ張って。
痛みを感じてほっとして、
それでもやっぱり信じられませんでした。
だって、部長は人気者だから。
部長は、いつもたくさんの人に囲まれてるから。
部長を取り囲む人の中には、
私なんかよりもよっぽど綺麗で、
私自身羨むくらいの人もたくさんいます。
頭がよくて、成績表の上位に
その名を連ねるような人もいます。
麻雀のプロとして、メディアに
取り上げられるような人もいます。
そんなそうそうたる顔触れが、
部長を慕って集まってくるのです。
対して、私はどうでしょうか。
ちんちくりんで地味な顔立ち。
勉強もぱっとしません。
運動なんか下から数えた方が早いでしょうし、
方向音痴でおつかいすらまともにできません。
唯一の取り柄である麻雀だって、
プラマイゼロなんて地味っぷり。
お姉ちゃんのような勢いも、
衣ちゃんみたいな派手さもありません。
そんな、自分に自信を持てない私は、
部長の彼女になれたという事実を
信じきる事ができなくて。
(なんで部長は、私を受け入れてくれたのかな…?)
(もしかして…同じ部員を傷つけたくないっていう
ただの同情なんじゃないかな…?)
(本当は…私の事、そんなに
好きでもないんじゃないかな…)
なんて、そんな事ばかり
毎日考えてしまうんです。
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不安は疑念を生み、疑念は焦りを生みます。
そんな私にできる事は、
ただひたすら部長に尽くす事だけでした。
「ぶ、部長…お弁当作ってきました!」
「えぇ!?何それすっごい嬉しい!」
私が差し出したお弁当に、
きらきら目を輝かせる部長。
その輝きは、私から少しだけ
不安を取り除いてくれました。
でも次の瞬間、私の心が曇りました。
部長は、かばんから自前の箸を取り出したからです。
「ん?どったの咲」
「えと、部長…もしかして、
お弁当持ってきてました?」
「あ?うん。でも別にいいわよ?
こっちはどうせ自分で作ったお弁当だし、
夕食にすれば無駄にならないもの」
「それよりも、咲のお弁当よ!
ほらほら、恋人様に献上しなさい!」
まるでなんて事のないようにあしらうと、
私のお弁当を要求する部長。
そんな様子は、私の頬を緩めてくれます。
それでも、私の心には…
ちくりと細かいとげが残りました。
ああ、また部長に気を遣わせてしまった。
部長はすごく優しいから、
こうして私が傷つかないように気遣ってくれる。
それはとっても嬉しいけれど。
果たしてそれは…愛情からくるものなのでしょうか。
如才ない部長の処世術ではないのでしょうか。
つい思い浮かんだそんな疑問のせいで、
私は出口のない袋小路に迷い込んでしまうのです。
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「…と言うわけなんだけど…優希ちゃんはどう思う?」
私は今日も、優希ちゃんに
悩みを打ち明けていました。
優希ちゃんには告白する前から
相談に乗ってもらっていましたけど…
むしろ、その頻度は想いが成就する前よりも
多くなった気がします。
もっとも、肝心の優希ちゃんは
まともに取り合う気はないようでした。
「咲ちゃんは考え過ぎだじぇ。
いくら部長でも、同情で
告白を受けるとかありえないじょ」
「でも部長って、人を傷つけるのを人一倍嫌ってるもん」
「そっかー?部長って結構きつい事を
平気で言うイメージだじぇ?」
「それは、相手がその程度じゃ
傷つかないってわかってるからだよ」
「部長は、人が取り返しのつかない傷を負うのを嫌がる。
傷つく前に、絶対にフォローに回る」
「優希ちゃんの時だって、そうだったでしょ?」
「…それだけしっかり見てるのに、
なんで心配になるんだじぇ?」
「それだけわかってるなら、
部長がその場しのぎで咲ちゃんと付き合うなんて、
それこそあり得ないってわかるはずだじょ」
「正直私からしたら、毎日
ノロケを聞かされてるようなもんだじぇ?」
「咲ちゃんと部長は普通に
バカップルにしか思えないじょ」
苦笑しながらタコスを口にほおりこむ優希ちゃん。
その言葉に、私はまた少しだけ安心します。
でも、心から安心する事はできなくて。
つい、何度も優希ちゃんに
確認を求めてしまうのでした。
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私の不安が取り除けない理由。
それは、自分に自信がない事が一番でしたが、
多分状況にも不満があったんだと思います。
だって、私は部長の恋人になりましたけど、
だからと言って何か生活が変わったわけでもなく。
部長は相も変わらず人に囲まれていますし、
精力的に学生議会の活動もこなしています。
そりゃ、私と付き合ったからといって、
いきなり全てを捨てて私だけに
専念できるとは思ってはいませんけど。
それでも部長の心の中で、
私を気に掛ける心の比重が
変わったようにも思えないのです。
「あー、咲。ごめんねー。
今日、学生議会の会議があるから
先に帰っちゃって」
確かに、これ自体は問題のない台詞です。
でも、恋人になったばかりなのですから、
そこは『会議があるから悪いけど待っていて』
なんてわがままを言ってほしいと思うのは、
私が欲張り過ぎなのでしょうか。
だから、私はつい。わざわざ、こんな
つまらない事を聞いてしまうのです。
「…部長は、私といて楽しいですか?」
「ん?そりゃ楽しいわよ?
楽しくなかったら恋人になんかならないって」
「…部長は、私の事を愛してくれていますか?」
「あったりまえでしょ。
冗談で告白なんか受けたりしないってば」
「…私の、どんなところが好きですか?」
「一途なところ。健気なところ。
ちょっと気弱で儚げなところ。
他にもいっぱいあるけど、
特に大きいのはこの辺かしら?」
私の問いかけに、部長はすらすらと
よどみなく答えてくれます。
私が欲しいと思っている答えを、
的確に与えてくれます。
だからこそ、私は不安になってしまいます。
その回答は、計算から
導き出されたものではないのか。
そう、勘ぐってしまうのです。
わかってます。考えすぎなんだって。
私が気にしすぎてるだけなんだって。
でも、それでも私は…
不安で仕方がなかったんです。
そして、そんな私の不安は、ある光景を目にして
最高潮に達してしまいました。
そう、それは…
部長の、誕生日。
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その日、部長はたくさんの人にお祝いされました。
麻雀部には、清澄高校の部員だけでなく、
なぜかいろんな人が集まっています。
風越の福路さん、鶴賀の加治木さん、
龍門渕の皆さん。他にも、藤田プロだとか…
本当に、本当にたくさんの人が集まっていました。
それも麻雀部関係の繋がりだけで。
明日には、学生議会の方でも
別個に誕生パーティーを開くそうでした。
「はい、これ誕生日プレゼント」
「私はこれだ」
「わ、私は、これを…」
「ありがと。中身は後で
ゆっくりと確認させてもらうわね!」
部長は、次々をプレゼントを受け取っていきます。
そして、受け取ったプレゼントを
手際よく紙袋に格納していきます。
「ぶ、部長…おめでとうございます」
「ん?ああ、ありがとねー」
その大きな紙袋の中に、
私のプレゼントも一緒に入れられてしまいました。
(……っ!!)
私は思わずこみ上げる涙を、
必死に唇を噛んで堪えました。
受け取ったプレゼントを丁寧に、
でも部屋の隅にうっちゃった部長は、
満面の笑みでみんなにお礼を告げています。
「みんな、本当にありがとう!
