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【オリジナル百合SS】「記憶障害」【狂気】【共依存】【異常行動】

<あらすじ>
目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。
ううん。部屋どころか。
私は自分が誰なのかすらわからなかった。

全てを失った私に取って、
唯一救いになったのは

私の彼女を名乗る、
見知らぬ少女だけだった。


<登場人物>
先輩,後輩

<症状>
・ヤンデレ
・狂気(重度)
・共依存
・異常行動(重度)


<その他
・ごくわずかに婉曲的な性描写を含みます。
 苦手な方はご注意を。



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――私は女だ。名前はもうない。







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目が覚めた時、視界に映りこんだのは。
六畳半の小汚い部屋だった。

記憶にない場所だ。どこだろう。
疑問を抱きながら上体を起こす。

次に目に入ったのは窓だった。
そして私の目は釘付けになる。
シャッター付きの窓。窓自体は普通。
でも、木の板が乱暴に打ち付けられている。

外側からはシャッター。
内側からは木の板。

侵入…あるいは脱出を絶対に許さないとばかりの、
あまりにも厳重過ぎる防犯。
本能的な恐怖が脳内を侵食し始める。

無意識に出口を探し求めた。
もう一つの脱出経路。そう、
それは出入り口のドア。

ドアは一見普通だった。鍵らしい鍵はない。
…脱出は可能。その事実に思わず安堵の息が漏れる。


そしてすぐに息を呑んだ。


「…っ」


扉が開き、外から人間が入ってくる。
しかも入ってきた人間の様相は、
あまりにも普通から逸脱していた。


「……」


見覚えのない少女だった。
年は十五くらいだろうか。

おっとりした顔立ちをしている。
夜道で不意に出会っても、
警戒せず通り過ぎるだろう程度には
人畜無害な顔だ。


ただし、身だしなみを整えている、
という条件が付けば、だが。


目の下には真っ黒な隈ができている。
髪の毛はボサボサで、
何日も櫛を通していないようだった。
頬は痩せこけ、食事も満足に
取っていないように見える。

明らかに異常だった。そんな彼女は、
私が起き上がっているのを認めると、
みるみるその瞼に涙を溜める。


「○○先輩っ…!○○先輩っ!!!」


一目散に駆け出して、私の体に縋り付く。
何度も名前を呼びながら。
泣きじゃくりながら私を抱き締める。


「……」


抱き締め返す事はできなかった。
だって私はこの子を知らない。
それにそもそも、大前提として……



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○○先輩って……誰だ。






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知らない部屋に、知らない少女。
そして、知らない名前。

頭が混乱し始めたので
一度整理する事にした。


(……っ!)


結果、さらに混沌は広がった。
なぜなら私の頭の中には、
自分の名前の記憶がなかった。
名前も、住所も、学校も。
全ての情報が欠落していた。


つまりは記憶喪失だ。
その事実を少女に告げる。

少女は愕然としたようだった。
そしてしきりに目を泳がせた後。
一言、ぽつりとこう言った。


「…そうですか」


まったく情報が増えない返答に、
彼女の顔を覗き見る。

複雑な表情だった。
絶望の淵につき落とされたような。
むしろどこか安堵したような。
どちらとも取れる表情だった。

じっと見つめられて気まずくなったのか。
不意に彼女は視線をそらすと、
努めて明るい声を出す。


「とりあえず、まずはご飯を食べましょう。
 先輩、もう何日もご飯を食べてませんから」

「もう少しだけ待っててくださいね。
 さっと作ってきますから」


会話を無理矢理打ち切ると、
彼女はすくりと立ち上がる。


「……っ」


そしてふらりとぐらつくと、
危ういところで持ち直した。

少女は私よりもはるかに
憔悴しているようだった。

私は何も言う事ができず、
ただ少女の背中を見送った。



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待つ事十分と少し。
少女は料理の皿を携えて戻ってきた。
皿には湯気を立ち昇らせた炒飯が
丁寧に盛り付けられている。


「こ、この格好は恥ずかしいですから、
 ちょっと整えてきます」


料理を差し出すなり、
彼女はそそくさと部屋を出て行く。
自分の状態が異常な事は
理解していたらしい。

美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐる。
少女の常識的な対応に安心した事もあって、
途端に体が空腹を訴えてくる。


「…いただきます」


手を合わせて一言唱えると、
おずおずとレンゲを手に取った。


(……美味しい)


