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【咲-Saki-SS:照和】和「どうか、生きる目的を」【依存】
<あらすじ>
なし。リクエストがそのままあらすじです。
<登場人物>
原村和,宮永照,弘世菫,宮永咲,その他
<症状>
・ヤンデレ
・自殺未遂
・依存
<その他>
以下のリクエストに対する作品です。
・インハイ敗退後、大好きだった咲に嫌われ、
黒化したのどっちが転校先の白糸台で
照と出会って‥‥という照和
※作中で原村和がとる行動は
絶対に真似しないでください。
--------------------------------------------------------
まだ厳しい暑さの残る九月。
私は、東京のある学校の門を
前にして佇んでいました。
その高校の名は、白糸台高校。
私がこれから通う事になる学校です。
「…何の皮肉なんでしょうか」
私は一人唇を噛みしめます。
その名前は今の私にとって、
ほとんど忌み名に等しいものでした。
父が何を思ってこの学校に
私を転校させたのかはわかりません。
意趣返しなんて
下らない事をする人ではありませんから、
単に偶然なのかもしれません。
それでも、私はこの学校だけは嫌だった。
私と、咲さんを引き離したこの学校だけは。
その名を頭に思い浮かべる度に、
私はあの悲しい記憶を
回想せずにはいられないのですから。
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『負けちゃったね』
『…はい』
『これで、和ちゃんともお別れだね』
『…っ、はい』
『まあでも、よかったかもしれないね』
『……』
『負けたの、和ちゃんのせいなんだし。
諦めがつくでしょ?』
『……』
『せっかく部長が、和ちゃんの対戦相手を分析して
対局前に教えてくれたのに』
『思いっきり無視して、その結果飛び終了』
『おかげで、私は白糸台と戦えずじまい』
『……ごめんなさい』
『……』
『そんなオカルトありえません、だっけ』
『今でも、その言葉口にできる?』
『…それ、は』
『…私からしたら、和ちゃんの方がオカルトだよ』
『これだけたくさんの雀士が、
確率と統計だけで説明できない現象を起こしてるのに』
『なんでそれをオカルトだって断じて、
何の対策もしないで平気な顔してられるの?』
『…まあいいや。過ぎた事を言っても仕方ないし』
『じゃあね、原村さん』
『…はい……すいません…でした……』
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最悪の気分で目が覚めました。
目を開いた視界は涙でぼやけています。
全身を虚無感が支配して。
頬を伝う涙をぬぐう事すらできず、
私はそのままの体勢で嗚咽しました。
それでも起きなければいけません。
鉛のように重い体を無理矢理起こし、
私は登校する準備を整え始めました。
「…ひどい、顔ですね」
目の下に大きなくま。頬に残る涙の跡。
鏡に映った自分の顔は、
およそ全ての希望を奪われたように
生気を失っています。
「いっそ死んでしまいましょうか」
誰にとはなく口にして、
心にぽっと灯がともりました。
そんな絶望的な考えに希望の光が灯るほど、
私は病んでしまっているようです。
もちろん、本当はそんな事
できはしないのですけれど。
咲さんを始め、私に関わった人全員に
迷惑がかかりますから。
でも、だとしたら私は。
これからどうやって
生きていけばいいのでしょう。
もう、何もかもなくしてしまった私は。
誰か、生きる目的を私にください。
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「照、知っているか?清澄高校の原村和が
うちに転校してきたらしいぞ」
「…そう」
「…?あまり興味がなさそうだな」
「興味がないというか…
あの子にはあまり触れたくない」
「それに…あの子は多分白糸台には合わない」
「デジタル打ちだからか?」
「それもある。でも、もっと根本的な問題」
「あの子はどこかおかしい。狂っている」
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原村さんについてはよく知っている。
といっても本人との面識はなく、
雑誌で仕入れた知識ばかりではあるけれど。
インターミドルチャンピオン。
デジタルの申し子。
その恵まれた容姿も手伝って、
原村さんの情報はプロ雀士並に
出回っている。
もっとも、私自身は彼女を
そこまで脅威とは感じていなかった。
デジタルの申し子であろうと、
結局のところ大切な対局は
生の人間が顔を突き合わせて行うものだ。
彼女に能力無効化の力でもあるならともかく。
いくらデジタルを極めたところで、
その理の外にいる能力者の敵ではない。
だから雀士としての彼女に興味はなかった。
でも、取材で彼女が残した言葉だけは
私の心に残っている。
『麻雀は確率と統計が支配するゲームです。
能力だなんて、そんなオカルトありえません』
無知の極み。もしくは白痴。
そう取られかねない発言だった。
デジタル打ちを自認する彼女。
そんな彼女が、プロの牌譜を読んだ事がない
という事はないだろう。
いや、プロにまで言及せずとも。
インターハイにだって確率と統計から解放された
超常の力を持つ選手はいくらでもいる。
インターミドルにだってちらほらいたはずだ。
麻雀に無関心な人間ならともかく。
真剣に全国を目指すレベルの雀士なら、
対戦相手の能力を研究しない者なんて
皆無と言っていい。
そんな中、対戦相手の異常な牌譜を
目の当たりにして、全てを偶然で
片づけるとしたら…
それはもはや、愚者の思考停止に過ぎない。
それでも、彼女は雑誌で
事あるごとにこの発言を繰り返した。
さらには、他人が誰であろうと関係がない、
自分の麻雀を打つだけだと言い切った。
病的だと思った。
彼女にとって、確率と統計は絶対。
その世界を揺るがそうとする
能力者の存在を許せない。
そんな彼女にとって、
能力者しかいないチーム虎姫は…
まさに忌むべき存在とも
言えるのではないだろうか。
できれば、このまま関わらず
済ませたいとすら思っていた。
もっともそんな私のささやかな願いは、
空気を読まないある人物のせいで
見事に崩れ落ちていくのだけれど。
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菫のような人間の事を、
心臓に毛が生えていると言うのだと思う。
「自己紹介はいらないと思うが…
こっちが宮永照。麻雀では化け物だが
普段はただのお菓子ジャンキーだ」
それとなく勧誘するのを止めたにもかかわらず、
次の日には原村さんを部室に連れてきた。
まったく、その行動力が恨めしい。
というか一体どうしたら、
この状態の原村さんを
麻雀部に連れてこようなどと思えるのか。
「……」
眼前の原村さんは、光の灯らない
どろりと濁った眼でひたすら私を睨んでいる。
まるで親の仇とでも言わんばかりに。
刺すような鋭利な殺気が、
私の喉元に突きつけられている。
「…菫。原村さん明らかに嫌がってない?」
「ん?確かに勧誘はしたが強制はしていないぞ。
ここに来たのは彼女の意思だ」
「…お話したい事があって来ました」
「…何?」
「なぜ、咲さんを拒絶したんですか」
…なるほど。目的は麻雀ではないらしい。
まったく、いろんな意味で厄介な子だ。
少なからず気分を害した私は、
我ながら柄にもなく皮肉めいた言葉で切り返した。
「私にそれを聞く前に、貴方の家族構成、
家庭内の環境、生い立ち、友人関係、
宮永咲との関係、転校してきた理由、
それらに対する貴方の考え、
全てを私に詳細に説明してほしい」
「…なぜ」
「貴方がしようとしている事は、
そういう事だから」
「私の問いに『なぜ』と思ったならわかるはず。
『なぜ』私は貴方の意味不明な問いに
答える義務があるの?」
「…そうですね。答えざるを得ない
状況を作るしかないようです」
「…ちょっと待て。お前達は
なんでそんなに喧嘩腰なんだ」
呆れたように肩をすくめる菫。
私からしたらこの状況を作り出した菫に
肩をすくめたいのだけれど。
「じゃあ、こうしたらどうだ。
原村さんと照で対局する。
照が負けたら原村さんの質問に答える」
「原村さんが負けたら麻雀部に入部する」
その『いい事思いついた』みたいな顔
不快だからやめて。
ちっともいい提案じゃないから。
「その条件で構いません」
「私が構う。私にその申し出を受ける
メリットがまるでない」
「有力選手が白糸台高校の麻雀部に入部する。
自分が抜けた穴を埋めたい私達には
十分すぎるメリットだと思うが?」
「それともなんだ。お前、
実は負けるかもとか思ってるのか?
