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【咲-Saki-SS:久咲】久「あなたが安心できるその時まで!」【あまあま依存】

<あらすじ>
久「これの私サイドのお話よ」
(咲「自信のない私と自信たっぷりな部長」)

<登場人物>
宮永咲,竹井久,片岡優希,その他

<症状>
・だだあま
・依存

<その他>
・あんまり病んでません。ご注意を。


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私は咲の事が好き。

私達は相思相愛なわけだけど、
どっちが先に好きになったのかと言えば、
多分私の方だと思う。
まあ、告白したのは咲の方なんだけどね?


3年生になったばかりの4月。
一気に3人も部員が増えた私は、
正直もう満足してしまっていた。

優希。和。須賀君。

須賀君は男子だから、残念ながらこれでも
インターハイの団体戦には出られないんだけど。

それでも4人で卓を囲めるだけで
私には十分すぎたから。
だから、私はどこか心の中で
諦めちゃってたんだと思う。


『十分すぎるでしょ。
 これ以上望むのは欲張りだわ』


そんな風に妥協し始めていた私に、
新たな希望を与えてくれたのが咲だった。

咲は他の子と違って、
自分から麻雀部に来たわけじゃない。
むしろどちらかといえば
麻雀に対して乗り気ではないとさえ感じた。

それでも、咲の麻雀を見て私は思った。


(この子が…欲しい!)


強く思った。ぞくぞくと興奮が肌をなぞる。
咲は私と同じ、常識の外にいる力の持ち主。


(この子がいれば、大会に出られる…!
 ううん!全国制覇だってできるかもしれない!
 こんな子を逃す手はないわ!)


私はすぐ須賀君に咲の情報を聞きかじり、
その行動パターンを洗い出す。

そして、次に咲が借りるであろう本を
先回りして借りて、落胆する咲を麻雀部に誘い込んだ。
あはは、我ながらちょっと怖いわね。

こうして咲は、私の思惑通り
麻雀部に入部する事になる。


つまり咲は、私が欲しいと思って
意識的に獲得した唯一の部員。

この一点だけでも、私にとって咲は
特別な存在だった。

今思えば、もうこの時から
好きだったのかもしれない。



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咲が入部したきっかけは
半ば無理矢理だったけど。

それでも、私達が仲良くなるのに
大して時間はかからなかった。

元々、常識の外にいる力を持つ者同士。
私達は、麻雀を打つ事で
お互いに深いところで語り合う事ができたから。

卓を囲めば、咲の気配が私に伝わる。
それは時に威圧感であったり、
時に悲しみであったり、時に高揚感であったりする。

私はそんな、咲が面に出さない感情も、
手に取るように感じる事ができる。


「ん?咲、なんか今日調子悪い?」

「あ、やっぱり部長にはわかっちゃいますか…
 実はちょっと寝不足で…」

「なんで部長はわかったんだじぇ?」

「んー、なんか咲の支配力が
 弱まってる気がするのよね」

「いつもの咲の力なら、この牌がこっちに
 来てくれるとは思えないし」

「…またオカルトですか…
 支配力とかありえませんから」


和はそう一蹴するけれど、
私達にとってそれは大切な
コミュニケーションの一つ。
多分、咲もそう感じてくれていると思う。

だからだろう。咲は、
それまで語らなかった
お姉さんへの複雑な思いを、
そっと私に打ち明けてくれた。


「麻雀を通してなら…
 お姉ちゃんと話せる気がするんです」


空を見上げて、そうつぶやいた咲。

多分それは言葉通りの意味ではなくて。
私達がいつも感じているような、
人知を超えた力とか、
そういうのも含めての意味なんだと思う。

そして私も、咲にはそれができると思った。


「…きっと、話せると思うわ。
 今のあなたなら大丈夫」

「だって、私が実際感じているもの」

「…あ…ありがとうございます!」


私の回答に、咲は目を輝かせた。
咲にはその言葉が心底嬉しかったようだった。


この日から咲はわかりやすく私に懐いた。

それからも、私達は麻雀を通して
どんどん仲良くなっていって。

気づけば、麻雀を打たなくても
お互いの心理状態を
読み取れるほどの仲になっていた。



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そんな咲に対する感情が、
私の中で恋愛の意味を帯びたのは、
インターハイの2回戦の事だった。

