現在リクエスト消化中です。リクエスト状況はこちら。

【オリジナル百合SS】 「運命に囚われた私達」【共依存】【狂気】

<あらすじ>
なし。冒頭をお読みください。

<登場人物>
魔王,勇者


<症状>
・狂気
・共依存
・異常行動(重度)


<その他>
・意外に病んでないかもしれません。

・試験的に、登場人物に名前を付けてみました。
 ただ多分そんなに名前を意識しなくても読めるはず。



--------------------------------------------------------



生き方が既に決まっていました


かたや、魔界を席巻する魔王として

かたや、魔王を打ち倒す勇者として


それ以外の道は許されず
運命に服従して歩み続ける
それはさながら人形のように


運命に囚われた私達を待ち受ける結末

それは
どちらかの死?

それとも
両方の死?


どちらにせよ
既に決まっているのでしょう



--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------



『第二皇女アーチェ、至急謁見室に来るように』


日課となっている鍛錬を終えた直後。
念波によって魔王様に呼び出された私は、
荒い息もそのままに、急いで謁見室に赴きました。


「来たか」

「はっ、はい…至急、との事でしたが…一体何が?」

「これを見よ」


魔王様が右手を翻します。
すると何もなかった空間に、
小ぶりの水晶球が姿を現しました。

鏡のように輝く表面を眺めていると、
やがて水晶に靄(もや)がかかり、
栗毛の少女が映し出されました。


「…次代の勇者だ。名をアムと言う。
 いずれ我らの前に
 立ちふさがる事になるであろう」

「…この少女が?」


私は再度水晶を覗き込みます。

短めに切り揃えられた巻き毛の髪が、
ふわふわと風に揺れています。
小柄な体型にあどけない顔立ちは、
どこか庇護欲をかきたてます。
姿形だけで判断するなら、
とても勇者には見えません。

そんな少女は戦闘の真っ最中でした。
夥しい量の血を流しながら、
それでも果敢に剣を振り回しています。

相手は野生の魔物でしょうか。
歯に衣着せぬ物言いをしてしまえば、
取るに足らない雑魚でした。


「お言葉ですが…この程度の魔物に苦戦する者が
 敵になるとは思えません」

「そもそも障害になるとわかっているなら、
 今その芽を摘んでしまえばよいのでは……?」


私の言葉を受けた魔王様は、
さも落胆したとばかり嘆息すると、
じろりと私をねめつけます。


「……勉強不足だな、アーチェよ。少々失望したぞ」

「っ、も、申し訳ありません」

「勇者は殺しても生き返る。
 女神の加護を授かっているからだ」

「お前が言うように、今この娘を殺す事は容易い。
 だが、それは根本的な解決にはならない」

「だが放置しておくわけにもいかぬ。
 いずれは何らかの方法で始末する必要がある。
 今はまだその方法を検討中だ」


そこまで告げると、魔王様は
私に水晶を手渡しました。


「お前に一つ使命を課そう。この少女を監視し、
 何かあれば余に報告するのだ」

「…どうして私なのですか?」

「お前が一番この使命に適しているからだ。
 将来この勇者と戦う事になるお前が」

「余は次代の魔王として、お前に
 王位を継承しようと考えている」

「っ……」

「しばらくは鍛錬も休んでよい。
 この任務に専念するように」

「…御意」


言葉少なに意を伝えると、
手の中の水晶球を覗き込みます。

そこには辛くも死闘を制したものの、
息も絶え絶えの少女が、
膝から崩れ落ちる姿が映し出されていました。

脅威を感じるどころか、ともすれば
守ってあげたくなる程に脆弱な少女。


(…本当に、こんな少女が…
 私達を脅かす事になるのでしょうか)