お前が勝つなら別にデメリットは皆無だろう」
「その手のありがちな挑発に乗るほど
私は熱血じゃない」
そもそもデメリットはちゃんとある。
仮に私が勝つとしても、
能力麻雀を目の当たりにした原村さんが
気分を害する事は間違いない。
狂人と思わしき人間に
負の感情を抱かれる。
あまりにも大きすぎるデメリットだ。
「わかりました。なら条件を追加しましょう。
私が負けたなら、私はこの件についてもう
宮永さんに質問しませんし、
貴方の前にも積極的には姿を現しません」
「どうせ宮永さんはもうすぐ引退するわけですし、
これなら弘世さんの申し出も満たせるはずです」
「…どうですか?」
真っ黒に落ち窪んだ瞳が
私をじろりとねめつける。
私は反射的に目を背けて、
思わず首を縦に振った。
関わり合いになりたくない。
心からそう思った。
たった一回の対局で縁を切れるなら
それに越した事はないだろう。
私は雀卓の電源を入れ、
サイコロを回すボタンを押す。
緊迫に包まれた対局が始まった。
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対局を開始した途端、
原村さんの背中に眩く輝く翼が生えた。
正直驚いた。人の事をオカルトだと
切って伏せておいて、
自分も立派にオカルトじゃないか。
照魔鏡を展開し彼女を見透かす。
そして私はさらに驚愕する。
そこに広がるのはネット麻雀のように
電子化された世界。
人ではない、魔物でもない。
まるで彼女は電子の中のアバターのようだった。
対面に座る彼女を見やる。
それまでは私への敵意にまみれていたその瞳は、
なぜか潤み恍惚したかのように
頬を朱に染めている。
だがそれは、高性能なコンピュータが
その動作に多大な熱を発するのと同じ。
彼女の脳内では今、目まぐるしく計算処理が
実行されているに違いない。
なるほどそんな彼女には、
確かに相手なんか関係ないのかもしれない。
私の事も菫の事も、
ただのノンプレイヤーキャラクター…
つまりはコンピューターにしか
見えていないのかもしれない。
ぞくりと鳥肌が立った。
この子は、何もかもがアンバランスすぎる。
赤の他人のプライベートに
土足で踏み込んできたかと思えば、
対戦では完全に機械と化す。
人の事をオカルトと断じながら、
自分はそれ以上に狂った世界を展開している。
絶対に勝たなければと思った。
我ながらひどい言い草だけど、
こんな子に付き纏われたら
たまったものじゃないから。
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「…ロン。12000。
これで原村さんの飛び終了」
対局は私の勝利で終わった。
結果だけ見れば圧勝だけど、
私は一人安堵の息を吐く。
こんなに神経をすり減らした
対局は久しぶりだ。
「…参りました」
そう言って頭を下げる原村さん。
私はその姿に奇妙な違和感を覚えた。
あれほどまでに強烈な殺意を
漏らしていたにしては、
あまりもあっさりと
引き過ぎじゃないだろうか。
そもそも、彼女がこの勝負を受けた事自体
違和感を感じる。
元々原村さんの打ち方は、
確率と統計に基づいて期待値を計算するもの。
それらを度外視する私達相手では
彼女の計算は意味をなさない。
そもそもそれを除いたとしても、
能力を使わない麻雀では、
「必ず勝てる」とは断言できないものだ。
なのに彼女はなぜ、こんな勝負を了承した?
頭を上げた彼女の目を見て、
私は思わずたじろいだ。
さっきまであれほどどろついた意志が籠った瞳…
それが、まるで感情が立ち消えたかのように
意志を失っている。
ひどく胸がざわついた。
何か嫌な予感がする。
思わず声をかけそうになって、
その言葉を飲み込んだ。
だめだ。触れてはいけない。
こういった手合いに
不用意に手を差し伸べると
碌な目に合わない。
私はそれを…
咲で嫌という程経験したじゃないか。
「約束通り、今後宮永さんの前には現れません」
「本当に申し訳ありませんでした」
機械的な言葉でそう告げると、
原村さんは部室を後にした。
その淡々とした所作がまた、
私に強い違和感と悪寒をもたらした。
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「……ん?」
静かに自室で読書を嗜んでいたら、
寮内がにわかに騒めき立つのを感じた。
白糸台はお嬢様学校だから、
寮にいる子達も基本的に大人しい子が多い。
こんな風に、寮全体が喧騒に
包まれるのは初めてだった。
あの時から感じていた胸騒ぎが、
無視できないほどの激しさで私を襲う。
私は反射的に部屋を飛び出していた。
向かったのは原村さんの部屋。
案の定、というべきだろうか。
騒ぎの中心はこの部屋だった。
野次馬をかき分けて中に入る。
そこでは菫が真っ青な顔をして
原村さんを介抱していた。
菫は…原村さんの左手を布で圧迫している。
白かっただろう布は、
鮮やかな赤色に染まっていた。
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目を開けたそこはまだ現実でした。
お風呂場にいたはずの私は、
なぜかベッドに安置されていて。
思わず暗澹としたため息をつきながら、
私はその身を起こしました。
どうやら私は死ねなかったようです。
「…なんでこんな事をしたの」
思わずびくりと身を震わせます。
声のした方に目を向けると、
宮永さんが私を鋭い目で睨んでいました。
その目は赤く腫れていて、
頬には涙の跡が残っています。
「…もう生きていく理由が見つからないからです」
咲さんの望みを潰してしまいました。
せめて力になれればと、
宮永さんに突っかかって。
挙句あっさり負けて、
手がかりすら失ってしまいました。
もう、生きているのがつらいんです。
「…そんな理由で、周りの人を苦しめないで」
宮永さんの目にまた涙が浮かびます。
なんで私のために泣くんですか。
不愉快です。
その優しさを、10分の1でもいいから
咲さんにかけてあげれば、
きっと咲さんは救われるのに。
悲しみと憎しみが私を支配して。
気づけば私は、宮永さんを睨みつけていました。
「…死のうと思ったくせに、
私を睨む気力はあるんだ」
「貴方が咲さんに手を差し伸べてくれるなら、
私だって死なずに済むんです」
私に睨みつけられた宮永さんは、
決して怯む事なく。
でも、やがて諦めたように、
ため息をつきながら言いました。
「…わかった。貴方が
生きる目的を作ってあげる」
「これから、貴方と私が対局した時に。
貴方が上がる度に、私は一つ個人情報を晒す」
「続けていけば、いずれ咲に繋がる。
…きっと、貴方の知りたい情報にも」
「これでどう?」
「…私はもう宮永さんには極力近づかないと
約束したばかりですが」
「撤回していい。関わるだけ関わっておいて
勝手に絶望して死なれるのはいい迷惑」
そう宮永さんは吐き捨てました。
こうして私は、敗者復活の権利を手にしたのです。
そして、生きる目的も。
少しずつでも情報を集めて行って、
やがてこの人が咲さんを拒絶する理由がわかれば。
そして、その原因を取り除く事ができたら。
私はもう一度、咲さんの前に
顔を見せられるでしょうか。
あの時犯した、あまりにも深すぎる罪を、
許してもらえるでしょうか。
--------------------------------------------------------
原村さんと毎日のように打つようになった。
まあ、彼女の生きる目的はそれしかないのだから
当然なのだけれど。
私達は打ち続ける。
互いに剥き出しの感情をぶつけあいながら。
「…私は、今までいろんな学校を転々としてきました」
「仲のいい友達ができてもすぐ離れ離れになります。
毎回友達と別れる度に、
身を切られるような思いをしてきました」
「両親は私の都合は聞いてくれません。
自分にも他人にも厳しい人ですから、
私は甘える事もできませんでした」
「もし、姉か妹がいたなら
どんなによかっただろうと、
常々思っていました」
「自分勝手な考えなのは重々承知ですが…
私は、貴方を許せません」
「姉が妹を支えなくてどうするんですか」
原村さんは、自分の感情を隠す事なく
ストレートに私にぶつけてくる。
「私だって好き好んで今の状況に
甘んじているわけじゃない」
「第一、貴方は特に事件があったわけでもない。
単に家族と話し合えばいいだけの話」
「それもしないで自分の意思で
悲劇のお姫様を気取っておきながら、
他人のプライバシーは糾弾するの?」
「私達の間に、どれだけ暗い過去があったのか…
何も知らないくせに」
「だから、それを聞かせてくださいと
言っているんです」
「話したからなんだというの?
