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【咲-Saki-SS:菫淡】淡「ストーカーが、いるみたいなんだ…」【ヤンデレ】

<あらすじ>
無し。リクエストを読んでください。

<登場人物>
宮永照,弘世菫,大星淡

<症状>
・ヤンデレ
・依存
・狂気
・異常行動

<その他>
以下のリクエストに対する作品です。
・菫淡で。淡に一目惚れした菫は
 淡をストーカーするようになる。
 最初は付きまとう程度であったが
 徐々に行為はエスカレートし盗撮や盗聴にまで及んだ。
 菫が犯人だと気付かず相談し彼女の家に
 泊めてもらうことになり一安心した淡。
 しかし本当の恐怖はこれからだった…
 というのをギャグまたはシリアスで。

※あくまでフィクションとしてとらえてください。
 実際にこんな事を実行したら
 おそらくあっさり捕まると思います。

※リクエストの都合上、白糸台高校寮設定などは
 除外しています。ご容赦を。

※長くなったので真相部分は省きました。
 続きが読みたい人は
 「あーわあわ!」とコメントください。
真相部分を公開しました。
 興味のある方はあわせてどうぞ。


--------------------------------------------------------




いつからだったっけ。
一人でいるのが怖くなっちゃったのは。


いつからだったっけ。
くつろいで休むためのおうちが、
恐怖のダンジョンに変わっちゃったのは。


いつからだったっけ。

いつからだったっけ。

いつからだったっけ。


…わからない。でもただ一つ言える事。
私はもう、家に安息を求める事はできない。


だってあの家は、
ストーカーに監視されてるから。



--------------------------------------------------------






淡『ストーカーが、いるみたいなんだ…』






--------------------------------------------------------



私は最近イライラしている。
毎日毎日、ストーカーなる存在に
付き纏われているからだ。


例えば部活が終わって家に帰るとしよう。
私が玄関を閉めた途端、決まって携帯電話が鳴り響く。

思わずびくりと震えながらも、
携帯を取り出して確認すると。

薄暗く光る画面には、
こんなメールが浮かび上がってる。


『From:temp_use_for_awai@xxx.com
 ---------------------------------------------------
 鍵は掛けましょう。貴女はいつも施錠を忘れるから
 ちゃんと確認してください。一人暮らしは危険ですから。』


