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【オリジナル百合SS】「洞窟の奥の紅き竜」【ヤンデレ】【依存】【狂気】

<あらすじ>
辺境の地にひっそりと存在する、
奥行きのない浅い洞窟。

そんな洞窟の最奥で、かつては
深淵に続いてたという情報を頼りに、
駆け出し冒険者の少女が
ツルハシを振りかざしていた。

2年越しの努力が実を結び、
ついにツルハシは空間を穿つ。

果たして、その先に広がるのは
彼女が求めていた冒険なのか。
それとも、
暴くべきではなかった絶望なのか。


<登場人物>
少女A、少女?B


<症状>
・狂気
・依存
・異常行動
・シリアス

<その他>
・非常に露骨な性描写を多分に含みます。
 18歳未満の方、性的描写が苦手な方は
 閲覧されないようお願いします。

・若干ホラー要素を含みます。
 苦手な方はご注意を。

・管理人が夢で見たシリーズです。
 例によってシンプルなお話なので
 気軽にお読みください。


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そこは取り立てて何もない辺境の村。
だが、かつてこの村には一つだけ。
場にそぐわない逸話があった。

村にほど近い山の麓にある洞窟。
その奥に紅き竜が潜んでいると。

竜は何かを守るように立っている。
その奥に何があるのか。
それを知る者は誰も居ない。

様々な憶測が飛び交った。
貯めこんだ金銀財宝が山となり眠っているとも。
はたまた伝説の聖剣が刺さっているとも。

風の噂を聞きつけて、
あまたの冒険者が竜に挑んだ。
中には大陸に名を馳せた歴戦の勇士も居たという。


だが、真相が明らかになる事はなかった。


皆死んだ。ある者は腸を食い破られ。
ある者は劫火に焼かれ灰すらも残さず。
誰一人帰ってくる事はなかった。
少しずつ冒険者の数は減り。
ついには皆謎を解き明かす事を諦めた。


やがて歳月が人々から記憶を奪う。
竜の存在は忘れられ。
禁忌だけが教訓として残った。


洞窟の奥には、絶対に近づいてはならない。
そこに辿りついた時、愚か者を待ち受ける運命は。



ただ平等に、死。



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『洞窟の奥の紅き竜』







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「行ってきまーす!」


その日も私は、ツルハシを片手に家を飛び出した。
行先は村はずれの洞窟。目的地はその最奥だ。

一体何をするのかだって?
決まってる。洞窟を掘り進めるのだ。

今でこそ長さ10mもない一本道の洞窟だけど、
昔はもっと大きな洞窟だったらしい。
それが50年前くらいに起きた大地震で、
奥への道が塞がってしまったんだとか。

別に何かに使ってたわけでもなし、
洞窟はそのまま捨て置かれた。

私はそこを掘り出している。
奥への道を開通させるために。


何でそんな事をするのかだって?
決まってる。ロマンだ。
聞けば、奥に何があるのか誰も知らないって言う。
突き止めてみたくなるってもんでしょ。

と言っても最近はダレ気味だ。
掘っても掘っても繋がらない。
もうかれこれ2年は掘ってるだろうか。
後10日でめでたく3周年だ。
流石にそこまで行ったらやめようかな、
なんて思ってる。