苦しむ人が増えるだけ」
彼女の言葉は私の心を抉るけれど、
だからこそ私も遠慮なく本音を曝け出せる。
彼女には、今まで菫にも淡にも向けなかった敵意を、
気兼ねせずぶつける事ができた。
ちなみに、私は原村さんに
重要な情報を与えるつもりはない。
私が勝ち続けるうちは、
彼女は私から情報を引き出そうとやっきになる。
そうやって、対局しながら内に秘めた苦痛を
吐き出させる事で、
傷を癒す事ができればと思っている。
もっともこれは、彼女のためだけではない。
実際こういう関係になって気づいた。
私達は、お互いに傷を舐めあっているのだ。
原村さんは、咲に捨てられた辛さを
私に当たる事で癒す。
私は、原村さんを糾弾する事で
ため込んでいた鬱憤を晴らす。
結局は、私もどこか
この行為に癒しを求めているのだろう。
私達のやり取りを横目で見ていた淡が
怯えるようにつぶやいた。
「…て、テルって…こんなに怖かったっけ」
「…あいつにもいろいろと思うところがあるんだろ。
私達には気を遣ってぶつけられなかった苦しみが」
菫が怯える淡の肩をそっと抱く。
こうなる事がわかっていたから、
菫にはあらかじめ淡を気にかけるように頼んでおいた。
私が淡を連れてきたのに放置して悪いけど…
今は、この問題児が最優先だから。
私達は、互いに感情をぶつけ合いながら打ち続けた。
居心地が良かった。負の感情すら
気兼ねせず吐き出せる相手。
気づけば原村さんと私は、
いつも一緒に居るようになった。
「最近、私達いつも一緒に居るね」
「貴方から情報を引き出すためです。
事が済めばさっさと離れます」
「そう。ならまだ当分先になりそうだね」
もっとも…その関係は、とても
良好だとは言えなかったけど。
--------------------------------------------------------
ある日の事。いつものように和と打っていた私に、
唐突に久からの連絡が入った。
『やっほー』
「お久しぶり。どうしたの?」
『ようやく咲が自分を取り戻したからご報告』
「…!……そう」
『ま、と言っても伝えたいのは貴方じゃないのよ。
和に伝えておいてくれない?』
『あの時の咲はあまりの絶望に我を失っていた。
だからいつも一番そばにいて、
自分を支えてくれていた和に当たってしまった』
『咲にとって、和は一番感情をぶつけやすかったから。
でも咲は、あの時和に言った言葉をひどく後悔してる』
『ごめんなさいって…
咲がそう言ってたって伝えておいて』
「なんでそれを私に言うの。
和に直接言えばいいでしょ」
『あの子、長野を出る時に携帯を解約したのよ。
当然、引っ越し先の情報も教えてもらってないわ』
『多分、過去の自分と決別するためなんでしょうね。
そんな状態で私達から話しかけても
いい結果になるとは思えないのよ』
『正直ずっと気がかりだったわ。
まあこっちも咲の相手で手いっぱいだったから
どの道遠方の和にまでは手が回らなかったけど。
あの子ったら、もう何度自殺未遂した事やら』
『照が和を支えてくれて本当によかったわ。
これからもよろしくね?』
「……」
『じゃ、伝えておいてね〜』
一方的に喋りたいだけ喋って、
久は通話を切ってしまう。
相変わらず飄々とした人だ。
でも、感情が重すぎる咲には、
あんな人がちょうどいいのかもしれない。
一人物思いにふけっていたら、
和の声で現実に引き戻された。
「…照さんの番ですよ」
通話で対局を中断させられていた和は、
特に気にする風でもなく再開を促した。
対して私は、この事実を
和に告げる事をためらった。
咲が申し訳ないと思っていた。
この事実を知れば、和は劇的に改善するのだろう。
でも、なぜかそれを伝えたくない私がいる。
どうしてなのか、私にもよくわからないけど。
それでも結局、私は逡巡しながらも
和に伝える事にする。
でも…和の反応は意外なものだった。
「別に…どうでもいい事です」
「別にって…和、咲に嫌われたから
絶望してたんでしょ?」
「その咲が、もう怒ってないと言うなら、
喜ぶべきところじゃないの?」
「確かに、咲さんの心に
平安が戻ったのは喜ばしい事です。
もちろん、私を気遣ってくれる気持ちも」
「でも、あの時咲さんが言った事は間違いではありません。
結局は、私が与えた傷に対して、
咲さんが努力して自分で
立ち直っただけじゃないですか」
「私が罪を犯した事実は変わりありません」
そう言って和は自らを嘲笑った。
その笑顔を見て、私は胸が苦しくなる。
ああ、一体この子に何をしたら。
咲の呪縛から解き放つ事ができるのだろう。
--------------------------------------------------------
来る日も来る日も打ち続けた。
何度か上がられる事もあったけど、
それでも和が私達の真実に
たどり着くには程遠く。
和が答えを知る事のないまま、
私は卒業式を迎える事になる。
もう荷物も撤去して、
どこか寒々しく殺風景な個人ルーム。
私は和と二人、サシで向かい合って打っていた。
「こうやって照さんと打つのも
これで最後ですね」
「私はOGとしてそれなりに顔を出すつもり。
別にこれで終わりという事じゃない」
「そうかもしれませんが、
私の中でここを一つの
区切りにしたいと思います」
いつになく決意を籠めた目を向ける和。
その気持ちはわからないでもない。
今日を境に、今までのように
毎日長時間打つ機会は無くなるのだから。
でも、だからこそ負けるわけにはいかない。
ここで私が負けてしまったら、
和との繋がりが途切れてしまう。
そこまで考えて驚いた。
私は一体何を考えているんだろう。
私は…和と離れたくないと思っている?