その姿に、私は疑問符を浮かべずには
いられませんでした。



--------------------------------------------------------











--------------------------------------------------------



少女…もとい、勇者を観察する
日々が始まりました。

毎朝目を覚ますと身だしなみを整えるより先に
水晶球に魔力を篭めます。

映し出された場所を見て、
私は深い溜息をつきました。


「…また、死んでしまったのですね」


水晶が映し出した場所は教会。
勇者は、花が敷き詰められた棺(ひつぎ)の中に
安置されていました。

何日か観察した上でわかった事。
勇者が殺された場合、肉体が修復された状態で
安全な場所に転移されるようです。

ただし魂を黄泉の国から連れ戻すには、
神聖なる儀式が必要で。
丁度今、協会では儀式の真っ最中でした。


「…おお、我が全知全能の主よ!
 どうかいま一度、勇者アムに
 救いの手を差し伸べたまえ!」


神父が神に祈りを捧げると、
一筋の光が死した勇者に降り注ぎます。

光は集束すると、その全てが
勇者の器へと吸い込まれていきました。

彼女の体がびくりと大きく痙攣します。
そして彼女はぱちりと瞼(まぶた)を開き…


断末魔の咆哮をあげました。


「うぎあぁぁあぁぁあ゛ぁぁ゛っ!!!」


目からは尋常じゃない量の涙が溢れ、
狂ったように暴れ始めます。

彼女の魂は、未だ死の瞬間に
囚われたままでした。


「ぎゃぁぁっっ!千切れっ、腕っ、千切れっ!!」


もっともこうなる事は
予想の範囲内だったようでした。
ゆえに、棺桶に安置されたその体は、
しっかりと拘束されていて。


「死っ…!いやぁっ!!う゛ぁぁぁあ゛ぁぁっ!!」


彼女は打ち上げられた魚のごとく、
ただ棺の中でのたうち回り続けました。

荘厳な教会には似つかわしくない絶叫が、
繰り返し、繰り返し響き渡ります。


「はっ……!はぁっ…!あっ……!」


数分に及ぶ狂気の末に、
流石に疲れ果てたのでしょう。
やがて彼女は叫ぶのをやめると、
力なく棺に横たわりました。

その好機を逸する事なく、
神父が勇者に語り掛けます。


「……落ち着きなされ、勇者殿。
 貴女は、もう解放されたのです」


深くしみいる様な神父の声。
それを聞いて、ようやく勇者の目に
正気の光が灯り始めました。


「そっか…私、もう死んじゃってたんだ」


ぐったりとその身を棺桶に委ね、少女は
ぽつりとそうこぼした後に。


「うっ……っ……ぅっ……」


静かに、静かに嗚咽し始めたのでした。



--------------------------------------------------------



死んでも再び生き返る。

一聞すれば救済措置のように聞こえるそれは、
私には無間地獄のように思えました。

勇者は何度も死にました。
それも、苦しみながら死にました。

時に腸(はらわた)を食い破られながら。
時に四肢を食い千切られながら。

恐怖に、苦痛に、絶望に叫び声をあげながら
死に続けたのです。
その様は正視に耐えがたい程でした。


「…今日は、なかなか起き上がりませんね」


日に日に勇者は弱っていきました。

生き返ってもすぐに動き出す事がなくなりました。
ただただ、棺の中で目を閉じて。
ぼろぼろと涙を流し続けるようになりました。

無理もありません。むしろ、
今まで耐え続けてきた事が異常なのです。

目に光を失って。少しずつ
活力を失っていく勇者を見て。
私は、叫び出したくなる程に胸が痛みました。

いかに敵といえども、
同情を禁じえませんでした。

そして何より、たった一人で苦しむ彼女に、
かつての自分の姿を垣間見た気がしたのです。


いつしか私は、彼女の無事を
祈るようになっていました。


「…どうか、今日は死なないで」


その願いが聞き届けられる事はなく。
彼女はそれからも命を落とし続けました。

そして、さらには…
死よりも恐ろしい目に直面する日が来たのです。



--------------------------------------------------------











--------------------------------------------------------



「やめろっ!やめてっ!!お願いっ…!」


「やめてぇぇぇえぇっ!!!」


強敵が蔓延る(はびこる)洞窟に
足を踏み入れた彼女。
その最奥で、彼女は最悪の相手に
出会ってしまいました。


…そう、発情したドラゴンに。


彼女の剣は、鱗に突き刺さる事無く折れました。
鎧は、ただの布きれのように引き裂かれました。

傷だらけの肌を露出した彼女は、
そのまま竜に組み敷かれてしまいます。

猛り狂う竜の目には、眼前の彼女は
一匹の雌として映っていました。


「やだっ、やだよっ!それだけはっ、やだ!!」

「いやっ、もうやだ!殺して!死なせてぇぇっっ!!!


