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【咲-Saki-SS:久咲】咲「引退から始める精神崩壊」【共依存】

<あらすじ>
その他のリクエストがそのままあらすじです。

<登場人物>
竹井久,宮永咲

<症状>
・共依存
・異常行動


<その他>
次のリクエストに対する作品です。
・久咲で引退したあとになって
 久の存在の大きさを知った咲さんが
 久を深く求めるようなお話

※思ったより重くなりました。



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−PART 咲−







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全てが順風満帆のはずでした。


全国大会に出場した事で、
お姉ちゃんとの絆を取り戻す事ができて。

無事優勝する事もできたから、
和ちゃんが転校する必要もなくなりました。

だからもう何も心配は無くなって、
これからはただ幸せな日々が続いていく。
漠然とそう思ってたのに。


まさか部長が引退しただけで。
こうも、何もかもが駄目になってしまうだなんて。



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今一度思い返してみれば。
私が清澄に入学してからの足取りは、
部長なしに語る事はできませんでした。

私を麻雀部に引き込んだのも。
勝つ事の楽しさを教えてくれたのも。
麻雀を強くしてくれたのも。
全ては、部長の手によるものだったんです。

麻雀部の運営にしてもそうです。
作戦を考えるのも、部員を強化するトレーニングも、
他校との折衝も。
全て部長が一手に担ってました。

何か困った事があっても、
部長なら何とかしてくれる。
そう思わせてくれるほどに、
部長は頼もしい存在でした。


そんな部長としての才覚はもちろん。
一人の人間として見ても、
部長はひどく魅力的で。

異常な程に勘が鋭くて。
私が少しでも落ち込んでいたりすると、
即座に気づいてそれとなく気遣ってくれます。
そんな部長の優しさに、
何度助けられたかわかりません。

それでいて自分の感情には鈍感で。
先輩なのに助けてあげたいと思わせるほど
弱い時もあって。


どこか目が離せない。気づけば私は、
部長の事をいつも目で追うようになっていました。

部長は私の予想よりもはるかに、
私の心に深く根を下ろしていたんです。
そう、深く。
とても取り除く事ができない程に。


でも、そんな部長はもう居ません。
居ないんです。


あまりにも、気づくのが遅すぎました。



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「ん?咲の様子がおかしい?」

「あぁ…どこか心あらずっちゅぅ感じで、
 やる気がごっそり抜け落ちちょる」
 
「あー…やっぱりそうなっちゃったかぁ」

「なんじゃ、予見しとったっちゅぅんか」

「なんとなくだけどね」

「あの子、別れに人一倍敏感だから。
 …特に、年上の人と別れる事に」

「…姉との別離か」

「多分ね。家庭崩壊だろうと引退だろうと、
 親しくなった人が離れていく事には
 変わりがないもの」

「何とかしてやれんのか?」

「できなくはないけどやらないわ」

「なんでじゃ」

「面倒見きれないもの。
 確かに今、ここで甘やかす事はできる。
 でも、私が卒業する事実は変わらないじゃない」

「家族との離別ならともかく。
 この程度の別れは今後いくらでもある。
 その度に甘やかすわけにはいかないでしょ」

「ちょぉ厳しすぎやせんか?」

「…そのくらいしないと駄目なのよ。
 特に咲にはね」


「あの子はちょっと、普通じゃないから」



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今までと同じように学校に来て。
同じように部活をしているはずなのに。
心にぽっかり穴が空いたようでした。

何もかもがひどく空虚で。
心から楽しむ事ができなくなったんです。

変わった事はただ一つ。
部長が引退して、部室に来なくなった事。

ただそれだけで、私の生活は
酷く無味乾燥なものになってしまったんです。


部室の扉を凝視するようになりました。

いつかふと、部長がふらっと現れる事を期待して。
いつものように、私に気安く
話しかけてくれる事を期待して。


どれだけ待っても、
そんな日は来ませんでしたけど。



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「部長、ちょっといいですか」

「こーら、私はもう部長じゃないわよ?」

「…すいません、竹井先輩」

「で、何か用?」

「…単刀直入に言います。
 咲さんに会ってあげてくれませんか?」

「やーよ」

「どうして」

「今私が咲に会ったら、全部駄目にしちゃうもの」

「普通に会うくらいいいじゃないですか!」

「それが駄目なのよ。
 咲はそういう子なんだから」

「せっかく引退して別れを告げたのに、
 またあっさり戻ってみたりしなさいよ」

「『ああ、この人は結局戻ってきてくれる』
 なんて思って、これからもずっと
 私を待ち続けるに違いないわ」

「それは…!」

「それにね?私は咲だけの事を
 言ってるわけじゃないのよ?」

「…?」

「貴方達だってそう。
 引退した傍から私に頼ってどうするの。
 このくらいの試練、
 自分達で乗り越えて見せなさい?」

「ま、そういうわけで。
 私からは絶対咲に会わないわ」



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いくら待ってみたところで、
部長が部室にやってくる事はなく。

