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【咲-Saki-SS:淡照菫】淡照菫「三人揃って綴る手記」【依存】【狂気】

<あらすじ>
宮永照。弘世菫。大星淡。
3人の女子高生が綴る手記。

何気ない日常から始まるそれは、
何のために、誰のために書かれたものか。


…なお、手記は途中で途切れている。


<登場人物>
宮永照,大星淡,弘世菫,渋谷尭深,亦野誠子(チーム虎姫,白糸台)

<症状>
・ヤンデレ
・依存
・異常行為
・狂気

<その他>
以下のリクエストに対する作品です。
・淡照菫


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宮永照の手記
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今日から新年度が始まる。
私達もついに最高学年になった。

同時に麻雀部にも新入部員がたくさん増えた。
その中には私が連れてきた
淡の姿もあった。

私達は最高学年。つまり来年には居なくなる。
この中から優秀な選手を
育成していく必要があるだろう。
私達が築いた黄金時代を継続させるために。

とはいえ、まずは淡に楽しんでもらおう。
中学校では一人ぼっちだったから。
皆とたくさん麻雀を打って、
打ち解けてくれる事を心から願う。



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弘世菫の手記
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今年もこの季節がやってきた。
新入部員が大挙して押し寄せ、
さざ波のように消えていく季節が。

全国大会二連覇。その実績を頼りに
白糸台高校の門戸を叩く麻雀選手は多い。
純粋に強さを求める者も居れば、
有名人のそばに居たいだけという
ミーハーな者もいる。

正直この時期はあまり好きではない。
だが、今年はよりその思いが
強くなった気がする。

理由はわかっている。
面倒な一年坊主が紛れ込んでいるからだ。


彼女の名は大星淡。
照が拾ってきたトラブルメーカー。

明日もアレと付き合わなければならないと思うと
今から気が滅入る。
…まあ、あいつの境遇を思えば
はしゃぎたくなる気持ちはわかるが。

どうか、大星が問題を起こさない事を切に願う。



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大星淡の手記
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ついにこの日がやって来た!
念願の白糸台高校に入学する日が!

何しろ全国優勝した学校だもんね。
ここならきっと私みたいな魔物も
わんさかいるはずだよ!

…なんて、喜び勇んで麻雀部に駆けつけて
ちょっと…いや、かなりガッカリ。

あれだけ大量に麻雀部員がいるっていうのに、
ほとんどが雑魚ばっかり。
全然アンテナにぴんと来ない。

一応全員に目星をつけてみたけど、
期待できそうなのはテルと、
後はお情けで弘世先輩くらい?
この学校本当に去年全国制覇したの?
強い人みんな卒業しちゃったとか?

実は今日欠席してた、とかいう理由で
もっと強い人が隠れてる事を期待!

…じゃないと、私また浮いちゃうよ。



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宮永照の手記
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淡の対応に四苦八苦している。
私に懐いてくれるのはいいんだけれど、
それ以外の人を人間として見ていない。
菫と私を除けば名前すら覚えていないみたい。


「どうせ何十人と消えるでしょ?
 いちいち覚えてらんないよ」

「ていうか、名前覚えてほしいなら
 相応の実力を身に着けてほしいっていうかー」


万事この調子。新入部員は勿論、
目上の部員に対してすらこの態度だから
すでに周りから浮き始めている。

淡の気持ちもわかる。
過去が過去だから、異能の伴ってない人に
心を許すのは怖いんだろう。
私だって菫がいなかったら、
同じ道をたどっていたかもしれない。

…この辺りの対処は苦手だ。
申し訳ないけど菫に何とかしてもらおう。



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弘世菫の手記
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大星の態度が目に余る。
強い事を盾に我儘放題…というか、
そもそも照以外を人間とすら思ってないような
振る舞いをしてのける。


「なんとかできない?」


珍しく若干弱気な声で照に問われた。
お前が連れてきたんだから責任取れ、
と喉元まで出かかったが許してやる事にする。

実際私が適任だろう。
大星に雑魚と思われている私の方が。

魔物には違いないだろうが
まだ大星はひよっこだ。
今なら私でもなんとか叩ける。

徹底的にお灸をすえてやることにしよう。
あいつを魔物の孤独から救うためにも。



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大星淡の手記
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弘世先輩にボコられた。
いや、物理じゃなくて麻雀で。

