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【咲-Saki-SS:尭淡】尭深「毒を吸って、愛を吐く」【ヤンデレ】【猟奇】
<あらすじ>
宮永先輩に拾われて白糸台高校に入学した淡ちゃん。
最初は自信たっぷりで、
心から麻雀を楽しんでいた淡ちゃん。
でも、そんな淡ちゃんが見られたのも
インターハイが終わるまでの事で。
勝つ事に異常に執着して、
そして勝てない淡ちゃんは。
少しずつ、少しずつ心を摩耗していきました。
だから、必要だったんです。
心に溜まってしまった毒を吸い出す人間が。
<登場人物>
大星淡,渋谷尭深,宮永照,弘世菫
<症状>
・ヤンデレ
・依存
・狂気
・異常行動
<その他>
ある方に向けた誕生日SSです。
が、中身は誕生日とは全然関係がありません。
※本SS中の人物がとる行為は、
現実では絶対に実行しないでください
※リクエストの都合上、
ひどく猟奇的な描写が何度も出てきます。
苦手な方は回避をお願いします。
--------------------------------------------------------
テルに勝てない。勝てる気がしない。
「…ツモ。4000オール。上がり止め」
ほら今日もまた負けた。
今日だけでもう3連敗。
こんなのどうしたら勝てるっていうの?
打ちひしがれた私を前にして、
テルは何も言わずに席を立つ。
去り際に少しだけ見えた目は、
ひどく悲しそうだった。
そりゃそうだよね。
白糸台高校に来て以来、私はテルに、
一度だって勝ったためしがない。
せっかく見込みがあると思って拾ってきたのに、
とんだ見込み違いだったんだから。
(…何とかしなきゃ)
心の中で呟いた。
私を拾ってくれたテルの恩に報いるために。
勝てない私なんて何の意味もない。
私から麻雀を取ったら何も残らない。
(…何とかしなきゃ)
心の中で呟いた。
テルが、私を見てくれなくなる前に。
言葉を聞いてくれなくなる前に。
照に、見捨てられちゃう前に。
「…何とかしなきゃ」
…でも、そんなのどうやって?
わかってたらとっくに実践してる。
最近はずっとこうだ。いっつも考えが堂々巡り。
ただただ焦る。イライラが募る。
そもそも「勝てる気がしない」なんて
思ってる自分に腹が立つ。
自分の中に毒が溜まっていくのがわかる。
どんどん自分が狂っていくのがわかる。
その毒を吐き出す方法だけはわからない。
「…どうしたらいいんだろ」
その答えは見つからなくて。
私はまた、眉間にしわを寄せて
麻雀を打ち続ける。
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『毒を吸って、愛を吐く』
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私は最近、とある人の事で心を痛めています。
それはチームメイトの一年生、大星淡ちゃんの事。
最近淡ちゃんは、常に険しい顔をしながら
麻雀を打つようになりました。
ひどく苦しそうに、喘ぐように牌を掴んで。
歯を食いしばって牌を捨てます。
他の人が上がって見せると、
まるでこの世の終わりのように
絶望した表情を浮かべて。
自分が和了できると、心底ほっとしたように。
大きく長く息を吐き出すのです。
昔の淡ちゃんは違いました。
常に自信に満ち溢れていました。
心から麻雀を楽しんでいました。
自分が上がった時はもちろん、
他人が上がった時すら目を輝かせて。
「やるじゃん!!」
なんて口角をあげて笑う。
それが本来の淡ちゃんだったんです。
それを尊大不遜だと嫌う人もいましたけど、
私はそんな淡ちゃんが大好きでした。
…今の淡ちゃんからは、見る影もありませんが。
(…どうしたいいのかな)
なんとか、元の淡ちゃんに戻ってほしい。
誰か悩みを吐き出せる相手がいればいいのだけれど。
残念ながら、淡ちゃんに
そんな友達はいないようでした。
早くにチーム虎姫に入った淡ちゃんは、
同級生との触れ合いが
圧倒的に足りなかったのです。
ならチームメイトならどうかというと、
こちらも力及ばすで。
弘世先輩も淡ちゃんの異変に気づいて
あれこれ声をかけていましたが…
「菫先輩には、私の気持ちはわかんないよ」
「別に勝てなくたって困らない、菫先輩にはさ」
鋭くそう返されて、言葉を失った弘世先輩。
弘世先輩の励ましは、むしろ淡ちゃんを
怒らせる結果になってしまったようでした。
(…私に、何かできる事はないのかな)
最近はそればかり考えて過ごしています。
でも弘世先輩ですら駄目だったのに、
私にできる事があるなんて思えなくて。
ただただ、遠巻きに淡ちゃんを
見守るしかありませんでした。
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行動を起こす勇気すら出せない私。
でも、思いがけず淡ちゃんに
声をかける機会がやってきました。
ううん、本当は逆に。
声をかけてはいけないタイミング
だったのかもしれません。
だって、淡ちゃんは誰もいない部室で一人。
ひっそりと静かに泣いていたのですから。
その姿を見た私は思わず。本当に思わず、
淡ちゃんに声をかけてしまいました。
「…どうしたの」
「ほっといて」
尋ねる言葉に返ってきたのは明確な拒絶。
私はついたじろぎながらも、
それでも何とか言葉を続けます。
「…ほっとけないよ」
「どうして」
「…淡ちゃんが心配だから」
「…なんで、私なんかを心配するの」
「テルに勝てない…
何の価値もない私なんかを」
その言葉には、淡ちゃんの苦しみが
端的に表れていました。
そしてそれは、あまりにも
淡ちゃんらしくない言葉でした。
宮永先輩に勝てないと言い切ってしまう事も。
自分に価値がないと断じてしまう事も。
どちらも昔の淡ちゃんからは考えられない事で。
人を慰めるなんて事に慣れていない私は、
そんな重すぎる言葉にうまく対応する事はできなくて。
つい、凡庸な言葉を返してしまいます。
「…勝てなくたって、淡ちゃんに
存在意義がないわけじゃないよ」
「それは暗に、やっぱり私は
テルに勝てないって言ってるの?」
「…そ、そういう意味じゃ…
仮に勝てなかったとしても、の話で…」
「テキトーな社交辞令はいいよ。
私は性格悪いし、勉強もできないし、
周りに溶け込む事もできない」
「私から麻雀を取ったら何も残らない。
そんなの、私が一番わかってる」
「テルだってそう思ってるはずだよ。
テルが私を拾ってくれたのは、
麻雀の腕を見込んでの事なんだから」
「麻雀なしで、私を愛してくれる人なんていないんだ」
「もういいからほっといて」
へっと吐き捨てるように、
会話を打ち切ろうとする淡ちゃん。
そんな淡ちゃんを見て、私は珍しく
胸がカッと熱くなりました。
普段は誰かに反論する事なんてない私だけど。
その言葉だけはどうしても受け入れたくなくて。
私はつい、こう言ってしまったんです。
「私が愛するよ」
「…へ?」
「…だから、私が淡ちゃんを愛すよ」
自嘲の笑みが張り付いた淡ちゃんの顔。
それが驚きに変わるのを見て、
私は希望を見出しました。
もしかして、私の言葉が
淡ちゃんに届くかもしれないって。
でも、次の刹那には…
淡ちゃんの瞳に、燃え盛る炎が宿りました。
それが示す意味は怒り。
淡ちゃんはその大きな目を細め、
低い、低い声で私を罵りました。