泣きじゃくりながら首を振っても、
その体はぴくりとも動いてはくれなくて。
幼子のようにただ拒絶の言葉を口にしながら、
彼女はひたすら死を願いました。


「……っ!」


その姿を見て、私はもう、
我慢する事はできませんでした。


『……転移(テレポート)!!』


魔法が、私を一瞬でその場に運びました。
眼前には竜に組み敷かれた少女。
血走った目で覆いかぶさる竜。

私は携えた剣を抜くと、
そのまま竜に斬りかかります。


「その娘を離しなさいっ!!」


そして一閃。

次の刹那、竜の首が胴体から離れて
ぼとりと落ちました。

切り離された胴体からは、
竜の鮮血がシャワーのように降り注ぎ。
竜と、私と、少女の体を
真っ赤に染めました。

即座にその体を蹴り飛ばして、
彼女の体を引き摺り出します。
次の瞬間、轟音を立てながら、
竜の体が崩れ落ちました。


「大丈夫?」


助け出された少女は濡れた目を瞬かせます。
一体何が起きたのか、まるで
わからないとばかりの反応で。

私はもう一度問い掛けました。


「……大丈夫?」


同じ言葉を投げ掛けられて、
ようやく自分が助け出されたのだと
理解できたのでしょう。

少女は顔をくしゃくしゃに歪ませると、
私に縋り付いて泣き始めました。


「あ゛ぁぁぁぁ゛っ……!!」

「怖がったぁっ…!怖がったよぉっっっ!!!」

「あぁぁあ゛あああ゛ぁぁっ……!!」


私は彼女の体を強く抱き締めると。
つられて零れ落ちそうになる涙を必死に堪えながら、
彼女の背中を優しくさすります。


「大丈夫…もう、大丈夫ですよ……」


彼女の号泣はなかなか止まりませんでした。
それはさながら、これまでせき止めていた苦悩が
溢れ出したかのようでした。



--------------------------------------------------------



半刻はそうしていたでしょうか。
ひとしきり泣いて、ようやく
落ち着きを取り戻した後に。
彼女は当然の質問を投げ掛けてきました。


「えと…お姉さんは……誰?」


答えられるはずがありませんでした。
『私は次代の魔王候補。
 最終的に貴女を殺すために監視していた』
などと、どうして言えるでしょうか。


「…ごめんなさい。その質問には、
 答える事ができません」

「えと…じゃあ、どうして私を助けてくれたの…?」


代わりと言っては何ですが、次に問われた質問には
素直に答える事にしました。


「…ずっと、貴女を見守っていたんです。
 でも、これ以上。黙って見ていられなかった」

「……」

「私からも一つ質問させてください。
 貴女はどうして、こんなに苦しい思いをしてまで、
 勇者を続けるんですか?」


文献を漁って知りました。
勇者は確かに、死んでも生き返る事ができる。
でもそれは強制ではなくて。
勇者が望むなら、そのまま
この世を去る事もできるとありました。

そうでなくとも、生き返った後
冒険を止めてしまえばいい話です。
それだけで、彼女はこの無限の苦しみから
逃れる事ができるのです。

なのにこんな、生き地獄に等しい世界に、
一体どんな未練があって。
彼女は生き返り続けるというのでしょうか?


「……」


私の問い掛けに、彼女は少しだけ押し黙ると。
やがて目を伏せて、寂しい笑顔を浮かべながら
語り始めました。


「…私には、これ以外何もないから」

「家族も、友達も、愛する人も。
 何も。何もないから」

「勇者、やめちゃったら…
 何のために生きればいいかわからない……」


ぽつり、ぽつりと語られる独白。それは、
静かに私の胸を打ちました。


彼女の姿に自分が重なって見えたんです。

生まれる前から生き方を運命づけられて、
普通の喜びを何一つ与えられる事なく、
ただその使命を果たすためだけに苦しみ続ける。


「…でも、苦しいでしょう?
 楽になりたいとは思わないんですか?」

「…いつも思ってる……
 でも…諦めるのも…怖いの」

「運命に逆らうのが……怖い……」


絞り出すようなその吐露は、まさに今、
私を苦しめているものと同じでした。

彼女の生き方は、私のそれと、
何一つ変わりがなかったのです。

彼女の場合は神様。私の場合は…お父様。

相手こそ違えど、絶対的な支配者に縛られて、
従う事しかできない点ではまったく同じ。


「……っ」


無性に胸が苦しくなって、
彼女を強く抱き締めました。


「えっ…えとっ……」


何もわからないであろう彼女は、
突然の抱擁に戸惑いながらも。

私の目に光る涙を見ると、
そのまま静かに口をつぐんで。
その手を私の背中に回しました。

多分、彼女も何かを感じ取ったのでしょう。
自分に通じる何かを。

それ以上私達は何も語らず。
ただただ二人、静かに抱き合い続けました。



--------------------------------------------------------











--------------------------------------------------------



それ以来、私は彼女を密かに
手助けするようになりました。

表だって仲間に加わる事はできません。
でも、彼女に死の影がにじり寄ってきた時。
必ずその場に飛び込んで、
彼女を救い出しました。


「…大丈夫?」

「…また、来てくれたんだ…」

「ねえ、お姉さん。前にも聞いたけど…
 どうして私を助けてくれるの?」

「……ほおっておけなかったから」

「…どうして?」


肩を抱いた腕にその手を重ねながら、
彼女は私の目を見つめます。

その目には、どこか甘えるような。
それでいて縋る様な弱さが
見え隠れしていました。


「身に覚えがあるからです」

「泣き叫んでも、助けを呼んでも、
 誰も助けてくれない絶望感に」

「…そうなんだ」

「…はい」


私は彼女に言葉を返しながら、
かつての地獄の日々を
脳裏に思い浮かべていました。



…例えば、この世に生まれ落ちて
四年に差し掛かったある日の事。

私は、実の父親の手によって、
崖から突き落とされました。

全身を強かに叩きつけて、
口の中に血の味が広がって。
痛みに呻く私に、お父様は冷徹に告げました。


『では、余は先に帰還する。
 お前は自分の力で戻って来るのだ』

『……ま、まって……わたしっ…
 しんじゃう……』

『まずは回復魔法を唱えろ』

『理論はすでに学習したであろう。
 可能なはずだ。できぬならお前などいらぬ』

『そん…なぁっ……たす……け………』


『余を失望させてくれるなよ』


私の言葉には一切耳を貸さず。
お父様は、転移魔法を使ってこの場を去りました。

残されたのは、血に塗れた私だけ。
じわじわと地面に血が広がって、
意識がぼんやりと歪んできて。
このまま死んじゃうのかなって考えて。
もう、それでもいいのかなって思い始めて。


