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【オリジナル百合SS】「これで…グループに戻してくれますか?」【ヤンデレ】【依存】【狂気】

<あらすじ>
私にとって大切な存在な『あの子』。
でも、私は『あの子』にとって
大切な存在ではありませんでした。

わかってます。
こんな地味で馬鹿で孤立している私が、
『あの子』の一番になれるはずがないって。

それでも、私には『あの子』しかいないんです。


<登場人物>
少女A,少女B


<症状>
・狂気
・依存
・孤立
・シリアス


<その他>
・登場人物の名前なども出てきませんし
 比較的サラッと呼んでいただけると思います。
 →なんて言っていたら結構な分量になった…

・本作品で登場人物がとる行動は
 絶対に実行しないでください。


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PART A:





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ソーシャル・ネットワーキング・サービス、
略してSNS。

いわゆるTwitterだとか、LINEだとかを指す言葉。
クラスで強制的にグループに組み込まれたり、
逆に組み込まれなくて落ち込んだり。
いいも悪いも、私達の生活の中に
密接に絡んでいるものではないでしょうか。

一介の女子高生である私も、
一応嗜んでいたりします。
もっとも、最近はもっぱら
悩みの種でしかありませんけれど。


ランキング。


最近、私のグループの間で流行り始めたネタ。


『あなたが一番使っている口癖ランキング』
『今勢いがあるキーワードランキング』
『一番人気がある人ランキング』


毒にも薬にもならない『だから何?』という
ランキングもあれば、
友情破壊にまでつながりそうな
危険なランキングまで様々です。

そして最近、私の心を思い切り
引き裂いたランキングがこちら。


『あなたと一番仲良しな人ランキング』


そのランキングを見つけた瞬間、
生理的な嫌悪感を覚えました。

この手のランキングの仕組みは単純で。
ここ最近の私や周囲の発言を解析して、
お題に合わせた結果を
表示するようになっています。

今回のランキングについて言えば、
発言に対して返信したり、
お気に入りとしてチェック
したりすればするほど
仲が良いと判断されるのでしょう。

そして解析できる情報量は限りがありますから、
あくまで直近のデータだけが有効になります。

だから、そのランキングで圏外になったから
仲が悪いというわけではありません。
頭ではわかっているんです。


それでもやっぱり怖いものは怖い。
もし『あの子』のランキングに、
私が入っていなかったらどうしよう。
なんて事を考えて、
心がざわついて仕方ないのです。
ああ、本当に余計なランキングを作ってくれたものです。


でも。


意地の悪いランキングに
強い嫌悪感を抱きながらも、
私もそのランキングを
やらずにはいられませんでした。

元々人との関わりが希薄な私では、
当然のように『あの子』が一位になりました。


問題は『あの子』の方です。
知りたくない。でも同時に『知りたい』
という気持ちもごまかせなくて。

私はつい、『あの子』が
ランキングをやっていないか
確認してしまいました。


そして、私は見つけてしまったのです。


『あの子』はこのランキングをやっていました。
結果、『あの子』の一位には
知らない人の名前が表示されていて。


私は二番でした。



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『あの子』はランキングを掲載した上で
こうコメントしていました。


『あーやっぱりこうなったかー。
 まぁ当然と言えば当然だよねー』


その自然体のコメントは、
ランキング結果と併せて
私の心を打ちのめしました。
『あの子』にとって、この結果は
なるべくしてなったもの。
つまり、私は『あの子』にとって
一番ではないと『あの子』に認められたわけです。


ひどい倦怠感が全身を襲います。
何もする気が起きなくて、
私はスマホを置いてベッドに寝転がりました。
そしてそのまま、蹲って嗚咽しました。


「ぅっ…くっ…っ…」


好きだったんです。

『あの子』の事が。
どうしようもなく好きだったんです。

高校に入ってすぐのクラス編成で。
元々友達なんていなかった私は、
同じ中学校の知り合いすらいなくって。
一人ぽつんと孤立していたところを、
物怖じせず話しかけてきてくれた『あの子』。

地味で、勉強も運動もできなくて、
面白い話もできなくて。
どのグループにも属せなかった私を、
それでもグループに入れてくれた『あの子』。

私にとって、『あの子』だけが救いであり希望。
世界のすべてだったんです。


でも、『あの子』にとって私はそうではなかった。


当たり前です。だって『あの子』は人気者ですから。
クラス委員なんかも押し付けられて、
誰からも慕われていて。
そもそもそんな優しい子だから、
孤立している私を
ほおっておけなかっただけなのでしょう。

私なんかが、そんな『あの子』の一番に
なれるはずなんてない。


それでも、それでも、それでも!