「テキトーな事言うのやめてって言ったでしょ」
「私、そういうの一番嫌いなんだよ」
「口先なら何とでも言える」
「私みたいなの、愛せるわけがないじゃん」
静かな、でも苛烈な怒り。
元々争い事を好まない私は、
それだけで思わず足が竦んで、
涙がせり上がってきてしまいます。
でもここで引くわけにはいきません。
私は淡ちゃんが心配。
淡ちゃんに笑ってほしい。
淡ちゃんが好き。
その気持ちに、嘘偽りはないのです。
でも、その思いを伝える手段が、
私には思いつきませんでした。
「…どうしたら信じてくれるの?」
「…っ…まだ言うの…っ!」
「…うん。私は、『テキトー』な気持ちで
言ったわけじゃないから」
「……っ!!」
そう言った瞬間、
淡ちゃんの目が思い切り揺らいで。
淡ちゃんの体が大きくぶれて。
次の瞬間感じたのは、頬への衝撃。
次に感じたのは、熱。
その次に感じたのは…痛み。
私は、淡ちゃんに頬をはたかれていました。
「…これでも!?これでも愛せるっていうの!?」
「今の私は、ずっとこんな感じだよ!?」
「体中に毒が溜まって、
吐き出したくてたまらない!」
「私を愛せるって言うなら、
この毒を全部受けきってもらうよ!?」
らんらんと燃える瞳。
その瞳には狂気の色が浮かんでいて、
でもどこかひどく切ない。
その目を見て気づきました。
ああ、淡ちゃんはまさに今。
壊れちゃう寸前なんだって。
そして同時に安堵しました。
だって、ただ淡ちゃんの毒を。
暴力を受け入れればいいというのなら。
それなら、凡庸な私にだってできる
もちろん怖くないわけがないけど。
痛いのだって嫌だけど。
それでも、それで淡ちゃんが癒されるなら。
少しでも、淡ちゃんの苦しみが緩和できるなら。
私は、喜んで受け入れる
まっすぐ私を見すえる淡ちゃんを前にして。
私は、おずおずと両腕を広げました。
「…いいよっ…」
「…淡ちゃんの、毒…」
「全部…受け止めて、見せる」
「…その上で…愛してるって、言って見せるから」
淡ちゃんは苦しそうに顔を歪ませて、
私の頬を張りました。
何度も、何度も、何度も、何度も。
目に涙が滲みます。
視界がぼやけて、淡ちゃんの姿が
あやふやになりました。
与え続けられる衝撃に、
やがて意識が朦朧としてきます。
それでも私は、抵抗する事なく
受け入れました。
「なんでっ…どうしてっ……そこまでするのっ…」
「私…なんかのためにっ……」
いつの間にか、その手の動きは止まっていて。
淡ちゃんは泣きじゃくっていました。
私は意識が混濁したまま、
目の前で震える淡ちゃんを抱き締めます。
淡ちゃんが拒絶する事はありませんでした。
よかった…少しは…
わかってもらえたみたい……
淡ちゃんの力になれる。
私はそんな喜びに浸りながら、
腕の中におさまる淡ちゃんを
優しくなでさすりました。
淡ちゃんもそのまま、
私の腕の中で嗚咽し続けました。
少しだけ、淡ちゃんと分かり合う事が
できた気がして。
疼く痛みすら、その勲章に思えて。
喜びに浸る私は、気づく事ができませんでした。
この日、自分が…
取り返しのつかない過ちを
犯してしまった事に。
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淡ちゃんの身体に溜まった、夥しい量の毒
それを吸い出す事にしました
だってそうしないと、
淡ちゃんはおかしくなってしまうから
淡ちゃんの毒を吸って、
代わりに愛を注ぐんです
そうすれば、きっと淡ちゃんは
元通り明るい子に戻ってくれるはず
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麻雀を打つ度に。宮永先輩に負け続ける度に。
淡ちゃんは私に毒を吐き続けました。
私も私で、特に異を唱える事もなく。
素直にそれを受け入れて、
代わりに愛を注ぎ続けました。
とはいえ前のように頬を張り続けられては、
周囲に心配されてしまいますから。
毒を吸うのは首より下に。
服で隠れる範囲に限定する事にしました。
今日もまた。
淡ちゃんは私のお腹の肉を、
千切れんばかりにつねって捻ります。
「んぅっ……!」
「ねえ、痛い?タカミー痛い?」
「うんっ……痛いっ…これ、が…
淡ちゃんのっ…今日、感じた、痛み、なんだねっ…」
「うん」
たっぷり数分はかけた後、
淡ちゃんが指を離します。
そこには、新しく痛々しい
痕が刻まれていました。
お腹は痕で埋め尽くされて、
そろそろ新しいカンバスが必要になりそうな程に
赤黒くなっています。
それだけ淡ちゃんが傷ついているという事実に、
心を痛めながらも。
それだけ淡ちゃんを楽にできたという事実を、
少しだけ誇りに思うんです。
「…ありがと、タカミー」
「私の苦しみを分かってくれるのはタカミだけ」
「受け入れてくれるのはタカミだけ」
「ホントに。ホントに助かってる」
毒吐きが終わった後に、
淡ちゃんから告げられるその言葉。
その言葉だけで、私は幸せに満たされます。
事あるごとに毒を吸い続けました。
淡ちゃんの様子に少しでも異変を感じたら、
己の肌を差し出しました。
そうするうちに、淡ちゃんの顔にも
笑顔が戻ってきて。
何も知らない人からしたら、
淡ちゃんの悩みが解決したように
見えたかもしれません。
実際には、何も解決していなかったのに。
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身体に溜まった私の毒
タカミはそれを、余す事無く吸い出してくれる
そして空っぽになった私の中に
代わりに愛を注ぎ込んでくれる
それがひどく嬉しくて
どこまで愛してくれるのか知りたくて
どこで見限られるのか見極めたくて
私の毒は、どんどん濃さを増していく
それでもタカミは、吸い続ける
そうする事で、タカミの体は
どんどん壊れていってるのに
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私の暴力は日に日に
エスカレートしていった。
それも当然。だって、問題は何一つ解決してない。
タカミが受け入れてくれたとしても、
私がテルに勝てない無価値な人間である
事実に変わりはなくて。
タカミは頭がおかしいから、
ボランティアで私に
愛を注いでくれてるだけなんだ。
そんな愛が怖かった。だって私は、
愛してもらえるような人間じゃないから。
私にそんな価値はないから。
タカミもいつかそれに気づいて、
私から離れて行っちゃうんじゃないかって。
それが怖くて仕方なかった。
だから私はエスカレートする。
どこまでやったら、タカミの限界を
超えちゃうのか知りたくて。
それがわかれば、私はそこを
二度と超えないようにするから。
タカミの腕には、一筋の切り傷。
じわりと腕に血を滲ませたまま、
タカミは私を抱き締める。
「…ねえ、これもタカミは、
受け入れちゃうの?」
「…うん。言ったよ?私は全部受け入れるって」
「でも…これ、そう簡単には治らないよ?」
「……」
「…いいよ?淡ちゃんが苦しい方が嫌だから」
「…タカミ……」
でも、タカミは全部受け入れちゃう。
これはさすがに駄目だろうって思った行為も、
いともあっさり受け入れちゃう。
私は、少しずつそれに希望を見出し続ける。
もしかしたら、タカミの愛に
限界はないのかもしれない。
知りたい。タカミの限界を。
ううん。限界がないって実感したい。