それでも、私は生きる事を選択しました。


ここで死んでしまう事よりも、
お父様の命に逆らう事が怖かったのです。


『……っ』


朦朧とする意識の中、何度も失敗しながら
回復魔法を唱え続けて。

不完全ながらにも成功すると、
まだ傷の残る体を引き摺りながら、
崖に手をかけて昇り始めました。

嗚咽を繰り返しながら。
這い寄る死の恐怖に怯えながら。



「……」


今思い返しても背筋が凍ります。
しかも、これはあくまで一例に過ぎず。
他にも数え切れないくらい、
幾度となく死線を潜り抜けてきました。


でも、だからこそわかるんです。
彼女の苦しみが。悲しみが。恐怖が。


「…貴女を見捨ててしまったら。
 あの時私を見捨てた側に、
 私が回る事になってしまいます」

「それだけは嫌なんです」

「…だったら…これからも、
 助けてくれるの?」

「私の事……助けてくれる?」

「…ええ。私にできる範囲で、必ず」


私の返事を聞いた彼女は、唇を震わせ、
目に涙を溢れさせ。

物言わず、静かに私の胸に顔をうずめて
嗚咽を繰り返すのでした。



--------------------------------------------------------











--------------------------------------------------------



少しずつ、少しずつ。
私達は依存していきました。

勇者と次期魔王。それは決して相容れない存在。
それでも、私が心を許せるのは彼女だけで。
彼女も、私にだけ笑顔を見せてくれました。


出会う回数も増えていきました。
それは、彼女が私に依存し始めた事が
きっかけでしたけれど。


「…先程の攻撃…避けられましたよね?」

「えへ…死にそうになったら、
 アーチェが助けに来てくれるって思うと…つい」

「…そんな事で血塗れにならないでください」


私の方も、彼女の事が気になって。
少しずつ、過保護になっていきました。


「…アム、大丈夫ですか?」

「……どうしたの?別に
 死にそうはなってないけど」

「…でも、辛そうでしたから」

「…アーチェは、本当に私の事何でもわかるんだね」

「…ずっと、見守ってますから」

「…そっか。じゃぁちょっとだけ。
 胸、貸してもらってもいいかなぁ」


そんなこんなを繰り返すうちに。
いつしか私は、特に用事がない時にも
顔を見せるようになっていました。


「…あれ?今日はどうしたの?」

「…すいません。なんだか貴女と
 お話したくなったので」

「えへへ。そっか」


彼女も私の想いに答えてくれました。
そして、ついには…

私達は、愛を囁きあうまでになりました。


「…好きだよ。アーチェ」

「…私も…貴女の事を、愛しています」


過ちを犯している自覚はありました。
彼女を裏切る行為だという事も、
重々承知の上でした。

遠くない未来、私は敵として彼女の前に姿を現す。
倒すべき相手として、彼女の前に立ちはだかる。

それでも私は、彼女と心を通わせる事を、
止める事ができませんでした。

初めてだったんです。
私の痛みをわかってくれる人なんて。
初めてだったんです。
苦しみを分かち合える人なんて。


だからせめて、もう少しだけ。
彼女を愛する事を、許してください。



--------------------------------------------------------











--------------------------------------------------------



「…明日、私、魔界に行くよ」

「…そうですか」

「…魔界は、ここよりもずっと敵が強いって聞いてる。
 私は…また、命を落としちゃうかもしれない」

「…それでも、変わらず助けてくれる?」

「…私が、手を尽くせる限り」

「…ありがとう。……それと…その……
 もう一つ、お願いがあるんだ……」

「…なんですか?」

「…私の初めて…もらってくれないかな」

「……」

「…魔界に入ったら、もう気の休まる事なんてない。
 ただ息をするだけでも人間には毒だって聞くし」

「…だから。今のうちに。私の全部。
 貴女に、もらってほしい」

「…私で……いいんですか?」

「貴女じゃなきゃやだ」

「…わかりました。でも一つだけ、
 条件を加えさせてください」

「…何?私にできる事なら何でもするよ」

「…そんなに難しい事じゃないですよ?
 貴女なら簡単にできる事です」

「……」

「貴女の初めてをいただきます。だから…」


「私の初めても、もらってください」



--------------------------------------------------------











--------------------------------------------------------



『勇者が魔界に侵入した』