『能ある鷹は爪を隠す』を
地で行くような人だった。
オーラも大した事ないくせに、
何故か私の不要牌が徹底的に狙われて、
それはもう射抜かれまくった。

イケてるじゃん。
今日から弘世先輩は菫先輩に昇格だね。
本当はスミレって呼びたいけど
一度呼んだら小突かれた。


……ちょっと真面目な事書いちゃうと、
今日の体験は私にとって一つの救いになった。

菫先輩が魔物だとは思わない。
でも、戦い方によっては私にも勝てる。
そうやって戦える人なら、
私の事も特別扱いしないで
受け入れてくれるかもしれないって思った。

そう考えたら他の人にも
受け入れてもらえる可能性がでてくるよね!
ちょっとは他の人にも
目を向ける事にしてみようかな!



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宮永照の手記
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菫がやってくれた。淡が少しだけ他の部員に
興味を持つようになった。

もっともそれは諸刃の剣でも
あったのだけれど。

菫や私以外とも打つようになったのはいい。
でも、実際のところ淡と正面切って
打ち合えるような部員は私達以外いない。
全力の淡に潰されて、その日のうちに
退部を申し出る部員も珍しくない。

止めさせた方がいいだろうか。
でもそれじゃ結局淡は部内で孤立する。
かといってこのままじゃ
麻雀部全体が荒れていくだろう。

悩みは尽きない。
とりあえずまた菫に相談しよう。



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弘世菫の手記
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大星が道場破りのような事を始め出した。
私のように実力を隠している者を
燻り出そうと一人一人全力で
ぶつかってみるというのだ。

残念ながら、うちにはそれに
耐え切れる部員はいない。
かと言って「お前に勝てるやつはいないからやめろ」
というのもどうかと思う。
せっかく開きかけた淡の心を
再び閉ざしてしまうようなものだ。

あまり選びたくはない手段だが、
少し躾け方を変える必要があるだろう。

しかし、最近は大星の事ばかり
考えている気がする。
正直手のかかって面倒くさいのは
間違いないんだが…
何故かほおっておけないのが悩ましい。



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大星淡の手記
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菫先輩に単刀直入に言われた。
私に立ち向かえる部員は他に居ないから
全力で打つのは止めろって。

いや、なんとなくそんな気はしてたけどさ。
そりゃーもうがっかりですよ。
1年間三麻決定?
で、二人が卒業した後は
どうしたらいいの?

なんて不満をぶつけたら、
そうなった時困らないように
何とかしろって言われた。
具体的には見どころがありそうな部員に
目をつけて育成しておけだって。

いやいやそれ監督や上級生の仕事でしょ?
って思ったけどさ。


「もちろん私達もやるが、
 私達が居なくなった後は
 お前が白糸台を背負う事になる」

「そうなった時、お前にとって
 心を許せる人間を作っておけ。
 …照が私を選んだように」


なんて言われちゃったらもう仕方ないよね。
やるしかないよね。

でも、テルにとっての菫先輩かぁ。
菫先輩も最初から強かったわけじゃないのかな?
テルに育成されたのかな?

私にも菫先輩みたいな人できるかな?
ちょっと無理な気がする。
雀力はともかく、それ以外の点では
菫先輩もある意味魔物だよね。

魔物を惹きつける魔物っていうか。



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宮永照の手記
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またも菫がやってくれた。
淡も将来を見越した視点を
持つようになってくれたみたい。


ただ少し気になるのは、
なんだか最近淡と菫の距離が
近くなってきている気がする事。

私よりも先に菫を呼ぶ事が
多くなった気がする。
菫も前よりも私に時間を割く事がなくなった。

でも、そもそも淡を連れてきたのは私。
その淡を正しく導けていないのも私。
今の私には何も言う資格はない。

ないのだけれど。
それでもやっぱり、少し寂しい。



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弘世菫の手記
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明日は槍でも降るかもしれない。
あの照が私に冗談を言ってのけるとは。


「最近菫は、淡に付きっ切りだね」

「私達もそろそろコンビ解消かな」


なんて無表情で言うものだから、
つい手に持っていたティーカップを
取り落としそうになってしまった。

お前そんなギャグを言うタイプだったか?
というかいつ私達はコンビになったんだ。

なんて返しそうになったが、
何となく照の機嫌が悪そうだったので
言わずにおいた。
余計な一言で本当に
コンビを解消されても困る。

そんなわけで久しぶりに照と
二人きりで特打ちした。
ここのところすっかり
ご無沙汰だったから新鮮だった。

以前は毎日打っていたはずなんだが。
私が普段感じている以上に、
淡の存在は私達に浸透してきているようだ。



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大星淡の手記
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今日も三人で打とうと思ったら断られた。
「今日は菫と二人で特打ちする」だって。
何それ意味わかんない。
別に私が居たっていいじゃん。

