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【咲-Saki-SS:照菫】照「バレンタインのおまじない…?」【ヤンデレあまあま】

<あらすじ>
照は菫とバレンタインデーに
チョコ交換をしたことがない。

互いに多数のファンを持つ二人。
そんな二人は、ファンからだけでも
うんざりするほどの量のチョコを
もらう事になるからだ。

暗黙の了解となったルール。
だがそれは、一人の空気を読まない
1年生によって破られる。


「二人ともちゃんとチョコ作ってきてね!」


高校生活最後のバレンタインデー。
最初で最後のチャンスに、
本気で挑みすぎた照の結末は…?


<登場人物>
宮永照,弘世菫,大星淡,亦野誠子,渋谷尭深

<症状>
・ヤンデレ(かわいい)
・あまあま
・狂気
・共依存

<その他>
・バレンタインSS

※あまあまですがヤンデレ風味は
 それなりに入ってます。初心者の方はご注意を。



--------------------------------------------------------



バレンタインデー。

多くの女子にとって決戦の日であるそれは、
私達にとっては苦行の日と変わる。

寮を出たらすでに寮生が列を作って待ち構えている。
ご飯を食べていたら脇にチョコの山ができる。
部屋から食堂への往復作業の間だけで、
段ボールが一箱埋まる事になった。