一口食べて頬が緩む。

彼女の言葉を信じるなら、
絶食状態だったらしい。
きっと空腹もスパイスになっているのだろう。
その事を差し引いたとしても、
その料理は酷く美味しかった。

夢中でごはんを頬張った。
食べているうちに、皿に何かが滴り落ちて
私は思わず手を止める。

零れ落ちた液体。それは私の涙だった。
ぼろぼろと大粒の涙が、
後から後から頬を伝い落ちていく。

涙の意味はわからない。
ただ、なんだか無性にほっとして。
嗚咽しながら料理をかきこんだ。



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皿から料理が綺麗に消える頃、
さっきの少女が戻ってきた。


「お、お待たせしました」


髪の毛や服装が、年相応に整えられている。
目の隈だけはそのままだったけれど。

聞きたい事は山ほどあった。
まずは何より自分の事。そして彼女と私の関係。
そもそもここはどこか。
どうしてこうなっているのか。

矢継ぎ早に質問を投げ掛けられ、
彼女は慌てて言葉を遮る。


「ちょ、ちょっと待ってください。
 一つずつ。一つずつ片付けていきましょう」


彼女の目に、かすかに恐怖の色が浮かんでいる。
気づけば私は、身を乗り出して
彼女に掴みかかっていた。

それでもやはり気は逸る。
自分の中に何もない。
空っぽな事がこれほど怖いとは思わなかった。


「まず一つ。先輩は高校の3年生です。
 私はその後輩の1年生です」

「先輩と私は同じ部活で、
 仲良くさせてもらってます」

「ここは……その、私達二人の、
 秘密の隠れ家です。名義は先輩で、
 二人でよく使ってます」

「…先輩が、記憶喪失になった理由は…
 ごめんなさい。私にもわかりません」


一つずつ。一つずつ。
彼女は慎重に言葉を選びながら、
私に情報を与えてくれる。
でも、与えられた情報は
さらなる謎を含んでいた。


「…隠れ家?私と貴女だけの?」

「…はい」

「それ、単なる先輩後輩の関係じゃないわよね?」

「…その。つ、付き合ってます」

「っ……こうなる前…私が
 記憶喪失になる直前は何かあった?」

「……」

「……わかりません。
 私がこの部屋に遊びに来た時には、
 先輩は今の状態でしたから」

「……そう」

「ごめんなさい」


質疑応答を繰り返しながら、
胸の内で不安が膨らんでいくのを感じた。


不可解な事が多過ぎる。


一介の女子高生が隠れ家を持っている。
しかも後輩をそこに囲っている。

窓を見るに、ここは外界から
異常な程に遮断されていて。
私は一人、何日もご飯を食べていない状態で
閉じこもっていた。

さらに、目の前の少女は
この異常な状況にも関わらず、
警察にも病院にも通報しなかった事になる。


判断材料が少な過ぎる。なのに謎が多過ぎる。
拠り所のない恐怖感に気が違いそうになる。


「やっ…やめてください!」


突然彼女がしがみついてきた。
その両手は私の手を必死に掴んでいる。
自分の指を見て驚いた。


血が付着している。


無意識のうちにこめかみを爪で
掻きむしっていたらしい。

指の動きが止まったのを見て取ると、
代わりに少女は私を抱き寄せた。


「先輩…とりあえず、
 考えるのやめましょう」

「…やめる?」

「…そうです。今の先輩、
 すごくつらそうです……!」


「まずはゆっくり休んでください…」


彼女の提案。それは思考の放棄だった。

何を馬鹿なと思った。
今私が置かれている状況は、
とても看過できるものではない。


「…休んでください」


それでも、彼女の体温があまりに温かくて。
頭を撫でる掌が心地よくて。
つい、楽な方を選んでしまう。

彼女の胸に顔をうずめる。
そのままゆっくり目を閉じる。
少しずつ穏やかな気分になってくる。


「んん……」


満腹が眠気を誘発する。
思考がどろりと溶けて、
現実の境界が曖昧になってきた。


「…そうね。考えるのは、明日にしましょう…」


私はそれに抗う事なく。
意識を闇に手放した。



--------------------------------------------------------



次の日。

私が目を覚ました時には、
彼女は外出のために身じたくを整えていた。


「……」


その背中をじっと見つめながら、
どう声をかけたものかと考える。

状況を把握したいという気持ちは当然あった。
でも、知るのが怖いという気持ちもあった。
あまりにも状況が異常過ぎる。
犯罪に巻き込まれていると言われても
納得できる状況だった。
それならいっそ聞かない方がいいかもしれない。