夢を見るくらいさせてくれても
いいじゃないですか。

もしかしたら一番かもしれないと。
可能性を残してくれてもいいじゃないですか。



ランキングなんて、大嫌いです……!



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PART B:





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最近、『あの子』に頻繁に絡まれている気がする。

確か『あなたと一番仲良しな人ランキング』を
書き込んだくらいからだろうか。


「うわ、またあいつ絡んできてるじゃん。
 アンタも災難だねー」

「この前のランキングのせいじゃない?
 一位じゃなかったから許せなかったんでしょ」

「なにそれキモッ。こんなランキングでムキになるとか
 余計嫌われるってわかんないのかねぇ」


取り巻きが冷ややかに『あの子』の陰口を叩く。
言い方にとげはあるけれど、
言ってる事はそこまで間違ってないと思う。

この手のランキングが
実際の仲の良さを指すとは思えないし、
いちいち気にしてたらきりがない。
それに噛みついて反応したら、
こういう反応が沸き起こるのは
容易に想像できると思うのだけれど。


「えい、返信!」


まあ、それでも返信するんだけどね?


「アンタもマメだよねー。
 こんなのスルーしちゃえばいいのに」

「反応するから返ってくるんだよ。
 ほっときゃいいんだってば」

「このままだとずっと粘着されるよー?」


律儀に一つ一つ返信する私に対して、
これまた取り巻きが好き勝手な事をつぶやく。

それでも私は意に介さず、
そのまま返事を返し続けた。


「そろそろかな?」


ある程度やり取りを繰り返して、
私は再度あのランキングをやり直す。
思惑通り、今度は『あの子』が一番になっていた。


どう、これで満足してくれるかな?



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PART A:





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ひとしきりやり取りを繰り返した後、
『あの子』はランキングを更新しました。
そして今度は、私の名前が一番になっていました。

私はそれを見て心躍ると同時に、
何とも言えない虚しさを味わいました。


『これで満足してくれるかな?』


なんて彼女に言われたような気がしたのです。
それはいわゆるリップサービスみたいなもので。
彼女が私の思惑に気づいて、
あえて結果を改ざんした以上、
ランキングの結果には何の意味もありません。


「どうしたらいいんだろう…」


画面に輝く文字を、虚ろな瞳で眺めながら。
私はずっと同じ事を何度も何度も自問していました。


どうしたら、本当の意味で
『あの子』の一番になれるんだろう。


そもそも無理なのかもしれません。
性別の壁があります。私は女。『あの子』も女です。

よしんば彼女が同性愛者だったとして、
無数にいる女性の中から
あえて私を選んでくれるようになるまで、
私はどれだけの苦労が必要になるでしょう。

そうして『あの子』のために作り上げた『私』は、
果たして『私』と呼べるでしょうか。


ありのままの私を好きになってほしい。
でも、今の私じゃ振り向いてくれるはずがない。

自己矛盾に苦しんだ私にできた事は、
結局今のまま『あの子』に
『ウザ絡み』する事だけでした。



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PART B:





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『あの子』の絡み方が少し変化してきた。
こう、急に馴れ馴れしくなったかと思えば、
返しに困るような卑屈な事をつぶやいてみたり。

言うなれば『ウザ絡み』と呼ばれる
絡みが増えてきた気がする。

まあ私は気にせず一つ一つ丁寧に返すのだけれど。
私の周りはそうではなかった。


「私、あいつグループから外したわ」

「あ、私もー。もう見ててウザくて仕方ないし」

「鬱陶しいよねぇ。構ってほしいってのが見え見えー」


取り巻きさんの反応はこんな感じ。
言い方はきついけど、でも当たっちゃってると思う。

多分『あの子』は試行錯誤中なんだろうね。
今のままじゃ本当の意味での一番にはなれないから。
だから、今私と親しい人のやり取りを参考にして、
それに少しでも近づこうとしてるんだろう。

でも、それを行うにはそれなりの
コミュニケーション力が必要で。
距離感や空気を読んだ上でやらないと、
相手は逆に遠ざかってしまうだけ。


「アンタもいい加減グループから外しちゃったら?
 こんなのと付き合ってても何もいい事ないよ?」

「そーそー。時には厳しく
 突き放すのも優しさだよー?」

「うーん」


少し迷う。今私が
『あの子』を外したらどうなるだろう。

立ち直れなくなって引きこもる?

