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【咲-Saki-SS:霞初】霞「初美ちゃん…もう、止めましょう…?」【依存】【自傷】

<あらすじ>
なし。その他のリクエストを参照の事。

<登場人物>
石戸霞,薄墨初美

<症状>
・自傷
・異常行動
・依存
・ヤンデレ

<その他>
以下のリクエストに対する作品です。
・霞初で
 お互いにIHで負けた責任を
 自分一人で背負おうとしているうちに
 いかに自分が責任を感じているかを
 示すために自傷行為に走っていくみたいな話

※自傷行為の都合上血などの描写があります。
 苦手な方はご注意ください。

※話の都合上若干の性的な描写があります。
 18歳未満の方は閲覧しないようお願いします。



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インターハイ。

多くの人にとって青春の舞台となるそれは、
私達にとっては修行場の一つに過ぎなかった。

小蒔ちゃんに降ろす神様の調整や、
私に降りる悪しき者の制御などなど。
それらを、麻雀に馴染む特殊な能力を持った子達と
戦う事で鍛えていく。

言うなればそれは神事の一環であり、
本大会にかける思い入れは、
普通の選手よりも希薄…
というのが私達の共通認識。
少なくとも、私はそう思っていた。

事実、団体戦の2回戦で敗退した時も、
私達は誰一人涙を見せる事はなく。


「…ぽっかり予定が空いちゃいましたね」

「そうねえ…じゃぁ、
 個人戦に出る小蒔ちゃんと
 初美ちゃんを置いて、
 私達は海水浴にでも行きましょうか」

「六女仙で私だけハブですかー」


なんて、空いた期間の過ごし方について
花を咲かせるくらいだった。


だから私は、すぐに気づく事ができなかった。
自分を許す事ができず、一人自分に
罰を与え続けていたあの子の気持ちに。


それが顕在化し始めた頃には既に。

あの子の小さな体には、無数の痛ましい傷が
刻まれてしまっていた。



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初美ちゃんが儀式に失敗するようになった。

百鬼の調伏。それは初美ちゃんが
幼い頃から繰り返してきた儀式。
今さら失敗なんてするはずもない儀式。


なのに初美ちゃんは百鬼からの抵抗を受け、
手痛い傷を負うようになっていた。


「あいたたた…また、やられちゃいましたよー」


見ているこちらが目を背けたくなる程の傷を作りながら、
それでも初美ちゃんは笑みを浮かべる。
むしろ、どこか救われたかのように。

そんな初美ちゃんの笑顔を前に、
頭を悩ませる毎日が続いた。


(…一体、何があったのかしら)


