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【咲-Saki-SS:白糸台】淡「淡ちゃん総受けキス22タイトル!」その3【ノーマル】

<あらすじ>
淡「これの続きだよ!」

淡「淡ちゃん総受けキス22タイトル!」その1
淡「淡ちゃん総受けキス22タイトル!」その2

<登場人物>
大星淡,宮永照,弘世菫,亦野誠子,渋谷尭深

<症状>
・特になし


<その他>
・Twitter上で仲良くさせていただいている
 恵野さんのイラストに対する短編集です。
 (本人から許可はいただき済み)

・少しずつ追加していきます


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(前回はこちら)


照「菫だけなんか住む世界が違う。エロい」

菫「だから前も言っただろう!?
  これは淡の妄想で現実の私じゃない!」

照「でもなんか容易に想像できる」

尭深「…わかります」

誠子「……(わかる)」

淡「菫先輩のケダモノ!!」

菫「射抜くぞ!?」

尭深
 (でも…一番危ないのは
  そんな妄想してる淡ちゃんだよね)

誠子
 (私も最後にはそういう妄想されるんだろうか…)

淡「あ、前回からちょっと時間空いちゃったし、
  次からは繋げていくのが難しそうだから
  バラバラになっちゃうかも」

菫「いや別にそんなの誰も気にしてないだろ」

淡「私が気にするの!
  エンターテイナー淡ちゃんだからね!」

淡「というわけで行ってみよう!
  今回はテルーがやりたい放題だよ!」

照「何それ怖い」



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『淡総受けでKISS22TITLE』






Twitterで仲良くしていただいている
恵野さんのイラストとのコラボです。

今回は『(09)首筋(執着)』から
『(16)指先(賞賛)』までが対象です。



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『(09)首筋(執着)』照淡
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その日、私は少し機嫌を損ねていた。

とはいえそれを素直に表に出すのは憚られて。
心の澱みを振り払うかのように、
ひたすら本のページをめくる。

元々表情に乏しい私。一見すれば本に
熱中しているだけにも見えるだろう。
付き合いの浅い人なら、
いつもとの違いに気づかないに違いない。

それでもそこは流石と言うべきか。
淡は異変に気付いたようだった。


「ねぇ、テル…なんか、怒ってる?」

「別に」

「嘘だ。やっぱり怒ってるよ」

「別に」

「ねぇ、機嫌直してよー」


わちゃわちゃと私に纏わりついてくる淡。
その姿は非常に可愛らしいけれど。
今回私が気分を害したのは、
まさにその行動だった。


「…淡は、誰にでもそういう事するよね」

「え?」

「…やめた方がいい。
 勘違いする人が出てくる」

「勘違いって何が?」


私はさらに気分を害した。
あまりに察しが悪すぎる。
でも、多分本当にわかっていないんだろう。
無垢で素直な淡だから。


だからこそ危険。だからこそ不安。


問題が起きる前に、私がしっかりと
教えておく必要がある。


「仕方ない。体で覚えてもらう」


私は淡を後ろから羽交い絞めにすると、
カッターシャツのボタンを一つ一つ外していく。


「えっ、えっ!?ちょっと、急に何!?」

「こうやって…淡に好かれているんだと
 勘違いして、唐突に危険な行為に及ぶ人が
 いるかもしれない」

「こんなの照じゃなかったら許さないよ!?」

「それは当然の事。でも、
 襲い掛かられたら
 逃げられないかもしれないでしょ」


服がはだけて、真っ白な首筋が露わになる。
より悪目立ちしそうな場所を見繕って、
私はそっと唇を落とす。


「んんっ…!テル、ちょっと痛いっ…!」


皮膚を吸われる痛みに、
淡がたまらず非難の声をあげる。
それでも私は止める事なく。

吸い付いた唇を離した肌には、
虫に刺されたように斑点ができていた。


「こうならないように気を付けて」

「やり過ぎだよ…うっわ、
 すごい痕になってる…」

「虫除けも兼ねて。これなら、
 もう淡が人の物だって、一目でわかるでしょ」

「そんな事しなくても
 私はテルのものだってば」


ああ、まだやっぱり淡はわかってない。

淡の気持ちがどうという話ではなくて。
淡が他の人に触れる事、
触れられる事自体が嫌なのに。

首筋への口づけの意味は「執着」。
いつか淡が気づいてくれる日は来るだろうか。



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『(10)背中(確認)』誠淡
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「ねー、亦野先輩って本当に私の事好き?」