「……」


やっぱり昨日聞いておくべきだった。
なまじ休む事を受け入れてしまったせいで、
新たな選択肢が生まれてしまった。


そう、それは…
現実から目を背けるという選択肢。


背中越しに私の視線を感じていたのだろう。
彼女はくるりと振り向くと、
慈しむような笑みを浮かべて言った。


「…無理に、思い出す必要もないと思います」


それが決定打になった。

私が忘れた記憶には、
間違いなく危険な内容が含まれている。

それも、忘れ去られた恋人が
「思い出さなくていい」と言ってのける程の。

学校に行ってくる。彼女はそう告げて
この部屋を一人去って行く。
ただ去り際に、彼女は一言付け加えた。


「…大丈夫です。先輩は、私が守りますから」


彼女はふわりと微笑んだ。
女子高生が口にするには
あまりにも違和感のある台詞。
でも、その台詞は妙に私の心に響いた。

結果、私は一人になっても
この部屋から動き出そうともせず。
ただただ、身を守るように布団に潜り込んだ。

状況はよくわからない。
知りたくて、でも知りたくない。
怖くて、不安で、心細くて、気が狂いそうで。


でも、大丈夫。
あの子が私を守ってくれる。


その言葉にすがりながら、彼女が
戻ってくるのを震えながら待ち続けた。



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数日が経過した。
朝、彼女が学校に行くのを見送り。
ひたすら布団に籠って過ごす。
夕方。彼女が戻ってくると同時に起きて、
彼女と過ごして一日が終わる。

そんな代わり映えのしない生活が続いた。
続けていくうちに、私の不安は少しずつ
溶けて流れて出ていった。

何があったのかはわからない。
どうしたらいいかもわからない。
でも、とりあえずは問題なく暮らせている。
そんな安心が、私の恐怖を麻痺させていった。

少しずつ笑えるようになってきた。
彼女との会話も楽しくなってきた。
少しだけ、胸が高鳴るようになってきた。

成程。確かに私は、前から
この子を好きだったのかもしれない。
無知ゆえの警戒心が薄れてくると、
彼女への恋心が芽吹いてきた。

そんな思いを素直に伝えると。
彼女は頬をほころばせながら。
甘えるような。誘うような目を向ける。


「…先輩。先輩と私、
 付き合ってるって言いましたよね」

「…うん。実は違うって言うの?」

「いえ、本当は。それだけじゃなくて」

「じゃなくて?」

「私達…」


「体でも愛しあう関係だったんです」


どくん。胸の鼓動が一段階早くなる。
同時に、彼女の目が熱っぽさを増した気がした。

彼女が座ったままにじり寄ってくる。
少しずつ距離が近くなってくる。
その度に、彼女の熱が伝染するような錯覚を覚えて。
私は思わず身をよじる。


「もし、私が…
 その関係に戻りたいって言ったら…」

「どうしますか?」


彼女の顔はもう目と鼻の先だった。
全てを吸い込むような黒い瞳。
朱に染まった頬。艶めいた唇。

無意識のうちに誘われて、
彼女の唇に触れていた。


「…嬉しいです」


涙を滲ませながら目を細めると。
彼女はしっとりと微笑んだ。



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幸せな日々が続いた。


自分が誰なのかもわからないまま。


状況も何も変わらないまま。


ただ月日だけが流れていく。


それでよかった。


むしろ変わりたくなかった。


私には彼女がいればいい。


他にはもう何もいらない。


このままこの六畳一間で朽ち果てるとしても。


それはそれで幸せだ。


心から、そう思えるようになっていた。




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そんな私の、ささやかな幸せは。

突入してきた警察官達によって終わりを告げた。


愛しいあの子のその手には。

寒々しい手錠がかけられていた。





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情報が濁流のように襲い掛かってきた。
知りたくもなかった情報が
私に牙を突き立てる。