わからない事が多過ぎた。
突然失敗を繰り返すようになった理由も、
傷を負ったのに笑顔を見せる理由も。

ただ、何か良くない事が
起きている事は間違いない。
本人に直接聞いてみるしかないだろう。



「初美ちゃん、ちょっといいかしら?」


儀式が終えて、傷を押さえながら
立ち去ろうとする初美ちゃんに、
少し強張った声で問い掛ける。


「なんですかー?」

「ええと。何かあったのなら、
 相談してくれないかしら」

「…別に何もないですよー?」

「嘘おっしゃい。本当に何もなければ、
 初美ちゃんがあの程度の儀式を
 失敗するはずもないでしょう?」


初美ちゃんの表情が曇る。
私は視線をそらす事なく、
初美ちゃんを見つめ続けた。


「……」


しばしの沈黙。でもやがて、
降参したとばかりに苦笑しながら、
初美ちゃんが口を開く。


「…心が、晴れないんですよー」

「あのインターハイ。本来なら勝てていたはずなのに、
 私のせいで準決勝進出を逃してしまいました」

「自分が赦せないんですよー。
 罰したいって気持ちを、
 止められないんですよー…」

「…だから、わざわざ鬼から
 手傷をもらっているって言うの?」

「……はい」


初美ちゃんが俯く。とどのつまり、
それは歪な自傷行為だった。

私は内心驚いた。あの大会が、それ程までに
初美ちゃんの心に影を落としていたとは
思いもしなかったから。

私は少し戸惑いながらも、
偽らざる本心を告げる。


「…考え過ぎじゃないかしら。あの敗北は、
 初美ちゃんだけの責任じゃないでしょう」


確かに、初美ちゃんはインターハイで
ポイントゲッターの役目を担っていた。
負けた二回戦では、その役目を果たせなかったのも事実。

だからといって、初美ちゃんは
点数を失ったわけではない。
微増ながらも、初美ちゃんは点数を増やして帰ってきた。
さらに言えば、副将戦トップだったのだ。

もっともそれを伝えても、
初美ちゃんの顔に笑顔が戻る事はなかった。


「…点数の問題じゃないんですよー。
 私達のチームは、私まででトップに立って、
 霞ちゃんに引き渡す。
 霞ちゃんが守りの本領を発揮できるように」

「私はそれができなかった。…しかも、
 役満を上がろうと躍起になって
 差し込みして無駄に点数を失いました」

「そのせいで、霞ちゃんはいつものプレイができなくて。
 そのまま夏が終わってしまったわけで」

「皆が許してくれたとしても…
 私自身が、自分を許せないんですよー」


虚ろな目をしてそう語る初美ちゃん。
私は掛ける言葉を見つけられなかった。

誰かに許しを請うわけでもなく、
初美ちゃんが自分を許せない以上。
私達が何を言っても、
初美ちゃんの心には届かないだろうから。


結局次の日の儀式でも、
初美ちゃんは手傷を負った。

腕を血に染めて切なげに笑う初美ちゃんを前に、
私は何もしてあげる事ができなかった。



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夜。床について天井を見つめながら、
ここ数日頭を悩ませている問題を
繰り返し問い続けていた。


(…どうしたら初美ちゃんを説得できるのかしら)


初美ちゃんの気持ちも
理解できなくはないけれど。
だからといって、いつまでも
自傷を認めるわけにもいかなかった。


初美ちゃんの体は日に日に弱っている。
傷の治りだって遅くなっている。
もしこのまま続ければ、
命の心配まで出てくるだろう。


(心配……心配?)


その二文字を繰り返した時。
私の頭に、あるひらめきがよぎった。


(そうだわ。自傷行為が、
 どれほど周りに心配を掛けるものなのか…
 身をもって理解させれば
 いいんじゃないかしら)