かぶりを振って思考を打ち消す。
卒業式という事で、少し
感傷的になっているだけだろう。
余計な事を考えないようにしないと。
結局この日の勝負も私が勝った。
「ツモ…上がり止め」
「…負けてしまいましたね」
負けたにもかかわらず、和は笑った。
どこか吹っ切れたように、薄く笑った。
嫌な予感がした。
それは、あの時に感じた胸騒ぎ。
なぜそんなものを感じるのだろう。
自分の直感に疑問を覚える。
きっと何かの間違いだろう。
目の前の和からは、
あの時のような狂気は感じられない。
きっと大丈夫だ。
胸の中に渦巻き、
どんどん膨らんでいく不安。
私はそれを無理やり胸を押さえて握りつぶした。
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--------------------------------------------------------
でも、残念ながらその直感は、
間違ってはいなかった。
だって、その夜和は…
ビルの屋上から、
身を投げてしまったのだから。
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
目を開けるとそこは病室でした。
ああ、私はまた死ねなかったのです。
「……」
寝ずの看病をしてくれていたのでしょうか。
傍らには、照さんがベッドに顔を沈めていました。
私が身を揺り動かした事で、
照さんは私が目を覚ました事に
気づいたようです。むくりと上げたその顔は、
あの時以上に涙でぼろぼろに崩れていました。
「なぜっ…!どうしてっ!
生きる目的ならっ…与えたじゃないっ…!」
「なぜ今…貴方はまた命を絶とうとするのっ…!!」
涙ながらに私を責める照さんの手は、
私の手をしっかりと握っていて。
その様に、私はまた胸が
張り裂けそうになりました。
「……」
「…貴方の存在が、私の中で
日々大きくなっていくんです」
「私にとって、貴方は敵でした。
咲さんを苦しめる敵」
「私は、咲さんを助けるために、
敵である貴方に挑み続けていたんです」
「…なのに」
「咲さんの助けになるために
始めた事なのに。
日に日に咲さんの存在が
私の中で薄れていく」
「このまま続けたら、
私は咲さんを過去の存在にして
貴方に乗り換えてしまう」
「私の中で、それは
許される事じゃなかったんです」
私は笑顔を見せました。
その笑顔を見て、照さんはまるで
自分が傷つけられたように顔をしかめました。
照さんは私の手を握ったまま、
目に涙をためて言葉を紡ぎます。
「正直に言う…私は貴方に、
真相を教えるつもりはなかった」
「私が勝ち続ければ、貴方はそれを
目的に生き続ける事ができるから」
「でも、いつしかそれはすり替わっていて」
「負けたくないと思った。
負けたら、貴方との関係が
終わってしまうから」
「死なないでほしい。
私は貴方を失いたくない」
照さんが私を抱き締めました。
私はそれを振り払う事ができず、
その温もりに身をゆだねてしまいます。
ああ、私はなんて醜く、浅ましいのでしょう。
咲さんの事を思えば、即座に
振り払わなければならないはずなのに。
気づけば私の頬から、
一筋の涙が零れ落ちていました。
「私は、最低な女です…
咲さんから、貴方に乗り換えようとしています」
「それでいい…貴方はもう、
十分苦しんだじゃない…!」
「咲の事を考えるなとは言わない…
でも、少しでいいから、私の事も考えて…」
「死なないで」
「……」
もう抗う事はできませんでした。
私は心の中で懺悔の言葉をつぶやきました。
そして、私を抱き締める照さんの背中に
腕を回し、そのまま強く抱き締めました。
咲さん…ごめんなさい
私は、貴方を裏切りました
本当にごめんなさい
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
和は自殺を思いとどまって
くれたようだった。
まだ、完全に咲を
振り切ったわけではないけれど。
それでも、文句も言わず
私の腕の中に納まってくれている。
「こうなった以上言っておく。
私は別に咲が嫌いだから
拒絶してるわけじゃない」
「今の咲にとって、こうするのが最善だと思うから
距離を置いているだけ」
「咲さんが悲しんでいるのにですか」
「麻薬を欲しがっている中毒者に、
麻薬を与える事は優しさになる?」
「……」
あの痛ましい事件のせいで、
私達の関係は変わってしまった。
咲は私に依存してしまった。
ただ私だけを見て、
未来を見る事を止めてしまった。
「私達には一生消えない傷が刻まれている」
「でも私は、その傷をお互いに舐めあって
足を止めるつもりはなかった。
それじゃ、誰も救われないから」
「だから私は咲から離れた。
立ち直って、健全な未来を掴むために」
もっとも、そしたら今度は
それ以上に手の付けられない病人に
捕まってしまったわけだけど。
「……」
咲と自分を重ね合わせたのだろう。
和が若干硬い声音で問いかけてくる。
「…なら、私からもいずれ離れるんですか?」
「…むしろ最初から関わりたくないと思っていた。
貴方は絶対に危険だとわかっていたから」
「でも、もう手遅れ。
結局私は貴方と深く交わって…
結果、私もおかしくなってしまった」
「たとえ異常だとわかっていても…
貴方から離れたくない」
「でも別にそれでもいいと思う。
貴方は咲と違って血の繋がりもないし、
結婚だってできるのだから」
「…そうですね」
会話をする事で改めて実感させられる。
ああ、私は狂っている。
互いに自律するために咲から離れたのに、
和に依存してしまっている。
しかもそれは、関係を断ち切ったはずの
咲を媒介として繋がる絆。
なんて皮肉な事だろう。
ただ、今は和との関係に溺れたい。
これまで我慢してきたんだ。
どうせ堕ちてしまった以上、
この際どん底まで沈んでしまおう。
「和…愛してる。だから咲よりも愛して」
「…難しいですけど、善処します」
和らしい返事だった。
私は思わず苦笑しながら、
そのまま和に口づける。
和は抵抗しなかった。
(完)
なし。リクエストがそのままあらすじです。
<登場人物>
原村和,宮永照,弘世菫,宮永咲,その他
<症状>
・ヤンデレ
・自殺未遂
・依存
<その他>
以下のリクエストに対する作品です。
・インハイ敗退後、大好きだった咲に嫌われ、
黒化したのどっちが転校先の白糸台で
照と出会って‥‥という照和
※作中で原村和がとる行動は
絶対に真似しないでください。
--------------------------------------------------------
まだ厳しい暑さの残る九月。
私は、東京のある学校の門を
前にして佇んでいました。
その高校の名は、白糸台高校。
私がこれから通う事になる学校です。
「…何の皮肉なんでしょうか」
私は一人唇を噛みしめます。
その名前は今の私にとって、
ほとんど忌み名に等しいものでした。
父が何を思ってこの学校に
私を転校させたのかはわかりません。
意趣返しなんて
下らない事をする人ではありませんから、
単に偶然なのかもしれません。
それでも、私はこの学校だけは嫌だった。
私と、咲さんを引き離したこの学校だけは。
その名を頭に思い浮かべる度に、
私はあの悲しい記憶を
回想せずにはいられないのですから。