私は思わずため息をついた。

完全に私の行動がリアルタイムでバレてる。
気持ち悪い事この上ない。


しかもこれはただの一例。

郵便受けに投函された郵便物はもちろん、
室内も見られてるみたいだし、
挙句の果てには携帯電話の利用状況すら
監視されているっぽかった。

一体全体、どうしてそんな事ができるのか
私には全然理解できないけどさ。


「…どうしたらいいんだろ」


もう、自分が思いつく範囲で
できそうな事は全部やったつもり。

管理人さんにお願いして
部屋のカギを変えてみたりもしたし、
盗聴器とか仕掛けられてないか
部屋の中を引っ掻き回しもした。

もちろん警察にも行った。
でも残念、収穫はゼロだったけど。


『んー…個人情報が漏れてるのは問題だけど…
 内容的にはそこまで問題はないしなぁ…』

『特に襲われたとかの被害はないんだよね?
 だとしたら現時点では動くことはできないかな』


こんな感じで、私の助けを求めて伸ばした手は
比較的あっさり払いのけられちゃった。


そんなわけで、私はここ最近ずっと
眠れぬ夜を過ごしてる。
まさかこの大星淡が、姿も知らぬ有象無象に
怯えて震える日が来るなんて思わなかった。


え、誰かに相談はしたのかって?
実はそれが最後の手段。

下手に誰かに相談したら、その人まで
被害にあっちゃうんじゃないかと思って、
ずっと口をつぐんでたんだ。


でも正直もう限界。


空元気を出そうにも、涙が自然とにじみ出て、
ちょっとしたことですぐ泣き出しちゃうから。


明日になったら打ち明けよう。
私が一番信頼しているあの人に。



--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------



私に相談を持ち掛けられた菫先輩は、
茶化さないで真剣に話を聞いてくれた。


「最近、お前の様子がおかしかったからな。
 私の方も声を掛けようと思っていた」

「…もっと早く気づいてやるべきだったな。
 すまなかった」

「ううん…その言葉だけで嬉しいよ」


やっぱり頼りになる人だ。
この人に相談してよかった。

迷惑をかける人はできるだけ少なくしたいから、
テルとどっちにするか迷ったけど…

社会経験というか腕っぷしというか、
色々ひっくるめて判断すると。
一番頼りになるのは、やっぱり菫先輩だと思う。
それを除いても…今までずっと私を支えてくれたのは
菫先輩だったから。


「…というわけで、多分ガチな
 ストーカーっぽいんだよね」

「今言ったみたいに、今どこにいるかとかも
 全部把握されてるっぽいし」

「郵便受けの中も見られて、場合によっては
 中身まで持ってかれてる」

「『この郵便物は貴女にとって毒にしかなりません』
 とか書置きが入れてあってさ」

「室内もダメっぽい。長風呂してるだけで
 携帯が鳴り響くし」


「正直、私もうボロボロだよ……」


冗談半分でつぶやいたはずのその声は、
自分が思っていた以上にか細く震えてて。
つられて涙まで零しちゃいそうで、
私はあわててうつむいた。


「…警察には連絡したのか?」

「一応はね…でも、別に被害が出てないからって
 取り合ってもらえなかったよ」

「女子高生のプライベートが筒抜けと言う時点で、
 十二分に被害は出ていると思うんだが…」

「……ところで」

「犯人に心当たりはないんだよな?」

「あったらとっくに当たってるよ」

「…まあそうだろうな…よし、状況はわかった。
 つらい話をさせて悪かったな」
 
「できる事は色々ある。
 後は私に任せておけ」


「…今まで、一人でよく頑張った」


そう言って、菫先輩は私の肩を優しく叩いた。
それで私はもう我慢できなくなって。
こみ上げてきた涙が止まらなくなって。

思わず、菫先輩に抱き付いて
わんわんと泣き出してしまった。

菫先輩は何も言わず、ただ優しく、
私の頭を撫でてくれる。

おかげで私は本当に。
本当に久しぶりに安心できて。
心から安らぎを得たような気がしたんだ。



--------------------------------------------------------



菫先輩の行動は早かった。
私の相談を受けた次の日には、
業者を連れて私の家にやってきた。


「取り急ぎ、応急処置を行う事にしよう」

「応急処置?」

「ああ。まずはこれ以上お前の情報が
 流れないように対処しないとな」

「室内を把握されている以上、
 盗撮用のカメラか盗聴器が仕込まれていると
 考えるのが妥当だろう」

「まずはそれを見つけ出して撤去する。
 そして逆に、不審者が侵入してきてないかを
 確認するための防犯カメラを設置しよう」

「はへー…随分本格的だねぇ」

「手口を聞いてるとにわかの犯行には思えないからな。
 相手が本気な以上、こちらも全霊をもって
 かかるしかないだろう」

「よろしくお願いします!」

「ああ、任せておけ」


菫先輩が手配した業者は、
私の部屋を隅々まで探索した。

事前に聞いていたとはいえ、
タンスの中の下着とかまで
漁られる様を目の当たりにすると、
さすがに恥ずかしくて仕方なかった。

でも背に腹は代えられないよね。
自分で探せる範囲では見つからなかったんだし。

そしてその羞恥に耐えただけの成果はあった。
私の部屋からは、なんと恐ろしい事に…


カメラが9個、盗聴器が7個も見つかったんだから。


携帯電話にも仕掛けがあった。
なんか、スパイアプリって言われる
情報を盗み取るアプリが入ってたみたいで。
私の情報は24時間リアルタイムで
犯人に筒抜けになってたらしい。