だから私は、エスカレートする。
エスカレートする。エスカレートする。エスカレートする。
それはもう、タカミの治癒力を
はるかに超えていて。
タカミはどんどんボロボロになっていく。
「…いいよ?もっとして?」
それでも、タカミは拒絶しないんだ。
それがたまらなく嬉しくて。
私はつい、今日もタカミを傷つける。
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淡ちゃんの行為は、目に見えて
エスカレートしていきました。
いつの日かそれは、麻雀を打たなかった日も
行われるようになって。
淡ちゃんが前よりおかしくなってきている。
そう気づいた時には、とっくに
手遅れになっていました。
だって、私も同じくらい…
おかしくなっていましたから。
だって、私はこんなに尽くしているのに。
それでも、淡ちゃんは安心してくれなくて。
まだ、自分に価値がないなんて言うものだから。
だったら私も、もっと自分を
捧げるしかないじゃないですか。
淡ちゃんがわかってくれるまで。
ただ存在してくれるだけでいいんだって
わかってもらえるまで。
毒を受け入れ続けるしかなかったんです。
お腹の肉をつねるところから始まって。
痕で一面を埋め尽くしたら、
背中を思い切り手で叩いて。
やがて冬服に衣替えしたら、
腕に切り傷を量産して。
それでも淡ちゃんは、
私の愛を信じ切ってはくれませんでした。
信じてくれないまま、
淡ちゃんの行為はどんどん苛烈になっていって…
結局止まる事のないまま。
ついに、その日が来てしまいました。
そうそれは…
淡ちゃんが、私の首を絞める日。
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きっかけは、その日の麻雀で
ラスを引いた事だったと思います。
目標にしていた宮永先輩はおろか。
いつもその傍らに寄り添う
弘世先輩にまで狙い打たれて。
その結果、歯牙にもかけていなかった
誠子ちゃんにも点数で負けて。
いよいよ淡ちゃんは、
心の均衡を保てなくなりました。
異変を感じ取った私は、即座に
淡ちゃんを自分の部屋に押し込みます。
途端、淡ちゃんは目を見開いて
喚き散らし始めました。
「あはは!なんなの私!
死んじゃえ!もう死んじゃえ!!」
「…そんな事言うのはやめて…
苦しいなら、私が全部受け入れるから…」
「あはは!タカミーバカなの!?
私死にたいんだよ!?」
「受け入れたらタカミー死んじゃうじゃん!
いくらなんでもそれは嘘でしょ!」
「…受け入れるっ…受け入れるよっ……」
「…っ!だったら今、ここで死んで見せてよ!!」
狂ったように叫ぶ淡ちゃんを前に、
私も正気を保てませんでした。
首に回された淡ちゃんの細い指。
人として、振り払わなければいけなかったのに。
私はその手を、受け入れて、しまって。
そして始まる、首への圧迫。
細い気道への圧迫に、自然と吐き気を催します。
呼吸ができなくなり、血の巡りが遮断されて。
味わった事のない苦しみに、
口がありきたりな音を吐き出しました。
「こっ…かひゅっ…!」
「あはは!これでも!
これでもまだ受け入れるんだ!?」
「タカミ、おかしいよ!頭おかしい!私と同じ!!」
淡ちゃんが笑いながら。
ううん、泣きながら。
そのまま私の首に力を込めます。
ぎりぎりと絞まり続ける首。
やがて、窒息するような苦しみが、
スーッと綺麗に消えていきます。
次に奇妙な浮遊感を覚えました。
そして、眠りに落ちる寸前のような、
ある種の心地よさを感じた時。
あ、これは、死んじゃうな…って思いました
それなら最期に、淡ちゃんに愛を伝えたくて。
でも声を出す事はできなくて。
代わりに笑顔を作りました。
精一杯の愛を。そしてさよならの意味を籠めて。
でも、私の愛を受け取った淡ちゃんは、
予想とは違う行動をとりました。
「バカっ…ホントにもう…タカミのバカっ!!!」
首に感じていた圧迫感がなくなって。
止まっていた空気が、血液が、
瞬く間にどっと流れ込んできて。
生理的に倒れ込んで咳き込みました。
そんな私に、淡ちゃんは今度こそ
泣きじゃくりながら。私に縋り付いてきます。
全身で感じる淡ちゃんの熱。
それで、私はまだ生きているんだと
実感する事ができました。
どうやら私は、もう少しだけ
淡ちゃんに愛を注ぐ事ができそうです。
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身体に溜まった、淡ちゃんの毒
その毒はもう、吸っても吸っても無くならなくて
毒はどんどん強さを増していって
やがて、その毒はついに致死量に達しました
それでも私は、その毒を吸うんです
だって私は淡ちゃんのために
そうする事しかできないから
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私がしでかした事。
それは、私達の今までを壊す
取り返しのつかないものだった。
タカミの首に、くっきりと
浮かび上がった私の手。
それは首の皮をこすっても消えなくて。
かといって包帯で隠すなんて本末転倒で。
だからタカミは、痕が消えるまで
部屋に籠る事にした。
でも、そんな事をしても
その場しのぎにすぎなくて。
他の人ならともかく、あの二人を
ごまかせるはずがなかった。
特に、普段から私達をずっと
気にかけていた菫先輩には。
食事の時間になっても部屋に出てこなかったタカミ。
ただそれだけの事で、菫先輩は異変に気づいて。
タカミの部屋にやって来て。
それが居留守だとすぐに気づいて。
寮長から鍵を借りて、
テルと一緒に中に押し入ってきた。
そしてすぐに、詰問が始まった。
「…その首の痕はどういう事だ」
「…聞かなくてもわかるでしょ。
私が、タカミの首を絞めただけ」
「…どうして」
「…タカミが、私の毒を吸ってくれるから」
「代わりに愛をくれるから」
「…重症だな。ここまできたら、
もう専門医に任せるしかないだろう」
「…どうかこのままにしてください。
病院に行っても淡ちゃんは救われません」
「私が…なんとか、淡ちゃんを」
「残念だが…それは聞き入れられない」
「私には、淡の苦しみを
聞き出す事ができなかった。
それができたお前ならあるいは…
そう思って静観していたが」
「こうなってしまった以上、もう無理だ」
「淡。お前は私と一緒に来い。今のお前を、
尭深と一緒にしておくわけにはいかない」
「照。お前は尭深を頼む」
「…うん」
菫先輩が私の手を握る。それも、
決して拒否を許さない強い力で。
私は菫先輩と部屋を去る。
タカミとテルを二人残して。
最後に後ろを振り向いて、
ちらりと映ったタカミの姿。
酷く悲しそうで、今にも消え入りそうだった。
もうまるで、二度と会えないかのような。
そんな悲しい目をしてた。
それを見て私は思う。
ああ、私の人生はここで終わるんだ
だってタカミを失って、
私が生きていけるはずがない。
このまま病院かどこかに連れて行かれて、
壊れてわけがわからなくなって終わるんだ。
いくらなんでも、
そんなのは嫌だって思った。
だったらいっそ。
完全に引き離されちゃう前に。
タカミと一緒に、死んじゃいたい
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深夜
私はゆさゆさと揺り動かされて目を覚ましました
一度死にかけた事は、私の心と体に