来年もよろしくね!」
「お前さん、来年も学校に来てタカるつもりか」
おどけた部長にすかさずツッコミを入れる染谷先輩。
どっとあたりに笑い声が響き渡ります。
私は一切笑えませんでした。
付き合って初めての誕生日くらい、
二人っきりで祝いたかった。
部長に渡す最初のプレゼントは
私のものがよかった。
私以外のプレゼントは断ってほしかった。
他のプレゼントと一緒の袋に
入れてほしくなかった。
わかっています。それは、
私の醜いわがままなんだって。
みんなに愛されている部長を、
そんな風に独り占めしようとする方が
間違っているんだって。
そんな醜い私は、輝かしい部長には
ふさわしくないのかもしれません。
みんなに囲まれた遠くの部長が、
にじんで歪んで曇っていきます。
私はもう涙を堪え切れなくなって、
一人、その場を離れる事にしました。
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「咲ー?こっそり逃げようったって
そうはいかないわよー?」
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部室のドアノブに手をかけた瞬間。
突然聞こえた部長の声に、
私はつい身を縮こめました。
「おっかしいなー?」
「プレゼントが一個足んないのよねー」
「しかも、一番大切な奴が」
「咲。あなた、まだ私に
プレゼントくれてないでしょ?」
私は部長が何を言っているのかわかりませんでした。
だって、私のプレゼントは
もう部長に手渡していて。
他のプレゼントと一緒に、
紙袋にしまわれたはずなのです。
「ああ、あれ?却下」
「えぇ!?」
「だってあれ、どうせこのパーティー用の
当たり障りのない奴でしょ?
私が欲しいのはそんなのじゃないのよ」
「そう…私が欲しいのは、あなた」
心臓が、どきりと大きく跳ねました。
胸の鼓動が激しくなって、
呼吸が浅くなりました。
「みんな、私は今ここに宣言するわ!」
部長が声を張り上げます。
突然の部長の宣言に皆は沈黙し、
次の言葉を固唾をのんで見守りました。
そして…
「私は今日、咲を食べます」
一斉に沸き起こる黄色い歓声。
私は一気に顔を沸騰させて、
思わず部長に詰め寄りました。
「ちょっ!?ちょっと部長!
何言ってるんですか!?」
「えー?だって私、この日をずっと待ってたのよー?
付き合い始めて最初の誕生日、
これ以上ないシチュエーションじゃない」
「咲の誕生日に私をあげますっていうのも
なんか違うしさぁ。ほら、イメージ的に
やっぱり私がオオカミで咲は子羊だし」
「ぶ、部長!聞かれてます!
皆さんに聞かれてますってば!」
「聞かれたら駄目?私の恋人って立場は、
そんなに知られたくない事?」
そう言って、部長はにまにまと
意地の悪い笑みを浮かべます。
「…そんな事は…ないですけど…」
「はい、竹井さん。これだったら
ちょうどいいんじゃない?」
「あ、リボンありがとう国広さん。
はーい、リボン巻くから大人しくしててねー」
「ちょ、ちょっと!?
本当にプレゼントにしちゃう気なんですか!?」
「このままリボン姿でお姫様抱っこして、
『プレゼントもらいました!』って
言いながら学校中を練り歩いてやるわ!」
「や、やめてください!恥ずかし過ぎます!」
「えー?だって、咲ってすっごい疑り深いでしょ?
でも、このくらいしてあげたら…」
「私があなたの事大好きだって、
少しは信じてくれるんじゃない?」
私は言葉に詰まりました。
やっぱり、気づかれていた。
気づいた上で、部長は私を気遣ってくれて。
私を、袋小路から助け出してくれた。
「し、信じます…
今まで、疑ってごめんなさい」
私はしゃくりあげながら、
部長の腕の中で頷きました。
部長は、そんな私の頭を
慈しむように撫でながら…
でも、意地の悪い笑顔を私に見せました。
「今さら謝っても遅いわよ?
私の愛情、思い知ってもらうまで帰さないから」
「竹井さん、馬車の準備できたよー」
「馬車!?」
「あ、国広さんありがとう。
さすがに私の筋力じゃ
ずっとお姫様抱っこはきっついからねー」
「さ、とりあえず校舎の周りを一周しましょっか」
「えぇ!?本当にやるんですか!?」
部長は私を抱きかかえて、
馬車に乗り込みながら微笑みました。
その様を横目で見ていた優希ちゃんが、
肩をすくめてぼそりと一言。
「だから…バカップルだって言ったんだじぇ?」
さすがに私は、今度は
信じざるをえませんでした。
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『第二章 大学』
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凍てつくほどの寒さが私達を通り抜けて、
体から熱をごっそりと奪っていく季節。
私は、これから迎えるであろう別れに対して
強い恐怖を感じていました。
時は二月。
そう、後ひと月を待たずして…
久さんは、この学校を卒業していきます。
インターハイで活躍した久さんには、
さまざまな明るい未来が開けていました。
プロ、実業団、大学。
全ての道からスカウトが来ていて、
選び放題だった久さん。
そんな久さんが選んだ道は、
よりにもよって大学でした。
「いやー、まだまだ遊んでたいし」
なんて、モラトリアムを満喫する気
満々の久さんの発言は、
私を大きな不安に陥れました。
高校と大学では、人同士が持つ関係性も
大きく意味が変わります。
飲み会、コンパ、サークル。
それまでは全く縁がなかった交際の手段が、
腕を広げて待ち受けているのです。
それにはひどく大人の雰囲気が漂っていて。
まだ足を踏み入れた事がない私にとって、
大学はまるで別次元の世界の話でした。
そんな世界に、人気者の久さんが、
私を置いて一人で足を踏み入れるのです。
今、久さんが私を愛してくれている事。
それは、もう疑う余地はありません。
でも、だからと言って…
いつまでも愛してくれるでしょうか?
周りの刺激的な魅力にあふれた
大勢の大人に囲まれた上で、
それでも地味な私を今まで通り
愛し続けてくれるのでしょうか?
私には、まったく自信がありませんでした。
日に日に私の不安は募っていきます。
私は、傍らでタコスを貪り続ける
優希ちゃんにため息交じりの声を掛けました。
「ねえ、優希ちゃん…大学って、
どんなところなのかな…?」
「そりゃぁアダルトでムーディーな世界だじぇ?
何しろ飲み会でお持ち帰りだからな!」
「うぅ…やっぱりそうだよね…」
「久さん…コンパとか出たりするのかな…?」
「人脈作りとか言って普通に出そうだじょ」
「……」
「大丈夫だじぇ。そんな事くらいで
咲ちゃんと元部長の仲が壊れるとは思えないじょ。
このヤンデレバカップルが」
どこかやさぐれたようにけっと
吐き捨てる優希ちゃん。
でも、やっぱり私の心配は拭えませんでした。
だって、私には…
その不安を払拭できるだけの
材料がありませんでしたから。
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やがて、そんな私の不安は
現実味を帯びるようになってきました。
大学に入った久さんは、明らかに
連絡が取りづらくなったのです。
「久さん…明日、遊びに行ってもいいですか?」
『あー、ごめんね!