目に見える形になった狂気を前に、
私は震えが止まらなくなって。
思わず菫先輩にしがみついた。


「…ど、どうしよ…わたし、こわい」

「…私も正直、ここまでとは思わなかったな…」

「…これ、外された事も気づかれたんじゃないかな…」

「可能性は高い。だがつけっぱなしに
 しておくわけにもいかないしな」

「…エスカレート、したり、しないかな」

「……」

「当分の間、登下校中は私がお前を引率しよう。
 後、私以外は誰も家にあげるな。
 理由は私が大家に説明しておく」

「大丈夫だ。お前は私が守ってやる」

「うん…」


菫先輩の言葉に、少しだけ心が軽くなる。
私は菫先輩にしがみついて、敵から身を潜めるように、
その腕の中にもぐり込んだ。



--------------------------------------------------------



菫先輩に保護されながらの生活が始まった。

今の私が心から安らげるのは、
菫先輩と一緒に居る時だけだ。


「淡、迎えに来たぞ」

「っ…菫先輩っ!!」

「おいおい、そんなにしがみつかなくても
 私は逃げたりしないぞ?」


朝菫先輩が家に来るなり、私はまるで
飼い犬のように一目散に駆けつけて、
菫先輩めがけてダイブする。

一人ぼっちは心細くてたまらなかった。
菫先輩は頼もしくて優しかった。

菫先輩は突然飛びついた私を咎めもせず、
そっと優しく頭を撫でる。
穏やかな笑みを浮かべて手を取ると、
学校に行くまでの間、私をしっかり守ってくれる。

そうこの時間だけが、私が安心できる時間。
後は放課後、部活で菫先輩と再会してから帰るまで。


「…最近、少し元気が戻ってきたんじゃないか?」

「菫先輩と一緒に居る時はね」

「それ以外の時間は、前よりひどくなっちゃったかも」


なまじ菫先輩の頼もしさを知ってしまったから、
独りの時間がより一層心細く感じる。
ずっと、ずっと菫先輩にいてほしいなんて、
そればっかり考えてしまう。

俯いた私を前に、菫先輩は小さく溜息をつく。


「ここ最近は犯人もなりを潜めているんだろう?
 大丈夫、じきに全ていい方向に向かうさ」


菫先輩は諭すように、ぽんぽんと私の頭を撫でた。


確かに菫先輩の言う通り、状況は少しずつ
改善されているように思えた。

菫先輩が設置してくれた防犯カメラ。
あれ以来、家を留守にしている時間も含めて、
24時間欠かさず映像を確認しているけど。
室内、室外ともにどちらも不審者の姿は見当たらず。