あの日、私は予想以上に緊張していた。
多分、シードを含む強豪校との対決で
意識し過ぎていたんだと思う。
それは、なんと見せ牌なんて
チョンボをしでかしてしまうほどで。


当然、結果も散々なものだった。


優希があの神代さん相手にほぼ原点で戻ってきて、
まこが稼いできてくれた点棒。
それを、皆を率いなければいけない私が
大量に減らして、チームを危機に追い込んでしまった。

自分の試合が終わって和を見送った後、
私は一人トイレに駆け込んだ。

結果だけ見れば、現時点でまだ2位。
そこまで悲観する結果ではないと思う。

でも1位から転落した2位。
しかも、普段通り打てていれば回避できた2位。
それは私にとって許容できる結果ではなかった。


(どうか…どうか、勝って…!お願い…!!)


皆の前では平静を装いながらも、
私は一人かたかたと体を震わせていた。
結局、副将戦で和は大きく崩れる事はなかったものの、
順位は変わらず2位のまま。
私の体の震えは大きくなる。


でも、咲はそんな私を救ってくれた。


「いってきます!」


不安を見透かされていたのかもしれない。
咲は威風堂々といった感じで控室を去って行った。
そこにあったのは、気弱な咲らしからぬ、
決意を籠めた瞳。


(…咲、大丈夫かしら)


私は、咲が私と同じように
気負い過ぎているのではないかと気になった。

事実、咲は気負っていた。
靴を脱ぐのも忘れて、そのせいで相手に苦戦して
最終的にはプラマイゼロにしてしまった。

でも、多分それは私のせい。
咲は、私の失敗で失ったトップの座を取り返すために。
私を助けるために頑張り過ぎちゃったんだと思う。


それでも、咲は1位で帰ってきた。
しかも、咲は謝った。


「ごめんなさい…いつも通りに打てなくて」


自分の失態を悔いて、次は勝てないかもと涙を流す咲。
確かに、いろいろ考える事はあった。

でも、正直そんな事よりも。
咲が、1位で戻ってきてくれた事の方がうれしかった。


ホテルに戻り、私の横で寝息を立てる
咲の髪を撫でながら、私は一人つぶやいた。


「…ありがとう」


咲は私を救ってくれた。
かっこいいな。咲って私のヒーローみたい。


(って、私何を考えてるのよ!?)


突拍子もなく頭に浮かんだ感想を、
頭を振って否定する。

でも、でも。

思い返してみると、
咲はいつも私のピンチを救ってくれている。
そのたびに、私が咲に
特別な感情を抱いてきたのは事実で。

その事実を前に、私はどんどん頬に
熱が溜まっていくのを感じた。


(…やばい…!やばいやばい!
 私、どんどん咲の事意識し始めてる…!)


自分の気持ちに気づいてしまった。
もう横にいる咲の事をまともに見る事ができない。

私は一人身もだえながら、
寝返りを打って咲に背を向けた。


これが、私が自分の想いに気づいたきっかけ。

多分まだこの時は、咲は私の事を
好きじゃなかったと思う。

咲が私を好きになったのはこの後の。
開き直った私による、それとない猛アタックの結果だもんね?

まあ、だからといって…「憧れてます」なんて
本音はとても言えなかったんだけど。



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そんな私だったから、
咲に屋上に呼び出された時は、
本当に胸がバクバク言いっぱなしだった。


(も、もしかしたら違うかもしれないし、
 まずは何て事ない態度で接しないと!)


情けない顔を見せまいと気合を入れる私。
そもそも告白という大切な部分で
先を越されているところがなんとも情けないのだけれど。

屋上にたどり着いた時、
咲はすでに待ち構えていて。

なけなしの勇気が消える前に
事をすませてしまおうとばかりに、
開口一番で愛の言葉を口にした。


「す、好きです!付き合ってください!」


それは、使い古された飾り気のない台詞。
でもそれを言うために、
どれほどの勇気を振り絞ったんだろう。

私なんか、咲の告白を聞いただけで、
思わず胸がいっぱいになって。
何も言う事が出来なくなっているというのに。


(へ…返事しなくちゃ!)


たっぷり、たっぷりと時間を費やした後。
ふと我に返ってとっさに咲を抱きしめる。

そんな慌てた私が吐いた言葉は、
咲以上にひどいものだった。


「いいわ、咲。その告白、受けてあげる」

「これから…よろしくね?」


我ながら、もう少し気のきいたセリフが
言えなかったのかと思う。
どんだけ上から目線なのよと。
むしろ好きになったのは私の方が先なのにね?