朝から一仕事を終えた気分。
さすがにこれが一日続くと思うと
気が重くなる。

お菓子と言えば宮永照、
なんて自他ともに認めるお菓子好きの私だけれど、
これはさすがにやり過ぎだ。

もらえるのは嬉しいけど、
さすがにこの量だと食べる前にいくつかは
融けるか賞味期限が来てしまうだろう。


「…菫も、きっと大変なんだろうな」


お菓子好きの私ですら辟易しているのだから、
そうでもない菫はさぞ困惑しているだろう。
そう思うと、私の中に逡巡の気持ちが生まれる。


私の手の中には、昨日一晩かけて
作ったチョコレート。

そう。私は今回、
他の女子と同じ土俵に上る。


今まで菫にチョコを渡したことはなかった。
逆に迷惑になるとわかっていたから。

菫からチョコをもらったこともなかった。
お互い様だと笑いあった。


…本当は菫に渡したかった。
菫のチョコが欲しかった。


結局今までは渡せずじまいだったけど。


今まで私は、チョコを渡してくる子達の
気持ちがわからなかった。

どう考えても本人が迷惑しているのに、
なぜそれでも渡してくるのか。
自分でも作ってみた今、
その気持ちが痛いほどによくわかる。

きっと彼女たちも考えただろう。
迷惑になる、渡さない方がいいかもしれない。
そう考えて、それでも…


自分のチョコは特別扱いしてくれるかもしれない


そんな一縷の望みを籠めて、
くじけそうになる心を奮い立たせて
決死の気持ちで渡してきたのではないだろうか。

だって、今の私がそうだから。



--------------------------------------------------------



「…疲れた」


私は部屋に戻ってくるなり、
ドアにもたれかかってずるずると滑り落ちた。

今日はバレンタインデー。
そう、乙女たちの決戦の日。
私にとっては受難の日。

虚ろな視線で部屋を眺める。
段ボールいっぱいに
詰められたチョコレートが
部屋のど真ん中を我が物顔で占拠していた。

試しにひとつ手に取って、
その包装を解いてみる。

製品表示…なし。
つまりは手作りチョコレート。
それは捻くれた見方をすれば、
賞味期限が短いという事だ。

思わず今日何度目かのため息を一つ。


だが、彼女たちを責める気にはなれない。
私だって一介の女子高生だから、
彼女たちの気持ちは痛いほどにわかる。
そして、尊敬の念を禁じえない。
なぜなら私は…


まだ一度も照にチョコを
渡すことができていないのだから。


だが、今年は状況が違う。
今年こそ照にチョコを渡してみせる。

私は冷蔵庫から取り出した手作りチョコレートを
専用の鞄に大切にしまい込んだ。



--------------------------------------------------------



事の起こりは淡の一言から始まった。



「ねーねー、虎姫のみんなはバレンタインデーに
 友チョコ配ったりするの?」

「去年はやったよ。ただ、
 宮永先輩と弘世先輩は除いたけど」

「え、なんでその二人を除いちゃうの?
 むしろメインじゃん」

「ああ、大星は1年生だから知らないのか」

「…そんな淡ちゃんにクイズ。
 去年、宮永先輩と弘世先輩はそれぞれ
 何個チョコをもらったでしょうか」

「あー、そういう事かぁ。
 それぞれ100個くらいとか?」

「…答えは、宮永先輩が段ボール5箱分、
 弘世先輩が7箱分でした」

「段ボール箱!?単位おかしいでしょ!?」

「まあそんなわけで、バレンタインデーに
 お二人にチョコを渡すのはむしろ迷惑だから
 遠慮させてもらったんだ」

「…配慮してくれて助かる」

「えー!そんなの知らないよ!
 私はがっつり手作りチョコ作って渡すからね!」

「空気読めよ」

「だってそういう事なら、
 逆に私のチョコが一つ増えようと一緒でしょ?
 そもそもそこらのうぞーむぞーと
 私のチョコじゃ重みが違うじゃん」

「そんなうぞーむぞーのせいで
 虎姫がチョコ交換できないなんて意味不明!
 他のは捨てちゃって私達のだけ食べればいいんだよ!」

「さすが大星。唯我独尊にも程がある」

「えっへん!」

「いや、褒めてないからな?」

「というわけで、二人とも
 ちゃんとチョコ作ってきてね!」

「聞けよ」


亦野はやれやれと呆れ返っていたけれど。
淡の言葉に、私は目から鱗が落ちる思いだった。


『私のチョコは重みが違う』

『他のは捨てちゃって私達のだけ食べればいい』


確かに驕った物言いではある。
でもそれは本質をついている。

私だって菫からチョコが欲しいし、
それによってチョコが一つ増えたからと言って
気にもしないだろう。


そっか…じゃあ私も、
菫にチョコを渡していいんだ…


しかもあつらえ向きに、淡はチョコを
渡しやすい状況まで整えてくれている。

私は淡に感謝しながら、さっそく
チョコの作り方を復習し始めた。



--------------------------------------------------------



「こんな事実は知りたくなかったな…」


チョコの作り方を検索した時に、
ちらりと目に入った一つの記事。

それは、私に悪寒を感じさせるに十分な内容だった。


『バレずに血を入れる方法』

『バレずに髪の毛を入れる方法』

『バレずに爪を入れる方法』