携帯電話も鳴らなくなったし、
郵便受けが荒らされた痕跡もなかった。


「今日も、何もなかったよ」

「それは何よりだ」


一日、また一日と、
何もない日々が積み重なっていくにつれて、
私は徐々に持ち前の元気を取り戻していく。

相変わらず、菫先輩にくっつくのは
やめられなかったけど。



--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------



引率が始まってから一か月。
スミレ先輩は引率の終了を申し出た。


「あれから一か月経った。
 家宅捜査以降は特に何も起きなかったし、
 もう安心しても大丈夫だろう」

「お前もずっと私に付き纏われるのも
 気疲れするだろうし、
 そろそろ引率も終わりにしよう」


スミレ先輩の提案とは裏腹に、
私は言い知れぬ不安を感じていた。

スミレ先輩が私から離れていく。
今が安全かどうかよりも、
そっちの方が怖くなってたのかもしれない。

でも迷惑をかけてるのは自覚してたから。
これからもずっと送り迎えして、
なんてとても言えなかった。


「そう…だね。もう、大丈夫だよね」


そして私は一人で家路につく。
いつも握ってもらっていた右手が、
酷く寒く冷たく感じて、私の孤独感を募らせる。


怖い、怖い、怖い、怖い


独りでいるのが怖い。
今この瞬間襲われたらどうしよう。
スミレ先輩はいないのに。


「ここは危ない…!帰らなきゃ…!
 早く、家に、帰らなきゃ!!」


自然と体が震え出す。
私は思わず駆け出していた。


汗だくで家にたどり着く。
震える指でドアに鍵を差し込んで、
滑り込むように室内に入ると、
すぐさま鍵を掛けてその場にへたりこむ。


「はぁっ……!はぁっ……!」


どうして、こんなに怖いんだろう。
あれ以来、被害は特になかったのに。
もう安心なはずなのに。
どうして私は


ヴーーーーー、ヴーーーーー


思考を中断させたのは
無機質な携帯電話のバイブ音。


まさか。


私はカタカタと震える手を必死に押さえながら
携帯電話のロックを解いた。


『From:temp_use_for_awai@xxx.com
 ---------------------------------------------------
 弘世菫による引率が終了するようなので、
 また私が貴女を警備することにします。       』


ヴーーーーー、ヴーーーーー


まだ携帯電話は鳴りやまない。


『From:temp_use_for_awai@xxx.com
 ---------------------------------------------------
 後は郵便物についても登下校時に弘世菫が
 確認していたようですから、今度はまた私が
 事前確認しますから安心してください。        』


ヴーーーーー、ヴーーーーー


まだ鳴りやまない。


『From:temp_use_for_awai@xxx.com
 ---------------------------------------------------
 そういえば弘世菫が来る際に、
 貴女はろくに確認もせず一目散に扉を開けていましたね?
 あれは危険ですからやめてください。
 呼び鈴を鳴らす回数で判断していたようですが、
 そんなものは私でも把握できますよ?         』


ヴーーーーー、ヴーーーーー


まだ、まだ、まだ、まだ。
携帯電話はいつまでも鳴り響き続ける。
私の中で何かが千切れる。


「もういやぁああああああああぁああっ!!!!」


蠢き続ける携帯電話を思い切り床に叩きつける。
ピシィッと鋭い音がして、液晶が砕け散る。
それでも振動は止まらなくて、
私はそれを拾い上げ、
何度も何度も叩きつける。


「止まってよ!止まって!!っ止まれ!!!」


それでも、それでも、それでも。
携帯電話は止まらない。


私は狂気に陥って、そのまま玄関を飛び出した。
ここにいたら駄目だ。
スミレ先輩。スミレ先輩に守ってもらわなきゃ!


スミレ先輩、スミレ先輩!スミレ先輩!!


気を抜くと恐怖が脳を埋め尽くしちゃうから。
スミレ先輩の事だけを考えて、
一心不乱に走り抜ける。


…いた!!