「っ……はいっ…!」


でも、咲はきょとんとした顔を浮かべた後…
しゃくりあげながら涙を流した。

私に縋りついて静かに泣く咲。
そんな咲の肩をさすりながら、
私もこっそり涙を流した。


(ああ、咲…大好き)



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こうして咲と私は結ばれたわけだけど。
予想外だったのは、咲は私が思っていた以上に
重たい子だったという事。

いや、別にメールを数百件送ってくるとか、
逐一行動を監視するとか
そういうわけじゃないんだけどね?

でも、私がちょっとした事で咲以外を優先する度に、
咲はひどく落ち込んで目の光を失っていった。


「あー、咲。ごめんねー。
 今日、学生議会の会議があるから
 先に帰っちゃって」

「あ…はい……」


私の言葉に、さも悲しそうに目を伏せる咲。
そんなに悲しむくらいなら、
「じゃあ一緒に帰りたいから残ってます」
って言えばいいのに。
でも、咲は私の意見を尊重して強く出る事はない。

そんな咲を見て、もっと大切にしてあげないと…
なんて思ったりもするんだけど。

それはそれで、ちょっと違うなって思った。
だって、現時点でも普通にバカップルかって
突っ込まれるくらい仲いいわけだし。

もし仮に今、場当たり的に咲に合わせて
対応を重たくしたとしても、
結局エスカレートして
振り出しに戻っちゃう気がするのよね。

だとしたら…私がすべき事は、
普段の生活で咲を甘やかす事ではなく。

もっと何か、それこそ一生忘れられないような
インパクトのあるサプライズを
引き起こす事なのかなって思う。


そんなわけで、私は咲に対するケアが
必要だと知りながらも、特に対応はしなかった。
そしたら優希に苦言を呈された。


「元部長、もっと咲ちゃんの事を
 可愛がってやってほしいじぇ」

「いやいや、普通にバカップルレベルには
 可愛がってる自覚があるんだけど?」

「普通じゃダメなんだじぇ。
 ぶっちゃけ咲ちゃんはちょっと病気だじぇ」

「…咲ちゃん、元部長に愛してもらえてるのか
 不安に思ってるじょ…」

「あ、うん。知ってるけど」

「知ってたのか!?」

「ま、心配しなくてもいいわ。
 今度、そんな咲の不安を払拭できるような
 とびっきりのサプライズを用意してるから」

「や、サプライズとかじゃなくて
 普通に愛してあげてほしいじぇ」

「今だって和にはキレられてるくらいなんだけど…
 これ以上バカップル化して、
 優希はそれに耐えられるの?」

「…それはそれで勘弁だじぇ。
 でも、サプライズって何するんだじょ?」

「咲を結婚パレードのごとく馬車に乗せて引き回すわ」

「やりすぎだじぇ!?」


ううん、やりすぎでも何でもない。
咲は、きっとこのくらいしないと
愛を実感できないと思う。


「まったく、病的な彼女を持つと苦労するわ」

「…そう思うなら、せめてその
 にやけきった顔を隠すべきだじょ?」


優希は苦笑して、手に持ったタコスを
口にほおりこんだ。



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馬車による引き回しで、
咲は一定の安心を得る事ができたみたいだった。

でも、私が卒業して大学に進学すると知った時、
咲の目からまた光が消えていった。


「ど…どうして大学なんですか?」

「いやー、まだまだ遊んでたいし」


私のモラトリアム全開の発言に、
分かりやすく表情を曇らせる咲。
うん、ごめんね。
そりゃ心配するわよね。

でも、プロに行く前にどうしても
大学で成し遂げておきたい事があった。
それは…


大将としての公式大会出場。


インターハイの時、私が失態を演じながらも
致命傷にならなかったのは、
咲が助けてくれたから。

私の咲への愛情は、そんな憧れに
由るところが大きいと思う。


でも、憧れは言い換えると劣等感とも言える。


今後咲と付き合っていく上でも、
咲と対等になりたいと思った。
憧れの気持ちを消すつもりはないけど、
それが劣等感になるのは困る。

大将になって皆の想いを背負えたら、
少しは咲に近づけるんじゃないかなって思うから。


「大丈夫だってば。
 私の咲への愛情は変わらないから」

「……はい」


明らかに信用できてない咲。
そんな咲の顔を見ると、思わず決意が揺らぐけれど。
私としても、ここは譲るわけにはいかない。
今後も咲を愛していくために。


大学入学後。

咲はどんどん病んでいった。
私と丸一日会えない日が続くにつれて、
メールや電話の回数が増えていった。


『From:咲(恋人)
 ---------------------------------------------------
 久さん、なにしてますか?こっちは部活が終わりました。』