虎姫ルームに二人、何をするでもなく
まったり過ごしていた時の事。
唐突な大星の問いかけに、
私は飲んでいたコーラを勢いよく噴き出した。


「きゅ、急に何言い出すんだよ」

「だってさー、付き合って結構経つのに、
 キス一つしないとかさー」

「ちょーっと愛を疑っちゃうよねー」

「け、結構って…まだ1か月じゃないか」

「1か月『も』だよー」


ぐいっと身を乗り出して詰め寄る大星。
その勢いに戸惑って、思わず私は後ずさる。


「呼び方も『大星』のままだしさー。
 いつになったら『あわあわ』って
 呼んでくれるのー?」

「それだけはない」

「やっぱり私の事なんて愛してないんだー!!」

「なんでそうなるんだよ!?」

「だーかーらっ、言ってるじゃん。
 愛が形になってないんだってば。
 愛してるっていうなら行動で示して?」


なおもぐいぐいと攻め寄ってくる大星。
その猛攻に私はただたじろぐしかない。
第一、行動だなんて言われても…


「具体的にはどうしたらいいんだよ」

「キスミーベイベー!」

「キッ…無理に決まってるだろ!?」

「えー?結構前に
 でこちゅーはしてくれたじゃん。
 あれの延長だってー」

「い、いやそう言われても…」

「あ、じゃぁさ。あの時と同じで
 唇じゃなくてもいいから。
 私のどこかにキスしてよ!」


にやにやと不敵な笑みを浮かべながら
しがみつく大星。
くそっ…こいつ、明らかに私を
からかって遊んでるだろっ…


「ねぇねぇ早く早くー」


とはいえ、こうなった大星は
何かしてやらないと絶対に引かないのも事実。
覚悟を決めるしかなさそうだ。

キスして愛を確かめるか…
キス、キス…あ、そういえば。
前に宮永先輩が言ってたっけ。


『キスはする場所によって意味が変わる。
 たとえば、変わり種でいうと…
 背中へのキスは《確認》の意味がある』

『確認…?どうして背中へのキスが
 確認になるんですか?』

『背中に対するキスは、
 相手からはその行動が見えない』

『だから、想いを伝えるという意味では効果が薄い』

『だから、その行為は相手にではなく、
 自分の相手への想いを
 確認する意味合いがあるらしい』

『なるほど』

『転じて、された方は自分への愛を
 再確認されているわけだから、
 結果的に相手の愛を確認できる』

『な…なるほど?』


正直、今でもよく理解はできてないけれど。
今回のケースにぴったりじゃないだろうか。


「わかった。じゃぁ、背中にする」

「背中!?」


こういうのは決意が揺るぐ前に終わらせないと。
驚く大星の反応を無視して、
一気に服を脱がしていく。
露わになった背中に、そっと唇を押し当てた。

よし、私は成し遂げたぞ!


「背中へのキスは『確認』って
 意味があるんだってさ」

「これで、私の気持ちも
 再確認できたんじゃない?」


唇に残る大星の感触。その余韻のせいで
頬に熱がたまっていくのを感じながらも、
私は大星の顔色をうかがう。

くるんと首を回した大星の横顔は…
まるでリンゴのように真っ赤になっていた。


「き、キスの意味とかどうこうよりさ…
 いきなり服脱がすとかどうなの?」

「あっ…!?ご、ごめん!!」


し、しまった…動揺しすぎて
うっかりしてたっ…!
私は慌てて謝罪の言葉を口にする。
でも、大星は頬を赤らめながらも微笑んで。


「ま、でも…亦野先輩の愛は伝わったよ」


なんて言いながら、私の頬にキスをした。



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『(11)胸(所有)』照淡
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キスをする場所には意味がある。
前に、テルが教えてくれたこと。

テルは意味のない行動はしない。
だから、この行為にもきっと意味があるはずなんだ。


今日、私がテルの唇に触れられたところ。
それは…胸。
一体、どういう意味があるんだろう。
調べてみて驚いた。


胸へのキス。その意味するところは『所有』。


テルらしくない、ひどく直接的で高圧的な意味。
あのテルが、私を、所有したがってる…?