多分今の初美ちゃんは、
自分を傷つける事しか考えていない。

だから、自傷が周りをも巻き込む行為だと
自覚できていないのだと思う。


だったら簡単。気づかせてあげればいい。


そう…初美ちゃんと同じ事を、
初美ちゃんの前でする事で。



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草木も眠る丑三つ時。
神殿に初美ちゃんを呼び出した。


「…こんな時間に何ですかー?」

「初美ちゃん。これを見てくれる?」


眠そうに目をこすりながら問い掛ける初美ちゃん。
でも、私の手に刃物が握られている事を見ると、
初美ちゃんは言葉を失った。

私は淡々と言葉を繋げる。


「これから、私が自傷行為をします」

「それを見て、自分の行為がどれほど狂っていて、
 人に心配を掛けているか…
 しっかり理解して頂戴」

「…や、止めた方がいいと思いますよー?」

「だったら、初美ちゃんも自傷を止めてくれる?」

「…それは……」

「…行くわね」


鋭利な刃を自らの左手に押し当てて、
すっと軽く引いていく。
それだけで腕には一筋の線が引かれて、
やがて血が滲み出す。

血の気が引いて意識が遠のきそうになる中、
私は初美ちゃんに語り掛けた。


「…どう?初美ちゃんのしてる事は、
 こういう事なのよ?」

「自傷、やめてくれるかしら?」

「……っ」

「もう一度、行くわね」


私はもう一度線を引く。
今度はさっきよりさらにも強く。

自傷なんてしたのは初めてだけど、
どこか不思議な感覚だった。

死に近づいているはずなのに、
何故か痛みは感じない。


「…かすみ、ちゃん」

「…初美ちゃんが止めてくれるって言わないと…
 私もっ…止めないわよ?」


左腕に線を増やしながら私は囁く。
気づけば私は、自らの手に
間断なく刃物を通していた。

貧血からか、不意に視界が暗くなる。
それでも手は止まらなかった。
だって初美ちゃんは、
まだ根を上げていないから。


私はどんどん、線を、線を、線を、線を


「…そっ……そこまでですよー!」


初美ちゃんが右手に抱きついてくる。
突然の事にバランスを崩し、
私は刃物を取り落とす。

初美ちゃんは刃物の柄を足で蹴飛ばしながら、
私の左腕を両手でつかんで圧迫し始めた。


「…やり過ぎですよー…」

「…そうね……でも、私から見たら……
 初美ちゃんも同じようなものなのよ……?」

「…そうですかー…なら、仕方ないですねー」

「…今のを見ても…自傷…
 やめようとは思わないのかしら……?」

「……」

「逆に、霞ちゃんはどうでしたかー?」

「…私?」


初美ちゃんのどろりとした目が私を射抜く。
まるで、心の奥を見透かしたかのように。


「…もう一回、自傷しようって気になりませんかー?」


真っ直ぐに私を捉える視線。
それに私は耐えられず、
反射的に目をそらしてしまう。

実際に体験してみて初めて分かる。
確かに私は、この狂った行為の中に、
ある種の安らぎを感じていて。
だから、言葉を発する事ができなかった。


「……」

「…やっぱりですかー」

「霞ちゃんも、私と同じですよー?
 あの日からずっと溜息をついてばかり」

「本当は悔いてますよねー…?
 あの日、準決勝に進めなかった事を」

「……」


自分でも意識していなかった。
でも、無理矢理気づかされてしまった。
あの日の敗北を、私もまだ引きずっていた事に。


チームを勝利に導けなかった。
一度は頂点に立ちながら、
その座をむざむざ明け渡した。
結局のところ…


永水女子の敗北を決定づけたのは…私。


「……」

「…わかってくれた、みたいですねー」

「そういう、事ですよー…」


沈黙を貫く私を前に、初美ちゃんは悲しそうに笑った。
その笑顔を見て、私は失敗した事を理解する。

結局私の行動は、初美ちゃんの自傷を止めるには至らず…
新たな犠牲者を、一人増やしただけだった。



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それから数日。初美ちゃんは
相も変わらず自傷を繰り返していた。