我慢しきれなくなった私は、
自分から会いに行く事にしました。

下駄箱の前で待ち伏せしてみたり。
放課後教室から出てくるところを狙い打ってみたり。

結果、部長と会う事はできました。
でも、部長は一言も
言葉を交わしてはくれませんでした。


「……」


黙って一瞥しただけで、
そのまますっと視線を外して。
追いすがる私を尻目に、
そそくさと去っていってしまいます。


その背中に、妙な既視感がありました。


あの時とそっくりでした。
せめて一言でも話せたらと、
遠路はるばる会いに行ったお姉ちゃん。
でも、何も話してくれなかった。
踵を返して行ってしまった。

その時の背中にそっくりだったんです。


「もしかして私…部長に嫌われちゃったの…?」

「そんな…どうして……?」


どうして。別に喧嘩したわけじゃないのに。
嫌われる程の交流なんてさせてくれなかったのに。
でも、それ以外に
拒絶される理由が思いつかなくて。


眠れなくなりました。
来る日も来る日も部長の事ばかり考えて。
何もできなくなりました。


「部長、どうして私と話してくれないんだろう」

「私の事が嫌いになっちゃったのかな」

「でもどうして?私何もしてないよね?」

「わからない。わからないよ。部長」

「嫌いになったとかはないはずだじょ!
 竹井先輩は、咲ちゃんの事を
 人一倍気に掛けてたじぇ!」


見るに見かねたのでしょう。
優希ちゃんが私を慰めてくれます。

でも。


「なら、どうして話してくれないの?
 染谷先輩や和ちゃんとは話してるんだよね?」

「それは…きっと、きっと何か理由があるんだじょ!」

「だからその理由が知りたいんだよ…
 でも会話ができないんじゃ
 どうしようもないじゃない…!」

「じょ…」


でもそれは、私の疑問を
払拭(ふっしょく)する事はなく。
私はどんどん、追い詰められていったんです。



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「部長…お願いだから咲ちゃんと
 話してあげてほしいじょ…!」

「部長に頼りっきりだってのはわかってるじょ…
 でも、もう私達じゃどうしようもないんだじぇ!」

「このままじゃ、乗り越える前に
 咲ちゃんおかしくなっちゃうじょ…!」

「……」

「部長!」

「……」

「んー…仕方ないわねぇ。
 じゃあ、これを咲に届けてちょうだい」

「…手紙?」



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『貴女の事を嫌いになったわけじゃないの。

 でもね、私は卒業しちゃうんだから、
 それは受け入れないと駄目。
 
 卒業した後私についてこれるわけじゃないでしょう?

 今から私が居ない環境に慣れなさい』


部長から受け取った手紙。
それは私に深い安堵と、
それ以上の絶望をもたらしました。

部長に嫌われているわけじゃない。
それは一つの救いでした。

でも部長は、何があっても私に会うつもりはない。
それは今の私にとって、
あまりにもつら過ぎる絶望で。

なんだか、怒りがこみ上げてきたんです。


言いたい事はわかります。
でも、ここまで徹底しなくても
いいじゃないですか。

引退したって気軽に顔を出してくれれば
いいじゃないですか。

卒業したってOBとして顔を出して
くれてもいいじゃないですか。

こんな、いきなり全ての繋がりを
断ち切るようなやり方。
受け入れられるはずがありません。


「…部長がその気なら、私にも考えがあるよ」


お姉ちゃんの時もそうでした。
一度は完全に途切れてしまったはずの絆。
でも諦めずに追い続ける事で、
それを取り戻す事ができました。

部長が絆を断ち切ろうとするのなら…
私は、どこまでも追いすがるまでの事です。

私は、すでに一度成功しています。


断ち切らせるもんか。何があっても。



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猛アタックが始まりました。
朝は部長の家の玄関で待ち構えて、
部長が出てくるのをずっと待ちます。