『From:咲(恋人)
 ---------------------------------------------------
 久さん、遊びに行ってもいいですか?         』

『From:咲(恋人)
 ---------------------------------------------------
 私が来たら困る理由とかあるんですか?        』

『From:咲(恋人)
 ---------------------------------------------------
 だって、もう2日も会ってないのに          』

『From:咲(恋人)
 ---------------------------------------------------
 ごめんなさい、迷惑かけてごめんなさい        』

『From:咲(恋人)
 ---------------------------------------------------
 でも、会いたいです。会いたいんです         』


2日会わなかっただけでこの通り。
気づけば咲は、随分と病的な行動を
とるようになっていった。
まあ、そんなところも可愛いんだけどね?

ある日、私はまた優希に苦言を呈された。


『元部長…咲ちゃんを何とかしてほしいじぇ』

「ん?なんかすごい事になってるとか?」

『毎日のように元部長の名前呟いてるじょ…
 でもって暗い顔でずっと
 携帯の画面とにらめっこしてるじょ…』

「大丈夫大丈夫。インカレ時に
 またサプライズ起こすから」

『インカレまで後2ヶ月もあるじょ!?
 このままじゃ、下手したら
 部長刺されちゃうじょ!』

「あはは、咲に刺されるかぁ。
 それはそれで仕方ないかもね?」

『だ、駄目だじょ…なんか元部長まで
 病んできてるじょ…!』


電話の先で、がっくりとうなだれる
優希の姿が目に浮かぶ。
言われてみれば、今の咲を普通に愛せる時点で、
私も普通におかしいのかもしれない。

でも、今回は仕方ないのよね。
部外の咲とイチャつきながら目指せるほど、
インカレの全国制覇は甘くないし。

正直咲と並びたいというのは私の我儘にすぎないから、
今馬鹿正直にそれを告げたら、
「そんなのどうでもいいから一緒にいてください」
とか言われちゃいそうだし。

だから…もうちょっとだけ、待っててね?
絶対、いい結果を持ってくるから。



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--------------------------------------------------------



インカレの決勝戦。
私は新しい仲間と円陣を組んだ。


「ここまで来たら優勝以外ありえません!
 全力中の全力で行きましょう!!」


なんて、一年生のくせに仕切っちゃったりして。
そんな姿を観客席で見て落ち込む咲。

私のわがままで悲しませて悪いけど…
もうすぐその顔を、笑顔に変えて見せるから
どうか許してちょうだい。


こうして始まった決勝戦。
チームは予想通りピンチになった。

そりゃそうだ。元々このチームには
全国優勝するような力はない。

だからこそ、私の真価が問われる。
この状況を覆せなければ、
咲と同じ位置に並んだとは言えない。


「大丈夫です。私が皆を救いますから」


それは、2回戦のあの時に
私が咲に言ってほしかった言葉。

私はそれを皆に告げると、一人
最後のステージに上がっていく。

サイコロを回しながら想いを馳せる。
咲は、こんな気持ちで戦っていたんだろうか。

点棒を失ってしまった私の、
縋るような思いを背中に感じながら。

だとしたら、嬉しいな。


「リーチ!!」


今、私は…そんな咲の横に立つ。



--------------------------------------------------------



ダントツのラスで迎えた大将戦は、
大逆転による優勝で幕を閉じた。


(やった…やったわ、咲!!)