胸に湧き上がる、
正体不明のゾクゾクに身悶えながら、
他の意味も調べてみる。
私が他に、テルにキスされた箇所は…首筋。


こっちは…『執着』!?


あっけにとられる私。

いつもはあんまり感情を露わにしないテル。
だから私は気づかなかった。
愛し合ってるのは信じてたけど、
でもテルは淡白なのかって思ってた。


でも…それは違った。

むしろテルは、狂おしい程の感情を私に向けていて。
テルなりの方法でそれを私に伝えていたんだ。


「…どうしたらいいんだろ」


胸の鼓動が収まらない。ううん。
収まるどころか、どんどん早くなっていく。

だって、あのテルが。
私に執着してるって。所有したいって。
そんな事いきなり言われたら…


私、おかしくなっちゃうよ。


「とりあえず…もう一回、
 胸にキスしてもらおうかな」


そうだ。今度は私から、
テルの前に胸を差し出そう。

それは、私なりの服従の形。
テルに所有されたいって想いの表れ。

あ、駄目だ私ちょっと変な感じになってる。
悪いのはテルだから、責任取ってもらわないと。


「…行こう!」


居ても立っても居られなくなった私は、
そのままの勢いで扉を開けて飛び出した。


目指す先は…私の所有者が住むお部屋。



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※この辺りから前の展開と繋がらなくなります。







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『(12)腕(恋慕)』誠淡
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「亦野せんぱーい」


無邪気な声をあげながら、
問題児がぱたぱたと可愛い足音を立てて
近づいてくる。


「げっ、大星」


そう、彼女は1年きっての
トラブルメーカー、大星淡。
なんでかはよくわからないけど、
べたべた私にくっついてくる。


「げって何さ!私が来たら
 何か困るって言うの?」

「今手元が狂うと困るんだよ!」

「またルアー作ってるのー?」

「そうだよ。ほら、このテグスが重要なんだ。
 私の1時間半を無に帰さないでくれ」

「私とその1時間半どっちが大事なの!」

「そりゃ1時間半だろ」

「ひどいひどいひどいひどい!」


抗議の声もむなしく、大星に
後ろからしがみつかれる。
テグスを持った両手は
ぐらぐらと大時化(おおしけ)の
船の上に乗っているように揺れ動く。

あ、これ無理だ。私はため息つきながら
作業を中断した。


「はいはい、負けましたよ」

「最初からそうやって
 諦めればよかったんだけどねー」

「最初に口答えしたのが気に入らないから
 若干のペナルティーを受けてもらうよ!」

「うげ、絞めるな絞めるな」


私の顔を抱きかかえた腕に力が入る。
とはいえそこは非力な大星らしく、
振り払おうと思えば
容易く振り払える程度なんだけど。
むしろ、それよりずっと気になったのは…


後頭部に押し付けられた、やわらかい感触。


「…胸当たってるんだけど」

「当ててんだよ」

「そういうのは男にやれよ」

「だから今やってんじゃん」

「ちょっと待って今聞き捨てならない
 台詞だったんだけど」

「お気になさらず!」

「なるよ!私は女だ」

「そのジョークイケてるね!」

「ジョークじゃない!」


くだらないやり取りをしながらも、
さらに大星は密着してくる。

比例して私の心音がどんどんスピードを増していき、
頬が熱くなっていくのを感じた。


(…なんで、私は…これじゃホントに
 男みたいじゃないか)