「おはようございます、部長!」

「……」


私をずっと無視する部長。
それでも私は話しかけ続けます。

学校について、3年生の教室に入っても。
私は部長のそばに侍ります。
休み時間も、お昼休みも。
ずっと付き纏い続けました。


それだけではありません。
私は陰で、部長についての噂を流す事にしました。


『竹井久は宮永咲を捨てようとしている』


ただでさえインターハイ全国優勝した私達です。
校内の知名度と注目度は抜群で。

私が部長にべったりと付き纏う事も相まって、
その噂は瞬く間に清澄中を
駆け巡る事になりました。


それでも、それでも。
部長は一言も口をきいてくれなくて。
だから私も、どんどん
重たくなっていきました。


部長が家に帰ってからは、
ずっと電話をかけ続けました。
お父さんにお願いして、携帯電話を買ってもらって。
ずっと、ずっとメールを打ち続けました。


ずっと、ずっと、ずっと。


寝る間も惜しんで。食べる事も忘れて。
ただただ部長に追いすがって。

部長の事だけを考え続けて。


だんだん狂ってきていると思いました。
でも、止める事はできませんでした。



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そしてある日……
私はついに気づいたんです。






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なんで部長は私に話しかけてくれないのか。
理由はもうわかっています。
いずれくる本当の別れに耐えられるようにするため。

なら裏を返せば…別れの日が来なければ。
私は部長に拒絶される事はないわけです。

そもそも、本末転倒じゃないですか。
だって部長のせいで私はどんどん依存して。
むしろ離れられなくなっているんですから。


もし部長が普通に接してくれていたら、
私はここまでおかしくならなかったと思います。
部長がいきなり私を捨てるから、
私はここまで狂ってしまったんです。


部長には、責任を取ってもらわないといけません。



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「おはようございます、部長」

「……」

「やっぱり返事してくれないんですね。
 でも、それも今日でおしまいです」

「だって、部長が私を拒絶する理由は
 なくなりましたから」

「……」

「部長。私、昨日付けで清澄高校を退学しました」

「部長が卒業したらついていきます。
 絶対に別れません」

「部長は前に、手紙にこう書きましたよね?
『卒業した後私についてこれるわけじゃないでしょう?』
 って」

「ついていきます。二度と離れません」



「だからもう、私を拒絶しないでください」



部長は両手で顔を覆いながら、
震える声で言いました。


「咲…貴女はおかしい。狂ってる」


久しぶりに聞いた言葉は、
私を非難するものでした。


「わかってます。でも、狂わせたのは部長です」

「責任取ってください」


私は部長を抱き締めました。
部長はそれ以上私を拒絶する事なく。
ただ、黙って私に抱き締められました。



ああ、ようやく受け入れてくれた。
もう二度と離さない。



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−PART 久−







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麻雀部引退を目前にして、
私は2つ危惧している事があった。


1つは…麻雀部の引退という事実に、
『私が』耐えられるだろうかという事。


失うのが怖かった。一人ぼっちから始めて、
3年かけてようやく作り上げた麻雀部。
私は今、そこから一人弾き出されようとしている。
『引退』なんてありがちでつまらない理由で。


もちろん頭ではわかっている。
受け入れるしかないのだと。

出会いがあれば別れもある。
この程度の試練はこれから何度でもやってくる。
乗り越えなければいけない。


感情を押し殺すしかないと思った。
でもそうなると、今度は
もう1つの懸念が頭をもたげる。

麻雀部にはもう一人。私と同じように、
別れを過剰に恐れる子がいるから。


そう、咲。宮永咲。


咲は、この別れをすんなり受け入れるだろうか。
ううん、多分無理だろう。
きっと咲は縋り付く。
関係を繋ぎとめようと躍起になる。

その時私は…咲を拒絶しきれるだろうか。


正直、自信がない。



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引退を迎えた日。
私は一人一人にコメントを残して、
部長職を返上した。