大きな負担をかけていたのでしょう
私は覚醒しきる事はなく、
夢うつつのまま瞼を開きました
そして、私の瞳に映ったのは
ところどころに赤黒い斑点を作った淡ちゃんの姿
傍らには、宮永先輩が倒れています
異様な状況にも関わらず、
淡ちゃんは落ち着いた声音で問いかけました
「ねえタカミ。私の事好き?」
現状の把握を放棄した私は、
ただ思ったまま答えました
「…好き。何度もそう言ってるよ?」
「私のためなら、何でもしてくれる?」
「…するよ。淡ちゃんのためなら」
「私と一緒に、死んで欲しいって言っても?」
「…それを、淡ちゃんが望むなら」
嘘でした
本当は、淡ちゃんのその言葉を聞いた瞬間
私は、歓喜に打ち震えていたのです
だって、このまま引き離されるくらいなら、
一緒に逝ってしまいたい
私も、そう考えていたのですから
私と一緒に死ぬ
それは、淡ちゃんはもう、
他の人に認められる事を諦めたという事
私と引き離されるくらいなら
二人で死ぬ事を選ぶと言う事
淡ちゃんは、ようやく
私の愛を、完全に受け入れてくれたんです
ああ、なんて素敵な事でしょう
「じゃあ、行こう」
「うん」
私達は互いに手を取り合って
ゆっくりと、寄り添いながら屋上へと向かいます
私たち以外には、品行方正な寮生しか
いないからでしょうか
屋上への道のりは、
一度として阻まれる事はなく
私達は特に障害もなく
そこに辿り着く事ができました
「…タカミ。これで、私が毒を吐くのも最後になるね」
「…そうだね」
「今までごめんね。でも、すごく嬉しかったよ」
「…謝る必要はないよ?私も嬉しかったから」
「…ねぇ。どうしてここまでしてくれたの?」
「…それも、最初から言ってるよ?」
「…淡ちゃんを、愛しているから」
「今までも、これからもずっと」
「淡ちゃんを愛してる」
「だから、最期の淡ちゃんの毒をちょうだい」
「…うん。私も、タカミの事、愛してる」
愛してる
最期に 本当に最期に
淡ちゃんの口から、
その言葉を聞く事ができました
ああ、私は幸せです
もう思い残す事はありません
お互いの手を握ります
決して、決して離さないように
たとえ、死が私達を別つとしても
そして、私達は新しい一歩を踏み出すように
軽い足取りで、空に向かって飛び出しました
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愛を吸って、毒を吐く
私がどんな毒を吐いても、
タカミは変わらず、
愛を与え続けてくれる
だから私はあまえちゃって
その愛を養分に毒を吐き続けた
でも、私の毒は強さを増して
ついにそれは致死量に達して
それでも、タカミは受け入れてくれちゃうから
だから、わたしは、どくを
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「…これが、お前の出した結論か」
「…はい」
「自分が、間違っていたとは思わないか」
「…はい」
「だって、喜ばしい事じゃないですか」
「あの時淡ちゃんは、
確かに私を選んだんです」
「宮永先輩に勝つために挑み続けるよりも」
「私と二人で死ぬ事を選んだんです」
「ようやく、淡ちゃんは
宮永先輩から解放された」
「後は私が愛し続ければ、
淡ちゃんは幸せになれる」
「……」
「…その体で、どうやって愛するって言うんだ」
「…簡単ですよ?淡ちゃんの毒を、
全て受け入れればいいんです」
「いずれ、淡ちゃんが私を殺すまで」
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「…結局、こうなっちゃったね」
「麻雀で勝てなかったとしても、
それとは関係なく淡を愛してる人はいる」
「私達は、それを伝え続けたはずだったのに」
「うん。ごめんね。わからなかった」
「言葉で言われても、ピンと来なかったんだ」
「でも大丈夫。今はもうわかってるよ」
「…本当に?」
「うん」
「多分、心の奥底ではわかってたんだと思う」
「私はあの時、テルに勝つ事より
タカミと一緒に死ぬ事を選んだ」
「タカミは、私がどんな毒を吐いても、
絶対に受け入れてくれる」
「私がどんなに駄目な人間でも、
タカミは見捨てないでくれる」
「私はタカミと一緒に居れば幸せになれる」
「今回の事で、それがよくわかった」
「だから」
「タカミの体が動かないくらい、どってことないよ」
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二人一緒に身を投げた私達は、
残念ながら旅立つ事はできませんでした。
でも、全く意味がなかったわけではなくて。
この心中未遂を経て、淡ちゃんはようやく。
ようやく私の愛を心から信じてくれました。
もっともその代償はタダではなく。
私は体の制御を失いました。
もはや一人で生きていく事はできません。
淡ちゃんに見捨てられたなら、
私は数日後には息絶えるでしょう。
でもそれは、大した問題ではありません。
どうせ淡ちゃんだって、
私がいなければ生きていけないのですから。
「ねぇタカミー、そろそろ、しよ?」
「…うん。いいよ。来て」
私の愛を受け入れてくれた淡ちゃんですが。
だからといって私に毒を吐く事を
やめられたわけではありませんでした。
もうそれは、私達にとって
欠かせないコミュニケーションになっていたからです。
淡ちゃんは、私に毒を吐かなければ
生きていけないんです。
今日も淡ちゃんは私に毒を吐きます。
私の体にその痕が残ります。
私はそれを見て、今日も淡ちゃんに
愛されてると実感します。
「…もっと、もっとして?」
「うん」
私の懇願に、淡ちゃんは嬉しそうに目を細めると。
そのまま、私の首に手をかけました。
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--------------------------------------------------------
愛を吸って、毒を吐く
毒を吸って、愛を吐く
愛がなければ、毒は吐けず
毒がなければ、愛は吐けない
どちらが欠けても、
私達は生きてはいけない
だから、わたしは、どくをはく
だから、わたしは、あいをはく
どちらかが死んで、片割れが後を追うまで
(完)
宮永先輩に拾われて白糸台高校に入学した淡ちゃん。
最初は自信たっぷりで、
心から麻雀を楽しんでいた淡ちゃん。
でも、そんな淡ちゃんが見られたのも
インターハイが終わるまでの事で。
勝つ事に異常に執着して、
そして勝てない淡ちゃんは。
少しずつ、少しずつ心を摩耗していきました。
だから、必要だったんです。
心に溜まってしまった毒を吸い出す人間が。
<登場人物>
大星淡,渋谷尭深,宮永照,弘世菫
<症状>
・ヤンデレ
・依存
・狂気
・異常行動
<その他>
ある方に向けた誕生日SSです。
が、中身は誕生日とは全然関係がありません。
※本SS中の人物がとる行為は、
現実では絶対に実行しないでください
※リクエストの都合上、
ひどく猟奇的な描写が何度も出てきます。
苦手な方は回避をお願いします。
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テルに勝てない。勝てる気がしない。
「…ツモ。4000オール。上がり止め」
ほら今日もまた負けた。
今日だけでもう3連敗。
こんなのどうしたら勝てるっていうの?