その知らせを受けて、魔王軍も
にわかに騒がしくなりました。

野生の魔物に手こずっていた彼女はもう居ません。
幾度となく私が助け、時には戦いの指南まで受けた彼女は、
今や勇者と呼ぶにふさわしい力を手にしていました。


「国境の砦が落とされました!」

「何をしておるのだ!
 相手はたかが一匹だろう!」

「お言葉ながら、彼奴の力は我々が
 束になっても叶うものではありません!」

「こうなってはもはや、皇女様方の
 お力をお借りするしかないかと……!」


兵士の報告に、私はその身を
びくりと硬直させました。
それは、それこそは。
私が最も恐れていた事でした。

日々思い悩むのは、どうしたら
彼女と戦わずに済むのかばかり。

仮に戦いになったとしても、
いかに正体を明かす事なく
彼女に倒されるかばかり考えていました。

一線を越えてしまった私にとって。
彼女に剣を向けるという選択肢は、
ありえないものだったのです。


「…何。心配する事はない」


それまで玉座にて沈黙を守り続けていた魔王様が、
ここで初めて口を開きました。


「余が相手をしよう」

「ま、魔王様がですか!?」

「ただ殺すだけであれば、確かに皇女でも問題あるまい。
 だがそれでは対策にはならぬ」


「余には、奴を永遠に葬る策がある」


魔王様はゆっくりとその腰を持ち上げると、
ひとり玉座を後にします。


「…と、その前に。一つすべき事が残っているな」


魔王様の歩みが止まり。
再び私達の方に振り返りました。


「第二皇女アーチェを地下牢に幽閉せよ」

「戦いの最中、駆けつける事ができぬように」

「…!?」


その目は真っ直ぐに私に向けられていました。
何もかも見透かすようなその瞳に、
私は体を震わせるしかありませんでした。



--------------------------------------------------------











--------------------------------------------------------



勇者と魔王の直接対決。

天地を震わせる激闘が予感されたそれは、
酷く静かに始まった。

剣の切っ先を向けた私を前にして、
魔王はまるで警戒する素振りを見せず。

ただただ余裕の笑みを浮かべなら、
鷹揚に語り掛けてくる。


「…勇者よ。戦う前に二つばかり質問しよう」

「…家来になる代わりに、
 世界の半分を寄越せとか言わないよね?」

「下らぬ。いつ寝首をかくかわからん勇者など、
 誰が手を結びたがると言うのだ」

「一つ目の質問だ。『アーチェ』という名を知っているか?」

「…っ!?どうしてお前がその名前を…!?」

「どうしても何も、アーチェは余の娘だ」

「しかも、アーチェは次期魔王筆頭でもある」

「……!?」

「ちなみに、お前がアーチェと
 深い仲である事は知っている。
 何度もアーチェに助けられた事も、
 肌を重ねる関係である事もな」

「……っ」

「…その上で二つ目の質問をしよう。
 アーチェは余の娘で次期魔王だ。
 つまり、余に剣を向ける事は、
 アーチェを敵に回す事と同義」

「その事実を知って、それでもなお。
 お前は、余に立ちはだかるか?」

「それとも…大人しく余に殺されて、
 黄泉に留まる道を選ぶか?」


「さあ、好きに選ぶがよい」


魔王から告げられた二択。
でも、それは二択でも何でもなかった。

私が生まれて初めて抱いた願い。
それは、魔王を倒して平和を取り戻したら、
アーチェと二人添い遂げる事。

なのに、魔王を倒したら。
アーチェが敵に回るのだとしたら……


そんなの、死ぬしかないじゃない。


…勇者と魔王の直接対決。

天地を震わせる激闘が予感されたそれは、
ただの一度として斬り結ぶ事すらなかった。

知ってしまったから。そして知ってしまった以上、
もう戦う事はできなかったから。



--------------------------------------------------------











--------------------------------------------------------



幽閉を解かれた私は一目散に駆け出しました。


『アーチェよ。詮無き事とは言えすまなかったな』

『全ては終わった。お前をここから解放しよう』

『あの娘がどんな結末を迎えたのか。
 知りたくばあの地に向かうがよい』


城を飛び出し向かった先は、
例の決戦があったと言われる荒野。


「……っ!?あれはっ……!」


そこで私を待ち受けていたのは…
少しだけ盛り上がった土と、
突き立てられた一本の粗末な棒。


…あの子の、墓、でした。


「嘘っ…嘘です!だって、あの子は…!!」


「死ぬはずがない!!」


だってあの子は勇者で。
心が折れなければ、何度でも蘇るはずで。

こんな墓には何の意味もなくて。
今頃彼女の体は教会に転送されて!


この中には誰もいないはず!