不幸中の幸いにも、スミレ先輩は
まだ帰ってはいなかった。


スミレ先輩を見つけるなり私は飛びかかる。
突然の事にスミレ先輩は私の体重を支えきれず、
そのまま後ろに倒れ込んでしまった。

それでも、スミレ先輩は私を怒る事はなく。
真剣な表情で、私を抱き締めながらこう聞いてくれた。


「…何か起きたのか?」


その声がひどく優しくて。
私はスミレ先輩の胸に、
顔をうずめて泣きじゃくった。



--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------



私から報告を受けた菫先輩は、
即刻業者を手配した。

しかも今度は、前回の業者と別の業者も呼んで、
大掛かりな探索になった。


「…淡。悪い知らせがある」


大側索の結果は酷いもので。なんと、
また新たなカメラが見つかった。

しかも、前回と変わらない量の。


「そ、そんな…どうして、だってあれから私。
 ずっと、24時間監視してたのに」

「…前回確認した業者が言うには、
 間違いなく以前は存在しなかったカメラらしい」

「業者の不正が疑わしくなるが…
 私の息がかかっている業者だし、
 そもそも淡と一切関係がないのだから
 その線も考えにくい」

「だとしたら、監視カメラの目をかいくぐって
 新たに仕掛けたと考えるしかないだろう…」

「もっとも、肝心のどうやったのか…
 が皆目見当がつかないが」

「……」


言葉が見つからなかった。
だって、あれだけ警戒してたのに。

それでもなおこのザマじゃ、
もうこの家に住むなんて無理じゃんか。

耐えがたい絶望感に襲われて、
私は虚ろな目で天井を見上げた。
途方に暮れるって、
まさにこんな事を言うんだと思う。


そんな私の様子を見て…
菫先輩は、ぽつりとこう呟いた。


「あー……もう、この際私の家に来るか?」

「…えっ……?」


突拍子もない提案に、
思わず私はきょとんとした声を出す。

スミレ先輩は頭をかきながら、
その意図を説明し始めた。


「手口が分からない。
 一度撤去されたのに物怖じもしない
 あまつさえこの短期間でこの量の
 盗撮カメラを仕掛けるような相手だ。
 本気で対処しようと思ったら、
 もう引っ越すくらいしか手がないだろう」