--------------------------------------------------------
『負けちゃったね』
『…はい』
『これで、和ちゃんともお別れだね』
『…っ、はい』
『まあでも、よかったかもしれないね』
『……』
『負けたの、和ちゃんのせいなんだし。
諦めがつくでしょ?』
『……』
『せっかく部長が、和ちゃんの対戦相手を分析して
対局前に教えてくれたのに』
『思いっきり無視して、その結果飛び終了』
『おかげで、私は白糸台と戦えずじまい』
『……ごめんなさい』
『……』
『そんなオカルトありえません、だっけ』
『今でも、その言葉口にできる?』
『…それ、は』
『…私からしたら、和ちゃんの方がオカルトだよ』
『これだけたくさんの雀士が、
確率と統計だけで説明できない現象を起こしてるのに』
『なんでそれをオカルトだって断じて、
何の対策もしないで平気な顔してられるの?』
『…まあいいや。過ぎた事を言っても仕方ないし』
『じゃあね、原村さん』
『…はい……すいません…でした……』
--------------------------------------------------------
最悪の気分で目が覚めました。
目を開いた視界は涙でぼやけています。
全身を虚無感が支配して。
頬を伝う涙をぬぐう事すらできず、
私はそのままの体勢で嗚咽しました。
それでも起きなければいけません。
鉛のように重い体を無理矢理起こし、
私は登校する準備を整え始めました。
「…ひどい、顔ですね」
目の下に大きなくま。頬に残る涙の跡。
鏡に映った自分の顔は、
およそ全ての希望を奪われたように
生気を失っています。
「いっそ死んでしまいましょうか」
誰にとはなく口にして、
心にぽっと灯がともりました。
そんな絶望的な考えに希望の光が灯るほど、
私は病んでしまっているようです。
もちろん、本当はそんな事
できはしないのですけれど。
咲さんを始め、私に関わった人全員に
迷惑がかかりますから。
でも、だとしたら私は。
これからどうやって
生きていけばいいのでしょう。
もう、何もかもなくしてしまった私は。
誰か、生きる目的を私にください。
--------------------------------------------------------
「照、知っているか?清澄高校の原村和が
うちに転校してきたらしいぞ」
「…そう」
「…?あまり興味がなさそうだな」
「興味がないというか…
あの子にはあまり触れたくない」
「それに…あの子は多分白糸台には合わない」
「デジタル打ちだからか?」
「それもある。でも、もっと根本的な問題」
「あの子はどこかおかしい。狂っている」
--------------------------------------------------------
原村さんについてはよく知っている。
といっても本人との面識はなく、
雑誌で仕入れた知識ばかりではあるけれど。
インターミドルチャンピオン。
デジタルの申し子。
その恵まれた容姿も手伝って、
原村さんの情報はプロ雀士並に
出回っている。
もっとも、私自身は彼女を
そこまで脅威とは感じていなかった。
デジタルの申し子であろうと、
結局のところ大切な対局は
生の人間が顔を突き合わせて行うものだ。
彼女に能力無効化の力でもあるならともかく。
いくらデジタルを極めたところで、
その理の外にいる能力者の敵ではない。
だから雀士としての彼女に興味はなかった。
でも、取材で彼女が残した言葉だけは
私の心に残っている。
『麻雀は確率と統計が支配するゲームです。
能力だなんて、そんなオカルトありえません』
無知の極み。もしくは白痴。
そう取られかねない発言だった。
デジタル打ちを自認する彼女。
そんな彼女が、プロの牌譜を読んだ事がない
という事はないだろう。
いや、プロにまで言及せずとも。
インターハイにだって確率と統計から解放された
超常の力を持つ選手はいくらでもいる。
インターミドルにだってちらほらいたはずだ。
麻雀に無関心な人間ならともかく。
真剣に全国を目指すレベルの雀士なら、
対戦相手の能力を研究しない者なんて
皆無と言っていい。
そんな中、対戦相手の異常な牌譜を
目の当たりにして、全てを偶然で
片づけるとしたら…
それはもはや、愚者の思考停止に過ぎない。
それでも、彼女は雑誌で
事あるごとにこの発言を繰り返した。
さらには、他人が誰であろうと関係がない、
自分の麻雀を打つだけだと言い切った。
病的だと思った。
彼女にとって、確率と統計は絶対。
その世界を揺るがそうとする
能力者の存在を許せない。
そんな彼女にとって、
能力者しかいないチーム虎姫は…
まさに忌むべき存在とも
言えるのではないだろうか。
できれば、このまま関わらず
済ませたいとすら思っていた。
もっともそんな私のささやかな願いは、
空気を読まないある人物のせいで
見事に崩れ落ちていくのだけれど。
--------------------------------------------------------
菫のような人間の事を、
心臓に毛が生えていると言うのだと思う。
「自己紹介はいらないと思うが…
こっちが宮永照。麻雀では化け物だが
普段はただのお菓子ジャンキーだ」
それとなく勧誘するのを止めたにもかかわらず、
次の日には原村さんを部室に連れてきた。
まったく、その行動力が恨めしい。
というか一体どうしたら、
この状態の原村さんを
麻雀部に連れてこようなどと思えるのか。
「……」
眼前の原村さんは、光の灯らない
どろりと濁った眼でひたすら私を睨んでいる。
まるで親の仇とでも言わんばかりに。
刺すような鋭利な殺気が、
私の喉元に突きつけられている。
「…菫。原村さん明らかに嫌がってない?」
「ん?確かに勧誘はしたが強制はしていないぞ。
ここに来たのは彼女の意思だ」
「…お話したい事があって来ました」
「…何?」
「なぜ、咲さんを拒絶したんですか」
…なるほど。目的は麻雀ではないらしい。
まったく、いろんな意味で厄介な子だ。
少なからず気分を害した私は、
我ながら柄にもなく皮肉めいた言葉で切り返した。
「私にそれを聞く前に、貴方の家族構成、
家庭内の環境、生い立ち、友人関係、
宮永咲との関係、転校してきた理由、
それらに対する貴方の考え、
全てを私に詳細に説明してほしい」
「…なぜ」
「貴方がしようとしている事は、
そういう事だから」
「私の問いに『なぜ』と思ったならわかるはず。
『なぜ』私は貴方の意味不明な問いに
答える義務があるの?」
「…そうですね。答えざるを得ない
状況を作るしかないようです」
「…ちょっと待て。お前達は
なんでそんなに喧嘩腰なんだ」
呆れたように肩をすくめる菫。
私からしたらこの状況を作り出した菫に
肩をすくめたいのだけれど。
「じゃあ、こうしたらどうだ。
原村さんと照で対局する。
照が負けたら原村さんの質問に答える」
「原村さんが負けたら麻雀部に入部する」
その『いい事思いついた』みたいな顔
不快だからやめて。
ちっともいい提案じゃないから。
「その条件で構いません」
「私が構う。私にその申し出を受ける
メリットがまるでない」
「有力選手が白糸台高校の麻雀部に入部する。
自分が抜けた穴を埋めたい私達には
十分すぎるメリットだと思うが?」
「それともなんだ。お前、
実は負けるかもとか思ってるのか?