打ちひしがれた私を前にして、
テルは何も言わずに席を立つ。
去り際に少しだけ見えた目は、
ひどく悲しそうだった。
そりゃそうだよね。
白糸台高校に来て以来、私はテルに、
一度だって勝ったためしがない。
せっかく見込みがあると思って拾ってきたのに、
とんだ見込み違いだったんだから。
(…何とかしなきゃ)
心の中で呟いた。
私を拾ってくれたテルの恩に報いるために。
勝てない私なんて何の意味もない。
私から麻雀を取ったら何も残らない。
(…何とかしなきゃ)
心の中で呟いた。
テルが、私を見てくれなくなる前に。
言葉を聞いてくれなくなる前に。
照に、見捨てられちゃう前に。
「…何とかしなきゃ」
…でも、そんなのどうやって?
わかってたらとっくに実践してる。
最近はずっとこうだ。いっつも考えが堂々巡り。
ただただ焦る。イライラが募る。
そもそも「勝てる気がしない」なんて
思ってる自分に腹が立つ。
自分の中に毒が溜まっていくのがわかる。
どんどん自分が狂っていくのがわかる。
その毒を吐き出す方法だけはわからない。
「…どうしたらいいんだろ」
その答えは見つからなくて。
私はまた、眉間にしわを寄せて
麻雀を打ち続ける。
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『毒を吸って、愛を吐く』
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私は最近、とある人の事で心を痛めています。
それはチームメイトの一年生、大星淡ちゃんの事。
最近淡ちゃんは、常に険しい顔をしながら
麻雀を打つようになりました。
ひどく苦しそうに、喘ぐように牌を掴んで。
歯を食いしばって牌を捨てます。
他の人が上がって見せると、
まるでこの世の終わりのように
絶望した表情を浮かべて。
自分が和了できると、心底ほっとしたように。
大きく長く息を吐き出すのです。
昔の淡ちゃんは違いました。
常に自信に満ち溢れていました。
心から麻雀を楽しんでいました。
自分が上がった時はもちろん、
他人が上がった時すら目を輝かせて。
「やるじゃん!!」
なんて口角をあげて笑う。
それが本来の淡ちゃんだったんです。
それを尊大不遜だと嫌う人もいましたけど、
私はそんな淡ちゃんが大好きでした。
…今の淡ちゃんからは、見る影もありませんが。
(…どうしたいいのかな)
なんとか、元の淡ちゃんに戻ってほしい。
誰か悩みを吐き出せる相手がいればいいのだけれど。
残念ながら、淡ちゃんに
そんな友達はいないようでした。
早くにチーム虎姫に入った淡ちゃんは、
同級生との触れ合いが
圧倒的に足りなかったのです。
ならチームメイトならどうかというと、
こちらも力及ばすで。
弘世先輩も淡ちゃんの異変に気づいて
あれこれ声をかけていましたが…
「菫先輩には、私の気持ちはわかんないよ」
「別に勝てなくたって困らない、菫先輩にはさ」
鋭くそう返されて、言葉を失った弘世先輩。
弘世先輩の励ましは、むしろ淡ちゃんを
怒らせる結果になってしまったようでした。
(…私に、何かできる事はないのかな)
最近はそればかり考えて過ごしています。
でも弘世先輩ですら駄目だったのに、
私にできる事があるなんて思えなくて。
ただただ、遠巻きに淡ちゃんを
見守るしかありませんでした。
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行動を起こす勇気すら出せない私。
でも、思いがけず淡ちゃんに
声をかける機会がやってきました。
ううん、本当は逆に。
声をかけてはいけないタイミング
だったのかもしれません。
だって、淡ちゃんは誰もいない部室で一人。
ひっそりと静かに泣いていたのですから。
その姿を見た私は思わず。本当に思わず、
淡ちゃんに声をかけてしまいました。
「…どうしたの」
「ほっといて」
尋ねる言葉に返ってきたのは明確な拒絶。
私はついたじろぎながらも、
それでも何とか言葉を続けます。
「…ほっとけないよ」
「どうして」
「…淡ちゃんが心配だから」
「…なんで、私なんかを心配するの」
「テルに勝てない…
何の価値もない私なんかを」
その言葉には、淡ちゃんの苦しみが
端的に表れていました。
そしてそれは、あまりにも
淡ちゃんらしくない言葉でした。
宮永先輩に勝てないと言い切ってしまう事も。
自分に価値がないと断じてしまう事も。
どちらも昔の淡ちゃんからは考えられない事で。
人を慰めるなんて事に慣れていない私は、
そんな重すぎる言葉にうまく対応する事はできなくて。
つい、凡庸な言葉を返してしまいます。
「…勝てなくたって、淡ちゃんに
存在意義がないわけじゃないよ」
「それは暗に、やっぱり私は
テルに勝てないって言ってるの?」
「…そ、そういう意味じゃ…
仮に勝てなかったとしても、の話で…」
「テキトーな社交辞令はいいよ。
私は性格悪いし、勉強もできないし、
周りに溶け込む事もできない」
「私から麻雀を取ったら何も残らない。
そんなの、私が一番わかってる」
「テルだってそう思ってるはずだよ。
テルが私を拾ってくれたのは、
麻雀の腕を見込んでの事なんだから」
「麻雀なしで、私を愛してくれる人なんていないんだ」
「もういいからほっといて」
へっと吐き捨てるように、
会話を打ち切ろうとする淡ちゃん。
そんな淡ちゃんを見て、私は珍しく
胸がカッと熱くなりました。
普段は誰かに反論する事なんてない私だけど。
その言葉だけはどうしても受け入れたくなくて。
私はつい、こう言ってしまったんです。
「私が愛するよ」
「…へ?」
「…だから、私が淡ちゃんを愛すよ」
自嘲の笑みが張り付いた淡ちゃんの顔。
それが驚きに変わるのを見て、
私は希望を見出しました。
もしかして、私の言葉が
淡ちゃんに届くかもしれないって。
でも、次の刹那には…
淡ちゃんの瞳に、燃え盛る炎が宿りました。
それが示す意味は怒り。
淡ちゃんはその大きな目を細め、
低い、低い声で私を罵りました。
「テキトーな事言うのやめてって言ったでしょ」
「私、そういうの一番嫌いなんだよ」
「口先なら何とでも言える」
「私みたいなの、愛せるわけがないじゃん」
静かな、でも苛烈な怒り。
元々争い事を好まない私は、
それだけで思わず足が竦んで、
涙がせり上がってきてしまいます。
でもここで引くわけにはいきません。
私は淡ちゃんが心配。
淡ちゃんに笑ってほしい。
淡ちゃんが好き。
その気持ちに、嘘偽りはないのです。
でも、その思いを伝える手段が、
私には思いつきませんでした。
「…どうしたら信じてくれるの?」
「…っ…まだ言うの…っ!」
「…うん。私は、『テキトー』な気持ちで
言ったわけじゃないから」
「……っ!!」
そう言った瞬間、
淡ちゃんの目が思い切り揺らいで。
淡ちゃんの体が大きくぶれて。
次の瞬間感じたのは、頬への衝撃。
次に感じたのは、熱。
その次に感じたのは…痛み。
私は、淡ちゃんに頬をはたかれていました。
「…これでも!?これでも愛せるっていうの!?」