「寂しくなりますけど…
 そんな事を言っていてはいけませんね」

「引退くらいじゃ私達の絆はなくならないじぇ!」

「ま、見ときんしゃい。来年も全国の舞台で
 清澄の姿を見せちゃるけぇ」

「俺も来年は頑張りますよ!!」


まこ、和、優希、須賀君の4人は。
寂しそうにしながらも、力強い言葉を私にくれた。

この子達なら大丈夫。私が居なくても、
立派に巣立っていけるだろう。
何も心配する事はない。


ただ一人、咲だけは様子が違った。


「い、今までお疲れ様でした」

「で、でも。引退してもいつでも来てくださいね」

「卒業したって、OGとして顔を出してください」

「待ってますから。ずっと待ってますから」


表面上は笑っていた。
言っている内容も、別に変ではなかった。

それでも私には痛い程わかる。
咲が、大きな不安を抱えている事に。
私がいなくなる恐怖に怯えている事に。


「……っ」


思わず抱き締めてしまいそうになった。
その肩をかき抱いて、一緒に
泣き叫びたい気持ちになった。


それでもなんとか我慢した。


ここで咲に甘えてしまったら、
私は溺れてしまうだろう。
ずっと咲にしがみついて、
離れられなくなるだろう。

それは私にとっても、咲にとっても。
決していい結果にはならないだろうから。


「ありがとね。でもしばらくは控えるわ。
 新部長も、私がいると思う存分リーダーシップを
 発揮できないだろうし」

「新生麻雀部として軌道に乗った頃にまた来るから、
 その時には立派な姿を見せてちょうだい!」

「ああ、私がいなくても大丈夫だって、
 安心できるくらいにね!」


私のありきたりな返事に、咲の瞳が大きく揺らぐ。
小さく肩が震えているのを、私は見て見ぬふりをした。



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麻雀部を引退してからしばらくの事。
まこが困った顔をして、私のもとを訪れた。
聞けば、咲の様子がおかしいらしい。


「何とかしてやれんのか?」

「できなくはないけどやらないわ」

「面倒見きれないもの。
 確かに今、今ここで甘やかす事はできるわ。
 でも、私が卒業する事実は変わらないじゃない」


私は冷たく突っぱねた。
でもそれは、本当は自分に向けた言葉だった。

本当は今すぐにでも咲を抱き締めたい。
咲に依存してしまいたい。


でも、それはしちゃ駄目な事。


私が卒業したところで
咲がついてきてくれるわけでもなし。

私も卒業した後は、生きるために
自分の道を進まなければいけないのだから。



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やがて和がやってきた。
それでも私はつっぱねた。


胸の痛みがひどくなる。
私は一人肩を抱いて痛みに耐える。


大丈夫。この別れは今までの悲しい別れとは違う。
今は悲しくても、時間が解決してくれるはず。



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優希が私のところにやってきた。

正直私は驚いた。優希は私に絶対服従で、
私の決定に異を唱えた事はなかったから。

裏を返せば、それだけ非常事態という事だった。


「このままじゃ、乗り越える前に
 咲ちゃんおかしくなっちゃうじょ…!」


優希から聞かされた咲の状況は悲惨なものだった。
私が思っていた以上に、咲の傷は深かったらしい。


「咲ちゃん、もう全然笑わなくなって
 人形みたいだじょ」

「部室にも自分からは来なくなっちゃったし、
 声をかけてもほとんど反応しないじょ」

「たまに反応があったとしたら…
 『部長』ってうわ言みたいに呟いて…」

「どうか…咲ちゃんを救ってほしいじょ…
 このままじゃ、私達…みんな駄目になるじょ…!」


涙ながらに訴えかける優希。
私は狼狽した。
元々は私が麻雀部に、咲に
依存しないために離れたはずだったのに。

結果咲はより私に依存して。
あげく、それがきっかけで
麻雀部全体に悪影響が及んでいる。


どうすればいいのかわからなかった。
ここで私が咲と会うのは容易い。
でもそれじゃ、何も解決にもならない。

だからと言って、このまま放置していたら
咲は本当に壊れてしまうだろう。


思い悩んだ末、私の取った行動は
手紙を書いてよこすというものだった。


この中途半端な行動が、より咲を苦しめて。
挙句咲を壊す事になるというのに。



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私の方から会いに来る事はないと悟った咲は、
積極的に自分から会いに来るようになった。


「おはようございます、部長!」


朝から晩まで、咲は私に付き纏った。
会えない時間は電話やメールが
ひっきりなしに飛んでくる。


それでも私は無視し続けた。
咲の目に涙が滲んでも見ないふりをした。
袖を掴まれても無下に振り払った。

どこまでも拒絶された咲が、
目に狂気をたたえたまま私に叫ぶ。


「どうしてここまでするんですか!」

「私の事、嫌いになったわけじゃ
 ないんですよね!」

「少しくらい、甘えさせてくれても
 いいじゃないですか!!」


私は冷静に一言だけ返した。


「だって…いずれ別れなきゃいけないじゃない」


その声が震えていた事に、
咲は気づいていただろうか。



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そして次の日…咲は清澄高校を退学した。







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「私を狂わせたのは部長です」

「責任取ってください」


目から完全に光を失った咲が、私を固く抱き締める。
もう二度と離さないと言わんばかりに。
これ以上の拒絶は許さないとばかりに。

咲の腕にくるまれながら。
私はぼろぼろと涙を零す。

ああ、結局こうなった。
私は咲から逃げ切れなかった。
結局咲は、私のために人生をふいにした。
なのに、どうして、私はこんなに…


どうしてこんなに喜んでいるの……!?