ちょうど明日から麻雀部の合宿なのよ!』
「え…で、でも、ちょっと前にも
合宿してましたよね?」
『別に何回したっていいんじゃない?』
「…そ、それは…そう、ですけど……」
別に、久さんの態度が
冷たくなったというわけではありません。
不義を働いているという
煙が立っているわけでもありません。
でも、久さんの生活の中に、
私が知らない時間があるのは事実で。
そして、その比率はどんどん、
どんどん大きくなっていって。
その事実は、私を夜も眠れなくさせるのです。
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私の不安が頂点に達したのは、
インターカレッジの決勝戦でした。
久さんが、私の知らない人達と
仲良さげに談笑しています。
頑張りましょう!と互いに声をかけあって、
時には手を握り合って絆を深めています。
そして、久さんは新しい仲間とともに
控室に入っていきました。
私には、そこに入る権利はありません。
試合は、終始防戦一方でした。
久さんが率いるチームは、
他のチームと比較すると、
お世辞にも強いとは言えず。
なんとか耐え凌いではいるものの、
先鋒から副将に至るまで、
ラスをひた走る展開が続きます。
もはや逆転は難しいかと思われた点差で、
4位でバトンを受け取った久さん。
目を伏せて涙ぐむ先輩のチームメイトに、
久さんは以前優希ちゃんに向けた笑顔を見せました。
「大丈夫です。私が皆を救いますから」
そして、その宣言通り。
大将に据えられた久さんは、
チームのピンチを華麗に救って。
チームメイトの皆から、
涙ながらに抱き締められていました。
その輪の中に、私はいません。
いなかったんです。
見事優勝を飾ったチームの立役者として、
単独インタビューを受ける久さん。
私は横に並ぶ事もできず、
ただ観客席から傍観者として
モニターを眺めるだけでした。
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『この勝利を、私の憧れの後輩に捧げます』
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両手で顔を覆って涙を隠していた私は、
予想外の言葉に思わず顔をあげました。
私と同じ感想を抱いたであろう記者の人が、
久さんに対して疑問を投げかけます。
『憧れの後輩…ですか?』
『はい。応援してくれた皆さんに…
なんて言えればよかったんですけど、
ここだけは自分の中でごまかせないので』
『一年前、私がインターハイで
全国にやってきた時』
『私は、その子に…
≪連れてきて≫もらいました』
『私が緊張してチームを
窮地に追いやってしまった時も、
その子が最後に取り返してくれて』
『おかげで私は救われたんです』
『かっこいいなって思いました。
私もこうなりたいって思いました』
『だから、今度は…
連れてきてもらうんじゃなくて連れていく。
今度は私がチームを救う。
そんな気持ちでインカレに臨みました』
『インカレでそれができたら、
私もあの子の横に並べるかなって…
そう思ったんです』
『そんな私のわがままのせいで、あの子には
寂しい思いをさせてしまいましたけど』
あはは…なんて苦笑する久さん。
私は、久さんがそんな風に思っていたなんて、
この時初めて知りました。
会えない時も、久さんは常に
私の事を考えてくれていて。
私の事を、想っていてくれたんです。
『優勝して肩の荷も下りましたし、
しばらくはあの子を愛でる事に
専念しようかと思います』
『あ、あの子というのは誰ですか!?』
『やだなぁもう…記者さんなら、
言わなくてもわかってますよね?』
『観客席の11列目、右側から13番目にいる
角が生えた女の子ですよ?』
『もし連れて来る事ができたら、
私達の関係について白状しますね?』
画面の中の久さんが微笑みました。
それは、間違いなく私に向けて。
「竹井先輩…咲さんをあそこに
連れてこさせるつもりですね…」
「公共電波で自慢する気満々じゃな」
「…だから、心配ないって言ったんだじぇ」
私の横にいた三人が、呆れた顔で
そろってため息をつきました。
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『最終章 決別』
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あれから一年が経ちました。
かつては久さんを見送る側だった私も、
ついに見送られる側になりました。
部活も引退して、あと少しで卒業。
私達の間でも、進路についての話題が
多くなりました。
「咲ちゃんは、卒業したら
どうするつもりなんだじょ?」
「…大学かなぁ。久さんと同じ大学から
推薦もらえそうだし」
「そしたら来年、また元部長が部長になるな!」
「いっそ三人とも一緒に進学して、
清澄オールスター復活ってのはどうだじょ!!」
「あはは…それも悪くないかも」
優希ちゃんの提案を頭に思い浮かべて、
思わず心が躍ります。
あの時のメンバーで、もう一度戦えたら。
久さんと一緒に、喜びを分かち合えたら。
それは、なんて素敵な事でしょう。
ただ、本当の事を言えば…
私は、まだ進路を決めかねていました。
このまま進学すれば、確かに2年は
久さんと一緒にいる事ができます。
でも、逆に言えばその後は2年間独りぼっちです。
大学卒業後。
今度こそ、久さんはプロになります。
そうなれば、遠征…それこそ
海外遠征なんかも視野に入ってきて、
本当に手の届かないところに
行ってしまうのかもしれません。
だったら一足先にプロになって、
久さんが同じチームに入ってくるのを待った方が、
長期的に考えたら賢いのではないかと思いました。
プロになって自由になるお金があれば、
いろいろとやりやすいと思いますし。
でも、私がプロになったとしても、
今度は私の方が遠征で飛ばされて。
結局久さんと離れ離れに
なってしまうかもしれません。
私はどちらに決める事もできず、
ただうじうじと悩み続けるばかりでした。
それにしても、どうして私は
いつまでたっても『こう』なんでしょうか。
節目節目でいちいち何かに心配して、
勝手に不安を感じて弱っていく。
久さんは、私を捨てたりしない。
私の事を心から愛してくれていて、
私の側に居てくれる。
そう思っているはずなのに、
それでも私は安心しきれなくて。
つい、久さんを縛り付けてしまうのです。
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「もう、心配なんてしなくていいのよ?」
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ため息をついた私の前に、
いるはずのない久さんが立っていました。
私はあまりの驚きに、
つい声が裏返ってしまいました。
「ひ…ひしゃさん!?」
「ここも全然変わらないわねー。
麻雀部が廃部になったら
取り壊される予定だったらしいけど、
今も健在で何よりだわ」
「そ、それは…頑張りましたから…」
「じゃなくて!どうしてここにいるんですか!?」
「いたらダメ?別にOGなんだから
母校訪問くらいしてもいいでしょうに」
「で、でも…連絡なかったし」
「えへへ…今日はね、
ちょっと、私にもいろいろありましたので!」
「というわけで、咲。左手出して?」
「え…何ですか?」
「いーからいーから!」
私は唐突すぎる久さんの申し出に、
戸惑いながらも左手を差し出しました。
久さんはそんな私の指に優しく触れて、
私の薬指に、そっと何かを通していきます。
それは、シンプルながらも美しい指輪。
およそ高校生がつけるには
似つかわしくない上等な指輪が、
私の薬指でキラキラと輝いていました。
「こ…これ…!!」
「咲さん。ずっと、ずっと好きでした。
私と、結婚してください」
久さんは、膝をついてこうべを垂れて。
優しく、私の手にキスを落としました。
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あまりの急展開についていけず呆然とする私に、
久さんがペラペラとタネ明かしを始めました。
「実は、高校を卒業する前から計画してたのよね」
「大学生だからプロにはなれない。
そんな事はないでしょと」
「別にフルシーズン出場しなくたって、
中二日とかなら大学通いながらでも
参戦できるわけだしね」
「ほら、契約書!知ってたけど
麻雀のプロって儲かるのねー!