「こんなっ…こんなものっ!!」


無我夢中に土を掘り返す私の手に、
不意に何かが触れました。


やわらかい感触。
それはまるで、人の肌のような。


「……っ!!!」


涙で視界がぼやける中、
私はそれを見てしまいました。

目に入ったのは、
目を閉じた、彼女の、青白い、顔。


「あ゛ぁぁぁ゛ぁ゛あ゛ぁぁあ゛ぁぁ゛ぁっ!!!」


私は掘り起こした彼女を固く抱き締めながら、
私は獣のような叫び声をあげるしかありませんでした。


「貴女は勇者でしょう!?
 なんで私を置いて死んでしまうんですか!」

「お願いです!いつもみたいに、
 生き返ってください!」

「私を一人…こんな地獄に…置いて、
 いかないでください……!」

「お願い……お願い……っ…!!」


「アムッっ……!!!!」


何度呼びかけても、涙を流して縋っても。
彼女が目を覚ます事はなく。


「……」


私の中で、何かが壊れて。
崩れて、狂って行きました。



--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------



「…アーチェの様子はどうだ」

「…完全に狂っていますわ。一日中部屋に籠って、
 出てきたと思えばぶつぶつと
 意味不明な言葉を繰り返しています」

「目はどろりと濁って廃人のようです。
 残念ですが…あれでは次期魔王なんて
 夢のまた夢ですわね」

「そうか」

「ま、魔王様に第一皇女様!
 緊急事態にございます!」

「…申してみよ」

「第二皇女様がご乱心なされました!」

「…ほう」

「自らの居室を魔法で吹き飛ばされると…その…」


「ま、魔王様に宣戦布告した上で……
 転移なされました!!」


「あらあら、完全に気が触れてしまったのね。
 お父様はあの子に随分ご執心でしたけど…
 どうなさるおつもりなのかしら?」

「……」



「捨て置けばよい」



--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------



許せなかった。彼女を殺したお父様…もとい魔王が。
許せなかった。彼女をむざむざ死なせた自分が。

憎しみが後から後から噴き出してきた。
これまで一度として逆らった事がなかった魔王。
でも、八つ裂きにせずにはいられなかった。


ここに来てようやく気づいた。
もし私に、魔王に反旗を翻す勇気があれば。
運命を覆す勇気があれば。
彼女は死なずに済んだのだ。

それどころか、彼女は私と手を取って。
誰に邪魔される事もなく、愛し合う事ができたのだ。


「でも…まだ、遅くない」


アムを生き返らせる。
そして二人で、魔王を殺す。

決意した私は、ひるむ事なく禁忌に手を伸ばす。
それは知識としては身につけていたものの、
あまりの悍ましさに自ら封印した書物。


でも。


「私は、運命に抗ってみせる」

「あの子を取り戻すためなら、
 私は、外道にでも、何にでもなってみせる」


手を伸ばした書物。
それは、死を不死に変える禁忌。
死した者を、再び動かす禁忌。


その書物が司る魔法。それは……



――『LIVING DEAD』




--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------




永遠に続くと思われた暗闇。
それを引き裂いて、光が一面に差し込んできた。

あまりの眩しさに目が眩んで、
瞼を開ける事ができないでいると。
聞き覚えのある声が
私の耳にそっと入り込んでくる。


「…起きて。私のアム」

「貴女は勇者でしょう?
 こんなところで死んでいては駄目」


「…さあ、蘇ってください」


それは、私にとって唯一の。最愛の人の声。

その姿を早く見たくて、
私は眩しさを押して目を開く。


「……アーチェ」


そこに居たのはやっぱりアーチェだった。
アーチェは私が目を覚ましたのを見て取ると、
涙を瞼一杯にためて私を抱き寄せた。


「…どうして。私は死んだはずなのに」

「私が生き返らせました」

「…なんで」

「貴女が居ない世界なんて、
 何の意味もないじゃありませんか」

「勝手に死なないでください。
 私を置いて一人死ぬ事は許しません」

「…でも。私が生きてたら、貴女の敵になr」


最後まで言う事は許されず、
私の唇はアーチェによって塞がれた。


「んむっ……」


温かい、生の温もりを唇に感じて、
私はそのまま言葉を失う。


「違います。貴女は私にとって、最愛の人です。
 それ以外の何者でもありません」

「…アーチェ」

「さあ、立ち上がってください。
 起きたばかりで申し訳ありませんが、
 貴女にはまだしてもらう事がありますから」

「…私が、するべき事…?」

「ええ」

「何?」

「…勇者のする事なんて、
 一つしかないでしょう?」


「…現魔王の討伐です」


一度は抱き寄せた体を引き離しながら、
アーチェは私の目を見据えて言った。

その目には、今まで彼女になかった強い意志と。
同時に、どろりと濁った殺意が籠められていた。



--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------



不死になった勇者と、
もっとも魔王に近い皇女。
手を取り合った私達に敵などなかった。

立ちはだかる敵を全て薙ぎ倒しながら、
かつては自分の住処だった城をひた走る。
目指すはもちろん、魔王の玉座。


「…来たか。アーチェよ」


玉座に攻め入られながらも、
魔王は一切の動揺を見せる事はなく。

むしろ満足そうな顔すら浮かべて、
私達二人を迎え入れた。


「…お父様。いえ、魔王。
 アムの仇を討たせていただきます」

「…お前は本当に素晴らしい。
 余の期待に、こうまで完璧に応えてくれるとはな。
 やはり、お前こそが次期魔王に相応しい」

「…おっしゃる意味がよくわかりませんが。
 こうして私達に討伐される事が、
 貴方の望みだったとでも?」

「どの道余はお前に王位を継承するつもりだった。
 それすなわち、余は玉座に
 執着していないという事だ」

「余が目指すもの、それは世界統一ただ一つ。
 そして、障害となるものは勇者ただ一人」

「お前は厄介な勇者を滅ぼす突破口を切り開いた。
 それどころか、勇者をアンデッドに変えて、
 我が軍門に下らせた」

「もはや魔界の勝利は揺るぎない。
 これを喜ばずして何を喜ぶ」

「…私は人間界など興味はありません。
 そして、もはや魔界すらも」

「私には、アムが居ればそれでいい」

「……」

「よかろう。お前達はそれでも構わぬ。
 アンデッドとはいえ勇者が生き続けるなら、
 次の勇者も生まれまい」

「…ならばお前が指揮を執らずともよい。
 第一皇女にでも任せておけば人間界は落ちる」

「…全ては、貴方の手の上だったと
 おっしゃるのですか」

「全てが…とまでは言えぬがな。
 おおよそは期待通りと言えよう」

「…そうですか。ならば、今ここで…」


「私達に殺される事にも、文句はありませんね?」


「殺せるものならな」

「殺せますとも。この子と二人なら」


私は今度こそ魔王に剣の切っ先を向ける。
魔王もまた立ち上がる。

私にとって、かつては絶対の支配者だった魔王。
でも、もはや恐れる必要はなかった。

だって私には…最愛の人が居るのだから。


「来るがよい」


魔王が大仰に両手を広げる。
私達は弾かれたように走り出す。