ていうかあの二人ってどっか怪しいよね。
部内でも付き合ってるんじゃないかって噂流れてるし。

だとしたら私物凄いおじゃま虫じゃない?
いや別に二人の仲を引き裂こうとは
思ってないんだけどさ。


でも、そんな事を考えたら、
少しだけ胸がチクッてした。
もし。本当に。二人が付き合ってたら。


私って……『邪魔』なんだろうな。



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宮永照の手記
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いつものように三人で対局中、
菫が所用で席を外した。
その隙を狙ったのか、淡が
とんでもない質問を投げかけてきた。


「ねぇ。テルと菫先輩って、付き合ってるの?」


思わず目を見開いた。
質問の真意が気になった。

淡の目を見つめてみた。
その目はただの興味本位のようでもありながら、
なのにどこか不安に揺らいでいて。
ただならぬ気配を感じ、
私はさらに動揺してしまう。


何より動揺する自分に驚いた。
別に付き合ってない、ただ淡々と
事実を言えばいいだけなのに。
なぜ私はここまで狼狽える?
どうして淡の真意を探りたくなるの?

そして私は気づいてしまう。
自覚してなかった想いに。
気づかない方がよかった想いに。


そっか。私……


菫の事が好きなんだ。



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弘世菫の手記
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最近照の様子がおかしい。
どうにも避けられているような気がする。

おそらくあの日からだ。
あの二人と対局中、私だけ一度席を外した時。
戻ってきた時、照が珍しく頬を染めていた。


あまり考えたくない想像が胸をよぎる。


例えば、淡が照に告白したとか?
それで邪魔者になった私を避けているとか?
なんて、さすがに思考が飛躍し過ぎか。
それよりはむしろ私との仲を疑われて
私を意識するようになった、
なんて展開の方がありえる。
若干自意識過剰かもしれないが。

なんにせよ、このままの状態で居るのは
精神衛生上好ましくない。
率直に聞いてみた方が早いだろう。
明日にでも淡を問い詰めてみる事にしよう。



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大星淡の手記
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あーあー、もうやだ。
これアレだよ。私完全に馬に蹴られる奴だよ。

私が質問した途端、テルは
いきなり挙動不審になった。
あのテルがだよ?営業スマイルチャンピオンの
テルがだよ?

しかもテルったら菫先輩の事
露骨に避け出すし…
意識してるってまるわかりじゃん。
案の定菫先輩に勘付かれて詰問されたし。

でも、一番だめなのはやっぱり私。


「お前、あの日照と何かあったか?」


菫先輩に問い掛けられた時。
言葉に詰まって何も言えなくなった。

考えちゃったんだ。
もしここで本当のことを言ったら、
菫先輩はどうするのかなって。

もしかしたらこれがきっかけで、
菫先輩がテルに告白しちゃうような
事になったら。それで、
めでたくカップル成立ってなったとしたら。


…私、捨てられるよね。


そう思ったら言えなかった。
言葉が出てきてくれなかった。
代わりに、涙が後から後から溢れてきた。

慌てた菫先輩がわけもわからず
私を慰めてくれる。
散々泣きじゃくったあげく、
私が言えた言葉はたった一言。


――捨てないで。


我ながら最悪の一言だった。



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弘世菫の手記
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私が席を外したあの日、結局何があったのか。
それを聞く事は叶わなかった。
返ってきたのは嗚咽。
そしてあまりにも切実な淡の懇願。