「今の私は、ずっとこんな感じだよ!?」
「体中に毒が溜まって、
吐き出したくてたまらない!」
「私を愛せるって言うなら、
この毒を全部受けきってもらうよ!?」
らんらんと燃える瞳。
その瞳には狂気の色が浮かんでいて、
でもどこかひどく切ない。
その目を見て気づきました。
ああ、淡ちゃんはまさに今。
壊れちゃう寸前なんだって。
そして同時に安堵しました。
だって、ただ淡ちゃんの毒を。
暴力を受け入れればいいというのなら。
それなら、凡庸な私にだってできる
もちろん怖くないわけがないけど。
痛いのだって嫌だけど。
それでも、それで淡ちゃんが癒されるなら。
少しでも、淡ちゃんの苦しみが緩和できるなら。
私は、喜んで受け入れる
まっすぐ私を見すえる淡ちゃんを前にして。
私は、おずおずと両腕を広げました。
「…いいよっ…」
「…淡ちゃんの、毒…」
「全部…受け止めて、見せる」
「…その上で…愛してるって、言って見せるから」
淡ちゃんは苦しそうに顔を歪ませて、
私の頬を張りました。
何度も、何度も、何度も、何度も。
目に涙が滲みます。
視界がぼやけて、淡ちゃんの姿が
あやふやになりました。
与え続けられる衝撃に、
やがて意識が朦朧としてきます。
それでも私は、抵抗する事なく
受け入れました。
「なんでっ…どうしてっ……そこまでするのっ…」
「私…なんかのためにっ……」
いつの間にか、その手の動きは止まっていて。
淡ちゃんは泣きじゃくっていました。
私は意識が混濁したまま、
目の前で震える淡ちゃんを抱き締めます。
淡ちゃんが拒絶する事はありませんでした。
よかった…少しは…
わかってもらえたみたい……
淡ちゃんの力になれる。
私はそんな喜びに浸りながら、
腕の中におさまる淡ちゃんを
優しくなでさすりました。
淡ちゃんもそのまま、
私の腕の中で嗚咽し続けました。
少しだけ、淡ちゃんと分かり合う事が
できた気がして。
疼く痛みすら、その勲章に思えて。
喜びに浸る私は、気づく事ができませんでした。
この日、自分が…
取り返しのつかない過ちを
犯してしまった事に。
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淡ちゃんの身体に溜まった、夥しい量の毒
それを吸い出す事にしました
だってそうしないと、
淡ちゃんはおかしくなってしまうから
淡ちゃんの毒を吸って、
代わりに愛を注ぐんです
そうすれば、きっと淡ちゃんは
元通り明るい子に戻ってくれるはず
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麻雀を打つ度に。宮永先輩に負け続ける度に。
淡ちゃんは私に毒を吐き続けました。
私も私で、特に異を唱える事もなく。
素直にそれを受け入れて、
代わりに愛を注ぎ続けました。
とはいえ前のように頬を張り続けられては、
周囲に心配されてしまいますから。
毒を吸うのは首より下に。
服で隠れる範囲に限定する事にしました。
今日もまた。
淡ちゃんは私のお腹の肉を、
千切れんばかりにつねって捻ります。
「んぅっ……!」
「ねえ、痛い?タカミー痛い?」
「うんっ……痛いっ…これ、が…
淡ちゃんのっ…今日、感じた、痛み、なんだねっ…」
「うん」
たっぷり数分はかけた後、
淡ちゃんが指を離します。
そこには、新しく痛々しい
痕が刻まれていました。
お腹は痕で埋め尽くされて、
そろそろ新しいカンバスが必要になりそうな程に
赤黒くなっています。
それだけ淡ちゃんが傷ついているという事実に、
心を痛めながらも。
それだけ淡ちゃんを楽にできたという事実を、
少しだけ誇りに思うんです。
「…ありがと、タカミー」
「私の苦しみを分かってくれるのはタカミだけ」
「受け入れてくれるのはタカミだけ」
「ホントに。ホントに助かってる」
毒吐きが終わった後に、
淡ちゃんから告げられるその言葉。
その言葉だけで、私は幸せに満たされます。
事あるごとに毒を吸い続けました。
淡ちゃんの様子に少しでも異変を感じたら、
己の肌を差し出しました。
そうするうちに、淡ちゃんの顔にも
笑顔が戻ってきて。
何も知らない人からしたら、
淡ちゃんの悩みが解決したように
見えたかもしれません。
実際には、何も解決していなかったのに。
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身体に溜まった私の毒
タカミはそれを、余す事無く吸い出してくれる
そして空っぽになった私の中に
代わりに愛を注ぎ込んでくれる
それがひどく嬉しくて
どこまで愛してくれるのか知りたくて
どこで見限られるのか見極めたくて
私の毒は、どんどん濃さを増していく
それでもタカミは、吸い続ける
そうする事で、タカミの体は
どんどん壊れていってるのに
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私の暴力は日に日に
エスカレートしていった。
それも当然。だって、問題は何一つ解決してない。
タカミが受け入れてくれたとしても、
私がテルに勝てない無価値な人間である
事実に変わりはなくて。
タカミは頭がおかしいから、
ボランティアで私に
愛を注いでくれてるだけなんだ。
そんな愛が怖かった。だって私は、
愛してもらえるような人間じゃないから。
私にそんな価値はないから。
タカミもいつかそれに気づいて、
私から離れて行っちゃうんじゃないかって。
それが怖くて仕方なかった。
だから私はエスカレートする。
どこまでやったら、タカミの限界を
超えちゃうのか知りたくて。
それがわかれば、私はそこを
二度と超えないようにするから。
タカミの腕には、一筋の切り傷。
じわりと腕に血を滲ませたまま、
タカミは私を抱き締める。
「…ねえ、これもタカミは、
受け入れちゃうの?」
「…うん。言ったよ?私は全部受け入れるって」
「でも…これ、そう簡単には治らないよ?」
「……」
「…いいよ?淡ちゃんが苦しい方が嫌だから」
「…タカミ……」
でも、タカミは全部受け入れちゃう。
これはさすがに駄目だろうって思った行為も、
いともあっさり受け入れちゃう。
私は、少しずつそれに希望を見出し続ける。
もしかしたら、タカミの愛に
限界はないのかもしれない。
知りたい。タカミの限界を。
ううん。限界がないって実感したい。
だから私は、エスカレートする。
エスカレートする。エスカレートする。エスカレートする。
それはもう、タカミの治癒力を
はるかに超えていて。
タカミはどんどんボロボロになっていく。
「…いいよ?もっとして?」
それでも、タカミは拒絶しないんだ。
それがたまらなく嬉しくて。
私はつい、今日もタカミを傷つける。
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淡ちゃんの行為は、目に見えて
エスカレートしていきました。
いつの日かそれは、麻雀を打たなかった日も
行われるようになって。