普通にチョコの作り方を検索した私が
辿り着いたくらいなのだから、
きっとそれなりに需要があって
上位に来ているんだろう。

なら、私が今まで食べた中にも、
きっとこれらが混入した
チョコがあったに違いない。

そう考えると気持ち悪くなった。
今年のバレンタインは
チョコを受け取るのを
やめようかなとすら思う。

なのに、私はそのサイトを閉じる事はできなかった。
気づけば私はそれを熟読して、
さらにはサイトをお気に入り登録していた。


私の血が入ったチョコを菫が食べる。
私の血が、菫のそれと混ざりあう。
なんて素敵なことだろう。

考えただけで体が熱くなり、胸の鼓動が早くなる。
なるほど、人気があるわけだ。


「血…どのくらい入れていいのかな」


私は引き出しにしまったカッターを探しながら、
一人静かに呟いた。



--------------------------------------------------------



淡のおかげで今年こそ
照にチョコが渡せるかもしれない。

私は逸る心を抑えながらも、
普段通りを装って虎姫ルームの扉を開いた。


「へぇー、照はトリュフなんだー」

「口の中で生チョコが蕩けていくのが好き」

「大星は…よりによってケーキか」

「よりによってって何さ!
 そこは『ケーキなんて作れるんだすごい!
 一生ついていきます』って言って
 土下座するところでしょ!?」

「なんでだよ」


そこではすでに私以外のメンバーは勢揃いしていて、
めいめいが持ってきたチョコを広げて
会話に花を咲かせていた。


「お疲れ様…虎姫だけでも結構な量だな」

「お疲れ様です。まあ、4人分×4ですからね。
 大星はよりによってケーキですし」

「土下座したら食べていいよ!」

「ケーキは食べられないようだから3人分か」

「ああ、嘘です!食べてください!」土下座


淡といつも通りの馬鹿話をしながらも、
私は一人密かに緊張していた。

私は鞄から自分が作ってきたチョコを取り出すと、
そっとテーブルに隅っこに置く。
私のチョコを、照は喜んでくれるだろうか。


ちらりと照の方を覗き見る。

珍しく室内で冬服のブレザーを着こんだ照は、
いつも通りの無表情でチョコを
口いっぱいにほおばっていた。

…まあ、こいつならまずくなければ喜んでくれるか。



--------------------------------------------------------



キーンコーンカーンコーン…


「あ、もうこんな時間か。
 じゃあ、今日はお開きにするか」

「そうだね」


高校3年目にして初めて菫と行った
チョコ交換もお開きとなり、
後は帰るだけとなった。

でも、私の戦いはここからが始まり。
さっきのはあくまで友達としてのチョコ。
まだ、本当に渡したいチョコは渡せていない。

寮に戻れば私たちに暇はない。
渡すことができるとしたら
このタイミングしかないと思う。
何とかして、菫と二人っきりにならないと。

でも、宴が終わっても菫は
席を立とうとはしなかった。


「あれ?菫先輩帰らないのー?」

「ああ…今帰ると待ち構えていた生徒に
 忙殺されそうだからな…
 夕飯時を狙ってひっそりと帰るさ」

「へぇー、人気者はつらいねぇ。
 じゃぁテルもそんな感じ?」

「…!うん。いい案だから便乗させてもらう」

「そっかー。じゃぁ私達は先に帰るねー」


帰り支度を整える淡たち。
去り際、すれ違った淡は
ぼそっと私にだけ聞こえるように呟いた。


『頑張ってね』


私は内心驚きながら振り返る。
淡はいつものように勝気な笑顔を浮かべながら
手を振って去って行った。

もしかしたら今回の友チョコ交換も、
今こうして二人になるチャンスを作ってくれたのも、
ただの偶然なんかじゃなくて。

私の想いに気づいた淡が、こっそりと
応援してくれていたのかもしれない。


『ありがとう』


そっと小さく呟いた。
もう淡には聞こえないだろうけど。

私は意を決してこぶしを握る。
淡からもらった勇気がかき消えてしまう前に、
さっさと勝負に出てしまおう。

私はいつものように菫の隣に座る。


「菫、お菓子も作れたんだね。
 美味しかった」

「まあ家事については一通り
 教え込まれたからな。
 お前のトリュフも美味しかったぞ」

「それだけど…菫には
 もう一つ別のチョコを用意してる」

「もう一つ?」

「そう。今まで、変に遠慮して渡せなかったから」


私は別の鞄に大事にしまっておいた
それを取り出すと、菫の前に差し出した。


「もらってくれる?」


菫は一瞬あっけにとられたような顔をすると…
次の瞬間はっと我を取り戻したように
慌ててこう返してきた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!
 そういう事なら、私も準備してきてるんだ!」


そう言いながら鞄を漁る菫。
私と同じように普段使いとは別の鞄から
取り出されたそれは、
さっきの友チョコとは明らかに違う
気合の入った包装だった。


「…実は、毎年用意してたんだ。
 結局、勇気が出なくて
 渡せずじまいだったけどな」


照れくさそうに視線を横に逸らしながら
チョコを私に差し出す菫。
毎年準備していた…?
勇気がなくて渡せなかった…?