私はそれを止める事ができないばかりか、
自分まで自傷するようになってしまった。


「…私は、何をしているのかしら」


異常な事をしているのはわかっている。
でも、止める事ができなかった。

刃物をあてて、腕から血が流れるのを見ると、
すっと気持ちが楽になる。
苦痛に満ちた感情を、全て忘れる事ができるのだ。

愚かしい行為だとは理解している。
止めなければいけないとも思っている。
なのに、繰り返せば繰り返すほど、
私はそれに囚われていく。


こんな事をしていると知れたら、
周りは絶対に心配するだろうに。
私だってそうだったではないか。


「ああ……本当に救えない」


そんな、どうしようもない自分を罰そうと、
また自傷を繰り返す。悪循環もいいところ。

心が澱んでいくのを感じた。
体はどんどん弱っていった。
それでも、やめる事はできなかった。


そしてそれは、初美ちゃんも同じようだった。


先に自傷を始めた初美ちゃんの症状は、
私よりもはるかに深刻で。

体が癒えるよりも早く、
新しい傷が刻まれていく。

シミひとつなかった瑞々しい肌は、
見るも無残な傷跡だらけになっていた。


だからと言って、初美ちゃんに
何か言う事はできなかった。

自分の自傷も止められない人間に、
どうして他人の自傷が止められるだろう。


こうして、私達は繰り返す。
救いを求めて、救われない自傷行為を。



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そして、ついに…
初美ちゃんの体に、限界が訪れた。






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百鬼に襲い掛かられ、
初美ちゃんの体は引き千切られた。

初美ちゃんは抵抗しようとしなかった。
されるがままに噛みつかれ、引き裂かれ。
その場にどさりと崩れ落ちた。

救護班の決死の対応で、
一命はとりとめたものの。
初美ちゃんの自傷は、
もはや生死を左右する段階に至っていた。


全身を包帯でぐるぐる巻きにされた
初美ちゃんを看病しながら。
こみあげる涙を唇を噛んで堪えながら。
私は、初美ちゃんに諭すように話し掛ける。


「…初美ちゃん…もうっ…止めましょう…?」

「…霞ちゃんがやめたら、私も止めますよー」


初美ちゃんは、もはや定番になった
自嘲の笑みを浮かべながら、私の提案を却下した。


「…私がおかしいのは認めますよー。
 でも、霞ちゃんだってどっこいじゃないですかー」

「……」

「…霞ちゃんは、止められるんですかー?」

「……」


私は言葉を返せなかった。自傷はそれ程までに深く、
私達の心を侵食していて。
もはや取り除く事は不可能とさえ思ってしまう。


「そういう、事ですよー…」


初美ちゃんは視線をそらす。そして、
ぼんやりと虚空を眺めながら口を開く。


「最近。こう考えちゃうんですよー」

「ああ、私はどれだけ
 駄目な人間なんだろうって」

「もういっそ。徹底的に自分を傷つけて。
 そしてそのまま」


「死んじゃえばいいのにって」


死。明確な自殺の意思を示されて、
私の体がびくりと震える。


「…霞ちゃんは、どうですかー?」

「……」


否定する事ができなかった。


「……じゃぁ、仲間ですねー」


初美ちゃんがぽそりとつぶやいた。
その声音には、どこか
嬉しそうな響きが籠っている。


「…でも。だからと言って。
 本当に死ぬわけにはいかないわ」


どうしようもない私達だけれど。
死んでしまえば、健全に生きている
他の人達にまで多大な迷惑をかける事になる。

私達だけならともかく、他の人にまで
迷惑をかけるのは避けなければならない。


――私達だけならともかく。


そのフレーズを反芻した時、
私は一つ思いついた。

自傷を止められない私達だけれど。
これなら、最悪の結末は免れられるかもしれない。


「…ねぇ、初美ちゃん。
 今、一つ思いついたのだけれど」

「なんですかー?」

「……」

「自傷はもう、止めましょう」

「…話が堂々巡りしてますよー?」

「…そうね。止めろと言われて
 簡単に止められるなら、
 こんな事にはなっていないのだから」

「でも」

「…自傷を止める代わりに…
 私が、初美ちゃんを罰するって言ったら…」


「どうかしら?」


会話を始めて、初めて初美ちゃんの目が変わった。
どこか全てを諦めるような目から、
何かに興味を持った目に。


「…詳しく聞かせてくださいよー」



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私の思い付き。それは至極単純だった。
自分を罰したいから自傷する。
自分だからやり過ぎる。