「捨てないで」


淡は確かにそう言った。
その言葉の真意こそ
教えてはくれなかったが、
なんとなく気持ちは分かる気がした。


淡と初めて会った時の事を思い出す。
照に手を引かれ、あいつの中学校まで
会いに行った日の事を。


あいつは一人ぼっちだった。


憎悪の視線を一身に浴びていた。
淡を評する周りの言葉は
軽蔑の念で塗り固められていた。

淡の性格にも問題があったのだろう。
だが、それ以上に生来の気質が異質だった。


『…カードゲームとかやるじゃないですか。
 あの子、絶対に勝つんですよね』

『それってイカサマ以外
 ありえないじゃないですか。
 大富豪で100%ジョーカーと2を持ってるとか
 どんな確率だっての』

『なのにそれを認めようとしないんですよ。
 アンタ達が雑魚だからとか、
 こんなの普通でしょ?とか
 気持ち悪い事言い出すし』

『ありえない嘘とかホラばっかりなんで
 誰も相手にしなくなりました』

『へ?麻雀特待に誘う!?
 いやいや絶対止めた方がいいですよ!?
 イカサマで出場停止とかなっちゃいますって!』


何人かに話を聞いたが
ほぼ異口同音の結果となった。
黙って聞いていた照が、
こっそり唇を噛み締めていたのを
今でも忘れられずにいる。

とはいえこの一件について、
淡の同級生を非難するのも酷だろう。
実際、サイコロを振って
1の目が出る確率は6分の1。
10回連続で1を出すような事があったとしたら、
イカサマを疑わない方がどうかしている。

だが、淡は魔物だった。
自分にとっては当然の事を
イカサマだと非難された時、
淡はどれ程傷ついただろう。


『白糸台…そこになら、私の仲間は居る?』

『イカサマだって言われない?』


一人ぼっちだった淡は仲間の照に手を引かれ、
白糸台にやってきた。


その淡が「捨てないで」と私に言う。


それが何を意味するのか。
おそらくは、照と私が深い仲になって、
淡を除け者にする事を指すのではないだろうか。


私の答えは一つだった。


「心配するな、淡。私は、お前を捨てない」


嘘偽りのない本心だった。
淡の縋るような瞳に、光が灯ったような気がした。
だがその光はあまりにも儚く危うい。

しばらくは、照と二人で
見守っていく必要があるだろう。



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宮永照の手記
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菫に呼び出された。
咄嗟に逃げる事が頭をよぎったけれど、
大切な話だからと念を押されては無理だった。


「何があったかはわからないが、
 とりあえず今は淡を癒す事に専念しないか?」


少しだけ期待していた私が馬鹿だった。


聞けば、淡が菫に「捨てないで」と言ったらしい。
そして菫は「捨てない」と言ったのだと。


心が張り裂けそうだった。


その言葉は。その言葉は。その言葉は。
私が。ずっと菫に言ってほしくて。
ずっと。聞きたくて仕方のない言葉だった。

淡と私の何が違うと言うの。
淡が一人ぼっちだったのはわかってる。
だからこそ白糸台に連れてきたのだから。
私達に捨てられたら淡は
また孤独になる事もわかってる。


でも、私だって同じなんだよ。


1年生ながらうっかり活躍しちゃったせいで、
チャンピオンだ化け物だと好き放題喧伝された。
そのせいで誰もが私を偶像のように扱った。

私自身を見てくれる人は菫だけだった。
菫がいなかったら、私だって淡と同じだった。

私達は一緒に白糸台を卒業する。
でも、その後はどうなる?
菫が私を選んでくれないなら、
結局私と菫は道を違える。
だとしたらそれは淡と何が違うと言うの?


目頭が熱くなる。
醜い言葉を吐き出しそうになる。


捨てないで、捨てないで、捨てないで、
捨てないで、捨てないで


それでも私は、その言葉を飲み込んだ。
淡に遠慮した?先輩としての矜持?


違う。醜い本音を吐き出して
菫に嫌われたくないというだけだ。


自分の醜悪さに気が狂いそうになる。
淡を連れてきたのは自分だというのに、
その淡に嫉妬している自分が嫌になる。

淡よりも自分を選んでほしいなんて
自分本位な考えに吐き気がする。


死にたい



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弘世菫の手記
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少しずつ状況が悪化しているのを感じている。
三人揃うと、どこか張り詰めた緊張感を覚えるのは
私の自意識過剰から来るものだろうか?

照が私に抱く想いについてはほぼ確信した。
おそらく、照は私を好いているのだろう。

だが、安易に答えを出すわけにもいかなかった。
と言うより…私自身答えを
持ち合わせていなかったのだ。

女性を恋愛対象として見た事はなかった。
この手の話は白糸台ではよくある事だし、
照の感情が異常だとも思わないが。
だからと言って、照の想いに
自分が応えられるかは別問題だ。


対して淡の方は簡単だった。
おそらくそこに恋愛感情はなく、
ただ人との繋がりを求めているだけだろう。

結果私は、照を少し避けるようになった。
淡を優先的に構うようになった。

わかっている。これはただの逃避だと。
そして逃げれば逃げる程状況は悪化していく事も。

近いうちに答えを出さなければいけないだろう。
私達の関係が、致命的になってしまう前に。



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大星淡の手記
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私のせいで二人の絆がおかしくなっていく。
中学校のあの校庭で、一緒に私の手を引いてくれた
二人の関係が壊れていく。