破壊の詠唱が始まる前に、
私達は二人斬り込んだ。



--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------



全ての戦いが終わった後。

私達は小さな森に逃げ込むと、
森全体を包み込む大きな結界を貼りました。

魔界にとって、私達は魔王を倒した反逆者。
人間界から見ても、魔王の皇女とアンデッド。
どちらにせよ、私達を受け入れる世界は
ありませんでしたから。

もっとも別に構いませんでした。
私にはアムが居ればそれでいいのですから。

全てを拒絶して二人きりになって。
ようやく安心していると、
アムが不安気に私の顔を覗き込んできます。


「…よかったの?私、
 もうアンデッドなんだよ?」

「それが何か?」

「もう体はずっと冷たいままだし。
 アンデッドの本能的に、アーチェを
 こっちの世界に取りこみたいとすら思ってる」

「一緒に死んで欲しいんですか?」

「…うん。生者が羨ましくて仕方ないんだ。
 ずっと体が渇いてる。
 生命が欲しくてたまらない」

「…なら、次はそれを目標にしましょうか」

「…二人で死ぬって事?」

「違いますよ。生命が欲しいんですよね?
 だったら、作り出せばいい事です」

「…そんな事、できるの?」

「ホムンクルス。語源は小人と言う意味ですが、
 無から生命を作り出す学問があります」

「貴女の器を作り出して、魂をすげ替えましょう。
 …何年。何百年かかるかわかりませんけど」


事もなげに語る私に、
それでもアムの不安は消えず。
なおも私の顔を伺いながら
問い掛けてきます。


「……もっかい聞くけど…本当にいいの?
 私、アンデッドだよ?死体なんだよ?」

「……く、腐っちゃうかもしれないよ?」

「防腐処理はしてありますから大丈夫ですよ?」

「そ、そういう問題じゃ…
 ま、まぁちょっと安心したけど」

「……もし仮に腐ってしまったとしても。
 腐臭が漂うようになったとしても。
 私は変わらず、貴女を愛し続けますよ」

「だって、私には貴女しか居ませんから。
 貴女以外、興味がありませんから」

「…だから。安心してください」


私は彼女を抱き締めます。
正面から彼女の瞳を見つめ返します。
彼女の瞳に潜んでいた不安が、
少しずつ霧散していくのが見て取れました。


「……ありがと。私も、アーチェしか居ないから」

「……捨てないでね?」

「…私、埋葬されていた貴女を
 無理矢理掘り起こしたんですけど」

「言われなくとも…死んだって
 離してあげませんよ?」

「…あはは…そうだったね」


ここに来てようやく安心したかとばかりに、
アムは安堵の息を吐くと。
彼女は私の唇にそっと口づけました。


「んっ……」


唇から伝わる冷たい感触。
でもそれは、私の体を熱く、熱く
燃やしていきます。


「…これからも、よろしくね」

「ええ。こちらこそ」


私達は互いに抱き合うと、
再び目を閉じて唇を重ねました。



--------------------------------------------------------













--------------------------------------------------------



運命に囚われし勇者と魔王


二人が選んだ結末は、
誰一人として立ち入る事が許されない
二人だけの世界


そして二人は、永遠に近い年月を、
たった二人で生き続ける


私達は幸せでしょうか
それとも、不幸せでしょうか

考えるまでもありません
だって、この結末は、
誰に決められたものでもなく


私達が
自らの手でつかみ取ったものなのですから


(完)




--------------------------------------------------------





























--------------------------------------------------------






以下作中の設定。
この手の説明が嫌いな人もいると思うので
興味のある方のみどうぞ。






--------------------------------------------------------






















---------------------------------------------
<人物設定>
---------------------------------------------
アーチェ:第二皇女。
 赤髪のロング。若干パーマ。
 比較的長身(168cm)だが女性的な体つき。
 能力は全皇女の中でも随一だが気弱。

 生まれる前から能力を見込まれ
 徹底的な英才教育を受ける。
 なお、英才教育については他の皇女も受けていたが、
 アーチェ以外は全員その苛烈さに反発したため、
 難度は引き下げられている。

 気弱で依存的だったアーチェのみ、
 『教育』を反発する事なく受け入れた。
 『教育』はどんどん過酷さを増し、
 最終的に拷問の域まで達する事になった。
 しかし、アーチェは持ち前の依存性を発揮して、
 精神を少しずつ歪ませながらも
 その全てを運命として受け入れてしまった。

 一連の教育はアーチェの精神に
 精神的外傷として根深く刻み込まれており、
 ゆえに彼女は父親である魔王に逆らう事ができない

 名前の由来は『Archenemy(魔王)』より。
 前述の通り生まれる前から魔王になる事を
 義務付けられている。
 そこに彼女の意思は介在していないが、
 彼女は運命として諦めている。


アム:勇者
 栗毛のショートパーマ。
 比較的小柄(152cm)で二次性徴を迎えたばかり。
 勇者の特徴そのままに、最初は弱く、
 何度も死にながらも少しずつ強くなる。

 勇者の家系であり、物心ついた前に
 両親は殉死している。
 その後も勇者となるべく周囲に育てられ、
 ひたすら戦闘に明け暮れていた。

 友情も愛情も注がれた事がない。
 生来は争いを嫌う穏やかな性格だが、
 生真面目な性格でもあり、
 周囲の要求に応える事だけが
 自分の存在意義だと思っている。

 ゆえに自分の事を世界を
 平和にする道具としか考えておらず、
 どれだけ苦しい目にあっても
 逃げ出す事ができない。
 しかしながら、その心の奥底では
 愛を求めていつも啜り泣いている。

 名前の由来は『arm(武器)』より。
 彼女を生んだ頃には両親も
 戦いばかりの日々に疲れて
 精神に異常をきたしていた。
 このため、神にとって
 代替品の武器でしかない自分達を
 揶揄して名付けられた。
 名前の由来は幼い頃に本人にも伝えられており、
 彼女の人格形成に消えない爪痕を残している。


---------------------------------------------
<作中の補足>
---------------------------------------------
両者に共通する点は、
明らかに常人では耐えられない苦痛を
与え続けられているにもかかわらず、
そこから逃避する事ができない事。

これは幼い頃から自らの役割を
運命づけられていた事に起因する。
『逃げる』という選択肢を選ぶ事自体が
彼女達にとってありえないため。
虐待を受け続ける子供が、
それでも親から逃げ出さないのと
同じ精神状態とも言える。