ならもっと素直に、他人に罰してもらえばいい。


「…行くわよ、初美ちゃん」


私達は互いに向き合うと、
初美ちゃんの目を覗き込む。


「…はい。来てください」


どこか高揚したように目を潤ませながら、
初美ちゃんは頷いた。
私は一呼吸おいて気を鎮めると、
ゆっくりと初美ちゃんの首筋に顔を寄せる。


そして…


「いっっ……!」


首筋に歯を突き立てられて、
初美ちゃんが苦悶の表情を浮かべる。
それでも私を突き飛ばそうとはせず、
むしろ縋るようにぎゅぅと私を抱き寄せる。

首筋から口を離し、溢れる血を舌で舐めとりながら。
私は初美ちゃんに囁きかける。


「…さぁ。今度は、初美ちゃんの番よ…?」

「…はい」


私の背中に手を回しながら、
初美ちゃんも同じように私を傷つける。


「…ぁぁっ…!」


深く。深く突き立てられた牙は、
確かに痛みをもたらしているのに。
まるで官能に当てられたかのような、
はしたない声を漏らしてしまう。

見れば、初美ちゃんの方も。
口元に血を滴らせながら、
熱に浮かされたような、
蕩けた表情を浮かべている。

その表情を目の当たりにして、
私はさらに体を熱く火照らせた。


「ああ、本当に。私達は救えないわね」

「…そうですねー…」


お互いを罰するための行為で、
こんなにも気分を昂ぶらせてしまうだなんて。


「でも…作戦としては成功だと思いますよー?」


それは、今までの自傷よりもはるかに安全で。
それでいて、自傷を上回る充足感をもたらした。


「霞ちゃん。今夜もよろしくお願いしますよー」

「いいわよ。私にもお願いね?」


私は、初美ちゃんを罰する。
初美ちゃんは、私を罰する。


確かに傷の深さは浅くなった。
もっとも気軽にできる分、
回数は飛躍的に増加したけれど。

私達は毎日、決まった時間になると
二人で自らの体を傷つけあう。

こうして、ようやく私達は…
精神を安定させる事ができた。



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なんて。






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神聖なる神境で。






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そんな行為が…いつまでも
許されるはずはなかったのだけれど。






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「石戸霞。貴女に聞かなければ
 ならない話があります」

「貴女の首元についた歯形…
 それは誰のものですか?」

「……」

「沈黙は意味を成しませんよ。
 神境は既にもう一人、
 同じように歯形を持っている人物を
 確認していますから」

「……」

「質問を変えましょう。最近、
 貴女達二人の神気は明らかに澱んでいますね。
 何か関係があるのですか?」

「……」

「まだ沈黙を貫きますか。
 それで状況が好転しない事も、
 聡い貴女ならわかりそうなものですが」

「……」

「いいでしょう。この際答えは求めません。
 ただ、近日中に問題を解決しなさい。
 できなければ…わかっていますね?」


「…神境に、穢れた巫女を
 置いておく事はできません」



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清らかな気を身に纏い、穢れを祓うための巫女。
その巫女が、お互いの体に牙を突き立てて血を啜る。


そんな狂った行為を続ける私達に、
神聖な気が宿るはずもなく。


神気は霧のように立ち消え、
代わりに瘴気を纏うようになっていた。


そして、穢れた巫女を神境が許すはずもなく。


行為をやめて身を清めるか、
さもなくば神境を後にするか。
二者択一を迫られた。



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--------------------------------------------------------






「…初美ちゃん。準備はできた?」

「ばっちりですよー。
 今すぐにでも出発できますよー?」






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私達が出した結論。それは、二人揃って
神境を後にするというものだった。