本当はもっと前からやめようかと思ってたんだけど、
なんでか諦めきれないんだよね。
身体が、魂が真実を求めるっていうか。


そんなわけで、その日も私は惰性で
ツルハシを振り下ろしていた。
多分何も出ないだろうな、
なんて半分以上諦めながら。


でも、あいにくその日は違った。



『ズボッ』

「あぇっ!?」



突如、岩肌を切り崩していたツルハシが壁に突き刺さる。


過去に経験したことがない感触だった。
ツルハシを引っこ抜いてみると、
その先には空間があった。


「……来た」

「来た来た来た来た来たぁぁあっ!!」


貫通だ!開通だ!私は無我夢中で
ツルハシを振り下ろす。
みるみる内に壁は瓦解して、
人一人通れる程度の穴が開いた。


「お邪魔しまーす!」


長かった。本当に長かった!
ようやくこれでスタートライン。
輝かしい冒険譚の幕開けだ!
ドーパミンを脳内で垂れ流しまくりながら、
喜び勇んで穴をくぐる。

そして、目に飛び込んできた光景は。
私の全身を震え上がらせた。



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「な…な、に…これ……」



端的に言えば独房だった。
120スクエア・フィート程度の
小部屋に、鉄格子が一つ。
後目につくものは、ぼろぼろの布切れと、
それと…それと……


人骨。


「ひっ……!」


反射的に悲鳴を上げてしまった。
生まれて初めて見る人骨は、
圧倒的にリアルな死のイメージを流し込んでくる。


死んだ。死んだ。ここで、人が死んだ。


本能で理解する。恐怖で歯がカチカチと音を立てる。
脳内では警鐘がけたたましく鳴り響いている。


引き返そう。ここは、来てはいけないところだった。
冒険者魂は見る影もなく、
私は来た道を一目散に引き返そうとする。



――けれど。



『待ちなさい』



静寂に包まれた空間に、酷く冷たい声が響く。
そう、声だ。こんな、封鎖された洞窟で。
聞こえるはずのない声が私を制止する。



『逃げるなら殺す』



さらに声が通り抜ける。
反論を許さない凍てついた声に、
私の足は床に張りついたように動けなくなる。


いまだ警鐘は鳴り響いている。
逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ。


でも、それ以上の恐怖が私を抑えつける。
怖い、怖い、怖い、怖い。



『ぺたっ…ぺたっ…ぺたっ…』



ただ全身をガタガタと震わせる事しかできない私に、
少しずつ物音がにじり寄ってくる。
それは、素足で床を踏みしめるような音。


程なくして音はぴたりと止まる。
一瞬の静寂。そして、次に、さび付いた金属が軋む音。



『キィィ……ィ』



鉄格子が開く音だった。そこで私は我慢ができなくなって、
音がする方に振り向いてしまう。


最初に目に映ったのは、紅(あか)。
暗闇に爛々と輝く二つの瞳。


次に目に留まったのは白い肌。
およそ人とは思えない、透き通るような肌。


一糸纏わぬその姿は、一見すれば
人間の女性のようにも見える。


だがその淡い期待を打ち砕く事実があった。


燃える様な紅い髪
その髪の間から突き出た2本のツノ
お尻から繋がっている、爬虫類のような尻尾


間違いない、コレはバケモノだ


「あっ…あ、あ、あ」

「……っ」



「あぁァア゛ア゛アア゛ア゛ッッッ!!!!」



恐怖が許容量を振り切って
私はあらんかぎりの声で叫んだ



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化物がギョロリとした目で私をねめつける

随分長い事見られ続けていた気がする
まるで値踏みするかのように
もっともそう思うのは、私が極度の恐慌状態に
あったからなのかもしれないけれど


永遠とも思える時間を過ごした後、
次に化物は部屋の壁に目を向けた


そしてまた私の方を振りむく
何が起きたのか理解したのかもしれない


化物がひたひたと穴の開いた壁に近寄る
そして、ふと壁に手を押し当てると
そのまま軽くひゅんと腕を振った



『ガララララララッッ……!!』



ただ、腕を横に振っただけ
ただそれだけで、この世の終わりのような
凄まじい落盤が起きた


次に化物は息を吸い込む
そして、勢いよく吐き出した