そう。何の因果か、私は大星に惚れていた。
いつからか、何がきっかけかは思い出せない。
気が付いたら好きになっていた。

でも、意気地なしの私はそんな気持ちに
真正面から向かい合う事はできず。

それでいて否定する事もできず、
ただ懐く淡をそのまま受け入れている。


「そう言えば最近私、また
 おっきくなったんだよねー」

「…イラッとくる報告をどうも」

「そのうち亦野先輩の顔を埋められるかも」

「どんなおっぱいお化けだよ」


なおも胸を押しつけながら。
前に回された大星の手が、
そっと私の頬を撫でる。
その手つきがあまりにも優しくて、
私はたまらず目を細めた。

時々思う。どうして淡はこんなにも、
しつこく自分に寄ってくるのか。

もしかしたら、淡も私の事が好きで、
それとなくアピールしているのではないか。


なんて。


(そんなわけ、ないよな)


頭では否定しながらも、淡い期待を
打ち消す事はできなくて。
少しだけその可能性を追ってみたくなって。

回された腕に、バレない程度に少しだけ。
本当に少しだけ、唇を押し当てた。

もしかしたら淡が、この行為の意味に気づいて。
『私も』なんて言いだしたりしたら…

なんちゃって。そもそもこんなの
気にもしないか。

なんて思っていたのに。
大星は予想以上に大きく反応し、
向きを変えて私に詰め寄ってくる。


「わっ、今亦野先輩キスしなかった!?」


そのあまりの過剰反応に、
私も慌てふためいて。
思わず行為そのものを否定してしまった。


「ち、違うよ!お前が押し付けてくるから
 当たっただけだって!」

「なーんだ。てっきり亦野先輩の
 秘めた求愛行為かと思ったよ!」

「なんでそうなるんだよ」

「この前テルが教えてくれたんだよね。
 腕へのキスは『恋慕』だったかな?」


どくん。飛び切り大きく心臓が跳ねる。
大星は見事に正解を言い当てた。


しかも。


「はい、じゃぁ次はちゃんと恋慕って意味で!」


なんて言いながら、自分の腕を
私の口に押し付けてくる。
わけもわからない内に、
再び大星のきめ細かい肌が私の唇に接触した。


「…はい!これで亦野先輩は
 私に恋焦がれてるって事で!」

「えぇー…無理矢理させても効果ありなのか?」

「ありありだよ!だって
 亦野先輩顔真っ赤じゃん」


にっこりと満面の笑みを浮かべる大星。
そんな微笑みを向けられたら、
何も言えずさらに頬を紅潮させるしかない。


「……」

「……」

「さてと、じゃー亦野先輩いじりも終わったし
 麻雀打ってこようかな」


何とも言えない沈黙が流れる事数秒。
大星は唐突に私から離れると、
陽気なステップを踏んで離れていく。


「じゃーねー、亦野先輩!」

「…はいはい、行ってらっしゃい」


「…はぁ」


振り回されっぱなしの自分が
情けなくなって大きなため息をつく。

それに気づいた大星が少しだけ振り返って
ぽそりと何かをこぼした。


『ため息つきたいのはこっちなんだよ?』


「え、そ、それって…」

「なんでもないですよーだ」


慌てて問いただそうとする私に、
べっと舌を出しながら。
大星はドアの向こうに消えていった。



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『(13)手首(欲望)』尭淡
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タカミとの関係が少し変化したのは、
まだ暑さと寒さが入り混じった秋口の頃だ。