お前が勝つなら別にデメリットは皆無だろう」
「その手のありがちな挑発に乗るほど
私は熱血じゃない」
そもそもデメリットはちゃんとある。
仮に私が勝つとしても、
能力麻雀を目の当たりにした原村さんが
気分を害する事は間違いない。
狂人と思わしき人間に
負の感情を抱かれる。
あまりにも大きすぎるデメリットだ。
「わかりました。なら条件を追加しましょう。
私が負けたなら、私はこの件についてもう
宮永さんに質問しませんし、
貴方の前にも積極的には姿を現しません」
「どうせ宮永さんはもうすぐ引退するわけですし、
これなら弘世さんの申し出も満たせるはずです」
「…どうですか?」
真っ黒に落ち窪んだ瞳が
私をじろりとねめつける。
私は反射的に目を背けて、
思わず首を縦に振った。
関わり合いになりたくない。
心からそう思った。
たった一回の対局で縁を切れるなら
それに越した事はないだろう。
私は雀卓の電源を入れ、
サイコロを回すボタンを押す。
緊迫に包まれた対局が始まった。
--------------------------------------------------------
対局を開始した途端、
原村さんの背中に眩く輝く翼が生えた。
正直驚いた。人の事をオカルトだと
切って伏せておいて、
自分も立派にオカルトじゃないか。
照魔鏡を展開し彼女を見透かす。
そして私はさらに驚愕する。
そこに広がるのはネット麻雀のように
電子化された世界。
人ではない、魔物でもない。
まるで彼女は電子の中のアバターのようだった。
対面に座る彼女を見やる。
それまでは私への敵意にまみれていたその瞳は、
なぜか潤み恍惚したかのように
頬を朱に染めている。
だがそれは、高性能なコンピュータが
その動作に多大な熱を発するのと同じ。
彼女の脳内では今、目まぐるしく計算処理が
実行されているに違いない。
なるほどそんな彼女には、
確かに相手なんか関係ないのかもしれない。
私の事も菫の事も、
ただのノンプレイヤーキャラクター…
つまりはコンピューターにしか
見えていないのかもしれない。
ぞくりと鳥肌が立った。
この子は、何もかもがアンバランスすぎる。
赤の他人のプライベートに
土足で踏み込んできたかと思えば、
対戦では完全に機械と化す。
人の事をオカルトと断じながら、
自分はそれ以上に狂った世界を展開している。
絶対に勝たなければと思った。
我ながらひどい言い草だけど、
こんな子に付き纏われたら
たまったものじゃないから。
--------------------------------------------------------
「…ロン。12000。
これで原村さんの飛び終了」
対局は私の勝利で終わった。
結果だけ見れば圧勝だけど、
私は一人安堵の息を吐く。
こんなに神経をすり減らした
対局は久しぶりだ。
「…参りました」
そう言って頭を下げる原村さん。
私はその姿に奇妙な違和感を覚えた。
あれほどまでに強烈な殺意を
漏らしていたにしては、
あまりもあっさりと
引き過ぎじゃないだろうか。
そもそも、彼女がこの勝負を受けた事自体
違和感を感じる。
元々原村さんの打ち方は、
確率と統計に基づいて期待値を計算するもの。
それらを度外視する私達相手では
彼女の計算は意味をなさない。
そもそもそれを除いたとしても、
能力を使わない麻雀では、
「必ず勝てる」とは断言できないものだ。
なのに彼女はなぜ、こんな勝負を了承した?
頭を上げた彼女の目を見て、
私は思わずたじろいだ。
さっきまであれほどどろついた意志が籠った瞳…
それが、まるで感情が立ち消えたかのように
意志を失っている。
ひどく胸がざわついた。
何か嫌な予感がする。
思わず声をかけそうになって、
その言葉を飲み込んだ。
だめだ。触れてはいけない。
こういった手合いに
不用意に手を差し伸べると
碌な目に合わない。
私はそれを…
咲で嫌という程経験したじゃないか。
「約束通り、今後宮永さんの前には現れません」
「本当に申し訳ありませんでした」
機械的な言葉でそう告げると、
原村さんは部室を後にした。
その淡々とした所作がまた、
私に強い違和感と悪寒をもたらした。
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
「……ん?」
静かに自室で読書を嗜んでいたら、
寮内がにわかに騒めき立つのを感じた。
白糸台はお嬢様学校だから、
寮にいる子達も基本的に大人しい子が多い。
こんな風に、寮全体が喧騒に
包まれるのは初めてだった。
あの時から感じていた胸騒ぎが、
無視できないほどの激しさで私を襲う。
私は反射的に部屋を飛び出していた。
向かったのは原村さんの部屋。
案の定、というべきだろうか。
騒ぎの中心はこの部屋だった。
野次馬をかき分けて中に入る。
そこでは菫が真っ青な顔をして
原村さんを介抱していた。
菫は…原村さんの左手を布で圧迫している。
白かっただろう布は、
鮮やかな赤色に染まっていた。
--------------------------------------------------------
目を開けたそこはまだ現実でした。
お風呂場にいたはずの私は、
なぜかベッドに安置されていて。
思わず暗澹としたため息をつきながら、
私はその身を起こしました。
どうやら私は死ねなかったようです。
「…なんでこんな事をしたの」
思わずびくりと身を震わせます。
声のした方に目を向けると、
宮永さんが私を鋭い目で睨んでいました。
その目は赤く腫れていて、
頬には涙の跡が残っています。
「…もう生きていく理由が見つからないからです」
咲さんの望みを潰してしまいました。
せめて力になれればと、
宮永さんに突っかかって。
挙句あっさり負けて、
手がかりすら失ってしまいました。
もう、生きているのがつらいんです。
「…そんな理由で、周りの人を苦しめないで」
宮永さんの目にまた涙が浮かびます。
なんで私のために泣くんですか。
不愉快です。
その優しさを、10分の1でもいいから
咲さんにかけてあげれば、
きっと咲さんは救われるのに。
悲しみと憎しみが私を支配して。
気づけば私は、宮永さんを睨みつけていました。
「…死のうと思ったくせに、
私を睨む気力はあるんだ」
「貴方が咲さんに手を差し伸べてくれるなら、
私だって死なずに済むんです」
私に睨みつけられた宮永さんは、
決して怯む事なく。
でも、やがて諦めたように、
ため息をつきながら言いました。
「…わかった。貴方が
生きる目的を作ってあげる」
「これから、貴方と私が対局した時に。
貴方が上がる度に、私は一つ個人情報を晒す」
「続けていけば、いずれ咲に繋がる。
…きっと、貴方の知りたい情報にも」
「これでどう?」
「…私はもう宮永さんには極力近づかないと
約束したばかりですが」
「撤回していい。関わるだけ関わっておいて
勝手に絶望して死なれるのはいい迷惑」
そう宮永さんは吐き捨てました。
こうして私は、敗者復活の権利を手にしたのです。
そして、生きる目的も。
少しずつでも情報を集めて行って、
やがてこの人が咲さんを拒絶する理由がわかれば。
そして、その原因を取り除く事ができたら。
私はもう一度、咲さんの前に
顔を見せられるでしょうか。
あの時犯した、あまりにも深すぎる罪を、
許してもらえるでしょうか。
--------------------------------------------------------
原村さんと毎日のように打つようになった。
まあ、彼女の生きる目的はそれしかないのだから
当然なのだけれど。
私達は打ち続ける。
互いに剥き出しの感情をぶつけあいながら。
「…私は、今までいろんな学校を転々としてきました」
「仲のいい友達ができてもすぐ離れ離れになります。
毎回友達と別れる度に、
身を切られるような思いをしてきました」
「両親は私の都合は聞いてくれません。
自分にも他人にも厳しい人ですから、
私は甘える事もできませんでした」
「もし、姉か妹がいたなら
どんなによかっただろうと、
常々思っていました」
「自分勝手な考えなのは重々承知ですが…
私は、貴方を許せません」
「姉が妹を支えなくてどうするんですか」
原村さんは、自分の感情を隠す事なく
ストレートに私にぶつけてくる。
「私だって好き好んで今の状況に
甘んじているわけじゃない」
「第一、貴方は特に事件があったわけでもない。
単に家族と話し合えばいいだけの話」
「それもしないで自分の意思で
悲劇のお姫様を気取っておきながら、
他人のプライバシーは糾弾するの?」
「私達の間に、どれだけ暗い過去があったのか…
何も知らないくせに」
「だから、それを聞かせてくださいと
言っているんです」
「話したからなんだというの?