それは、そういう意味でとらえていいんだろうか。


「菫。今言った台詞。額面通りとらえていいの?」

「…?そんな確認が必要な事を
 言ったつもりはないが」

「毎年用意してたのに勇気がなくて渡せない。
 正直、告白にしか聞こえないんだけど」…

「こっ…告白!?」


私の指摘に顔を真っ赤にする菫。
それを見て私は失望した。
ああ、やっぱり自覚なしだったのか。
菫は時々こういう天然を披露するからたちが悪い。

内心ため息をついた私。
でも、その次に菫が発した言葉は、
私の予想の外だった。


「……そうとらえてもらって構わない」


顔を真っ赤にして、
目じりに薄く涙すら浮かべながら。
それでも菫は言い切った。
そのまま、ぎゅっと唇を噛みしめて、
私の前にチョコを差し出す。


「…こうなってしまったからには正直に言おう。
 これは、私の本命チョコだ」

「お前の事が好きだ。どうか、
 これを受け取ってほしい」


目の前に差し出されたチョコ。
それを持つ手は小さく震えていて。
今、菫が精いっぱいの
勇気を振り絞っている事が伺えた。

思わず熱いものがこみあげてきて視界がゆがむ。
そのままそれを受け取ってしまっても
よかったのだけれど。
でも、どうせなら涙が決壊してしまう前に…
私も、想いを告げてしまおう。


私はチョコごと、菫の体を抱き寄せた。


「て、照…?」

「わ…私も…ずっと、ずっと好きだった」


我慢しきれなかった涙が頬を伝い落ちていく。
湧き上がる衝動そのままに菫を強く抱き締めた。
菫も目に涙を浮かべながら
私を強く抱き締め返す。


「…まず先にチョコを受け取ってくれよ」


なんて、震える声で冗談を返しながら。



--------------------------------------------------------



ひとしきり泣いてお互いの想いをぶつけ合った後。
私達はようやくチョコを交換することにした。


菫から渡されたチョコは
随分しっかりと包装されていて。
幾分の格闘の後にようやく出てきたそれは、
どこか見覚えのあるものだった。


「菫…これ…」

「ウィスキーボンボンだ。
 お前、確か大丈夫だったよな?」


事もなげに答える菫。
違う、私が引っかかったのはそこじゃない。


「…とりあえず、私のも
 包装解いてもらっていい?」

「…その物言いは、もしかして…」


眉を下げながら包み紙を取り除いた菫。
そして、出てきたものを見て吹き出した。


「…お前もだったのか」


そう、私の作ったのも
チョコレートボンボンだった。

ただ気になったのは、作ったものが
かぶったことではなく。
なぜ菫が、わざわざ私に渡すものに
ウィスキーボンボンを選んだのかという事。
チョイスとしてはあまりにも異色過ぎる。

もしそれが、私と同じ理由だとしたら?


「なんでウィスキーボンボンを選んだの?」

「…おまじないの一種だ。お前は?」

「私もおまじない」

「…何を入れた?」

「…当ててみて」


菫は考え込むようなそぶりを見せた。

それは答えがわからないからではなくて、
その答えを言ってしまっていいものか、
判断に迷っている印象を受ける。

菫は散々迷った挙句…
こんな面白い回答を返した。


「私が入れたものと同じもの」

「…それじゃ正解かわからないでしょ」

「確かめるために、お互いに
 チョコを食べてみないか?」


そう言って菫は私のチョコを一つ手につまむ。
菫にならって私も一つ取り出した。

もしこれが私と同じで、中に
菫のものが入っているのだとしたら…


なんて素敵な事だろう。


「「いただきます」」


二人同時に口の中にほおりこむ。
口の中に芳醇なお酒の味が広がっていく。
チョコの甘ったるさとウィスキーの独特な味に
口内が蹂躙されていく中、
私は注意深く不純物の存在を探し求めて…


思わずにっこりとほほ笑んだ。



--------------------------------------------------------



我ながら馬鹿馬鹿しい事をしたものだと思う。
何が恋のおまじないだ。
そんなもので恋が成就するとしたら
世の中に独り身の人間などいない。

なんて断じておきながらも、
私はそのサイトから目を離す事ができなかった。

それは、このサイトが主張するような
「おまじない」としての効果に
希望を見出したからではない。


愛する人の中に、自分の存在が浸透していく


そんな、狂気じみた行為に
陶酔してしまったからだ。
正直、自分がそこまで
狂っているとは思わなかった。


もっとも多い量を入れる事ができ、
それでいて露見しにくい方法を模索した。
一説によるとラズベリーを入れるとバレないだとか、
より強い味で存在を隠してしまうのが
一番のようだった。