もしくはそれでも諦めきれなくて、
現実の私に縋り付く?

それとも…その失敗から何かを学んで、
一歩成長する事ができるだろうか。


うん。一番最後のは多分ないよね。


私はその日、『あの子』をグループから
外す事はしなかった。



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PART A:





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一人ずつ、一人ずつ。
私のグループから人が減っていきます。
特に親しくなかった人から順番に。

別に気にはしませんでした。
どうせ、私にとっては『あの子』しかいないんです。
何人消えていこうとも、
『あの子』さえ残っていればそれでいい。

『あの子』は私のウザ絡みにちゃんと返事してくれます。
楽しそうに返信してくれます。
だから私は確信しました。


これでいい。私は間違ってない。


このまま続けていけば、私は本当の意味で
『あの子』の一番になれるんです。
他の人なんてどうでもいい。


『あなたと一番仲良しな人ランキング』


もう一回やってみました。
言うまでもなく『あの子』が一番でした。


だって、もう『あの子』以外対象がいませんから。
でも、それでいいんです。
『あの子』のランキングだって、
私が一位なのですから。



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PART B:





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あのランキングをやってみた。
やっぱり『あの子』が一番だった。

まあ返信してる回数を
解析してるんだろうから当然の結果。
他の子には返信じゃなくて
ただの発言の形で返事してる事も多いしね。

ランキングの結果は当然だった。
でも意外だったのは、その結果に
私の周りが噛みつきだした事。


「ていうかアンタ、まだアイツに付き合ってんの?」

「そりゃアンタが構ってあげないと
 何するかわからないってのもわかるけどさ」

「私らとしても、友達の一番が
 得体のしれないキチガイって言うのは
 あんまり嬉しくないんだけど?」


あの日冷やかに『あの子』を馬鹿にした子達が、
同じようなヤキモチを妬いてくる。
さすがにこれは予想外だった。


「アンタさ、あいつと私達
 どっちが大切なわけ?」

「最近あいつにばっかり返信して
 付き合い悪いしさー」

「ぶっちゃけ目障りだから、
 いい加減縁切ってくれない?」


ただ『あの子』とこの子達が違うのは。
『あの子』はそれでも自分を変えようとしたけれど、
この子達は私を変えようとしてくるところ。

そしてどちらの強制力が強いのかなんて、
あえて言うまでもない事で。


「…そだね。グループから外すよ」


私は『あの子』を、グループから外した。



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PART A:





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帰ってきてスマホを開いたら。
グループに人がいませんでした。


『あの子』がいませんでした。


あのランキングをやってみました。
結果は表示されませんでした。


『お友達をグループに入れてから実行してね!!』


その文字を見た瞬間。
私の中で何かがぷつりと切れました。
そして次の刹那。



「あぁっぁぁあぁぁぁぁぁぁああぁぁっ!!!!」



私は、感情のままにあらん限りの
絶叫をあげていました。



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PART B:





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『話したい事があります』



見覚えのない電話番号から受けた着信に反応すると、
私は放課後の屋上に呼び出された。

何を話したいのかは言うまでもない。
グループから外した事なんだろうね。

やってきた『あの子』の目は真っ黒に落ち窪んでいた。
目の下には真っ黒なクマができていて。
正直な感想を言えば『廃人みたいだな』って思った。


「私、そんなに駄目でしたか」

「駄目なところがあったなら言ってください」

「直しますから。どんな事でも全部直しますから」

「何でもしますから」

「だからお願いです。またグループに入れてください」

「どうか、どうか」


文字通り『あの子』は私に縋り付いた。
『意外にも泣かないんだなー』
なんて場違いな事を考えながら、
彼女の目をじっと見て気づく。

あ、これは違うね。泣かないんじゃない。
泣きすぎてもう涙が出ないんだ。

真っ黒の目はよく見たら真っ赤。
頬には涙の痕がくっきりと残ってる。


でもごめんね。私はもう、貴女を
あのグループに入れるつもりはないんだ。


「何でもする、かぁ」


「じゃあさ、ここから飛び降りてくれる?」


「……え」

「いや、だからさ。この屋上から。
 飛び降りてくれる?」

「そしたら、グループに戻してあげる」

「大丈夫、3階建てだもん。
 死なないと思うよ?」


その前に、私は『あの子』の決意を
試してみる事にした。

普通の子ならこれで引き下がると思う。
たかだかSNSのグループごときで
命を懸けるような子はいない。
普通はそう考える。

でも、もしこの子が。
それでもこの子が。
屋上から身を投げたとしたら…


その時は、私もいろいろ考え直そうと思う。



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PART A:





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「じゃあさ、ここから飛び降りてくれる?」


それは、誰にでも優しい『あの子』らしからぬ、
酷く暴力的な要求でした。

でもだからこそ私は感じ取ったんです。
これは私に与えられた試練。

これを乗り越えれば、
私は『あの子』の一番に戻れる。

そして絶対に、誰にも負けない一番になれる。
そう思ったら、ためらう必要はありませんでした。


「…わかりました」


『あの子』の言う通り、たった3階です。
頭から落ちないように気を付ければ、
死ぬ事はないでしょう。

足くらいは使えなくなるかもしれません。
でもそれで『あの子』の一番が勝ち取れるなら、
足の自由なんて安いものです。


「い、行きます」


安全柵を乗り越えて、私は一人地上を眺めます。
本能的な恐怖が足を震わせました。
たかが3階。それでも、場合によっては。


だから何!



「行きます!!」



縮みこむ心を鼓舞して、
私は勢いよく蹴り出しました


刹那、浮遊感に襲われて
同時に空気の圧力が私をもみくちゃにします


スローモーションのように地面が近づいてきます


自然と自重から上半身が下になろうとするのを、
何とか足から落ちようと全力で意識して


そして




…ぐしゃっ




運よく私は、足から着地する事ができました


地面から与えられた衝撃は、
私の足を軽々とマッチのように粉砕しました



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PART B’:





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その昔。と言ってもたった数年前。
私はいじめられっ子だった。


理由は単純。空気を読めないから。
人との距離感がつかめなくて、
馴れ馴れしくし過ぎちゃったんだと思う。


いじめられた私に、助け舟は来なかった。
友達なんていなかったし、
担任は私の事をスルーした。
毎日毎日生傷を増やして帰った。


ただ一つ救いだったのは、
私は決してバカではなかった事。


今回の件で徹底して学習した。
どうしたら嫌われるのか。
どうしたら好かれるのか。
どうしたら当たり障りなく生きられるのか。


それらをいじめからきっちり学んだ上で、
私は両親に頼んで転校した。



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転校した先の学校で、私は自身の理論を実践した。

結果は大成功。今度は誰かの標的になる事もなく、
むしろ人気者にすらなった。

元々頭は悪くない。そしていじめられてからは
密かに体も鍛えていた。
文武両道、性格もバッチリの私は、
『完璧!』の名をほしいままにした。


私は誰にも心を許してなかったけどね。


それでいいと思った。
問題が起きず過ごせるならそれでいい。
そう思ってた。



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でも私は、『あの子』の事を見つけてしまった。


『あの子』は、あの時の私だった。
距離感がつかめなくて、
周りから孤立していた。
いじめられているわけではなく
避けられているだけだったけど。


そして私は、『あの子』に手を差し伸べてしまった。


いい手とは言えない。
むしろ完全に悪手だと思う。
わざわざそんな不良物件に手を出さなくても、
私はもう十分『良好な人間関係』を作れている。


それでも、手を差し伸べずには
いられなかった。


声をかけられた『あの子』は、
絶望の中に一筋の希望を見たかのように、
眩しそうに私を眺めた。

そして次の瞬間、くしゃりと顔を歪ませて。
目に涙を滲ませた。


あはは、なんてみっともない顔。


でもその顔は、ひどく私の胸を打った。
上辺じゃない本当の、剥き出しの感情を
見せられた気がして。
不覚にも自分まで
泣きそうになるのを必死で堪えた。


「ありがとう、ございます……っ」


『あの子』は私の手を取った。
私はその手を強く握り返した。



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それ以降は葛藤の毎日だった。
上辺だけの関係の人は、
『無敵』の私が『あの子』を特別扱いする事を
快く思わなかった。

そして私も、『あの子』をとるか上辺をとるか。
すぐには判断を下せなかった。

元々はいじめられっ子の私。
あの地獄を再び味わわないために
死に物狂いで努力してきたわけで。

『あの子』と二人きりになれば、
地獄に再び舞い戻る事になるだろう。
その時『あの子』は耐えられるだろうか。
私を一人置いて、逃げたりはしないだろうか。


わからない。わからないならこのままでいい。


できるだけ事を荒立てず
どちらとも付き合えばいいじゃない。


でも、もし『あの子』が。


何を犠牲にしてでも、私だけを見てくれるとしたら。
私のそばから消えていかないとしたら。


その時、私は。



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PART A:





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無事で済むはずはありませんでした。
私の足は粉々に砕かれ、二度と
その機能を取り戻す事はないと言われました。


両親には号泣されました。
どうしてこんな事をしたのか。
涙ながらに説明を要求されました。

言えるはずもありません。
言えば『あの子』が罪に問われます。

かといって適当に変な事を言ってしまえば、
私は精神病院にでも収容されて
出てくる事はできなくなるでしょう。
ゆえに、私にできる事は口をつぐむだけでした。

でも、正直そんな事はどうでもいいのです。
私にとって何より気がかりだったのは。


あれ以来、一度も私の前に
姿を現していない『あの子』の事。


見てください、私は言う事を守りました
言われた通り飛び降りました


これで…グループに戻してくれますか?



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PART B:





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私の命令に忠実に従って、
結果『あの子』は下半身不随になった。
もう二度と、自分の足で歩く事は叶わない。


なのに、見舞いに現れた私を前に、
『あの子』がぶつけた感情は
憎しみでも怒りでも悲しみでもなく。


願い。


「これで…私を、貴女のグループに入れてくれますか」


屋上のあの時と同じまま、縋るような目で。
『あの子』は私に問いかけた。


もう疑う余地なんてなかった。


この子は、何があっても私のそばにいてくれる。
上辺だけじゃない心の底から、私を求めていてくれる。


ゆるむ涙腺を押しとどめる事なく。
肩を震わせながら私は言った。


「わかった。貴女を、私のグループに入れる」


「私も、貴女だけいればいい」


「ずっと、貴女のそばにいる」


私は『あの子』を抱きしめた。
『あの子』は初めて会った時と同じように。
驚いたような表情を見せた後。

その顔を恥も外聞もなくぐしゃぐしゃにして、
涙を私の胸に擦り付けた。



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PART A:





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あのランキングを再びやってみました。
そう、『あなたと一番仲良しな人ランキング』。

もっとも、やったところで結果は
わかりきっているんですけど。

ランキング結果は『あの子』が一位。
『あの子』の結果も私が一位。
当然です。私達以外、
グループに誰もいないのですから。


「あはは、自己満足の極みって感じだよね」

「わかってます。それでも、嬉しいんです」


貴女に、私以外いないという事実が。
それを目に見える形で確認できる事が。


「ま、わからないでもないけどね。
 ちょっと愛を疑われてるみたいでショックかも?」

「そんなもので愛を測らなくても、
 私はすぐ目の前にいるじゃない」

「だって…貴女はまだ人に
 囲まれているじゃないですか」

「処世術だよ。貴女を養うためにも、
 安定収入は確保しないといけないしね。
 もちろん二人きりで暮らせる方法を模索中だけど、
 選択肢を狭めるには早すぎるもの」


結局彼女は、まだ取り巻きとの
関係を保ったままです。
私とは別のグループとして。

もっとも学校が終わったら
真っ直ぐ私のところに来て、
全ての時間を私のために費やしてくれますし、
土日も当然一緒にいてくれます。

だからもう一つのグループが
『処世術としての上辺の関係』
というのも本当の事なのでしょう。
それでも、私はまだ今一つ彼女を信じ切れません。


「信じられない…と言えば、
 一つ気になってた事があります」

「ん、何?」

「このランキングですけど…
 そもそもどうしてやったんですか?」


私はこの手のランキングが大嫌いです。
もちろん人それぞれですし、
重く受け止め過ぎだというのもわかっています。

それでも、こんな人の想いを格付けするような行為、
それ自体が気に入らなくて。
そして、それを他ならぬ貴女が
気安く実行してしまった事も、
信じられない出来事でした。


私が彼女を信じきれないのは、
それもあるのかもしれません。



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PART B:





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「実は、それが今回のきっかけなんだよね」

「貴女の言う通り。私もこの手のランキングは大っ嫌い。
 でも、取り巻きがやれやれ煩かったから
 やらざるを得なかった」

「で、嫌になっちゃったんだ」


これからもこの生き方を続ける事を。


どうせ上辺しか見てないくせに
面倒だなと思ってしまった。

上辺なら上辺らしく、表面だけ見て
いい気になってればいいのにね?