『ゴォォォォッ』



吐いた息は業火に変わり、崩れた岩に降り注ぐ
どろり、どろりと岩が融ける
火にくべられたチーズのように、
岩がとろけて繋がっていく


その間、わずか数秒
たった数秒で、私が開けた穴は完全に塞がって
小部屋は再び牢獄の機能を取り戻した


一仕事終えた化物が私の方に向き直る
そしてそこで、初めて表情を見せる


その顔が形作ったのは、ほどけんばかりの笑顔



「おかえり」



慈しむような笑顔を見せて、化物は私に言った
もちろん意味はわからなかった
私に化物の知り合いは居ないし、
こんなところを住処にする狂人もいない


ただ一つわかる事がある
私にとっては絶望でしかないけれど
それは……



――この化物は、狂っているという事だ



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「ひあ゛っ…あ゛っ、もう゛、許してっっ!」

「んぁあ゛あ゛っ!!!」



彼女の指が、私の奥の奥をかき回す
突き立てられた指からは、
破瓜による激痛と
それすら官能に変えてしまう程の
狂気じみた快感が絶え間なくもたらされる



「あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ!!」



『アレ』を飲まされてからだ
『アレ』のせいで私の身体は変わってしまった


目の前の化物は、事を始める前に
自らの腕をがじりと噛んだ

傷口を唇で覆って何かを吸い出した後
そのままの口で私の唇を塞いだ

どろりとした液体が流れ込んでくる
吐き出す事は許されず
強制的に鉄の味がする液体が喉を通り抜けていく



そしたら体が燃え出した



身体が内側から熱で融けていくような感覚
いや、実際に融けてるのかもしれない
だって、お腹の奥をぐちゅぐちゅと掻き回される度
内側からびゅるっ、びゅるっと
熱い粘液が私の身体から吐き出されて
どろどろと太ももを垂れ落ちていく



「あ゛ぁーっ……あ゛っ、あ゛っ…あ゛ひっ」



視界がチカチカと明滅する
絶望的な快楽の前にして、私にできる事と言えば

だらしなく舌をつき出して、
犬のように涎を撒き散らしながら、
意味のない喘ぎ声を垂れ流すだけだ


なおも私を犯し続けながら
化物が耳元で甘く囁く



「いっぱい、いっぱい感じて」



化物は私の太ももを両の足で挟み込み、
足の付け根を摺り寄せてくる
ぬちゅり、と粘着的な感触が伝わってくる

それはきっと、今私が垂らし続けている
粘液と同じものなのだろう

化物も気が違う程に盛っているようだった



「もう、離さない」

「死すらも。私達を分かつ事を許さない」

「私達は一つになるの」



なおも化物は私に囁く
血と愛液に塗れた指を引き抜いて
自らのぬめる秘部を私のそれに擦り付けながら

思考はとっくに焼き切れている
恐怖と、肉欲と、快感で押し流されている



「あ゛ひっ!あ゛ひっ!!」



ぐちゅりと触れ合う恥部が熱い
熱くて、火照って、留まってられない

腰が勝手にくねり出す
お互いの熱を押しつけあうように
私達は腰を振り乱す


熱が混ざって、どろどろに融けて
境界、わからなくなって



「愛してる」



化物が目に涙を浮かべながら愛を囁く
わけもわからないまま、私は嬌声を上げ続けて
愛の言葉と共に流し込まれる血液を
こくこくと音を立てて飲み干した



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一体何日続いたんだろう
狂っていたからわからない
でも、少なくとも数日は経っていたはずだ


飲まず食わずでひたすら交わり続けた
なのに、私は死ぬ事なく盛り続ける事ができた


どうしてそんな事が可能なのか
尋ねるまでもなくわかりきっていた


私のお尻に生えた尻尾
それが何よりも雄弁に物語っている




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作り変えられたのだ
あの化物と同種の生き物に


それは体だけじゃなくて、心も
あの化物と同じ、浅ましいケダモノに




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もっとも、わかる事と言えばそれだけだった
私は自分が何に変わってしまったのかはわからなかった