その頃の私と言えば。
テルと菫先輩が居なくなって、
人恋しさに気が狂いそうで。

そんな耐えがたい寂しさを、
タカミに纏わりつく事で紛らわせていた。


「タカミー!今日も
 傷心の私を癒してください!」

「いいよ。おいで?」


タカミは嫌な顔一つせず甘やかしてくれた。

それは、くっつかせてはくれるけど
あんまり構ってくれないテルとは違って。
そもそもにべもなく追い払ってくる
菫先輩とも違って。

いくらでも入っていられる
ぬるま湯のような感じ。
私はすっかり虜になって、
どっぷりとタカミに溺れていった。
毎日、毎日、毎日、毎日。


そんな最中に『事故』は起きた。


その日も私はいつも通り、
タカミにくっついて甘えていた。

タカミの腕にすっぽりと包まれながら、
横着してそのままお茶を飲もうとして。
目測を誤って、湯呑を手から滑らせてしまった。


「あつっ!」

「だ、大丈夫淡ちゃん!?」


短い悲鳴が、反射的に私の喉を通り抜ける。

じんじんと鈍い痛み。視線を落とすと、
お茶が少しだけ手首にかかっていた。


「あ、うん。そんなにかかってないから」

「よかった…あ、でもちょっと赤くなってる」


タカミは私の手を取った。
そしてまじまじと至近距離で確認すると、
やがて赤くなっているところに
ちろちろと舌を這わせ始める。


「た、たかみ?」


戸惑いの声を漏らす私。
それでも尭深は意に介さず
手首を舌でなぞり続ける。


「つばをつけたら治る…
 みたいなのあった気がして」


妙に生ぬるい、粘膜的な感覚が
私の手首を這いまわる。

ぞわり、ぞわりと、
心がざわめくような感覚が
腕から伝わってくる。


「たか……み……!?」


不意にひどく不安になって、
タカミの顔を覗き見る。
そして――、


――一気に、背筋が泡立った。


「……」


タカミは笑っていた。今まで見た事もないような
怖い顔で笑っていた。それはまるで…


獲物を手中に収めた蛇みたいな貌。


――食べられる。直感でそう感じた。
――逃げなきゃ。本能が警告してくれた。


でも。タカミは手を離してはくれなくて。
私は手を払いのけられなかった。


「……念のため、もう少し上の方も舐めておくね」


手を、舌を絡みつかせながらタカミが囁く。

舌の通った軌跡が、手首から
少しずつ腕の方に上がっていく。
もう絶対にお茶がかかってない部位に及んでも、
舌はまだ私の肌を這い続ける。

気づけば私は押し倒されて。
タカミに覆いかぶさられていた。


「…タカミ…どうしてっ……?」

「…わからない。でも、
 我慢できなくなっちゃったの」

「そんな…こんなのおかしいよ!」

「それを言うなら…
 淡ちゃんはどうして逃げないの?」


わからなかった。

今が異常な状況だってのはわかる。
続けちゃいけないとも思ってる。
思ってるのに…


どこか、何か期待しちゃってる。


「……わかんない」

「…そっか」


タカミが笑う。捕食者の顔のまま笑う。
それを見て私は恐怖して。
でもどこか体の奥がもぞりと疼く。


「……じゃ、続けるね」


タカミの顔が近づいてくる。
目と鼻の先にまで近づいてくる。
それでも私は……


顔を背ける事ができなかった。





……





タカミとの関係が少し変化したのは、
まだ暑さと寒さが入り混じった秋口の頃だ。


あの日、タカミに食べられて。
私はタカミのモノになった。



--------------------------------------------------
『(14)手の甲(敬愛)』菫淡
--------------------------------------------------