縛り付けるならそれなりの覚悟をして欲しい。
そう、この子みたいに。


「だから私は貴女を選んだ」

「そして貴女は私の期待に応えてくれた」

「私はもう一生貴女から離れない」

「だから信じて?と言っても私まで
 足壊したら二人とも生きていけないから、
 飛び降りる事はできないけれどね」


「…だったら、覚悟を見せてくれませんか」


「覚悟?」

「はい。どんな形でもいいです。
 貴女が、何があっても
 私のそばにいてくれるという証拠を」


それでもこの子は信じ切ってはくれなかった。

まぁでも気持ちはよくわかる。
私は確かにこの子の足に代わるほどの
覚悟を見せていないのだから。

でも、何をしたら信じてもらえるだろう。


「…そうだ!!」


私は自分のカバンの中を漁って、
筆箱からカッターを取り出した。

そしてチキチキ刃を出すと…
勢いよくお腹に突き刺した。

刃先がお腹に食い込んで、
ぶつりと嫌な感触とともに
血がぶわっと噴き出していく。


「……っいったぁっ……」


「い、いきなり何をしてるんですか!?」

「か、く、ご…見せるって言ったじゃん?」


鋭い痛みに顔をしかめながらも、
私は刃を動かして。
『あの子』の名前を刻み込む。


ゆっくりゆっくり丁寧に。
できるだけ字が綺麗になるように。
その分痛みは増すけれど。


「…こっ…れで…いい、かな」


全ての文字を刻み込んで、
お腹を『あの子』の前にさらけ出した。
って、血が滲み出しちゃって、
肝心の文字が見えないけれど。


でも気持ちは通じたみたい。


『あの子』は涙を決壊させながら、
何度も何度も謝罪の言葉を繰り返した。


「…信じます…!本当にごめんなさい……っ!」

「ごめんなさい…ごめんなさい……!」


「そっか…わかってくれてよかった」


私は心の底からほっとした。

『あの子』が私に示した覚悟。
ちょっとはそれが返せたかな?


もっとも、一生動かない足と
いずれは消えてしまうお腹の傷じゃ
まだまだ釣り合いが取れてないとは思う。


だから、これからもずっと繰り返していくつもりだよ?


「だから、私を捨てないでね?」

「こちらの台詞です……!
 貴女に捨てられたら、私は生きていけません……!」

「その台詞覚えておいてね?
 私、貴女に捨てられたら心中しちゃうからね?」


「素敵ですね……最後は、二人で一緒に死にましょう」


そう言って、
彼女は涙に濡れながらも笑みを見せる。


ああ、本当に幸せ。



どうか、それが現実になりますように。



(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2015年08月03日 | Comment(7) | TrackBack(0) | オリジナル百合SS
この記事へのコメント
不覚にもヤキモチ妬く上辺友達もかわいいと思った。不覚にも。
Posted by at 2015年08月03日 21:09
管理人さん、体に名前刻むの好きよね
僕も好きです
Posted by at 2015年08月03日 22:20
ぷちさんこういうシチュエーション大好きですね(笑)
私も好きですけど!!!
SNSという身近なところでも二人の閉鎖空間は広がっていて素敵!!
楽しく読ませて頂きました!
ありがとうございました!!
Posted by レガ at 2015年08月03日 22:23
最近のSNS事情からか、やけにリアルに感じるお話でほっこりしました。
Posted by at 2015年08月04日 01:06
なのに、見舞いに現れた私を前に、 『あの子』にぶつけた感情は 憎しみでも怒りでも悲しみでもなく。

ここ
「『あの子』が」ですか?
Posted by at 2015年08月04日 04:56
作者さんふとももに名前彫るの好きだな!w
Posted by at 2015年08月09日 04:04
上辺友達もかわいい>
「まぁ普通の子だと思いますよ?」
「私達が普通じゃなければ仲よくできたかもね」

体に名前刻むの好きよね>
名前彫るの好きだな>
「取り返しがつかない行為を実行する
 覚悟が好きなんです」
「死ぬまで残るのがいいよね!」

SNSという身近なところでも>
「身近だからこそ感じる孤独が
 表現できていたら嬉しいです」
「大衆の中で覚える孤独感って奴だね」

やけにリアルに感じる>
「実際時折見かける光景な気がしますね」
「現実も闇が深いや」

「『あの子』が」ですか?>
「直しました。ありがとうございます」
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2015年08月10日 19:54
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