私を見るテルの目がすごい冷たくなった。
射抜く時の菫先輩みたいな目をしてる。

違う、違うんだよテル。
私は二人の関係を壊したいんじゃないんだ。
私は、テルの事も。菫先輩の事も両方好きで。

二人がくっついてくれてもいいの。
ただ、そうなった時に。
ペットみたいな感じでいいから、
私もそばに居させてくれたらいいの。


だったらそう言えばいいのに、言えなかった。


二人がくっつくならまだいい。
でももし、菫先輩がテルを拒絶したら?
このところ菫先輩をずっと見てたけど、
菫先輩にその気はないように見える。
私が余計な事を言ったら、
二人の関係を引っ掻き回す事になったら。
怖くて言葉が出てこなかった。


私はどうしたらいいの?
ううん。ホントはわかってる。


私が消えればいいんだ。


でも。


そしたら私は、また一人ぼっち?


怖いよ。


でも。


でも。


でも。

















---------------------------------------------------
宮永照の手記
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淡に呼び出された。あの子が私に話し掛けたのは
いつぶりだっただろうか。


「私、退学するよ」


その声は震えていた。


「今まで、ごめんなさい」


目には涙が浮かんでいた。


「でも、これだけはわかって。
 私は、二人とも好きだった」


踵を返し、淡は走り去った。
私は追いかける事もできなかった。
ただ一人、屋上に取り残された。


自分の醜さにほとほと愛想が尽きた。


わかっていたはずだ。
あの子は、ただ愛を求めていただけなのだと。

その淡が、寂しがり屋の淡が、
自ら退学する道を選んだ。
自分よりも私の事を優先した。
震える程怖い癖に。涙が出る程悲しい癖に。


対して、私は何なのだろう。


この学校に淡を連れてきたのは私なのに。
孤独に震えていた淡に
手を差し伸べたのは私なのに。
その私は…今、淡に止めを刺そうとしている。


醜い。醜い醜い醜い醜い


溢れ出す感情を抑える事ができなかった
怒りが全身を支配する
もう自分を許す事ができなかった


そして私は、フェンスを乗り越えて、
そのまま、衝動的に、




空に























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弘世菫の手記
---------------------------------------------------
照が屋上から飛び降りた。
私のせいだ。
































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大星淡の手記
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テルが屋上から飛び降りちゃったよ。
私のせいだ。
私があんな事言ったから。






ごめんなさい、テル
せめて、あの世まで謝りに行くから、
許してください






















---------------------------------------------------
弘世菫の手記
---------------------------------------------------
私のせいだ








罪を償う





























































---------------------------------------------------
渋谷尭深の手記
---------------------------------------------------
淡照菫。

かつて白糸台高校において名物トリオと呼ばれ
皆に親しまれていた3人が、
揃って別々に身を投げました。

幸い3人は全員死を免れる事ができました。
とはいえ、あまりに異常過ぎる出来事に
報道規制が敷かれ、3人は別々に
精神病院に収容される事になりました。


3人の手記を読ませてもらいました。
3人は元々日記をつけていたので、
そこから抜粋した上で後から
書き足してもらったそうです。
今後の治療に役立てるために。

読み終わった後、襲い掛かる無力感に
打ちのめされてしばらく何もできませんでした。


誰か、誰か悪かったというのでしょうか。


それぞれに思惑はあったかもしれません。
一時は感情に支配される事もあったかもしれません。

それでも、3人が3人とも
相手の事を思いやっていて。
自分の事を責めていて。
身を投げなければならない程の罪を
犯したとは思えませんでした。


ただ少しだけ、すれ違いがあっただけなんです。
ほんの少しだけ手を加えてあげたなら、
全て解決したはずの。


私はこの手記を3人に見せようと思います。


主治医の先生に迷惑が掛からないように、
前もって書いておきます。

主治医の先生は反対してらっしゃいました。
今これを3人に見せる事は、
依存性を強めるだけで本人達のためにならないと。
もう少し治療が進んだ上で
健常な判断ができるようになってから
見せるべきだとおっしゃっていました。


ごめんなさい。


健全でなくてもいいから、
早くあの3人に幸せになってほしいんです。
もう、ありもしない罪で自分を責め続ける
あの人達を見ていたくないんです


多分私も壊れているんだと思います。


ごめんなさい。




































---------------------------------------------------
亦野誠子の手記
---------------------------------------------------
精神の病は伝染する。
精神病院の先生が言っていた。

まったくその通りだと思う。
だって尭深もあっちに行っちゃったから。


と言っても、敬愛する先輩と憎めない後輩が
こんな事になって、まともで居られる方が
異常だとも思うけど。
あれ?そう考えると私の方がアレなのか?