――あの家は隠れ家でもなんでもなく、私の家


――両親に捨てられて、私はあの家に一人暮らしだった


――そこにあの子が転がり込んだ


――あの子は私を愛していた それも酷く病的に


――私が学校で人に囲まれている事に、彼女は我慢ができなかった


――だから、あの子は、私を、あの家に、監禁して


――私を、奪って、奪わされて、耐えられなくて、記憶、



記憶の刃に、私は耐えられなかった。



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『ねえ…!どうしてこんな事をするの…!』

『だって、こうでもしなきゃ…
 先輩が取られちゃう!』

『お願い、信じて!こんな事しなくても、
 私は、ちゃんと、貴女の事を…!』

『……ごめんなさい、怖いんです』

『確かなものが欲しいんです』


『だから、下さい。先輩の初めて』


『私の初めても。先輩に捧げますから』



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――いやぁああああ゛っぁあ゛ぁぁあ゛っ!!!







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『はぁっ……はぁっ……』


『先輩……ありがとうございます……』


『先輩の血…美味しいです……』


『私の血も、舐めてください……』


『先輩、先輩、先輩、先輩……』


『好きです……愛してる………っ』



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『先輩……。先輩……?』







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記憶を失くした理由。
それは自分を守るためだった。

なのに、知りたくない事実を突き立てられ。
遠ざけていた記憶を掘り起こされた私は、
さらに崖っぷちに追い詰められた。







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そして、私が選択した道は……







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――







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主治医
 『…患者さんの様子はどうですか?』

助手
 『…平常運転ですよ。薬が効いてない時は、
  ずっと喚き散らしています』

主治医
 『…どれ』


?『先生!早く私をここから出してください!!
  あの子が、あの子が私を待ってるんです!!』

?『あの子がいないと、私は生きられないんです!
  あの子だってきっとそう!
  今頃絶対泣きじゃくってる!!』

?『早く助けに行かないと!!!』

主治医
 『…落ち着いてください。
  残念ながら、あの子と面会するには
  貴女はまだ不安定過ぎるんです』

主治医
 『今はお互いに距離を取って、冷静にな』


?『ふざけないで!!』

?『どうしてあの子に会うのに理由がいるの!?
  いらないでしょ!?愛し合ってるのに!』

?『あ、もしかして先生もデマを信じてるんですか!?
  あの子が私を傷つけたって話を!!』

?『あの子は何も悪い事なんかしてない!
  あれは合意の上だった!』

?『私達は愛し合っていた!お互いに、
  いっせーのーでで貫いたの!』

?『幸せだった!あれはレイプなんかじゃなかった!
  あの子は罪なんか犯してない!!』

主治医
 『……』

主治医
 『…お話は落ち着いてからにしましょうか。
  はい、少しだけチクッとしますよ……』


……


助手
 『……どうでしたか』

主治医
 『強い記憶の改竄(かいざん)が認められますね』

主治医
 『記憶喪失になっていた時期に、
  加害者に依存してしまった事が原因でしょう』

主治医
 『依存しきった相手が、実は自分を
  強姦して記憶喪失に至らせた張本人だった。
  その事実に、彼女の心は耐えられなかった』

主治医
 『だから記憶を改竄した。
  あの子にとっては、もう悲劇なんてなかった。
  ただ、愛する人との初夜があっただけでしょう』

主治医
 『…最初から、うちに連れてきてくれればなぁ…
  ここまで酷くはならなかったでしょうに』



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閉鎖病棟で私は学んだ。
いくら泣き喚いても病院は出してくれない。
ただ薬を投薬されて、
私じゃないものに変えられるだけだ。