淡ちゃんが前よりおかしくなってきている。
そう気づいた時には、とっくに
手遅れになっていました。
だって、私も同じくらい…
おかしくなっていましたから。
だって、私はこんなに尽くしているのに。
それでも、淡ちゃんは安心してくれなくて。
まだ、自分に価値がないなんて言うものだから。
だったら私も、もっと自分を
捧げるしかないじゃないですか。
淡ちゃんがわかってくれるまで。
ただ存在してくれるだけでいいんだって
わかってもらえるまで。
毒を受け入れ続けるしかなかったんです。
お腹の肉をつねるところから始まって。
痕で一面を埋め尽くしたら、
背中を思い切り手で叩いて。
やがて冬服に衣替えしたら、
腕に切り傷を量産して。
それでも淡ちゃんは、
私の愛を信じ切ってはくれませんでした。
信じてくれないまま、
淡ちゃんの行為はどんどん苛烈になっていって…
結局止まる事のないまま。
ついに、その日が来てしまいました。
そうそれは…
淡ちゃんが、私の首を絞める日。
--------------------------------------------------------
きっかけは、その日の麻雀で
ラスを引いた事だったと思います。
目標にしていた宮永先輩はおろか。
いつもその傍らに寄り添う
弘世先輩にまで狙い打たれて。
その結果、歯牙にもかけていなかった
誠子ちゃんにも点数で負けて。
いよいよ淡ちゃんは、
心の均衡を保てなくなりました。
異変を感じ取った私は、即座に
淡ちゃんを自分の部屋に押し込みます。
途端、淡ちゃんは目を見開いて
喚き散らし始めました。
「あはは!なんなの私!
死んじゃえ!もう死んじゃえ!!」
「…そんな事言うのはやめて…
苦しいなら、私が全部受け入れるから…」
「あはは!タカミーバカなの!?
私死にたいんだよ!?」
「受け入れたらタカミー死んじゃうじゃん!
いくらなんでもそれは嘘でしょ!」
「…受け入れるっ…受け入れるよっ……」
「…っ!だったら今、ここで死んで見せてよ!!」
狂ったように叫ぶ淡ちゃんを前に、
私も正気を保てませんでした。
首に回された淡ちゃんの細い指。
人として、振り払わなければいけなかったのに。
私はその手を、受け入れて、しまって。
そして始まる、首への圧迫。
細い気道への圧迫に、自然と吐き気を催します。
呼吸ができなくなり、血の巡りが遮断されて。
味わった事のない苦しみに、
口がありきたりな音を吐き出しました。
「こっ…かひゅっ…!」
「あはは!これでも!
これでもまだ受け入れるんだ!?」
「タカミ、おかしいよ!頭おかしい!私と同じ!!」
淡ちゃんが笑いながら。
ううん、泣きながら。
そのまま私の首に力を込めます。
ぎりぎりと絞まり続ける首。
やがて、窒息するような苦しみが、
スーッと綺麗に消えていきます。
次に奇妙な浮遊感を覚えました。
そして、眠りに落ちる寸前のような、
ある種の心地よさを感じた時。
あ、これは、死んじゃうな…って思いました
それなら最期に、淡ちゃんに愛を伝えたくて。
でも声を出す事はできなくて。
代わりに笑顔を作りました。
精一杯の愛を。そしてさよならの意味を籠めて。
でも、私の愛を受け取った淡ちゃんは、
予想とは違う行動をとりました。
「バカっ…ホントにもう…タカミのバカっ!!!」
首に感じていた圧迫感がなくなって。
止まっていた空気が、血液が、
瞬く間にどっと流れ込んできて。
生理的に倒れ込んで咳き込みました。
そんな私に、淡ちゃんは今度こそ
泣きじゃくりながら。私に縋り付いてきます。
全身で感じる淡ちゃんの熱。
それで、私はまだ生きているんだと
実感する事ができました。
どうやら私は、もう少しだけ
淡ちゃんに愛を注ぐ事ができそうです。
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--------------------------------------------------------
身体に溜まった、淡ちゃんの毒
その毒はもう、吸っても吸っても無くならなくて
毒はどんどん強さを増していって
やがて、その毒はついに致死量に達しました
それでも私は、その毒を吸うんです
だって私は淡ちゃんのために
そうする事しかできないから
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
私がしでかした事。
それは、私達の今までを壊す
取り返しのつかないものだった。
タカミの首に、くっきりと
浮かび上がった私の手。
それは首の皮をこすっても消えなくて。
かといって包帯で隠すなんて本末転倒で。
だからタカミは、痕が消えるまで
部屋に籠る事にした。
でも、そんな事をしても
その場しのぎにすぎなくて。
他の人ならともかく、あの二人を
ごまかせるはずがなかった。
特に、普段から私達をずっと
気にかけていた菫先輩には。
食事の時間になっても部屋に出てこなかったタカミ。
ただそれだけの事で、菫先輩は異変に気づいて。
タカミの部屋にやって来て。
それが居留守だとすぐに気づいて。
寮長から鍵を借りて、
テルと一緒に中に押し入ってきた。
そしてすぐに、詰問が始まった。
「…その首の痕はどういう事だ」
「…聞かなくてもわかるでしょ。
私が、タカミの首を絞めただけ」
「…どうして」
「…タカミが、私の毒を吸ってくれるから」
「代わりに愛をくれるから」
「…重症だな。ここまできたら、
もう専門医に任せるしかないだろう」
「…どうかこのままにしてください。
病院に行っても淡ちゃんは救われません」
「私が…なんとか、淡ちゃんを」
「残念だが…それは聞き入れられない」
「私には、淡の苦しみを
聞き出す事ができなかった。
それができたお前ならあるいは…
そう思って静観していたが」
「こうなってしまった以上、もう無理だ」
「淡。お前は私と一緒に来い。今のお前を、
尭深と一緒にしておくわけにはいかない」
「照。お前は尭深を頼む」
「…うん」
菫先輩が私の手を握る。それも、
決して拒否を許さない強い力で。
私は菫先輩と部屋を去る。
タカミとテルを二人残して。
最後に後ろを振り向いて、
ちらりと映ったタカミの姿。
酷く悲しそうで、今にも消え入りそうだった。
もうまるで、二度と会えないかのような。
そんな悲しい目をしてた。
それを見て私は思う。
ああ、私の人生はここで終わるんだ
だってタカミを失って、
私が生きていけるはずがない。
このまま病院かどこかに連れて行かれて、
壊れてわけがわからなくなって終わるんだ。
いくらなんでも、
そんなのは嫌だって思った。
だったらいっそ。
完全に引き離されちゃう前に。
タカミと一緒に、死んじゃいたい
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
深夜
私はゆさゆさと揺り動かされて目を覚ましました
一度死にかけた事は、私の心と体に
大きな負担をかけていたのでしょう
私は覚醒しきる事はなく、
夢うつつのまま瞼を開きました