私はそこにはいない咲に語り掛けながら、
一人両手を握りしめた。
インタビューに来た記者の前で、
私は高らかに宣言する。


『この勝利を、私の憧れの後輩に捧げます』

……

『もし連れて来る事ができたら、
 私達の関係について白状しますね?』


私のインタビューを受けて、
観客席から無理矢理引きずりおろされた咲。

記者にマイクを押し付けられて
しどろもどろになっている。


『宮永選手は、竹井選手と
 どういう関係なんでしょうか!』

『そ、それは…』

『咲、ばしっと言ってやんなさい』

『え、えっと…お付き合いさせて、
 いただいてます…』

『おぉー!!お二人はいつ頃から
 付き合ってらっしゃるんですか?』

『高校の秋からよね。
 あ、ちなみに告白は咲の方からです』

『ちょ、ちょっと久さん!?』

『別に隠すような事じゃないでしょ?
 あ、それとも将来的には
 私から離れたいから困るとか?』

『そ、そんな事はないです!
 ずっと…ずっと一緒にいたいです!!』

『あはは…お二人がとっても仲が
 良いのがわかりました!』


目標達成ついでに、
全国ネットのメディアに向けて
熱烈恋愛を暴露した私達。


ここまですれば、咲だって安心するでしょ。


もっともそれは、私から
逃げられない事も意味するけどね。
って、あはは、なんだか私まで病んできてるみたい。



--------------------------------------------------------















--------------------------------------------------------



あれから一年が経った。
今度は咲が卒業する番だ。

かねてより私は考えていた事があった。
咲の高校卒業と同時に…


咲を娶る。


私はもう二十歳(はたち)。咲だって十八。
もうゴールインしてもいいんじゃないかしら?
これ以上、咲を不安にさせたくないし。

そんなわけで、私は食い扶持を求めて
あるチームの事務所に押し掛けていた。


『んー、そうは言うけど厳しいなぁ☆
 プロ雀士ってアイドルみたいな側面もあるんだぞ?』

『プロ入りスタートから恋人ありって言うのは…
 人気の面で随分と厳しいんじゃないかな?』

『そこを逆手に取るのはどうですか?
 いっそバカップル雀士として名を馳せるという事で』

『あはは☆さすがいきなり事務所に
 殴り込んでくるだけあって面白い事言うね☆
 でもそれって…別れちゃったりしたら悲惨だぞ☆』

『……咲と私が別れるなんてありえません』

『お、おぉ…すごい気迫だね…☆
 わかった、ちょっとオーナーと掛け合ってみるね☆』


ほどなくして、瑞原プロは契約書を持ってくると、
苦笑しながら私に微笑みかけた。


『ありだって☆これからは
 チームメイトとしてよろしくね?』


よし、これで条件は整った。


契約書と婚姻届を携えて、
私は咲のもとへと急ぐ。

あの日からずっと気にかかっていた事。
それは、咲から告白をされたという事実。

私は咲の事を憧れの人だと思っているし、
別にそこを変えたいとは思ってない。

でも、恋に落ちたきっかけも、
付き合いだしたきっかけも、
どっちも咲によってもたらされたもので。

この上プロポーズまで咲任せでは
いくらなんでも頼り過ぎってもんでしょ?


だから、プロポーズくらいは私からしたい。


「咲さん。ずっと、ずっと好きでした。
 私と、結婚してください」


そう言って、私は咲の手にキスをした。


「頼りにしてますね?
 私だけのヒーローさん」


なんて笑いかけた咲の言葉を
私は思わず一蹴する。


「や、だから私はヒロインだってば。
 ヒーローは咲」


咲は気づいているのかしら?
あなたは私の事が好きで、
ずっとやきもきしてきたのかもしれないけれど。

私の思わせぶりな態度のせいで、
随分と病んでしまったみたいだけれど。

でも、本当は私の方が先に好きになったのよ?
ずっと、ずっと好きだったの。

私にとってあなたは憧れの人。
そして、私を支えてくれる大切な人。

全部知ってみればわかるでしょ?
私がヒロインで間違いないの。
ヒーローに一途に恋するヒロインで。

だから、あなたがその愛を疑う必要はない。
それでも、まだ信じられないというのなら…


私が、何度でもサプライズを起こしてあげるわ!
あなたが安心できるその時までね!


(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2015年01月11日 | Comment(13) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
久さんかわいい!
久々に乙女な久を読んだ気がす…。
あと、準決勝→2回戦じゃね?って思いました。
Posted by at 2015年01月11日 10:11
アイドル的な側面……なるほど! だからはやりんもアラフォープロも未婚なんですね!
Posted by at 2015年01月11日 10:24
久さんも相当惚れ込んでいるだろうとは思ってましたが、まさか咲さんよりも前から惚れていたとは‥素晴らしい。久さんかわいい!
タコスがさりげに良い子なのも良かったです(笑)