「それも、普通の場所に引っ越しても無意味だ」

「その点私の家なら24時間警備されているし、
 ストーカーも容易に侵入もできまい」

「で、でも…いくらなんでも迷惑過ぎでしょ」

「いや、正直毎日送り迎えするよりはよっぽど楽だ。
 こうなった以上、私もお前を
 常に目の届く場所に置いておきたい」

「だから…余計な事を考えるな。
 お前は私に守られておけ」

「……っ」


なんで、どうしてこの人はこんなに優しいんだろう。
今、優しくされちゃったら。
もう、二度と離れられなくなっちゃうのに。

でも、そこまで言われて遠慮できるほど、
今の私に余裕はなくて。


「っ…うんっ……っ!!」


ただただ与えられた幸運に感謝しながら、
スミレ先輩にしがみつく。

スミレ先輩に守られていたい。
ずっとこうして、スミレ先輩に溺れていたい。



もう、それ以外何も考えたくない。



--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------



私はスミレ先輩のおうちに引っ越した。

スミレ先輩はとんでもないお金持ちだったみたいで、
私にも個室が割り当てられた。

むしろそれは、私が今まで借りていた
ワンルームよりも上等で。
その部屋に不満はなかったのだけれど。


なのに私は、それでもワガママを言ってのけた。


「私と同じ部屋がいい?」

「…うん。それが駄目なら、
 せめて隣の部屋とか……」

「…別にかまわないが…
 あらぬ噂を立てられる事は間違いないぞ?」

「どんな?」

「お嬢様が女を囲い出した、だとか…
 困った事に、うちの連中は
 その手の不謹慎な話が大好きだからな」

「ベッドなんて運び込んだ日には
 聞き耳でもたてられかねん」

「……」


珍しく、少しだけ頬を染めながら
苦笑するスミレ先輩。

きっと冗談のつもりだったんだろう。
でも今の私は、もうそれを、
冗談として受け止める事はできなかった。


「いいよ……」

「い、いいよって、お前」

「別に噂立てられてもいい。
 スミレ先輩が望むなら、
 本当に囲われちゃってもいい。
 ううん、むしろ囲ってくれるなら嬉しいよ」

「私、もうよくわからないんだ。
 スミレ先輩がいないと怖くて仕方ないの。
 スミレ先輩が視界に入ってないだけで、
 怖くて震えが止まらない」

「もう、スミレ先輩がいる時だけなんだよ…
 私が、私でいられるのは…」

「…重症だな…」

「まあいいさ。囲う囲わないはともかく、
 お前の気がすむまで私にくっついていればいい」

「一度乗りかかった船だ。
 お前が立ち直るまで面倒を見てやるさ」


いつものように涼やかに微笑みかけながら、
スミレ先輩が私を抱き締める。


うれしい、でもごめんなさい。


私、もう立ち直れるとは思えないんだ。
このまま、ずっとスミレ先輩に守られてたいよ。

だから、どうか私を離さないで。



--------------------------------------------------------



朝昼晩、できるだけスミレ先輩のそばに居るようにした。
朝起きて学校に向かう間はもちろん、
授業が終わった10分休みですら、
スミレ先輩のもとに駆け付けた。
お昼ご飯はもちろんスミレ先輩と一緒。
学校が終わったらすぐにスミレ先輩の教室に駆け込んで、
そのまま一緒に部活に出て家に帰った。

自分で言うのもなんだけど、
いくらなんでもちょっと頭おかしいと思う。
でもスミレ先輩といる間だけは、
落ち着いていつもの私でいられるんだ。

でもそれは。


裏を返せば。


スミレ先輩がいない間は。



私はもう私ではいられない。
とっくに、わかりきってた事だけど。



学生の本分である学業。
その大半を占める授業において、
私はそれを放棄していた。

ただただひたすら怖くって。
俯いて、蹲って(うずくまって)、ただひたすら、
終わりのチャイムが鳴るのを待ち続ける。

先生にあてられても全力で無視。

当然怒った先生は私に近づいてくる。
でもそんな先生も私の様子を見ると、
ひどく怯えた顔をして何も言わずに立ち去った。
その後はいない者として扱われた。


それでいい。今の私には、
スミレ先輩以外の人に構ってる余裕なんてない。


「スミレ先輩、スミレ先輩、スミレ」


呪文のように唱え続ける。
そうする事でなんとか心の均衡を保ってる状態。

ノートにもスミレ先輩の名前を書き続ける。
少しでも、少しでも、少しでも。
スミレ先輩の存在を感じなくちゃ。
じゃないと私、壊れちゃうよ。


そんな時。懐に忍ばせた携帯電話が振動した。


私はあわてて携帯電話を取り出す。
このケータイはスミレ先輩が用意してくれた新しい奴。
ストーカーに付けこまれないように
アプリも何も入れてないし、
スミレ先輩のアドレスしか登録していない。


つまり通知の相手は、スミレ先輩だ!!


暗闇から手を差し伸べられた心地がして、
はやる思いを抑える事なく、
慌ただしく携帯電話のロックを解除する。

そして、そこに現れた文字は、
大好きなスミレ先輩の……


すみれ、せんぱい、の


あれ、


なんで、


どうして





『From:temp_use_for_awai@xxx.com
 ---------------------------------------------------
 最近情緒不安定なようですが睡眠は取れていますか?
 流石に弘世菫邸までは見守る事ができないので心配です。』