だから私はウィスキーボンボンを選んだ。
ウィスキー自体が強烈でくせのある味だし、
食べ慣れていなければ味の違和感にも
気づきにくいと思ったからだ。

なによりこれなら、
ウィスキー部分に直接血を液体のまま
注入することができる。

滴る血を計量カップに流し込み、
ウィスキーと一緒に封入する。
狂気に満ちたチョコレートの完成だ。

我ながら狂っている。
でも仕方ないだろう。
3年越しの恋。しかも、今度こそ
ちゃんと渡せるかもしれないのだから。


そんなわけで、照が同じく
ウィスキーボンボンを持ってきた時。
私は思わず期待に胸が膨らんだ。

いつも室内では脱いでいる
ブレザーを着ていた理由。
手首を露出しない理由。
ウィスキーボンボンを選んだ理由。

それが、もし私と同じ倒錯したチョコを
作るためだったとしたら?


私はチョコをほおばりながら、
照の味を追い求める。

ウィスキーの中に、かすかに鉄の味がする。

私はうっとりと目を閉じて、
その味を反芻するように舌の上で転がした。


「…美味しいな。お前のチョコ」

「菫のも美味しい」

「私には答えがわかった。
 お前が入れたのは、私が入れたのと同じものだ」

「…私も分かった。嬉しい。
 同じ事を考えていたなんて」


照が蕩けるような笑みを浮かべた。
思わず私は目を見開く。
別に、営業スマイル以外の笑顔を
見たことがないというわけでもないが…


ここまで自然で、それでいて
蠱惑的な笑顔は初めてだったから。


「っ…お前、そんな表情もできたんだな」

「…?自分ではわからないけど…どんな表情?」

「見てるこちらが狂ってしまいそうな笑顔だ」

「抽象的で分かりにくいけど…わかる気がする」

「どっちだよ」

「…多分、今菫が浮かべてる表情でしょ?」


自分の頬に手を当てる。
知らず知らずのうちに、私は
そんな熱に浮かされたような顔を
していたというのだろうか。


照が私ににじり寄る。
手には照の作ったチョコレート。
照は笑顔を浮かべたまま…

私の口元にそれを差し出した。


「はい、あーん」

「…自分の血液入りのチョコを
 あーんさせるとはいい趣味してるな」

「いや?」

「……」


促されるままに口を開けて
チョコを受け入れる。
また、照の血液が私の体内に蓄積されていく。

ひどく体が熱いのは、ウィスキーの
アルコールがもたらすものだろうか?

それとも…はしたない
疼きからくるものだろうか。

まあどちらでもかまわない。
今はこの熱すらも受け入れて楽しもう。


「ほら、今度は私の番だ。口開けろ」

「あーん」


なぜか目をつむって口を開ける照。
思わずその唇をついばんでしまいたくなる
衝動に駆られながら、
私は自分の血液入りチョコレートを
照の口に押し込んだ。

照は味わうように
もごもごと口を動かした後…
ゆっくりと飲み込んでこう言った。


「…美味しい。菫の味がする」


私はついに我慢できなくなって、
そのまま照を押し倒した。


……


こうして私達は結ばれた。
食べる前に成就してしまったが、
これもおまじないの効果と言えるのだろうか。


「菫、来年もチョコ作ってね」

「ああ。今回と同じ特製チョコでいいのか?」

「もちろん。それじゃなきゃ駄目」


まぁ、どちらでも構わないのだけれど。
どの道、私達がそれに見出しているものは、
世間一般とは違うのだから。






(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2015年02月14日 | Comment(14) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
あまあまながらもしっかりと狂気を含んでてすばらです。

無邪気なフリして気を回すあわあわすてき
Posted by マソ at 2015年02月14日 09:45
あわあわはやればできる子。照菫にどう絡んでもいい色しか出ない素敵な子。
このチョコの血液量によっては怜ちゃんドリンクの再来が……
Posted by at 2015年02月14日 09:46