私、小庶民だから年棒の額見て
怖くて身体が震えたわー」
そう言って久さんは胸を張りながら
一枚の紙を突き出します。
その紙には今日の日付が刻まれていて、
末尾には久さんのサインが達筆な文字で
書き込まれていました。
「だから、ね?もう私達が離れる必要はないの。
私は、私の力であなたを養う事ができる」
「最初は、高校を卒業したらそのまま
プロになろうかと思ったけど…
そしたら遠征とかで咲と離れちゃうでしょ?」
「だからって、無職になっちゃったら
咲を養えるか怪しいところだし」
「だから、大学に行きつつ知名度を上げる。
私には慣例をぶち破るだけの
価値があるって事を実力を持って知らしめる」
「そして…プロとして契約して、
咲の卒業と同時にゴールイン!
さすが私!完璧な人生設計!」
得意満面の笑みでVサインを作る久さん。
私は、自信過剰とすら思えるその行動に
乾いた笑いを浮かべるしかありませんでした。
本当に、枠にとらわれない人です。
そんな、誰もやった事がないイレギュラーを
本気で人生設計に組み込んでしまうなんて…
しかも、それを計画通り実現してしまうなんて…
「でも、それだったら…
私もプロになって、二人で同じチームに
入ればいいんじゃないですか?」
「あまいあまい。あなたがプロ意向を宣言したら、
その時点で絶対にドラフト候補よ?」
「それじゃぁ、私と同じチームになれるかは
完全に運次第じゃない。麻雀ならいざ知らず、
そんな肝心なところで運に頼れるほど
私は心が強くないもの」
「で、返事はまだかしら?」
「実は私、結構心臓バクバクさせながら
返事を待ってるんだけど」
そう言って、ちょっと拗ねたように
上目遣いで私を見つめる久さん。
忘れてました。そんなの、
絶対OKに決まってますから。
「あっ…ごっ…ごめんなさい!!」
「わ、私を…久さんのお嫁さんにしてください!」
「え、やーよ!?」
「えぇ!?」
自分でプロポーズしておいて
まさかの大どんでん返し。
本当に、この人の考えている事は読めません。
「お嫁さんは私!咲がお婿さん!」
「えぇえ!?おかしいですよ!どう考えても
立ち位置的に久さんが
お婿さんじゃないですか!?」
「いやー、私って結構
根っこのところで女の子だからさー、
やっぱりウェディングドレスには
憧れちゃうのよねー」
「わ、私は根っこどころか全部女の子ですよ!」
「うーん。仕方ない!じゃあ、
2回結婚式あげちゃいましょうか!」
「えぇ!?」
けらけらと笑いながら話す久さん。
でも久さんの事だから、
冗談交じりに話しておいて、
本当に実現しちゃうんじゃないかなと思います。
「あ、そうそう。まだ途中だった」
「はい。私の方の指輪。
咲の手で私の指にはめてくれないかしら?」
そう言って、私に指輪を差し出す久さん。
見れば、久さんの顔は少しだけ朱に染まっていて。
私は思わずつられて顔を真っ赤に染めながら、
久さんの指に指輪を通したのでした。
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こうして、今度こそ私は、
久さんに対する不安と決別する事ができたのです。
でも、今になって思ってみれば。
別に、不安になってもいいのかな?
とも思います。
だって久さんはそのたびに。
かっこよく、ヒーローみたいに現れて。
私の不安を、綺麗さっぱり
拭い去ってくれるでしょうから。
「頼りにしてますね?
私だけのヒーローさん」
「や、だから私はヒロインだってば。
ヒーローは咲」
「そこは綺麗に締めさせてくださいよ!?」
「やーよ?私にとっても、
あなたは憧れの人なんだから」
久さんはくすくす笑いながら、
今度は唇に優しくキスをするのでした。
(完)
優希「弱虫咲ちゃん三部作だじぇ」
久「弱気な咲を、私がひたすらかっこよく救うわよ!」
和「キザとかタラシとも言いますよね」
久「ひどい!?」
<登場人物>
宮永咲,竹井久,片岡優希,その他
<症状>
・だだあま
・依存
<その他>
次のリクエストに対する作品です。
・咲さんから告白して付き合うようになったけど
部長の態度に同情で付き合って貰っていると
疑心暗鬼になって衰弱していく咲さん、
そんな咲さんを部長が救出する話
(カッコいい部長)
≪普通かあまあま≫
※インターカレッジやプロの条件などは
本作品の独自設定です。
原作とは異なるかもしれません。
※本当はSide−久も書く予定でしたが
思った以上に長くなったので削りました。
Side−久が読みたい方は
久さんかわいい!とコメントで書き込んでください。
(ヤンデレあまあまになる予定)
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『第一章 誕生日』
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ありきたりな屋上への呼び出し。
意外性も何もない展開。
使い古された味気ない台詞。
それが私、宮永咲なりの。
精いっぱいの告白でした。
「す、好きです!付き合ってください!」
そんな私の告白に、私の想い人である部長…
竹井久さんは、特に動揺する事もなく。
ただ、穏やかな目で私を見つめます。
一瞬の沈黙。でも、まるで
永遠かと思えるほどの長い沈黙。
そんな沈黙の後、部長は
優しい笑みを浮かべて言いました。
「いいわ、咲。その告白、受けてあげる」
そして、部長は私を抱き締めてくれました。
壊れ物を扱うかのように優しく。
それでいてしっかりと。
「これから…よろしくね?」
目と鼻の先で微笑む部長。
私は、何が起きたのか理解できなくて。
部長に包まれたまま、
たっぷり数秒はきょとんとした表情を浮かべた後…
ようやく事を理解して、
ぽろぽろと涙を零しました。
「っ……はいっ…!」
これが、私の人生で最良の日。
部長と私の道が交わった最初の日でした。
でも、それは…
私の不安が始まる最初の日でもありました。
この日から私は…
不安にさいなまれるようになったんです。
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本当は、受け入れてもらえるなんて
思ってなかったんです。
振られる前提で告白したんです。
だから、部長が受け入れてくれた時、
私はそれを飲み込む事ができなくて。
成就した事自体が、何かの
間違いなんじゃないかって思いました。
何度も夢じゃないのかなって、
自分のほっぺたを引っ張って。
痛みを感じてほっとして、
それでもやっぱり信じられませんでした。
だって、部長は人気者だから。
部長は、いつもたくさんの人に囲まれてるから。
部長を取り囲む人の中には、
私なんかよりもよっぽど綺麗で、
私自身羨むくらいの人もたくさんいます。
頭がよくて、成績表の上位に
その名を連ねるような人もいます。
麻雀のプロとして、メディアに
取り上げられるような人もいます。
そんなそうそうたる顔触れが、
部長を慕って集まってくるのです。
対して、私はどうでしょうか。
ちんちくりんで地味な顔立ち。
勉強もぱっとしません。
運動なんか下から数えた方が早いでしょうし、
方向音痴でおつかいすらまともにできません。
唯一の取り柄である麻雀だって、
プラマイゼロなんて地味っぷり。
お姉ちゃんのような勢いも、
衣ちゃんみたいな派手さもありません。
そんな、自分に自信を持てない私は、
部長の彼女になれたという事実を
信じきる事ができなくて。
(なんで部長は、私を受け入れてくれたのかな…?)