嬉し涙が後から後から溢れてくる。
喜びで胸がいっぱいになる。


そして私はついに気づく。
私はきっと最初から、
こうなる事を望んでいたのだと。


「咲…貴女はおかしい。狂ってる…」



…でも。


私はもっと、狂っていた……!


咲が私と同じで、失う事をひどく恐れるのは
知っていたはずなのに。
なのに私は、よりダメージが大きい方法をとった。

突き放すなら完全に突き放せばいいのに
それもしなかった。
挙句咲に破滅の道を用意して、
そうなるように誘導さえした。

自分のため、咲のためなんて言いながら。
一般道徳を振りかざすふりをしながら。

無意識に私は…咲が壊れるように仕向けていた。
咲が、私無しでは生きていけなくなるように。


私は無意識のうちに謝罪の言葉を繰り返していた。


「ごめんなさい…ごめんなさい…!」

「許しません…!絶対に許しませんから…!」


咲は許してくれなかった。
壊れてしまった咲は、私の胸に頬を摺り寄せながら、
うわ言のように繰り返す。


「責任取って…一生私を離さないでください…!!」

「もう、私を離さないで…絶対に…!」

「取るわ、責任…命にかえても、絶対に…!」


だから、どうか貴女も。
私から離れないで。


私は咲を抱き寄せながら
そっと束縛のキスをした。


(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2015年08月29日 | Comment(13) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
これで「あれ?そんなに重い?」と感じるのは、
もうぷちさんのssに毒されきった証拠なんだろうなと感じた
Posted by at 2015年08月29日 23:26
更新待ってました!!
ブログを開いたとき更新されていたときの喜びは計り知れないです。

これからも頑張ってください。
Posted by at 2015年08月30日 00:44
思ったよりも重くないという不思議。笑
ひっささき!!

エイシロの重たいヤンデレ待ってます!!
Posted by momo at 2015年08月30日 02:57
一度成功して強気(?)になってる咲さん可愛い。
成功の経験が無かったらもっとウジウジとか躊躇とかしたんでしょうか。
Posted by at 2015年08月30日 06:47
こういう共依存系の話好きだなーまた読みたい
Posted by at 2015年08月30日 10:21
とても面白かったです。今後もぜひ書き続けて頂きたいですよ。
Posted by ジキタリス at 2015年08月30日 18:34
だれも怪我してないからまだ平和(震え声
ひっささき!ひっささき!
Posted by at 2015年08月30日 20:48
ゆるやかに破滅していく共依存はほんとうに素晴らしいですね
Posted by at 2015年08月30日 21:33
お久しぶりです。相変わらず素晴らしいひっささきSSです。わたしのリクエストしたエイシロのSSを楽しみに待っています。採用ありがとうございます(^_^)
Posted by 陰暦 舞 at 2015年08月31日 01:33
コメントありがとうございます!

あれ?そんなに重い?>
久「十分重いから気を付けてね?」
咲「手遅れかもしれませんね…」

これからも頑張ってください>
久「実は1か月くらい前に書きあがってたのよね」
久「忙しくて更新作業自体ができなかったわ」
咲「でもこれからも頑張ります!」

思ったよりも重くない>
久「あれー?これ普通に重いはずだけど…」
咲「みなさん麻痺しちゃってますね。
  もっと重たくしないと」
久「やめて!?」

一度成功して強気>
咲「…というよりは、自分から動かないと
  何も変わらないって知りましたから」
久「それにしてもやり過ぎだけどね」

こういう共依存系の話好き>
ゆるやかに破滅していく共依存>
咲「ありがとうございます。
  互いに依存してるのっていいですよね」
久「まあ片方に依存してるよりは
  健全なんじゃないかしら」
和「何言ってるんですか貴方達は」

とても面白かったです>
咲「ありがとうございます!」ぺっこりん

だれも怪我してないからまだ平和>
咲「心はボロボロに傷つきましたけどね」
久「ごめんってば」
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2015年09月02日 16:38
咲は原作でも部長に対策してもらった事に後から気づいてたりしてますからね
かっこいい部長も好きですが悩みや迷いを内に秘めて葛藤している部長って何故か心惹かれてしまうんですよね。
Posted by at 2015年09月03日 21:42
拒絶した裏で必死で耐えてる部長が
部長らしいというか…
咲さんは責任を取ってと有無を言わさず
言えるけれど部長はどうか離さないでと
願いなままなところがまた…!
久咲は本当に責任という言葉が似合いますね
リクエストに応えて頂きありがとうございました!
Posted by at 2015年09月05日 14:35
自分がまんま途中まで咲と同じ行動しててわろた
Posted by at 2015年10月03日 00:03
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