その文字を見た瞬間、私の心の均衡が崩れる。

恐怖が溢れて決壊して、
私は張り裂けんばかりの大声をあげた。


「もっ……」


「もういやぁぁああぁぁああぁあああぁあああっ!!!!!!」



私は狂ったように、ううん、
狂いながら喚きたてる。

騒ぎを聞きつけた教員たちが集まって来て、
暴れる私を取り押さえようとする。

私にはもうそいつらが、
襲い掛かってくるストーカーにしか見えなくて。
私はあの人の名前を呼びながら
死に物狂いで腕を振り乱した。


「たすけてすみれせんぱいっ!!」

「すとーかーが、おそってくる!!!」

「もうやだっ!!!むりっ!!!!」

「たすけて!すみれせんぱい!!たすけて!!!!」


教員の一人がスミレ先輩を連れてきた。
事態を飲み込めないスミレ先輩は、
驚き戸惑いながらも、青ざめた顔で
私の前で両手を広げた。

私は反射的にスミレ先輩に飛びついて。
骨が折れるほどに強く、強く抱きしめる。

スミレ先輩は締めつけられる痛みに呻きながらも、
いつものように私の頭を撫でてくれた。


「大丈夫だ淡…ここには
 お前を苦しめるストーカーはいない…!」

「落ち着け…何も心配はいらない…私がいるだろう?」

「落ち着くんだ…!」


スミレ先輩の声が、体温が、
私の体にしみこんでいく。

自然と震えが止まっていって、
金切り声をあげる私の声が、
ようやく静かな嗚咽へと変化する。


「スミレ先輩ぃ…スミレェっ……」

「こわがっだぁっ……」


私たちの他に沈黙を破る者はなく。
重苦しい空気に包まれた教室を、
私の嗚咽とスミレ先輩の優しい声が支配した。



「大丈夫…もう大丈夫だからな…」




--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------



精神病院に連れて行かれた私は、
もはや日常生活を送るのは難しいと診断された。

社会の落伍者決定だ。
でも私はそれでよかった。

もう学校なんて行きたくない。
スミレの気配が充満したこの部屋で、
日がな一日ただスミレを待っていたい。
そしてスミレが帰ってきたら、
ずっと一緒に居てほしい。
それ以外に、私が生きる道なんてもうないんだ。


そんな私の言葉を受けて、
スミレは私と一緒に学校を退学した。


私はともかく…どうしてスミレまで?
なんてスミレに問いかけてみたら、
呆れたように質問で返された。


「だったらお前は、私のいない部屋で独り、
 本当に大人しく私の帰りを待ってられるのか?」

「……」

「…ムリかも」

「だったら私も退学せざるをえないだろう?」

「…ごめんなさい」

「気にするな…と言いたいところだが、
 さすがに事が大きすぎる」

「お前のために私の一生をふいにするんだ。
 せめて、お前の人生を私にくれよ?」


願ってもない話だった。

交換条件になってない。だって私の心は、
とっくにスミレのモノなんだから。


「私、スミレのためだったら何でもするよ?
 えっちだってしてもいいし、
 殴られたっていい」
 
「スミレが望むなら…私は殺されたっていい」

「だからお願い…」

「せめて私が死ぬまでは、
 ずっとそばに居させてください…」

「……」

「…ま、そのくらいならお安い御用だ」


スミレは苦笑しながら、いつものように、
私の頭をポンポンと優しくたたいた。



--------------------------------------------------------



こうして、私の一般人としての
人生は終わりを告げた。

これからはスミレに囲われた女として、
一生日の目を見ない人生を送っていく事になる。


でも別に困らなかった。
だって、大好きなスミレがそばに居る。
1分。ううん、1秒も欠かさず
ずっとそばに居てくれるんだから。


こんなになっちゃった過程はともかく、
これってハッピーエンドじゃないのかな?