(もしかして…同じ部員を傷つけたくないっていう
ただの同情なんじゃないかな…?)
(本当は…私の事、そんなに
好きでもないんじゃないかな…)
なんて、そんな事ばかり
毎日考えてしまうんです。
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不安は疑念を生み、疑念は焦りを生みます。
そんな私にできる事は、
ただひたすら部長に尽くす事だけでした。
「ぶ、部長…お弁当作ってきました!」
「えぇ!?何それすっごい嬉しい!」
私が差し出したお弁当に、
きらきら目を輝かせる部長。
その輝きは、私から少しだけ
不安を取り除いてくれました。
でも次の瞬間、私の心が曇りました。
部長は、かばんから自前の箸を取り出したからです。
「ん?どったの咲」
「えと、部長…もしかして、
お弁当持ってきてました?」
「あ?うん。でも別にいいわよ?
こっちはどうせ自分で作ったお弁当だし、
夕食にすれば無駄にならないもの」
「それよりも、咲のお弁当よ!
ほらほら、恋人様に献上しなさい!」
まるでなんて事のないようにあしらうと、
私のお弁当を要求する部長。
そんな様子は、私の頬を緩めてくれます。
それでも、私の心には…
ちくりと細かいとげが残りました。
ああ、また部長に気を遣わせてしまった。
部長はすごく優しいから、
こうして私が傷つかないように気遣ってくれる。
それはとっても嬉しいけれど。
果たしてそれは…愛情からくるものなのでしょうか。
如才ない部長の処世術ではないのでしょうか。
つい思い浮かんだそんな疑問のせいで、
私は出口のない袋小路に迷い込んでしまうのです。
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「…と言うわけなんだけど…優希ちゃんはどう思う?」
私は今日も、優希ちゃんに
悩みを打ち明けていました。
優希ちゃんには告白する前から
相談に乗ってもらっていましたけど…
むしろ、その頻度は想いが成就する前よりも
多くなった気がします。
もっとも、肝心の優希ちゃんは
まともに取り合う気はないようでした。
「咲ちゃんは考え過ぎだじぇ。
いくら部長でも、同情で
告白を受けるとかありえないじょ」
「でも部長って、人を傷つけるのを人一倍嫌ってるもん」
「そっかー?部長って結構きつい事を
平気で言うイメージだじぇ?」
「それは、相手がその程度じゃ
傷つかないってわかってるからだよ」
「部長は、人が取り返しのつかない傷を負うのを嫌がる。
傷つく前に、絶対にフォローに回る」
「優希ちゃんの時だって、そうだったでしょ?」
「…それだけしっかり見てるのに、
なんで心配になるんだじぇ?」
「それだけわかってるなら、
部長がその場しのぎで咲ちゃんと付き合うなんて、
それこそあり得ないってわかるはずだじょ」
「正直私からしたら、毎日
ノロケを聞かされてるようなもんだじぇ?」
「咲ちゃんと部長は普通に
バカップルにしか思えないじょ」
苦笑しながらタコスを口にほおりこむ優希ちゃん。
その言葉に、私はまた少しだけ安心します。
でも、心から安心する事はできなくて。
つい、何度も優希ちゃんに
確認を求めてしまうのでした。
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私の不安が取り除けない理由。
それは、自分に自信がない事が一番でしたが、
多分状況にも不満があったんだと思います。
だって、私は部長の恋人になりましたけど、
だからと言って何か生活が変わったわけでもなく。
部長は相も変わらず人に囲まれていますし、
精力的に学生議会の活動もこなしています。
そりゃ、私と付き合ったからといって、
いきなり全てを捨てて私だけに
専念できるとは思ってはいませんけど。
それでも部長の心の中で、
私を気に掛ける心の比重が
変わったようにも思えないのです。
「あー、咲。ごめんねー。
今日、学生議会の会議があるから
先に帰っちゃって」
確かに、これ自体は問題のない台詞です。
でも、恋人になったばかりなのですから、
そこは『会議があるから悪いけど待っていて』
なんてわがままを言ってほしいと思うのは、
私が欲張り過ぎなのでしょうか。
だから、私はつい。わざわざ、こんな
つまらない事を聞いてしまうのです。
「…部長は、私といて楽しいですか?」
「ん?そりゃ楽しいわよ?
楽しくなかったら恋人になんかならないって」
「…部長は、私の事を愛してくれていますか?」
「あったりまえでしょ。
冗談で告白なんか受けたりしないってば」
「…私の、どんなところが好きですか?」
「一途なところ。健気なところ。
ちょっと気弱で儚げなところ。
他にもいっぱいあるけど、
特に大きいのはこの辺かしら?」
私の問いかけに、部長はすらすらと
よどみなく答えてくれます。
私が欲しいと思っている答えを、
的確に与えてくれます。
だからこそ、私は不安になってしまいます。
その回答は、計算から
導き出されたものではないのか。
そう、勘ぐってしまうのです。
わかってます。考えすぎなんだって。
私が気にしすぎてるだけなんだって。
でも、それでも私は…
不安で仕方がなかったんです。
そして、そんな私の不安は、ある光景を目にして
最高潮に達してしまいました。
そう、それは…
部長の、誕生日。
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その日、部長はたくさんの人にお祝いされました。
麻雀部には、清澄高校の部員だけでなく、
なぜかいろんな人が集まっています。
風越の福路さん、鶴賀の加治木さん、
龍門渕の皆さん。他にも、藤田プロだとか…
本当に、本当にたくさんの人が集まっていました。
それも麻雀部関係の繋がりだけで。
明日には、学生議会の方でも
別個に誕生パーティーを開くそうでした。
「はい、これ誕生日プレゼント」
「私はこれだ」
「わ、私は、これを…」
「ありがと。中身は後で
ゆっくりと確認させてもらうわね!」
部長は、次々をプレゼントを受け取っていきます。
そして、受け取ったプレゼントを
手際よく紙袋に格納していきます。
「ぶ、部長…おめでとうございます」
「ん?ああ、ありがとねー」
その大きな紙袋の中に、
私のプレゼントも一緒に入れられてしまいました。
(……っ!!)
私は思わずこみ上げる涙を、
必死に唇を噛んで堪えました。
受け取ったプレゼントを丁寧に、
でも部屋の隅にうっちゃった部長は、
満面の笑みでみんなにお礼を告げています。
「みんな、本当にありがとう!
来年もよろしくね!」
「お前さん、来年も学校に来てタカるつもりか」
おどけた部長にすかさずツッコミを入れる染谷先輩。
どっとあたりに笑い声が響き渡ります。
私は一切笑えませんでした。
付き合って初めての誕生日くらい、
二人っきりで祝いたかった。
部長に渡す最初のプレゼントは
私のものがよかった。
私以外のプレゼントは断ってほしかった。
他のプレゼントと一緒の袋に
入れてほしくなかった。
わかっています。それは、
私の醜いわがままなんだって。
みんなに愛されている部長を、
そんな風に独り占めしようとする方が
間違っているんだって。
そんな醜い私は、輝かしい部長には
ふさわしくないのかもしれません。
みんなに囲まれた遠くの部長が、
にじんで歪んで曇っていきます。
私はもう涙を堪え切れなくなって、
一人、その場を離れる事にしました。
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「咲ー?こっそり逃げようったって
そうはいかないわよー?」
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部室のドアノブに手をかけた瞬間。
突然聞こえた部長の声に、
私はつい身を縮こめました。
「おっかしいなー?」
「プレゼントが一個足んないのよねー」
「しかも、一番大切な奴が」
「咲。あなた、まだ私に
プレゼントくれてないでしょ?」
私は部長が何を言っているのかわかりませんでした。
だって、私のプレゼントは
もう部長に手渡していて。
他のプレゼントと一緒に、
紙袋にしまわれたはずなのです。
「ああ、あれ?却下」
「えぇ!?」
「だってあれ、どうせこのパーティー用の
当たり障りのない奴でしょ?