そして、私の瞳に映ったのは
ところどころに赤黒い斑点を作った淡ちゃんの姿
傍らには、宮永先輩が倒れています
異様な状況にも関わらず、
淡ちゃんは落ち着いた声音で問いかけました
「ねえタカミ。私の事好き?」
現状の把握を放棄した私は、
ただ思ったまま答えました
「…好き。何度もそう言ってるよ?」
「私のためなら、何でもしてくれる?」
「…するよ。淡ちゃんのためなら」
「私と一緒に、死んで欲しいって言っても?」
「…それを、淡ちゃんが望むなら」
嘘でした
本当は、淡ちゃんのその言葉を聞いた瞬間
私は、歓喜に打ち震えていたのです
だって、このまま引き離されるくらいなら、
一緒に逝ってしまいたい
私も、そう考えていたのですから
私と一緒に死ぬ
それは、淡ちゃんはもう、
他の人に認められる事を諦めたという事
私と引き離されるくらいなら
二人で死ぬ事を選ぶと言う事
淡ちゃんは、ようやく
私の愛を、完全に受け入れてくれたんです
ああ、なんて素敵な事でしょう
「じゃあ、行こう」
「うん」
私達は互いに手を取り合って
ゆっくりと、寄り添いながら屋上へと向かいます
私たち以外には、品行方正な寮生しか
いないからでしょうか
屋上への道のりは、
一度として阻まれる事はなく
私達は特に障害もなく
そこに辿り着く事ができました
「…タカミ。これで、私が毒を吐くのも最後になるね」
「…そうだね」
「今までごめんね。でも、すごく嬉しかったよ」
「…謝る必要はないよ?私も嬉しかったから」
「…ねぇ。どうしてここまでしてくれたの?」
「…それも、最初から言ってるよ?」
「…淡ちゃんを、愛しているから」
「今までも、これからもずっと」
「淡ちゃんを愛してる」
「だから、最期の淡ちゃんの毒をちょうだい」
「…うん。私も、タカミの事、愛してる」
愛してる
最期に 本当に最期に
淡ちゃんの口から、
その言葉を聞く事ができました
ああ、私は幸せです
もう思い残す事はありません
お互いの手を握ります
決して、決して離さないように
たとえ、死が私達を別つとしても
そして、私達は新しい一歩を踏み出すように
軽い足取りで、空に向かって飛び出しました
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--------------------------------------------------------
愛を吸って、毒を吐く
私がどんな毒を吐いても、
タカミは変わらず、
愛を与え続けてくれる
だから私はあまえちゃって
その愛を養分に毒を吐き続けた
でも、私の毒は強さを増して
ついにそれは致死量に達して
それでも、タカミは受け入れてくれちゃうから
だから、わたしは、どくを
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--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
「…これが、お前の出した結論か」
「…はい」
「自分が、間違っていたとは思わないか」
「…はい」
「だって、喜ばしい事じゃないですか」
「あの時淡ちゃんは、
確かに私を選んだんです」
「宮永先輩に勝つために挑み続けるよりも」
「私と二人で死ぬ事を選んだんです」
「ようやく、淡ちゃんは
宮永先輩から解放された」
「後は私が愛し続ければ、
淡ちゃんは幸せになれる」
「……」
「…その体で、どうやって愛するって言うんだ」
「…簡単ですよ?淡ちゃんの毒を、
全て受け入れればいいんです」
「いずれ、淡ちゃんが私を殺すまで」
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--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
「…結局、こうなっちゃったね」
「麻雀で勝てなかったとしても、
それとは関係なく淡を愛してる人はいる」
「私達は、それを伝え続けたはずだったのに」
「うん。ごめんね。わからなかった」
「言葉で言われても、ピンと来なかったんだ」
「でも大丈夫。今はもうわかってるよ」
「…本当に?」
「うん」
「多分、心の奥底ではわかってたんだと思う」
「私はあの時、テルに勝つ事より
タカミと一緒に死ぬ事を選んだ」
「タカミは、私がどんな毒を吐いても、
絶対に受け入れてくれる」
「私がどんなに駄目な人間でも、
タカミは見捨てないでくれる」
「私はタカミと一緒に居れば幸せになれる」
「今回の事で、それがよくわかった」
「だから」
「タカミの体が動かないくらい、どってことないよ」
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--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
二人一緒に身を投げた私達は、
残念ながら旅立つ事はできませんでした。
でも、全く意味がなかったわけではなくて。
この心中未遂を経て、淡ちゃんはようやく。
ようやく私の愛を心から信じてくれました。
もっともその代償はタダではなく。
私は体の制御を失いました。
もはや一人で生きていく事はできません。
淡ちゃんに見捨てられたなら、
私は数日後には息絶えるでしょう。
でもそれは、大した問題ではありません。
どうせ淡ちゃんだって、
私がいなければ生きていけないのですから。
「ねぇタカミー、そろそろ、しよ?」
「…うん。いいよ。来て」
私の愛を受け入れてくれた淡ちゃんですが。
だからといって私に毒を吐く事を
やめられたわけではありませんでした。
もうそれは、私達にとって
欠かせないコミュニケーションになっていたからです。
淡ちゃんは、私に毒を吐かなければ
生きていけないんです。
今日も淡ちゃんは私に毒を吐きます。
私の体にその痕が残ります。
私はそれを見て、今日も淡ちゃんに
愛されてると実感します。
「…もっと、もっとして?」
「うん」
私の懇願に、淡ちゃんは嬉しそうに目を細めると。
そのまま、私の首に手をかけました。
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--------------------------------------------------------
愛を吸って、毒を吐く
毒を吸って、愛を吐く
愛がなければ、毒は吐けず
毒がなければ、愛は吐けない
どちらが欠けても、
私達は生きてはいけない
だから、わたしは、どくをはく
だから、わたしは、あいをはく
どちらかが死んで、片割れが後を追うまで
(完)
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淡堯のこの感じ大好きです!
ありがとうございました。
お腹抓ったり背中叩いたり字面だけ見たら面白いけど、加減しないと中々エグい。そこがヤンデレたる所以ですね。
素晴らしい!この一言に尽きる。