だから私は演技した。

ばれないように辛抱強く。
平静を取り戻したように。
真の記憶を取り戻したとばかりに振舞った。
自分はもう健常で、
退院させてもよいと判断させるために。


それでも、なかなか退院の診断は得られなかった。
不当に精神病院に監禁されてから、
既に二年もの歳月が無為に流れていた。

もしかしたら、私はここで
朽ち果てる運命なのかもしれない。
なんて事を考えて気が狂いそうになる。


「…っ、ダメだ。窓を見よう」


部屋に一つだけある窓を見る。
格子に刻まれた窓を見ると、
少しだけ落ち着きを取り戻した。

気に入らない事だらけの部屋だけど、
窓だけは好きだ。
あの部屋の雰囲気に少しだけ似ているから。


「…あの子は今頃どうしているのかしら」


私と同じように、理不尽な理由で
精神病院に入れられているのだろうか。
私みたいに拷問を受けていないだろうか。
せめて窓に、格子がついているといいのだけれど。


思いつくままに思考を巡らせていたら、
また気分が落ち込んできた。

ああ、私はなんて無力なのだろう。
あの子の無事を祈る事しかできない。


『…大丈夫です。先輩は、私が守りますから』


あの日のあの子の言葉が脳裏をよぎる。
あの子は確かに、数日とはいえ
私の事を守ってくれたのに。


「今度は…私があの子を守る番だ」


ここを出たら、あの子を探しに行こう。

あの子を牢獄から助け出す。
そして、また二人で一緒に暮らそう。

今度こそ邪魔されないように、
誰も知らない場所に逃げよう。
部屋は六畳一間がいい。
私達の思い出のあの場所と同じように。


「待ってて。今に助け出すから」


窓の格子を見据えながら。
決意をこめて呟いた。


(完)



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以下作中の設定。
この手の説明が嫌いな人もいると思うので
興味のある方のみどうぞ。






--------------------------------------------------------






















---------------------------------------------
<人物設定>
---------------------------------------------
<先輩>
ある学校の高校三年生。
頭脳明晰、容姿端麗。
人当たりもよい彼女は学校でも人気者だった。

唯一影が差す点としては
両親が離婚している事。
両方の親が彼女を引き取る事を拒否したため、
彼女は一人暮らしを余儀なくされた。

双方ともに経済的に裕福ではなかったため、
その年に似つかわしくない
六畳一間の老朽化アパートに住んでいる。


<後輩>
ある学校の高校一年生。
頭脳明晰、容姿端麗。
正確は大人しく引っ込み思案なところがある。

ただし彼女も家庭に問題があり、
心に傷を負っている。
現在父子家庭だが彼女自身は
「捨てられた」と感じており、
離別の際に強く主張できなかった事を
深く後悔している。

---------------------------------------------
<作中の補足>
---------------------------------------------
二人の関係が恋人だった事は事実。
共に心に埋められない傷を持っていた二人は、
お互いに傷を舐めあうように愛し合っていた。

しかし、一度経験した離別に対する反応は
大きく異なっていた。
<先輩>は一人に捨てられても
傷が深くならないように、
たくさんに人間と交流するよう心掛けた。
<後輩>は絶対に捨てられないと信じられる
一人だけを見つけて溺れる事を望んだ。

自分と付き合う事になっても
他者と交流をやめない<先輩>に
<後輩>は不安を募らせていく。
その結果、<後輩>は「一生消えない絆」を求めて
<先輩>を強姦するに至った。


--------------------------------------------------------


愛していた<後輩>の暴行に、
<先輩>の精神は耐えられなかった。
このため、<先輩>は自らの記憶を
封印する事を選ぶ。

<後輩>は<先輩>を独り占めするために
<先輩>が住むアパートに<先輩>を軟禁する。
窓に打ち付けられた木は<後輩>によるもの。
作中で<先輩>は部屋のドアを見て
鍵がない事に安心していたが、
玄関にはいくつもの錠前でがんじがらめになっている。


意識を取り戻した<先輩>が記憶を失っている事を知り、
<後輩>は後悔しながらも安堵する。
記憶が消えてしまったなら新たに追加すればいいし、
むしろ自分に不都合な記憶が消えた事は
<後輩>にとっては都合がよかった。


記憶を失った<先輩>を
<後輩>は徹底的に甘やかした。
これにより、元々精神が不安定な状態だった<先輩>は
<後輩>の事を絶対的な味方として信頼…
さらには依存していく事になる。
やがて二人は愛し合うようになり、
<後輩>の望んだとおりの結末に至ったと思われた。


しかしながら、現実的には<後輩>のした事は
犯罪以外の何物でもない。

<後輩>も現状を隠し通すための
偽装工作は行っており、
学校を休学する手続きは整っていた。

しかし、<先輩>の身を案じる者が多過ぎた。
<先輩>に近しい学生の中には、
「彼女の性格からして何も言わずに姿を消す事はない」と
独自に調査を開始する者が現れた。

彼らの調査の結果、<後輩>の犯罪が
明るみに出る事になる。
最終的にそれらの情報が警察にわたり、
<後輩>は逮捕される事になった。



--------------------------------------------------------



かくして<後輩>は逮捕され、
<先輩>は解放される事になる。
しかし、その頃には<先輩>の精神は
汚染されきっており、もはや<後輩>なしでは
生きられなくなっていた。