私が欲しいのはそんなのじゃないのよ」
「そう…私が欲しいのは、あなた」
心臓が、どきりと大きく跳ねました。
胸の鼓動が激しくなって、
呼吸が浅くなりました。
「みんな、私は今ここに宣言するわ!」
部長が声を張り上げます。
突然の部長の宣言に皆は沈黙し、
次の言葉を固唾をのんで見守りました。
そして…
「私は今日、咲を食べます」
一斉に沸き起こる黄色い歓声。
私は一気に顔を沸騰させて、
思わず部長に詰め寄りました。
「ちょっ!?ちょっと部長!
何言ってるんですか!?」
「えー?だって私、この日をずっと待ってたのよー?
付き合い始めて最初の誕生日、
これ以上ないシチュエーションじゃない」
「咲の誕生日に私をあげますっていうのも
なんか違うしさぁ。ほら、イメージ的に
やっぱり私がオオカミで咲は子羊だし」
「ぶ、部長!聞かれてます!
皆さんに聞かれてますってば!」
「聞かれたら駄目?私の恋人って立場は、
そんなに知られたくない事?」
そう言って、部長はにまにまと
意地の悪い笑みを浮かべます。
「…そんな事は…ないですけど…」
「はい、竹井さん。これだったら
ちょうどいいんじゃない?」
「あ、リボンありがとう国広さん。
はーい、リボン巻くから大人しくしててねー」
「ちょ、ちょっと!?
本当にプレゼントにしちゃう気なんですか!?」
「このままリボン姿でお姫様抱っこして、
『プレゼントもらいました!』って
言いながら学校中を練り歩いてやるわ!」
「や、やめてください!恥ずかし過ぎます!」
「えー?だって、咲ってすっごい疑り深いでしょ?
でも、このくらいしてあげたら…」
「私があなたの事大好きだって、
少しは信じてくれるんじゃない?」
私は言葉に詰まりました。
やっぱり、気づかれていた。
気づいた上で、部長は私を気遣ってくれて。
私を、袋小路から助け出してくれた。
「し、信じます…
今まで、疑ってごめんなさい」
私はしゃくりあげながら、
部長の腕の中で頷きました。
部長は、そんな私の頭を
慈しむように撫でながら…
でも、意地の悪い笑顔を私に見せました。
「今さら謝っても遅いわよ?
私の愛情、思い知ってもらうまで帰さないから」
「竹井さん、馬車の準備できたよー」
「馬車!?」
「あ、国広さんありがとう。
さすがに私の筋力じゃ
ずっとお姫様抱っこはきっついからねー」
「さ、とりあえず校舎の周りを一周しましょっか」
「えぇ!?本当にやるんですか!?」
部長は私を抱きかかえて、
馬車に乗り込みながら微笑みました。
その様を横目で見ていた優希ちゃんが、
肩をすくめてぼそりと一言。
「だから…バカップルだって言ったんだじぇ?」
さすがに私は、今度は
信じざるをえませんでした。
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『第二章 大学』
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凍てつくほどの寒さが私達を通り抜けて、
体から熱をごっそりと奪っていく季節。
私は、これから迎えるであろう別れに対して
強い恐怖を感じていました。
時は二月。
そう、後ひと月を待たずして…
久さんは、この学校を卒業していきます。
インターハイで活躍した久さんには、
さまざまな明るい未来が開けていました。
プロ、実業団、大学。
全ての道からスカウトが来ていて、
選び放題だった久さん。
そんな久さんが選んだ道は、
よりにもよって大学でした。
「いやー、まだまだ遊んでたいし」
なんて、モラトリアムを満喫する気
満々の久さんの発言は、
私を大きな不安に陥れました。
高校と大学では、人同士が持つ関係性も
大きく意味が変わります。
飲み会、コンパ、サークル。
それまでは全く縁がなかった交際の手段が、
腕を広げて待ち受けているのです。
それにはひどく大人の雰囲気が漂っていて。
まだ足を踏み入れた事がない私にとって、
大学はまるで別次元の世界の話でした。
そんな世界に、人気者の久さんが、
私を置いて一人で足を踏み入れるのです。
今、久さんが私を愛してくれている事。
それは、もう疑う余地はありません。
でも、だからと言って…
いつまでも愛してくれるでしょうか?
周りの刺激的な魅力にあふれた
大勢の大人に囲まれた上で、
それでも地味な私を今まで通り
愛し続けてくれるのでしょうか?
私には、まったく自信がありませんでした。
日に日に私の不安は募っていきます。
私は、傍らでタコスを貪り続ける
優希ちゃんにため息交じりの声を掛けました。
「ねえ、優希ちゃん…大学って、
どんなところなのかな…?」
「そりゃぁアダルトでムーディーな世界だじぇ?
何しろ飲み会でお持ち帰りだからな!」
「うぅ…やっぱりそうだよね…」
「久さん…コンパとか出たりするのかな…?」
「人脈作りとか言って普通に出そうだじょ」
「……」
「大丈夫だじぇ。そんな事くらいで
咲ちゃんと元部長の仲が壊れるとは思えないじょ。
このヤンデレバカップルが」
どこかやさぐれたようにけっと
吐き捨てる優希ちゃん。
でも、やっぱり私の心配は拭えませんでした。
だって、私には…
その不安を払拭できるだけの
材料がありませんでしたから。
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やがて、そんな私の不安は
現実味を帯びるようになってきました。
大学に入った久さんは、明らかに
連絡が取りづらくなったのです。
「久さん…明日、遊びに行ってもいいですか?」
『あー、ごめんね!