大将で逆転とは‥インハイ時の久さんと同じ状況で恋に落ちたであろうインカレメンバーが、久さんのインタビューを見て「ああ‥そうなんだ‥。」ってなっている姿が目に浮かびますね。そしてその子が「あの子に勝てば少しは振り向いてくれるかな」と考えているところに咲さんが入学して麻雀を楽しまされて目から光が(以下略)
Posted by at 2015年01月11日 11:06
部長視点から見れば咲が入ってきたのは本当に奇跡みたいなものだったんだろうなぁ。その上大抵の場面で清澄を救ってきたのも咲なわけで……
そう考えると咲→久になる前に久→咲の方が出来上がるのも必然なきがしてくる。
しかし2年間まともに麻雀打てなかったのに愛宕ネキと打ち合える久さんの潜在能力はそうとうなもんだよなぁとおもったり。
Posted by さいふぁ at 2015年01月11日 11:10
だんだん久咲が当たり前になってきて、和の存在が薄れていく・・・w
Posted by at 2015年01月11日 14:47
コメントありがとうございます!

準決勝→2回戦>
咲「ご指摘ありがとうございます」
久「しれっと訂正したわ!」
久「イケメンと乙女両方楽しめるお得な女…
  それが私!」

はやりんもアラフォープロ>
はやり「はやりはファンのみんなが恋人だよ☆」
健夜「だから私はアラサーだってば!」
恒子「別にこれすこやんだって言ってないよね?」
健夜「……っ!」

咲さんよりも前>
久「理由は本編で書いてあるけど、
  これで好きにならない方がおかしいわ!」
咲「そ…そうですか…///」

インカレメンバー>
咲「本当にこれですよね…
  絶対余計な虫がたくさん生まれてますよ」
咲「今のうちに、叩き潰しておかないと…」
久「こらこら、病んじゃだめよ?」

久→咲>
久「和や優希も十分奇跡のたぐいだと思うけどね。
  やっぱり咲は別格だと思うわ」
咲「でも部長もそうですよね。全国レベルの子
  隠れ過ぎだと思います」

和の存在>
久「原作で頑張ってもらいましょう!」
和「フォローする気なしですか!?」
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2015年01月11日 15:15
いや〜いつも予想が外れて面白いです。部長が猛アタックして咲さん振り向かせた事とかサプライズが計画的だった事とか予想以上に部長が咲さんに惚れ込んでてニヤニヤしてしまいました。まあ咲さんはカッコ可愛いからしかたないですね(笑)
咲サイドでカッコイイ部長、久サイドでかわいい部長とか今回もいろいろ堪能させていただきました
Posted by at 2015年01月11日 16:45
久さん可愛い!笑
原作でも久さんの2回戦の不調を咲さんは気付いてたり、準決勝のときの「可愛いっていわれちゃった」とかもう…
滾りましたね!!!笑
これからも楽しみにしてます!
更新頑張ってください!
Posted by at 2015年01月12日 00:09
あぁ〜、久咲好きなんじゃ〜
ぐれいとじゃ〜
Posted by at 2015年01月12日 02:46
部長は絶対乙女だと思ってたのでこういう部長は大歓迎です!
 まぁ、行動派いつものかっこいい部長でしたけどね。一粒で二度おいしい!
Posted by at 2015年01月13日 00:58
予想が外れて面白い>
咲「むしろどんな予想してたのか知りたいですね」
久「実は私が真っ黒だったとか?」

原作でも>
久「あそこだけ何回読んだことか…!」
咲「部長が可愛いのは私と居る時だけ
  なんですよね」
咲「あ、更新も頑張ります!」

久咲好き>
咲「結構マイナーだと思うのに、
  意外に楽しんでくれる人が多くて
  嬉しいです」
久「このブログだけ部キャプ、咲和が
  ほとんど出てこない魔境と化してるわね」

部長は絶対乙女>
咲「部長の真価はかっこいいくせに
  どこかか弱いところだと思います」
久「多分好きな人にはべたべたあまえるわね」
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2015年01月13日 20:07
リク受けありがとございます。コメントだけしてお礼してませんでした
全国編2回戦咲がトップになった時部長すごくうれしそうだったのは、そうようことだったんですかね
Posted by at 2015年01月14日 15:24
部長すごくうれしそうだった>
咲「部長ってけっこう気にしいですよね。
  人には大丈夫とか言うくせに」
久「き、気にしない人の方が珍しいでしょ?」
咲「いえ、責めてませんよ?かわいいです」
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2015年01月14日 20:39
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