それまで目を背けていた真実を
一度に知らされた彼女は、
その事実を受け入れる事を拒絶した。

彼女の中では拉致監禁の事実は存在せず、
単純に二人で愛し合っていたのに
理不尽に引き裂かれた事になっている。


<後輩>と引き離された事で暴れ回った彼女も
精神病院に収容される事になった。

暴れると逆に退院までの期間が延びる事に気づき、
途中から健常になったふりを始めるが、
その変化が唐突だったため
医師達には見破られている。
少なくともまだ数年は退院できないだろう。



--------------------------------------------------------



なお、作中の時点で<後輩>は既に退院している。
既に狂いきっていた彼女は
自分の行為が犯罪であることを認識していた上、
精神を病んでいる事も自覚していた。
ゆえに冷静に対応し、鑑定入院の末に
退院をつかみ取る事ができた。

場当たり的に動いて失敗した事を悔いている彼女は、
軽々に動き出す事はない。
<先輩>に対して接触をはかろうともせず、
大人しく<先輩>が退院するのを待つ事にした。

ただし今度こそ二人だけの世界を成功させようと
<先輩>退院後の手筈は着実に整えていた。



--------------------------------------------------------



最終的に<先輩>は精神病院を退院する。
ただしその時にはすでに<後輩>の根回しも有り
彼女は孤立無援の状態となっていた。

元々頼れる肉親もなく、
長期の入院で友人も失った彼女は
結局<後輩>に溺れるしかなかった。

結果的に、<後輩>の描いた
「二人だけの世界」が完成し、
二人の人生は終わりを遂げる。


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posted by ぷちどろっぷ at 2016年01月10日 | Comment(10) | TrackBack(0) | オリジナル百合SS
この記事へのコメント
数年も会えなかったら壊れちゃうなー

後日談的な... 続きませんか?
Posted by at 2016年01月10日 22:52
部屋の外側ではなく内側に板を打ち付けるというのが,狂気をはらんでいて素晴らしいです.
普通は台風などの外の世界の脅威から守るために外側に板を打ち付ける中,まるで自分たちの世界を外に知られたくないがために<後輩>が内側に板を打ち付けたというのは,自身が狂っているといることを理解できている<後輩>ならではの行動なのかなと思いました.
また次回の作品を期待しています.
Posted by at 2016年01月11日 02:07
引っ込み思案な後輩がせっせと木の板を打ち付ける様を想像するとなんか和む。間違えて自分の指を打ったりとかしてそう。
Posted by at 2016年01月11日 05:38
コメントありがとうございます!

続きませんか?>
「これ続けても後は私が先輩を
 美味しく食べて終了なので…」
「ただのあまあま依存バカップルよね」

内側に板を打ち付ける>
「貴女はもしかして私ですか?」
「怖すぎでしょ…後は単純に
 私を逃がさないって意味もあるみたい」

間違えて自分の指を打ったりとかしてそう>
「だから若干不格好なのね」
「そこツッコミ入るとは思いませんでした」
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2016年01月11日 14:26
やっぱりヤンデレと百合は好きですわー
いつも拝見させて頂いております
次回作もお待ちしてます!
Posted by at 2016年01月11日 23:13
ひささ…
Posted by at 2016年01月12日 02:11
オリジナルのss待ってました!(咲も大好きです!)

ファンタジー世界の百合ssは書く予定はないのですか?
Posted by at 2016年01月12日 03:45
次回作もお待ちしてます>
ありがとうございます!
コメントがブログ継続の原動力なので
本当に嬉しいです。

ひささ…>
?「私じゃないわよ!?」
?「私でもないです」

ファンタジー世界の百合ssは>
割と書いてます。過去作品にも
魔王と勇者みたいなペアは
何回か出てきてます。
色々書いていきたいですねー。
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2016年01月18日 16:44
最高
Posted by at 2016年08月20日 11:15
元の記憶(a)をなくして作られた記憶(b)が意識を取り戻した時に最初に得た記憶ならば、(b)の記憶を信用するだろうし、(a)を取り戻しても(a)だけの時とは考え方が違うだろうから、結局作られた記憶(b)の方が有利に人格を構築するだろうな。ヤンデレ&百合のssありがとうございます。
Posted by at 2016年08月26日 17:30
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