姫様や六女仙の皆は、
私達が引き続きこの地に留まれるように
尽力すると言ってくれた。

それでも私達の決意は固く。
私達は今、こうして旅支度を整えている。


「正直、こっちから言い出そうと
 思ってたくらいですしねー」

「ええ。私達は、これ以上
 ここに居ていい存在じゃないわ」


心の澱み。体の穢れ。どちらももはや、
取り返しのつかない領域に及んでいた。

こんな汚らわしい私達がいつまでも神境に居ては、
他の人達にまで悪影響を及ぼすだろう。


「…じゃ、行きましょうか」


まだ闇も深い真夜中に、たった二人でひっそりと旅立つ。
見送りは居ない。でもそれでいい。
皆に見つかってしまえば、
きっとひと騒動起きるだろうから。

門番に蔑んだ目を向けられながら、
神境の門を潜り抜ける。
ぎぃぃ、と軋みながら閉じられた門が、
私達の人生が終わった事を示唆しているようだった。

暗闇を探るように夜道を辿る。
程なくして腰を下ろせるような岩場を見つけると、
私達はようやく一息ついた。

携帯していた水で口を潤しながら、
初美ちゃんが私に問い掛ける。


「…これからどうしますかー?」

「…そうね。特には決めていないけど。
 一つだけ、これをしたいって言うのはあるかしら」

「…なんですかー?」

「……」


「初美ちゃんを、散らしたい」


初美ちゃんの動きがぴたりと止まった。


「…それ、取り返しつかなくなりますよー?」

「あら。まだ巫女に未練があるのかしら?」

「…今更それはないですよー。
 そもそも、もう何をしたところで
 絶対戻って来れないでしょうし」

「だったら、何を気にしてるの?」

「…だって。それしちゃったら、本当に。
 もう、私達、どこまでも……」


「堕ちちゃいますよー?」


初美ちゃんが、そのあどけなさの残るくりくりした目で、
私の顔を見つめてくる。
そんな初美ちゃんの目を正面から見つめ返す。

初美ちゃんの言う通り。
それは、巫女だった私達にとって最後の境界線。
越えてはいけない境界線だった。

だからこそ、巫女でなくなった今。
堕ちるところまで堕ちてしまいたい。


できる事なら、初美ちゃんと二人で。


「…堕ちたいの。駄目かしら?」

「……」

「…そうですかー」


初美ちゃんはにっこりと笑った。
そしてそのまま目を閉じると、
しゅるり、と装束を脱ぎ散らかして。


「…いいですよー。私の事、落としてくださいー」


その、傷だらけの肌を私に晒した。



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--------------------------------------------------------




一思いに貫いた


私の指が、初美ちゃんの奥に押し入って
侵入者を阻む壁を、無理矢理押し広げて引き裂いていく


「んんっ……!」


文字通りの破瓜の痛みに、
初美ちゃんは小さく呻く

目じりに涙を滲ませながら、
私の体に爪を立てる

ねっとりと指に絡みつく粘液が、
私を激しく昂ぶらせた


「…全部、もらうわね」


根元まで指を突き立てる
これで私は、初美ちゃんの全てを支配した


「あはっ…霞ちゃんに……
 穢されちゃいましたねー……」

「これ以上の罰は……
 そうそうありませんよー……」


言葉とは裏腹に、初美ちゃんの表情は蕩けていた
痛みに全身を強張らせ、体を小さく丸めながら、
私の指をぎゅうぎゅうと締め付けてくる


「……っ」


その刺激が私をどうしようもなく狂わせて、
そのまま無茶苦茶に壊してしまいたくなる

狂おしい程の衝動を抑えながら、
残された方の手で初美ちゃんの手を取ると、
そのまま自らの秘部に誘う


「さ…初美ちゃんも……私を罰して?」


どこか焦点の合わない目をした初美ちゃんが、
二本の指を鉤爪のように折り曲げる
そして、その指で、私を、勢いよく…


一気に奥まで刺し貫いた


「――っっ!!」


誰一人として受け入れた事がない秘部に
異物が入り込んでくる感覚
全身が引き裂かれる感覚に身を強張らせる

視界を涙で滲ませながら、
私は初美ちゃんの顔を伺う


「はぁぁっ……」


初美ちゃんの表情は…
どこまでも愉悦に染まっていた


その顔を見て、今度こそ我慢ができなくなって
初美ちゃんの中を、がむしゃらに掻き回し始めた



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--------------------------------------------------------



お互いの体に、二度と消えない傷を刻み込んだ後
私達はそのままの姿で肌を擦り合わせながら、
情事の余韻に浸っていた


「…しちゃったわね」

「…そうですねー」

「…ねえ、初美ちゃん。気づいてる?」

「何がですかー?」

「今、初美ちゃん…すごくいい顔してるわよ」

「あはは…それ、お互い様ですよー?」


取り返しのつかない事をしてしまったにも関わらず、
初美ちゃんの表情は晴れやかだった
そして初美ちゃんが言う通り
私も今、満面の笑みなんだろう


理由もなんとなくわかっている
インターハイ以来ずっと振り回されていた感情と、
ようやく決別する事ができたからだと思う


「…ようやくわかった気がするわ」

「…何がですかー?」

「私達が、ここまでおかしくなってしまった理由」

「罪悪感じゃないんですかー?」

「…ううん、それがないとは言わないけれど…
 根本は、もっと別のところにあったんじゃないかしら」


ずっと不思議に思っていた
修行の一環に過ぎないはずのインターハイに、
なぜ私達は縛られてしまったのか


何て事はない
私達はもっと一緒に遊んでいたかっただけ
初美ちゃんが点を取って、私がシャットアウトする
そんな二人の共同作業をもっと続けていたかっただけ

それが、予想よりはるかに早く終わってしまって
失望、自責の念、後悔と結びついて、
訳が分からなくなってしまったんだろう


自傷をやめられなかったのも同じ
いつしか、自傷は私達を縛る絆になっていたから
だから自傷が他傷になった時
私達はあっさりと自傷を止められた
だって、より深く相手を縛る事ができたから