苦しむ人が増えるだけ」
彼女の言葉は私の心を抉るけれど、
だからこそ私も遠慮なく本音を曝け出せる。
彼女には、今まで菫にも淡にも向けなかった敵意を、
気兼ねせずぶつける事ができた。
ちなみに、私は原村さんに
重要な情報を与えるつもりはない。
私が勝ち続けるうちは、
彼女は私から情報を引き出そうとやっきになる。
そうやって、対局しながら内に秘めた苦痛を
吐き出させる事で、
傷を癒す事ができればと思っている。
もっともこれは、彼女のためだけではない。
実際こういう関係になって気づいた。
私達は、お互いに傷を舐めあっているのだ。
原村さんは、咲に捨てられた辛さを
私に当たる事で癒す。
私は、原村さんを糾弾する事で
ため込んでいた鬱憤を晴らす。
結局は、私もどこか
この行為に癒しを求めているのだろう。
私達のやり取りを横目で見ていた淡が
怯えるようにつぶやいた。
「…て、テルって…こんなに怖かったっけ」
「…あいつにもいろいろと思うところがあるんだろ。
私達には気を遣ってぶつけられなかった苦しみが」
菫が怯える淡の肩をそっと抱く。
こうなる事がわかっていたから、
菫にはあらかじめ淡を気にかけるように頼んでおいた。
私が淡を連れてきたのに放置して悪いけど…
今は、この問題児が最優先だから。
私達は、互いに感情をぶつけ合いながら打ち続けた。
居心地が良かった。負の感情すら
気兼ねせず吐き出せる相手。
気づけば原村さんと私は、
いつも一緒に居るようになった。
「最近、私達いつも一緒に居るね」
「貴方から情報を引き出すためです。
事が済めばさっさと離れます」
「そう。ならまだ当分先になりそうだね」
もっとも…その関係は、とても
良好だとは言えなかったけど。
--------------------------------------------------------
ある日の事。いつものように和と打っていた私に、
唐突に久からの連絡が入った。
『やっほー』
「お久しぶり。どうしたの?」
『ようやく咲が自分を取り戻したからご報告』
「…!……そう」
『ま、と言っても伝えたいのは貴方じゃないのよ。
和に伝えておいてくれない?』
『あの時の咲はあまりの絶望に我を失っていた。
だからいつも一番そばにいて、
自分を支えてくれていた和に当たってしまった』
『咲にとって、和は一番感情をぶつけやすかったから。
でも咲は、あの時和に言った言葉をひどく後悔してる』
『ごめんなさいって…
咲がそう言ってたって伝えておいて』
「なんでそれを私に言うの。
和に直接言えばいいでしょ」
『あの子、長野を出る時に携帯を解約したのよ。
当然、引っ越し先の情報も教えてもらってないわ』
『多分、過去の自分と決別するためなんでしょうね。
そんな状態で私達から話しかけても
いい結果になるとは思えないのよ』
『正直ずっと気がかりだったわ。
まあこっちも咲の相手で手いっぱいだったから
どの道遠方の和にまでは手が回らなかったけど。
あの子ったら、もう何度自殺未遂した事やら』
『照が和を支えてくれて本当によかったわ。
これからもよろしくね?』
「……」
『じゃ、伝えておいてね〜』
一方的に喋りたいだけ喋って、
久は通話を切ってしまう。
相変わらず飄々とした人だ。
でも、感情が重すぎる咲には、
あんな人がちょうどいいのかもしれない。
一人物思いにふけっていたら、
和の声で現実に引き戻された。
「…照さんの番ですよ」
通話で対局を中断させられていた和は、
特に気にする風でもなく再開を促した。
対して私は、この事実を
和に告げる事をためらった。
咲が申し訳ないと思っていた。
この事実を知れば、和は劇的に改善するのだろう。
でも、なぜかそれを伝えたくない私がいる。
どうしてなのか、私にもよくわからないけど。
それでも結局、私は逡巡しながらも
和に伝える事にする。
でも…和の反応は意外なものだった。
「別に…どうでもいい事です」
「別にって…和、咲に嫌われたから
絶望してたんでしょ?」
「その咲が、もう怒ってないと言うなら、
喜ぶべきところじゃないの?」
「確かに、咲さんの心に
平安が戻ったのは喜ばしい事です。
もちろん、私を気遣ってくれる気持ちも」
「でも、あの時咲さんが言った事は間違いではありません。
結局は、私が与えた傷に対して、
咲さんが努力して自分で
立ち直っただけじゃないですか」
「私が罪を犯した事実は変わりありません」
そう言って和は自らを嘲笑った。
その笑顔を見て、私は胸が苦しくなる。
ああ、一体この子に何をしたら。
咲の呪縛から解き放つ事ができるのだろう。
--------------------------------------------------------
来る日も来る日も打ち続けた。
何度か上がられる事もあったけど、
それでも和が私達の真実に
たどり着くには程遠く。
和が答えを知る事のないまま、
私は卒業式を迎える事になる。
もう荷物も撤去して、
どこか寒々しく殺風景な個人ルーム。
私は和と二人、サシで向かい合って打っていた。
「こうやって照さんと打つのも
これで最後ですね」
「私はOGとしてそれなりに顔を出すつもり。
別にこれで終わりという事じゃない」
「そうかもしれませんが、
私の中でここを一つの
区切りにしたいと思います」
いつになく決意を籠めた目を向ける和。
その気持ちはわからないでもない。
今日を境に、今までのように
毎日長時間打つ機会は無くなるのだから。
でも、だからこそ負けるわけにはいかない。
ここで私が負けてしまったら、
和との繋がりが途切れてしまう。
そこまで考えて驚いた。
私は一体何を考えているんだろう。
私は…和と離れたくないと思っている?
かぶりを振って思考を打ち消す。
卒業式という事で、少し
感傷的になっているだけだろう。
余計な事を考えないようにしないと。
結局この日の勝負も私が勝った。
「ツモ…上がり止め」
「…負けてしまいましたね」
負けたにもかかわらず、和は笑った。
どこか吹っ切れたように、薄く笑った。
嫌な予感がした。
それは、あの時に感じた胸騒ぎ。
なぜそんなものを感じるのだろう。
自分の直感に疑問を覚える。
きっと何かの間違いだろう。
目の前の和からは、
あの時のような狂気は感じられない。
きっと大丈夫だ。
胸の中に渦巻き、
どんどん膨らんでいく不安。
私はそれを無理やり胸を押さえて握りつぶした。
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
でも、残念ながらその直感は、
間違ってはいなかった。
だって、その夜和は…
ビルの屋上から、
身を投げてしまったのだから。
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
目を開けるとそこは病室でした。
ああ、私はまた死ねなかったのです。
「……」
寝ずの看病をしてくれていたのでしょうか。
傍らには、照さんがベッドに顔を沈めていました。
私が身を揺り動かした事で、
照さんは私が目を覚ました事に
気づいたようです。むくりと上げたその顔は、
あの時以上に涙でぼろぼろに崩れていました。
「なぜっ…!どうしてっ!