ちょうど明日から麻雀部の合宿なのよ!』
「え…で、でも、ちょっと前にも
合宿してましたよね?」
『別に何回したっていいんじゃない?』
「…そ、それは…そう、ですけど……」
別に、久さんの態度が
冷たくなったというわけではありません。
不義を働いているという
煙が立っているわけでもありません。
でも、久さんの生活の中に、
私が知らない時間があるのは事実で。
そして、その比率はどんどん、
どんどん大きくなっていって。
その事実は、私を夜も眠れなくさせるのです。
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私の不安が頂点に達したのは、
インターカレッジの決勝戦でした。
久さんが、私の知らない人達と
仲良さげに談笑しています。
頑張りましょう!と互いに声をかけあって、
時には手を握り合って絆を深めています。
そして、久さんは新しい仲間とともに
控室に入っていきました。
私には、そこに入る権利はありません。
試合は、終始防戦一方でした。
久さんが率いるチームは、
他のチームと比較すると、
お世辞にも強いとは言えず。
なんとか耐え凌いではいるものの、
先鋒から副将に至るまで、
ラスをひた走る展開が続きます。
もはや逆転は難しいかと思われた点差で、
4位でバトンを受け取った久さん。
目を伏せて涙ぐむ先輩のチームメイトに、
久さんは以前優希ちゃんに向けた笑顔を見せました。
「大丈夫です。私が皆を救いますから」
そして、その宣言通り。
大将に据えられた久さんは、
チームのピンチを華麗に救って。
チームメイトの皆から、
涙ながらに抱き締められていました。
その輪の中に、私はいません。
いなかったんです。
見事優勝を飾ったチームの立役者として、
単独インタビューを受ける久さん。
私は横に並ぶ事もできず、
ただ観客席から傍観者として
モニターを眺めるだけでした。
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『この勝利を、私の憧れの後輩に捧げます』
--------------------------------------------------------
両手で顔を覆って涙を隠していた私は、
予想外の言葉に思わず顔をあげました。
私と同じ感想を抱いたであろう記者の人が、
久さんに対して疑問を投げかけます。
『憧れの後輩…ですか?』
『はい。応援してくれた皆さんに…
なんて言えればよかったんですけど、
ここだけは自分の中でごまかせないので』
『一年前、私がインターハイで
全国にやってきた時』
『私は、その子に…
≪連れてきて≫もらいました』
『私が緊張してチームを
窮地に追いやってしまった時も、
その子が最後に取り返してくれて』
『おかげで私は救われたんです』
『かっこいいなって思いました。
私もこうなりたいって思いました』
『だから、今度は…
連れてきてもらうんじゃなくて連れていく。
今度は私がチームを救う。
そんな気持ちでインカレに臨みました』
『インカレでそれができたら、
私もあの子の横に並べるかなって…
そう思ったんです』
『そんな私のわがままのせいで、あの子には
寂しい思いをさせてしまいましたけど』
あはは…なんて苦笑する久さん。
私は、久さんがそんな風に思っていたなんて、
この時初めて知りました。
会えない時も、久さんは常に
私の事を考えてくれていて。
私の事を、想っていてくれたんです。
『優勝して肩の荷も下りましたし、
しばらくはあの子を愛でる事に
専念しようかと思います』
『あ、あの子というのは誰ですか!?』
『やだなぁもう…記者さんなら、
言わなくてもわかってますよね?』
『観客席の11列目、右側から13番目にいる
角が生えた女の子ですよ?』
『もし連れて来る事ができたら、
私達の関係について白状しますね?』
画面の中の久さんが微笑みました。
それは、間違いなく私に向けて。
「竹井先輩…咲さんをあそこに
連れてこさせるつもりですね…」
「公共電波で自慢する気満々じゃな」
「…だから、心配ないって言ったんだじぇ」
私の横にいた三人が、呆れた顔で
そろってため息をつきました。
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『最終章 決別』
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あれから一年が経ちました。
かつては久さんを見送る側だった私も、
ついに見送られる側になりました。
部活も引退して、あと少しで卒業。
私達の間でも、進路についての話題が
多くなりました。
「咲ちゃんは、卒業したら
どうするつもりなんだじょ?」
「…大学かなぁ。久さんと同じ大学から
推薦もらえそうだし」
「そしたら来年、また元部長が部長になるな!」
「いっそ三人とも一緒に進学して、
清澄オールスター復活ってのはどうだじょ!!」
「あはは…それも悪くないかも」
優希ちゃんの提案を頭に思い浮かべて、
思わず心が躍ります。
あの時のメンバーで、もう一度戦えたら。
久さんと一緒に、喜びを分かち合えたら。
それは、なんて素敵な事でしょう。
ただ、本当の事を言えば…
私は、まだ進路を決めかねていました。
このまま進学すれば、確かに2年は
久さんと一緒にいる事ができます。
でも、逆に言えばその後は2年間独りぼっちです。
大学卒業後。
今度こそ、久さんはプロになります。
そうなれば、遠征…それこそ
海外遠征なんかも視野に入ってきて、
本当に手の届かないところに
行ってしまうのかもしれません。
だったら一足先にプロになって、
久さんが同じチームに入ってくるのを待った方が、
長期的に考えたら賢いのではないかと思いました。
プロになって自由になるお金があれば、
いろいろとやりやすいと思いますし。
でも、私がプロになったとしても、
今度は私の方が遠征で飛ばされて。
結局久さんと離れ離れに
なってしまうかもしれません。
私はどちらに決める事もできず、
ただうじうじと悩み続けるばかりでした。
それにしても、どうして私は
いつまでたっても『こう』なんでしょうか。
節目節目でいちいち何かに心配して、
勝手に不安を感じて弱っていく。
久さんは、私を捨てたりしない。
私の事を心から愛してくれていて、
私の側に居てくれる。
そう思っているはずなのに、
それでも私は安心しきれなくて。
つい、久さんを縛り付けてしまうのです。
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「もう、心配なんてしなくていいのよ?」
--------------------------------------------------------
ため息をついた私の前に、
いるはずのない久さんが立っていました。
私はあまりの驚きに、
つい声が裏返ってしまいました。
「ひ…ひしゃさん!?」
「ここも全然変わらないわねー。
麻雀部が廃部になったら
取り壊される予定だったらしいけど、
今も健在で何よりだわ」
「そ、それは…頑張りましたから…」
「じゃなくて!どうしてここにいるんですか!?」
「いたらダメ?別にOGなんだから
母校訪問くらいしてもいいでしょうに」
「で、でも…連絡なかったし」
「えへへ…今日はね、
ちょっと、私にもいろいろありましたので!」
「というわけで、咲。左手出して?」
「え…何ですか?」
「いーからいーから!」
私は唐突すぎる久さんの申し出に、
戸惑いながらも左手を差し出しました。
久さんはそんな私の指に優しく触れて、
私の薬指に、そっと何かを通していきます。
それは、シンプルながらも美しい指輪。
およそ高校生がつけるには
似つかわしくない上等な指輪が、
私の薬指でキラキラと輝いていました。
「こ…これ…!!」
「咲さん。ずっと、ずっと好きでした。
私と、結婚してください」
久さんは、膝をついてこうべを垂れて。
優しく、私の手にキスを落としました。
--------------------------------------------------------
あまりの急展開についていけず呆然とする私に、
久さんがペラペラとタネ明かしを始めました。
「実は、高校を卒業する前から計画してたのよね」
「大学生だからプロにはなれない。
そんな事はないでしょと」
「別にフルシーズン出場しなくたって、
中二日とかなら大学通いながらでも
参戦できるわけだしね」
「ほら、契約書!知ってたけど
麻雀のプロって儲かるのねー!
私、小庶民だから年棒の額見て
怖くて身体が震えたわー」
そう言って久さんは胸を張りながら
一枚の紙を突き出します。
その紙には今日の日付が刻まれていて、
末尾には久さんのサインが達筆な文字で
書き込まれていました。
「だから、ね?もう私達が離れる必要はないの。
私は、私の力であなたを養う事ができる」
「最初は、高校を卒業したらそのまま
プロになろうかと思ったけど…
そしたら遠征とかで咲と離れちゃうでしょ?」
「だからって、無職になっちゃったら
咲を養えるか怪しいところだし」
「だから、大学に行きつつ知名度を上げる。
私には慣例をぶち破るだけの
価値があるって事を実力を持って知らしめる」
「そして…プロとして契約して、
咲の卒業と同時にゴールイン!