それでも絶え間なく与えられた苦痛は
彼女達の精神を少しずつ歪ませており、
二人はどこか諦観、無気力、不安定な状態にある。

------------------------------------
そんな中、アーチェは魔王から
アム監視の命を受ける。

幾度となく殺されて、深く傷つきながらも
冒険を止めようとしないアムに、
アーチェはかつての自分を重ねてあわせる。

監視中、アムは何度も殺される事で、
その精神を摩耗させていく。
ただし最終的にアーチェがアムを助けたため、
精神崩壊は免れた。

※もしあの時ドラゴンに強姦されていたら、
 アムは全てに耐え切れなくなり、
 そのまま物言わぬ廃人として
 生を終える結末を迎えていた。
 (この場合は新しい勇者が発生)

------------------------------------
互いの人生に共通点を見出し、
かつ愛に飢えていた二人は瞬く間に溺れていく。

彼女達が愛しあうようになるまで
時間はかからなかった。
しかしこれは現魔王が意図した流れであり、
彼女達はいまだ『運命』に囚われたままである。

------------------------------------
やがて二人が結ばれて、
生きる希望を得たアムの力は
魔王を脅かすまでに成長する。

その頃合いを見計らって、
魔王はアムに二者択一を迫った。

アムは自分にとって唯一無二の存在である
アーチェと敵対する事は考えられず、
素直に殺されてかつ蘇生を諦める事を選択する。

------------------------------------
同じくアムをかけがえのない存在と
思っていたアーチェは、
彼女が自分のために永遠の死を
迎えてしまった事を知り狂気に染まる。
そして魔界でも禁忌とされていた
死者蘇生に手を染め、アムを
アンデッドとして蘇らせた。

なお、ここまでが全て魔王の計画通りである。
魔王はアーチェの能力を高く評価していたが、
性格面で魔王に適合しない事を憂慮していた。

このため一連の悲劇をもって、
アーチェの精神を魔王に相応しいものに
染める事を計画した。

最終的には、怒りに我を失わせて
自分を殺害させる事で、
アーチェに魔王を継承させる予定だった。

------------------------------------
しかしながら、アーチェは魔王の予想以上に
深くアムに依存しており、
世界を捨てる事をほのめかす。

アーチェに次代を継承させる事を諦めた魔王は、
第一皇女にその役を託し、
アーチェとアムに殺害された。

------------------------------------
魔王を滅ぼした二人は
自らを縛り付けていた『運命』から解放される。

しかしアムの体はアンデッドのまま戻る事はなかった。
この世界におけるアンデッドは
魔法の力で黄泉の世界から
無理矢理引きずり出されている状態である。
このため生者を酷く羨み、
常に黄泉に引きずり込んで
あるべき世界に戻りたいと考えている。

自らの本能がアーチェに危害を及ぼす事を恐れ、
アムは再三アーチェに質問する。
本来なら決別を申し出るべきところだが、
深く依存しているアムには
自らそれを言い出す事はできなかった。


しかしアーチェはそれを拒絶する。
すでにアムに依存しきり、
精神に異常をきたしているアーチェは、
このまま死体となったアムを
愛し続ける事を選択した。


そしてアーチェとアムは二人きりで
長い年月を過ごす。
その過程でホムンクルス生成にも成功し、
晴れてアムは生者として復活する。

しかし、二人が再び外界と接触する事はなく。
ホムンクルス生成により
自らを延命させながら
永遠を二人で過ごす事を選択した。
 Yahoo!ブックマーク
posted by ぷちどろっぷ at 2015年11月03日 | Comment(5) | TrackBack(0) | オリジナル百合SS
この記事へのコメント
勇者と魔王の組み合わせは最高ですね
Posted by at 2015年11月04日 00:10
咲のお話もとてもいいですが、オリジナルの話しもとても面白いです。愛し合ってそれを貫く所がいいです。
Posted by at 2015年11月04日 00:53
もし襲ったのがオークだったら間に合わなかったかもしれない(風評被害)
違う世界線の中には女吸血鬼に飼われる勇者も居る……と良いな!
Posted by at 2015年11月04日 09:37
息絶えた人を生き返らせる話はよく見かけますが、生き返った側が発狂しないというのはあまり見ないですね
普通ならば「なぜ生き返らせた!」となりがちですが、このお話では互いの愛の深さや狂気を感じることができました
また次の作品も楽しみに待っています
Posted by at 2015年11月06日 09:03
コメントありがとうございます!

勇者と魔王の組み合わせ>
魔王
 「立場的に許されない点が魅力なんですかね」
勇者
 「この作品でもろくな結果になってないしね」

愛し合ってそれを貫く所がいい>
魔王
 「ありがとうございます。書いた時は
  普通の純愛のつもりで書いてました」
勇者
 「死体を掘り出してる時点でアウトだよ?」

女吸血鬼に飼われる勇者>
勇者
 「あー、それ夢では見た事がある」
女吸血鬼
 「そのうち書くかも」

「なぜ生き返らせた!」>
勇者
 「アンデッドにされたのに
  普通に受け入れちゃうのって
  ちょっとおかしいよね」
魔王
 「私は全然気にしませんよ?」

Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2015年11月11日 19:22
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/167066869
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
 なんかブログランキング参加してみました。
 押してもらえると喜びます(一日一回まで)。