心残りがあるとすれば、
結局わからなかった、あの犯人の正体。

でも、それすらもうどうでもいい。
ううん、今のこの幸せを与えてくれたという点を考えれば、
むしろお礼すら言いたいくらいかも。



あれ以来ストーカーの気配を感じる事はない。

それでも1時間に1回は、
スミレは私を気遣って声をかけてくれる。


「淡、大丈夫か?不安を感じてないか?」


その度に私は、心からの笑みを
スミレに向けてこう言うんだ。


「えへへ、今は元気いっぱいだよ!
 スミレがそばにいてくれるもん!」


ああ、なんて幸せだろう。
これからもずっと、
こうして生きていけたらいいな。

スミレにその身を包まれて、
全身いっぱいに多幸感を味わいながら。
私はしみじみそう思った。



そんな私は気づかない。



自分の目に、一切の光が灯っていない事に。





そしてその後も、一生気づくことはなかった。




(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2015年06月08日 | Comment(28) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
あーわあわ!
このフレーズで何故かパプワ君を思い出した。
Posted by at 2015年06月08日 22:12
あーわあわ!
Posted by てるてる at 2015年06月08日 22:36
あーわあわ!
登場人物に宮永照とあるが実際には名前しか登場していません。おそらく真相部分で出て来るんだと思いますが。
それにしても菫さん本気出しすぎだろ。
Posted by at 2015年06月08日 23:14
あーわあわ!
あーわあわ!!
Posted by at 2015年06月08日 23:40
あーわあわ!
Posted by 名無し at 2015年06月08日 23:51
あーわあわ!
犯人はきっと賢いんでしょうね
ずっと傍に居られるようn…おっと誰か来たようだ
アーワアワ!
Posted by at 2015年06月08日 23:58
言いたい事は山ほどあるけど一言だけ

あーわあわ!あーわあわ!
Posted by at 2015年06月09日 00:30
あーわあわ続きが気になります
Posted by at 2015年06月09日 00:58
あーわあわ すーみすみ!
やっぱり淡菫は最高だな!
続編期待してます。
あわすみわっほい!
Posted by at 2015年06月09日 01:26
菫先輩の会話が最低限なことに不気味さを感じる…。正体不明のなにかに監視されると本当におかしくなります…(体験談…
Posted by at 2015年06月09日 03:28
Posted by 玄米茶 at 2015年06月09日 08:02
あ〜わあわわわわわ
淡の涙目みたさで
リクエストしたけどここまでになるとは…
ぷちさん恐ろしい才能。
真相では何が語られるのか
気になります
Posted by 玄米茶 at 2015年06月09日 08:09
あーわあわ!
SSの更新を監視してる私もストーカーなのかもしれないですね…
Posted by リリー at 2015年06月09日 11:39
あーわあわ!

こーゆーあえて追い詰めて自分のものにする系大好きです!もっと色々お願いします!!
Posted by at 2015年06月09日 14:23
うわぁぁぁ!!
もうさいっっこうですよぷちさん!
続きが気になって、
スマホをバシバシ叩きながら待ってます!
あーわあわ!あーわあわ!!
Posted by レガ at 2015年06月09日 19:36
あーわあわ!
Posted by at 2015年06月09日 19:58
あーわあわ!
あわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわあわをたんのーできましたぞ!!
Posted by サンダーと言うなのF1使い at 2015年06月09日 20:26
あわわわわあーわあわ!

すごくいいよー最後まで姿を表さない恐怖はすごく新鮮だよー

しかしテルーはでてこなかったなあ
最初の段階で菫に一任したのか菫から妨害、もしくは協力とりつけたのか…

想像が広がるねえ
Posted by at 2015年06月10日 00:31
あーわあわ!あーわあわ!
Posted by at 2015年06月10日 08:21
あーわあわ!
最高でした!見えない恐怖というかあわあわの壊れ方が特に!
Posted by Eri at 2015年06月10日 11:36
知能犯系ヤンデレもええのう




あーわあわ!
Posted by at 2015年06月10日 23:20
あーわあわ!
Posted by at 2015年06月13日 06:02
あーわあわ

お嬢様設定の菫好きだわ
でもたまには貧乏の菫が無理してお嬢様学校に通う設定も読んでみたいと思ったり
Posted by 774 at 2015年06月13日 08:21
あーわあわ
Posted by at 2015年06月18日 07:11
あーわあわ!
ヤバイ菫さんが全く悪役に見えない・・・
こぇぇぇぇえ(´・ω・`)
Posted by at 2015年06月23日 20:31
あーわあわ!
ホント最高っす。知能犯ヤンデレたまらんっすわ
Posted by at 2015年06月24日 23:30
淡がストーカーに依存するっていう妄想をしてしまいました
もしよければIfバージョンで書いていただきたいです
Posted by at 2015年10月09日 22:24
もう出てるけどあーわあわ!
振り返ってみれば

「……ところで」

「犯人に心当たりはないんだよな?」

ここで確認してるのね……おっそろし……
真っ黒菫さん素敵!!
Posted by at 2016年07月13日 17:14
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