淡「菫先輩ってなんか騎士っぽいよねー」

菫「よく言われる」

淡「よく言われるんだ!?」

誠子
 「去年学園祭の劇でやってましたよね。ナイト役」

菫「多数決で無理矢理押し切られてな」

照「菫のファンクラブができたのはアレのせい」

菫「私としては狩人の方がよかったんだが」

淡「はいはい!私アレやってほしい!」

尭深
 「…アレって何?」

淡「跪いて手の甲にキスされる奴!」

照「ああ。劇にも似たようなシーンあったね」

淡「でしょでしょ!定番だよね!
  というわけでプリーズ!」

菫「…はぁ」

淡「何さその溜息」

菫「いいか淡。手の甲に対するキスにはな。
  『敬愛』っていう意味があるんだ」

菫「お前のどこに敬愛される
  要素があるって言うんだ」

淡「私を構成する何もかも全て!」

尭深
 「…さすが淡ちゃん」

菫「確かにその面の皮の厚さには
  尊敬の念を禁じ得ないな」

淡「納得してくれたね!じゃあ
  シチュエーションはどうしよっかなー」

菫「皮肉も通じないのか」

淡「決めた!可愛い可愛い淡姫!
  その忠実な下僕であるスミレが
  改めて忠誠を誓う、って感じでお願い!」

誠子
 「欲望てんこ盛りだな」

菫「しかも姫とかこれまた図々しい」

照「…でもやらないと多分終わらないよ」

菫「ふぅ。まったく…仕方ない奴だな」


すっ


菫「淡姫」

淡「っ…!は、はい!」

菫「…我が身、我が技、我が心。
  我が全てを剣と為し、
  ただ一人他ならぬ貴女に捧ぐ」

淡「っ」

菫「足千切れ、腕もがれ、肉焦がれ。
  全てを奪われ事切れたとしても、
  ただ一人貴女だけは守り切る」


菫「どうか私に、誓いの受理を」


淡(わ、わわ!ホントにキスした!
  手の甲に、キス!)

淡(ヤバい!これヤッバい!
  菫先輩かっこいい!)


淡「……」


菫「…淡姫?」

淡「はっ!え、あ、ど、どうすればいいの!?」

照「『受理します』って言えばいい」

淡「じゅ、受理しましゅっ」

照「噛んだ」

誠子
 「噛んだな」

尭深
 「…噛んだ」

淡「し、仕方ないじゃん
  いきなりこんな事言われたら!」

淡「なんなの!?菫先輩なんなの!?
  実はポエマーなの!?
  なんでこんな台詞スラスラ出てくるのさ!」

菫「劇の台詞を流用しただけだが」

淡「にしてもカッコつけ過ぎでしょ!?
  これで何人の女を落としてきたの
  このタラシ!」

菫「誰がタラシだ人聞きが悪い!」

照「…学園祭が終わった後に発足した
  ファンクラブの会員数が
  96人だったからそのくらい」

淡「思った以上に落ちてた!」

淡「もう!菫先輩他の人にやるの禁止ね!!
  これ以上無垢な乙女を
  魔の手に掛ける事は許さないよ!」

淡「どうしてもやりたくなった時は
  私が付き合ってあげるから!」

照「…淡も落ちた」

誠子
 「落ちたんだな」

尭深
 「…落ちちゃったんだね」

淡「ち、違うよ!?私は菫先輩が
  見境なく女の子に手を出そうとするのを
  抑止するために身を差し出すだけで!」

菫「…はいはい。姫のお気に召すままに」

淡「っ、もー!もーー!!」

菫「それでは淡姫。私としては
  そろそろ練習を再開したいのですが」

淡「ああもう姫っていうの禁止!」

照「……」

照「……」

照(誰も気づいてないみたい)

照(…1年前の劇。確かにあの台詞は
  初期の台本にはあった。
  でも、実際は本番前に修正された)

照(姫役の子に嫉妬が集中したから。
  『姫のため』じゃなくて
  『国のため』に修正された)

照(だからあの誓いを受けたのは、淡が初めて)

照(…後でこっそり、淡に教えてあげよう)



--------------------------------------------------
『(15)掌(懇願)』菫淡
--------------------------------------------------