3人は精神病院を脱走した。
尭深が手を貸したって
もっぱらの噂になってる。

多分事実なんだろう。尭深も水臭いな。
そういう事だったら私にも
声をかけてくれればよかったのに。
後からこんな手記を渡されても
どうしたらいいって言うんだ。


それはさておき。


私の心配をよそにこの逃亡劇が
話題になる事はなかった。

別に3人は犯罪者ってわけでもないし、
世間的には事故で入院中扱いだったわけで。
関係者としては騒ぎ立てるよりも
闇に葬る事を選んだらしい。
私もそれで正解だと思う。


4人とも揃って連絡が取れなくなったから
今どうしてるのかはわからない。
でも、せめて仲よく暮らしていてほしいと思う。


そして、できれば、またいつか。
チーム虎姫として再会できたらいいな。



…無理かなぁ



























































---------------------------------------------------
………?
---------------------------------------------------
3人の手記を読み合って、
お互いにくだらない事で
悩んでいたんだとわかった。
もっともそう一笑に付せるのは、
一度飛び降りた後だからかもしれないけれど。


誰が誰と愛し合っているか、
そんな細かい事はどうでもいいだろう。
3人で寄り添って生きていけばいいさ。
もうあんな思いはこりごりだ。


私はそれでいいけど、テルは大丈夫なの?
テル的にはやっぱり私泥棒猫だと思うけど。


私にそんな資格はないよ。


資格とかそういう自分を責める考え方はやめろ。
それを言うならお前の気持ちに気づいていながら
答えを先延ばしにした私だって罪は重い。


うん。それに前にも書いたけど、
私別にテルとスミレがくっついてもいいよ?
ただ隅っこに私を置いてくれるなら。


そういうのは逆に駄目だと思う。
3人が対等じゃないと歪(ひずみ)が生まれる。


そのための血の誓いでしょ?


やっておいて言うのもなんだが
アレ頭おかしいよな。


私達が狂ってるなんて
今さら言うまでもないじゃん
全員仲よく飛び降り自殺未遂だよ?


破瓜の血を混ぜて舐めあうってのは
流石に引いたんだが。


正直に言います!
私はきゅんってした!


私も嬉しかった。
菫の方が異端なので調教すべき。


賛成!


私をその手の趣味に巻き込むな!


……ごめん。


そこで謝られると逆に困るんだが。


…でも、いろいろと。本当にごめん。


…私も、ごめんなさい。


だからそうやって自分を責めるのは止めろ。
過去の事はもういい。
私達は3人とも壊れた。


だからこそ絶対に離れない。


それでいいだろ。


うん。


うん。


じゃあ、これからもよろしく。


うん。


うん。


(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2016年01月31日 | Comment(9) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
いつもと違う感覚で読むことができてとても楽しめました!
Posted by at 2016年01月31日 21:11
最後はとてもほっこりした気持ちになりました!
とても良かったです
Posted by at 2016年02月01日 01:55
亦野さん頑張れ。何を頑張るのかよく分からないけど超頑張れ。

あ、菫さんの調教も頑張ってください。
Posted by at 2016年02月01日 05:32
照と淡がくっつけば万事解決なんじゃ

菫さん?あったかい菫さんは私がもらっていくので大丈夫ですよ。
Posted by at 2016年02月01日 09:32
淡菫照わっほい!
Posted by at 2016年02月01日 09:48
淡照菫の三人の絡みは読んでいて楽しいです

またの更新をお待ちしております
Posted by at 2016年02月01日 12:35
照菫淡三人のすれ違いがいい感じに出ていて最後病む所がたまらないです。
Posted by at 2016年02月01日 21:19
ぞくぞくしました、じわじわと病んでいく様子の描写のうまさが手記だと際立ちますね
Posted by at 2016年02月03日 01:18
とりあえずなんか枠からでちゃった感半端ない誠子ちゃん、頑張ろう……
Posted by at 2016年02月15日 03:41
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