そして今、私達は互いの純潔を散らしあって
取り返しがつかない程に穢れあった今


私達は…こんなにも満たされている


「結局のところ…私達は愛し合っていただけなのよ」

「あー…言われてみれば、確かにですよー」


今更ながらに気づいた事実に、
私達はただ苦笑する事しかできない
我ながら、随分と遠回りしたものだ


「もっと早く気づけていれば…
 こんな事にはならなかったのにね」

「ううん。これでよかったんですよー」

「あら、そう?色々大切なものを
 失ってしまったわよ?」

「だからいいんですよー。もし仮に、
 健全なまま両想いだってわかったとしても」

「その場合、私が霞ちゃんを独り占めする事は
 できませんでしたからねー」

「でも」

「今はもう、霞ちゃんには私しかいませんよね。
 私にも、霞ちゃんしかいません」


「だから…これで正解だったんですよー」


そう言って初美ちゃんはころころと笑うと…
私の中に差し込んだままの指を再び動かし始める

途端に痛みと、それを上回る喜びが私の中を駆け巡り、
思考に靄がかかってしまう


「いろいろありましたけど。
 もう、全部どうでもいいですよー」

「霞ちゃんがいれば、それでいいです」


うっとりと恍惚に頬を染めながら
初美ちゃんが私の中を掻き回す

その指の激しさにつられて
私も負けじと、初美ちゃんの中を蹂躙し始める


「…本当にいけない子ねっ…
 これだけ迷惑をかけておいてっ……」

「そうですっ…私は、悪い子ですよーっ
 だから、思いっきり、罰してくださいっ……!」

「お望みどおりにしてあげるっ…!
 だから、私も、私の事もっ…!」

「はいっ…!」


私が指を動かすと、初美ちゃんもそれに応える
初めてにしては激し過ぎるその指使いに、
秘部から血が溢れ出し私達の指は赤に塗れる

これも、ある種の自傷行為なのかしら?
なんて、馬鹿げた事を考えながら
私は指を動かし続ける



「「っっっ…あぁぁあぁあぁあっっ!!!」」


そして私達は二人…
お互いを傷つけあって昇りつめた


絶頂の残滓にぐったりと脱力しながら、
私達は互いに顔を寄せ合った


「…やっぱり、私達は罪深いわね」

「そうですねー…神様に捧げる純潔を、
 こんな形で奪い去って喜んでますからねー」

「これからも…罪深い私を罰してくれますかー?」


荒い息を吐きながら
初美ちゃんが私の目をじっと見つめる

どうやら、私達の自傷はこれからも続いていくらしい
この、互いを傷つける罪深い自傷が

でも、これが私達の愛の形
随分歪んでしまったけれど
私達はこれでいい


「…もちろん。私のお仕置きもおねがいね?」


私の返事に初美ちゃんは微笑むと…
そこでようやく、私達は初めてキスをした



(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2015年11月06日 | Comment(4) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
リクエスト書いて頂きありがとうございます!
二人とも堕ちていく過程が最高です、ぷちさんの書く堕ちたはっちゃんの雰囲気がたまらないです。
Posted by at 2015年11月07日 22:34
この二人が散らし合うのは、見た目的には近親……
いろいろな意味で背徳感。やる事やってからの初キスがね。堪らんね。
Posted by at 2015年11月08日 08:49
相手への愛を貫いてるぷちさんのSSは大好きです
Posted by at 2015年11月10日 09:01
コメントありがとうございます!

二人とも堕ちていく過程が>
初美
 「よろこんでもらえてよかったですよー」
霞「うちの初美ちゃんって黒いのよね」
初美
 「こんなボディーで百匹も鬼を司れば
  そりゃ黒くもなりますよー?」

見た目的には近親>
霞「ふふ、どういう意味かしら?」
初美
 「霞ちゃんが老け過g…」
初美
 「ギブ!ギブですよー!!」

相手への愛を貫いてる>
初美
 「嬉しい感想ありがとうですよー!」
霞「ただ安易に誰かを傷つけるんじゃなくて
  思いの強さを書き続けていきたいです」


Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2015年11月11日 19:16
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