生きる目的ならっ…与えたじゃないっ…!」
「なぜ今…貴方はまた命を絶とうとするのっ…!!」
涙ながらに私を責める照さんの手は、
私の手をしっかりと握っていて。
その様に、私はまた胸が
張り裂けそうになりました。
「……」
「…貴方の存在が、私の中で
日々大きくなっていくんです」
「私にとって、貴方は敵でした。
咲さんを苦しめる敵」
「私は、咲さんを助けるために、
敵である貴方に挑み続けていたんです」
「…なのに」
「咲さんの助けになるために
始めた事なのに。
日に日に咲さんの存在が
私の中で薄れていく」
「このまま続けたら、
私は咲さんを過去の存在にして
貴方に乗り換えてしまう」
「私の中で、それは
許される事じゃなかったんです」
私は笑顔を見せました。
その笑顔を見て、照さんはまるで
自分が傷つけられたように顔をしかめました。
照さんは私の手を握ったまま、
目に涙をためて言葉を紡ぎます。
「正直に言う…私は貴方に、
真相を教えるつもりはなかった」
「私が勝ち続ければ、貴方はそれを
目的に生き続ける事ができるから」
「でも、いつしかそれはすり替わっていて」
「負けたくないと思った。
負けたら、貴方との関係が
終わってしまうから」
「死なないでほしい。
私は貴方を失いたくない」
照さんが私を抱き締めました。
私はそれを振り払う事ができず、
その温もりに身をゆだねてしまいます。
ああ、私はなんて醜く、浅ましいのでしょう。
咲さんの事を思えば、即座に
振り払わなければならないはずなのに。
気づけば私の頬から、
一筋の涙が零れ落ちていました。
「私は、最低な女です…
咲さんから、貴方に乗り換えようとしています」
「それでいい…貴方はもう、
十分苦しんだじゃない…!」
「咲の事を考えるなとは言わない…
でも、少しでいいから、私の事も考えて…」
「死なないで」
「……」
もう抗う事はできませんでした。
私は心の中で懺悔の言葉をつぶやきました。
そして、私を抱き締める照さんの背中に
腕を回し、そのまま強く抱き締めました。
咲さん…ごめんなさい
私は、貴方を裏切りました
本当にごめんなさい
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
和は自殺を思いとどまって
くれたようだった。
まだ、完全に咲を
振り切ったわけではないけれど。
それでも、文句も言わず
私の腕の中に納まってくれている。
「こうなった以上言っておく。
私は別に咲が嫌いだから
拒絶してるわけじゃない」
「今の咲にとって、こうするのが最善だと思うから
距離を置いているだけ」
「咲さんが悲しんでいるのにですか」
「麻薬を欲しがっている中毒者に、
麻薬を与える事は優しさになる?」
「……」
あの痛ましい事件のせいで、
私達の関係は変わってしまった。
咲は私に依存してしまった。
ただ私だけを見て、
未来を見る事を止めてしまった。
「私達には一生消えない傷が刻まれている」
「でも私は、その傷をお互いに舐めあって
足を止めるつもりはなかった。
それじゃ、誰も救われないから」
「だから私は咲から離れた。
立ち直って、健全な未来を掴むために」
もっとも、そしたら今度は
それ以上に手の付けられない病人に
捕まってしまったわけだけど。
「……」
咲と自分を重ね合わせたのだろう。
和が若干硬い声音で問いかけてくる。
「…なら、私からもいずれ離れるんですか?」
「…むしろ最初から関わりたくないと思っていた。
貴方は絶対に危険だとわかっていたから」
「でも、もう手遅れ。
結局私は貴方と深く交わって…
結果、私もおかしくなってしまった」
「たとえ異常だとわかっていても…
貴方から離れたくない」
「でも別にそれでもいいと思う。
貴方は咲と違って血の繋がりもないし、
結婚だってできるのだから」
「…そうですね」
会話をする事で改めて実感させられる。
ああ、私は狂っている。
互いに自律するために咲から離れたのに、
和に依存してしまっている。
しかもそれは、関係を断ち切ったはずの
咲を媒介として繋がる絆。
なんて皮肉な事だろう。
ただ、今は和との関係に溺れたい。
これまで我慢してきたんだ。
どうせ堕ちてしまった以上、
この際どん底まで沈んでしまおう。
「和…愛してる。だから咲よりも愛して」
「…難しいですけど、善処します」
和らしい返事だった。
私は思わず苦笑しながら、
そのまま和に口づける。
和は抵抗しなかった。
(完)
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照が折れるというのもなんだか新鮮な感じ。
原村さんはこの作品の中ではある意味とびきり異端な存在だからこその雰囲気。
すごくよかったです。
特に和の強い正義感といいますか、頑固な性格であるが故に苦しみながらも、照との関わり合いで徐々に惹かれてしまう様子が‥ああ、すばらっ。
照和というマイナーカプで、こんなすばらなssを書けるとは‥流石です。大満足です。リクエスト受けありがとうございました︎
のどっちのシリアスが読めて幸せです。
何気に待ってたのどっち回。
あと怯える淡がかわいいと思いました。
照の堕ちっぷりが好きです
照和の可能性を感じさせるに十分過ぎる、すばらっ!
時々読み返したいと思います。
和のあまあまSSは数々あるけど、ぷちさんの和あまあまも読んでみたい。
しかも照和とは新しい…惹かれるな…
ようやく来たかぁ、このSS>
照「実は書いたのは1か月近く前」
和「異端。書きたかったのはまさにそこです」
照「人間でも、魔物でもなく、デジタル。
その孤独さや奇妙さが伝わっていると幸い」
照和というマイナーカプ>
照「和と私の恋愛自体がどこか
禁忌というイメージ」
和「私が咲さん以外を好きになるのが
想像できなくて苦しみましたが
楽しかったです」
菫さんの心境>
照「言ったでしょ。心臓に毛が生えてるって」
菫「依存だろうが何だろうが原村が
救われてるんだからいいじゃないか」
照「もう少し責任感じてほしい」
照の…罪悪感>
照「裏テーマは罪だったのでうれしい感想」
和「両者が常に感じている罪悪感が
伝わったなら幸いです」
辛辣過ぎる黒咲さん>
久「仮の話だけど…咲の裏事情を知ってるのに
2回戦の副将戦で、役満直撃して
飛んだケースを想像してみて頂戴」
久「むしろこのくらいで許した咲は
相当お人よしだと思うわ」
怯える淡>
淡「えへへー、かわいいでしょー!」
菫「その後スタッフが美味しくいただいた」
照の堕ちっぷりが好き>
照「最初拒絶していた側なのに
終わってみると追いかける側になっている」
和「まあ私には咲がいるから仕方ないですね」
まさかのマイナーカプ>
照「そんなマイナーカプを読んでくれる
方には本当に頭が上がらない」
和「需要あるのかずっと気になってました」
もっと掘り下げてもいいくらい>
照「鋭い。実は最初すごく掘り下げていて
長くなりすぎたから削った」
和「最初はもっと能力者を
憎む展開でしたしね」
咲の世界では異質>
照「そこからくる相容れなさと
和が感じる孤独が書けていればうれしい」
和「あまあまは…リクエスト回で」
久しぶりにどろどろのss>
照「自分でも自覚している。
最近重さが足りない」
和「反動でものすごい重い話が
出てくるかもしれません」
※と思ったらひどい咲さん書いてました
照「根本は原作と同じつもり」
和「つまり今はまだわからないという事ですね」
照「ただその事件を受けて
咲がどう変わってしまったかは…
私の回想から察してほしい」