かわいいです(//◇//)
Posted by レガシー at 2015年02月14日 10:09
そしていつの間にか魂ちぎったりとかしませんかねぇ…。

あわあわは空気の読める素敵な子ですw
Posted by at 2015年02月14日 11:22
淡がいないと白糸台はギスギスしちゃいそう。

きっと長野や奈良でも血入りチョコが配られてますね!
Posted by 上上 at 2015年02月14日 11:38
すてきです…!
Posted by at 2015年02月14日 11:53
血や髪なら未だしも爪て。爪て。

ファンからもらったチョコには薬系のも入ってそう。媚薬とか睡眠薬とか。
Posted by at 2015年02月14日 12:30
とても甘くて最高です! お互いに好きなのに一歩踏み出せなかったけど、踏み出すなら一気に踏み込む2人がよかったです。もう他の人のチョコレートなんてただの甘いお菓子なんだろうなあ
Posted by オリ at 2015年02月14日 13:31
尭深「菫『くっ……駄目だ、口移しで味を誤魔化しても、女体盛りで付加価値を付けても、プッチ○プリンの魅力には到底及ばない……そうだ!カラメルソースに自分の血を……』」
菫「し〜ぶ〜や〜!?そのゲームは捨てろって言ったよな〜!?」
Posted by chemis at 2015年02月14日 23:40
あわあわが珍しく空気読める子

チョコレートね...……貰えなかった……
まあバレンタインss書いてたから忙しかっただけだし


とても甘くていいssでした
Posted by at 2015年02月14日 23:41
結構ライトだなと思った

まったく染まってるぜ
Posted by at 2015年02月15日 00:57
照菫キタコレ!!両思いで良かったです(^^)ていうか・・髪と爪はどうやって混入させるの・・(困惑)
Posted by 舞香 at 2015年02月15日 12:51
コメントありがとうございます!
>あまあまながらもしっかりと狂気
菫「季節ものだし最近Twitterから来る人も
  増えてきたから、健全で行こうと
  思っていたんだがな…」
照「気が付いたらこうなっていた」

>あわあわはやればできる子
淡「気配り上手の私!」
誠子「その気配り私にも回してくれよ…
   ケーキきつい…」けぷっ

>かわいいです(//◇//)
淡「でしょー!もっと褒めていいよ!」
照「この自信見習いたい」

>魂ちぎったりとかしませんかねぇ
照「魂をちぎる話を結びつける人が
  意外に多くて驚いている」
菫「それだけ読んでくれているという事だろ」
怜「ちなみに私らはドリンクで乾杯しとったでー」

>長野や奈良でも
咲「まあ当然ですよね」
久「いやそれヤンデレの間だけだからね?」

>すてきです…!
誓子「なるか?そっちに行っちゃだめだよ?」

>媚薬とか睡眠薬とか
菫「もしかして一年前の騒動を知っているのか?」
照「あの時は大変だったね」

>女体盛りで付加価値を付けても
菫「尭深、お前の中で私は女体盛りまでしても
  プッチン○リンにかなわない存在なのか?」
尭深「…」にっこり

>バレンタインss書いてたから忙しかっただけだし
淡「ホントに〜?本当ならアップロードしなよ!」
淡「ハリー!ハリー!!」はっはっ
菫「飢えすぎだろ」

>結構ライトだなと思った
照「書いている私もライトだと思った」
照「このくらいなら大丈夫と思った」
菫「いや、結構重いぞこれ?」

>髪と爪はどうやって混入させるの
照「そのままは無理。刻んですりつぶして
  粉にするとか」
菫「後は焼いた後の奴を使うとかもあったな」
照「現実の話でないことを祈る」
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2015年02月17日 22:11
自分の命を動かす液体を相手に捧げて、自らもそれを取り込む…告白=聴覚、口づけ=触覚だけに留まらず、味覚にも訴える究極の愛情表現だと思います。3年生まで募りに募らせた思慕を伝え切ろうと思ったらここまでやらないと気が済まなかったことでしょう。
相手も同じレベルで自分のことを愛してくれていることが分かったとき、2人はどれだけ満ち足りた気持ちになったことだろう?愛しくて仕方がない相手の一部を味わったとき、どれだけ満ち溢れた気持ちになったことだろう?…何度読み返してもそんな想像の余地がある大変美しいSSだと思います。
Posted by at 2016年06月05日 14:46
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