さすが私!完璧な人生設計!」
得意満面の笑みでVサインを作る久さん。
私は、自信過剰とすら思えるその行動に
乾いた笑いを浮かべるしかありませんでした。
本当に、枠にとらわれない人です。
そんな、誰もやった事がないイレギュラーを
本気で人生設計に組み込んでしまうなんて…
しかも、それを計画通り実現してしまうなんて…
「でも、それだったら…
私もプロになって、二人で同じチームに
入ればいいんじゃないですか?」
「あまいあまい。あなたがプロ意向を宣言したら、
その時点で絶対にドラフト候補よ?」
「それじゃぁ、私と同じチームになれるかは
完全に運次第じゃない。麻雀ならいざ知らず、
そんな肝心なところで運に頼れるほど
私は心が強くないもの」
「で、返事はまだかしら?」
「実は私、結構心臓バクバクさせながら
返事を待ってるんだけど」
そう言って、ちょっと拗ねたように
上目遣いで私を見つめる久さん。
忘れてました。そんなの、
絶対OKに決まってますから。
「あっ…ごっ…ごめんなさい!!」
「わ、私を…久さんのお嫁さんにしてください!」
「え、やーよ!?」
「えぇ!?」
自分でプロポーズしておいて
まさかの大どんでん返し。
本当に、この人の考えている事は読めません。
「お嫁さんは私!咲がお婿さん!」
「えぇえ!?おかしいですよ!どう考えても
立ち位置的に久さんが
お婿さんじゃないですか!?」
「いやー、私って結構
根っこのところで女の子だからさー、
やっぱりウェディングドレスには
憧れちゃうのよねー」
「わ、私は根っこどころか全部女の子ですよ!」
「うーん。仕方ない!じゃあ、
2回結婚式あげちゃいましょうか!」
「えぇ!?」
けらけらと笑いながら話す久さん。
でも久さんの事だから、
冗談交じりに話しておいて、
本当に実現しちゃうんじゃないかなと思います。
「あ、そうそう。まだ途中だった」
「はい。私の方の指輪。
咲の手で私の指にはめてくれないかしら?」
そう言って、私に指輪を差し出す久さん。
見れば、久さんの顔は少しだけ朱に染まっていて。
私は思わずつられて顔を真っ赤に染めながら、
久さんの指に指輪を通したのでした。
--------------------------------------------------------
こうして、今度こそ私は、
久さんに対する不安と決別する事ができたのです。
でも、今になって思ってみれば。
別に、不安になってもいいのかな?
とも思います。
だって久さんはそのたびに。
かっこよく、ヒーローみたいに現れて。
私の不安を、綺麗さっぱり
拭い去ってくれるでしょうから。
「頼りにしてますね?
私だけのヒーローさん」
「や、だから私はヒロインだってば。
ヒーローは咲」
「そこは綺麗に締めさせてくださいよ!?」
「やーよ?私にとっても、
あなたは憧れの人なんだから」
久さんはくすくす笑いながら、
今度は唇に優しくキスをするのでした。
(完)
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今回もおもしろかったです。
優希がんばれ。
久さんかわいい!
久さんかわいい!久さんかわいい!久さんかわいい!久さんかわいい!久さんかわいい!久さんかわ
咲さんの麻雀が目立たないとかSOA。
原作が一段落したら部長視点のスピンオフみたいなのも読んでみたいなーって思う、そんな内容のSSでした。
そういえば珍しく退学してない……あまあまだと幸せでニヤニヤしちゃう
プラマイゼロなんて誰にでも簡単に出来ない事をする咲さんを麻雀が大きなウエイト占めている
部長が憧れるみたいな感じなんですかね。
そうゆうことで久さんかわいい!長くても問題ないです(笑い)
初々しい咲もかわいい!
それと久さんかわいい!
さぞかし大勢集まって大盛り上がりな
んでしょうねぇ。
かじゅやキャップは来てたけど
ワハハは来てたんでしょうか?
いや、ワハハの車にプレゼントを積むのはリスキーか。
イカ。
やっぱりこの2人は最高ですね
優希がんばれ>
優希「3年間ずっとこの調子だったじぇ…
私も彼女欲しいじぇ…」
和「そういえば、iPS」
普段のイメージ>
咲「え、割と原作に近かったような…」
久「ヒント、簀巻き」
珍しく退学してない>
久「かっこいい私だったからね!」
咲「まあ白かったかはわかりませんけど」
咲さんの麻雀はド派手>
久「自覚がないのが怖いのよね」
咲「カン!カン!もいっこカン!
三槓子なら普通だよね!」
部長が咲さんを好きになる切っ掛け>
久「…ま、そのあたりは私の方の話で書くわ」
咲「ぼかしたつもりだったのに…
読み取る人は読み取るんですね」
簀巻き咲とのギャップ>
簀巻き咲
「こんなうじうじした私より
いつもの私の方が部長にお似合いだと
思いませんか?」
久「いつもの私て」
ワハハは?>
久「実は決勝の対戦校は全員来てたわ」
智美「送迎は拒否されたけどなー」ワハハ
久咲久しぶりな気>
久「また出た、管理人との時間のずれ」
咲「ここからは逆に久咲が続きます」
イケメンにプロポーズまでして
嫁がいいなんて久さんかわいい!
優希が言うまでもなく久さんかなり
咲さんにべたぼれですね久さんかわいい!
…優希の苦労お察しします笑
自分的には好みでした(^_^)
疑心暗鬼で咲ちゃんが病んでいくと言う妄想を一人で勝手に膨らませてたのはココだけの話デスw
最後になりますが、久さんかわいい!
咲は自分のことを地味と評していたけど、絶対この咲は小動物かわいい。なのに麻雀打つとあの輝きを見せるのだからそら自分の夢であったインターハイに連れていってくれた咲に部長も惚れますわ。
久さんかわいい!あまあま久が好きだ!
咲ちゃんもかわいかった
ドロドロにやんで欲しさもある…
更新いつも楽しみに待ってます!
今回のゆーきと咲さんの関係もなんだかすごくよくてほんわかしました!
久サイドも書きました。
嫁がいい>
久「私サイド読んでもらうとわかるけど、
実は私は一貫して乙女なのよね。
さすがに頼り過ぎだと思ったから、
プロポーズは私からしたけど」
咲「優希ちゃんには苦労かけたなぁ…」
疑心暗鬼で咲ちゃんが病んでいく>
久「これも私サイド読むとわかるけど、
咲は普通に病んでるわ」
咲「だ、だって不安じゃないですか…」
久「だからって数分おきにメールされても
返信できないってば」
小動物かわいい>
久「そうそう!普段とのギャップがすごいのよ!
いざという時乙女になる私と
相性ばっちりなんじゃない?」
咲「そ、そうですか…?自覚ないですけど…」
ブログランキング毎日押してます>
久「ありがとう!正直ランキング結果自体は
あまり気にしてないけど、
応援してもらえる感がすっごいうれしい!」
咲「反応があるとやる気が出ます!」
咲さん、上埜さん>
久「若干異物が混入してるわね。
咲さんかわいい!!」
華菜「キャップは病室に戻るし」
ゆーきと咲さんの関係>
優希「和ちゃんが相談に乗らないから
仕方なくだじぇ」
和「咲さんと誰かのノロケなんて
聞きたくありません!」