掌にキスをされた。
両方の手でしっかりと腕を掴まれて。
刻み込むようにキスされた。


キスの意味はわからなかった。
唇とか手の甲だったら何となくわかる。
でも掌なんて聞いた事がない。


特に意味なんてないのかもしれない。
一度はそう考えて思い直した。


菫先輩の真剣な表情が物語っていた。
このキスには深い意味がある。


家に帰って意味を調べた。
掌へのキスは『懇願』。
菫先輩は私に何を訴えていたんだろう。
やっぱり私にはわからなかった。


意味が理解できたのは数日後。
卒業式を迎えた時の事だった。


菫先輩が壇上で首を垂れる。
卒業生の代表として答辞を述べる。


『私達はこれからそれぞれの道を歩んでいきます』

『それでもこの学び舎で培った絆は』

『決して揺るぐ事はないでしょう』


毅然とした表情だった。
弱さは欠片も見られなかった。


でもどこか機械的なものを感じた。
まるで全ての感情を排除したような。
あまりにも無機質な声音――


――そして私は気づいてしまった。


そうか。そうだったんだ。
あの時の『懇願』は。


本当は不安で仕方なかったんだ。
卒業して私達の絆が綻んでしまう事が。
でも先輩として。部長として。卒業生として。
それを吐露する事はできなかったから。


だから…言えなかった思いを掌に落としたんだ。


そして。


うまく反応できなかった私を見て。
菫先輩は。きっと。諦めて。


自分を殺した。


『以上を持って答辞とさせて頂きます』


一礼の後菫先輩は壇を降りる。
粛々と式は執り行われる。


式が終わった後。
私は菫先輩を必死で探した。
でも菫先輩は居なかった。
携帯の電源は切れていた。


菫先輩のクラスの担任に詰め寄った。
私の剣幕に押された教師が教えてくれた。
弘世さんは社交界のパーティーに向かったと。
婚約者が待っているからと。


――ぷつり。


菫先輩との絆の糸が切れる音がした。
私はその場に崩れ落ちる。


どうして。どうして。どうして。どうして。


どうしてあの時私は気づけなかった。
あの時私が気づけていれば。
もしくは私が菫先輩を強く求めていれば。


私達を紡ぐ糸は。
切れずに残ってくれたかもしれないのに。


でも。何もかも既に手遅れだった。
もはや私にできる事と言えば。


悲劇のヒロインとして泣きじゃくる事だけだった。




……



淡「……って話を考えてみたんだけどあってる?」ぐぐぐ

菫「いや、普通に『食わせろ』っていう懇願だが」ぐぐぐ

淡「ぎゃー!食べられるー!!!」



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『(16)指先(賞賛)』誠淡
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対局を終え控室に向かう私の耳に、
コツコツと靴の鳴る音が響いた。

ひんやりとした空気。
照明の光を覆い隠すような闇。
ただならぬ気配が少しずつ
私に向かって近づいてくる。


「……」


程なくして気配の持ち主が姿を現した。
重力に逆らい揺らめく金色の髪。
煌々と妖しく輝く翠の瞳。
不敵に不遜に吊り上がった口角。


その正体は、言うまでもなく……


「…大星」

「お疲れ様でした。今回はまあ頑張りましたね」


人を食ったような笑みを浮かべながら、
淡がその指先を私の唇に押し当てる。


「褒めてあげます」

「…そいつは、どーも」


内心どぎまぎしながらも、
その賞賛を受け入れる私。

淡はそのまま唇をゆっくりとなぞる。
二度三度、入念に私の唇を蹂躙すると。
淡は唇から離した指に舌を這わせる。
そして蠱惑的な笑みとともに吐き捨てた。


「ま。私が居る以上亦野先輩の戦績なんて
 関係ないんですけどね」

「飛びさえしなければ、
 私がひっくり返してあげるんだから」

「はいはい。あんまり苛めすぎて
 相手を再起不能にしないようにな」

「それは相手次第かな」


不穏な言葉を残し淡は会場に消えていく。
張り詰めた空気が霧散したのを感じて
私はふぅ、と息をついた。



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(その4に続く!)
 Yahoo!ブックマーク
posted by ぷちどろっぷ at 2016年02月06日 | Comment(3) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
菫さんかっこいいですね!
残りの分がはやく気になるところ
Posted by at 2016年02月06日 23:07
背中にキス出来るくらい脱がせるのは大変そう。亦野先輩脱がし慣れてる……?
その後の淡ちゃんは胸元に服を寄せて身体を隠したりしたんでしょうかね。良いですね。
Posted by at 2016年02月07日 10:32
うおおお続き気になる(っ'ヮ'c)ファァァァァァァァァァァwwwwww
Posted by at 2016年05月06日 04:35
コメントを書く
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