わからないと言えば、彼女がなぜ
ここに居るのかもわからなかった


あの人骨は誰なのかもわからなかった
私がここに来た時に交わされた
挨拶の意味もわからなかった


何もかも、わからない事だらけのままだった




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でも、なぜかそれを聞く気にはなれなかった


知らなくてもいいと思った





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私はここで、愛される


狂った彼女に愛される


大切な大切な宝物のように


誰にも奪われないように


牢屋に大切にしまい込まれたまま




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それで、よかった






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よかったのに






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その日も、私は彼女と肌を重ねあっていた
二匹で熱い吐息を吐き出しながら
身体を絡みつかせていると
突然洞窟中に轟音が鳴り響いた


音のした方に目を向ける
私がかつて穴をあけた壁
そして綺麗に塞がれたはずの壁が、
またぽっかりと穴を開けている


中から出てきたのは、屈強な冒険者達だった
その手には剣がぎらりと光っている


本能的な恐怖を感じた
あの剣は、何か、嫌だ


「…まさか本当に居るとはね」

「しかも二匹。交尾の真っ最中かしら?」

「え、ええと…女の子は……」

「……あそこに骨があるわ」

「っ……手遅れ…でしたか……」

「仕方なかったのよ。行方不明になってから
 何カ月も経ってるんだし」



「でも、せめて…敵は取ってあげないとね!!」



剣を持った女が飛びかかってくる
突然の事にまるで反応できない私
女が剣を振り下ろす
私はそれをただ茫然と眺めるしかな


「っっっ!!」


刹那、視界が一文字に横へずれる
私は彼女に突き飛ばされていた

彼女は怒りに爛々と目をぎらつかせながら
闖入者を睨みつける


「また、邪魔しに来たの……!」

「なんで…どうしてほおっておいてくれないの…!」


彼女の言葉に、冒険者の一人が言葉を返す


「お互いに不可侵ならそれでよかったのよ。
 でも、アンタここに迷い込んだ
 女の子食べちゃったでしょ?」

「食べてない…!」

「じゃあそこの人骨は何よ」

「あの子は…!私の……」



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「恋人よ……!!」






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頭の中が、真っ白になった






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なんとなくそんな気はしていた
だって、あの人骨は、食べられたにしては
綺麗に横たわるように眠っていて

この何もない牢屋で、あの骨だけが
特別扱いで布の上に置かれていた


でも、でも、でも


知りたくなかった
この子に恋人が居たなんて


だって

だって

だって……





私をあんなに貪ったのに!!!





怒りでわけがわからなくなる
身体が沸騰して熱が膨れ出す

溢れる衝動そのままに、
私は絶叫ととともにその熱を解き放った



「しまっ…!ファイヤーブレスッ…!」

「っっ!!」

「ぎゃぁぁあ゛あ゛ぁぁあ゛ぁっ!!!!」



私の口から放たれた劫火は
視界の全てを炎で染めた


じゅうじゅうと肉が焼ける…否、融ける音がして
人形の影が崩れ落ちていく


それでも私の怒りは収まらず
息の続く限り炎を吐き出し続けた



「はぁっ……はぁっ……!」



再び視界が蘇った時、冒険者は消えていた
あの嫌な感じの剣だけを残して


それでも怒りは収まらなかった
なぜって?だってあの人骨は消えずに残っていたから


私はさらに息を大きく吸い込んだ
その様子を見て、彼女が私と骨の間に滑り込む


「…どいて」


「いやよ」


「…どいて!!!」


「いやよ!」


「生きてる私よりあの骨の方が大切なの!?
 今すぐ選んでよ!私をとるかあの骨をとるか!」


「…なんで選ばなければいけないの!」


「私が居ればいらないじゃない!」


「選ぶ必要なんてないじゃない!」


「だって、あの骨も」


「貴女も……」



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「どっちも貴女なんだから!!!」







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予想だにしなかった言葉に、
私の動きがびたりと止まる


今、彼女は何を言った?
あの骨が、私?
私が、あの骨?


彼女は大きく息を吐き出すと、
ぽつりぽつりと語り出す




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かつて、まだその子が骨じゃなかった頃の話を






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生まれた時から独りぼっちだった
暗い、暗い洞窟の奥で自我が芽生えた私は、
そこでひっそりと生きていた

希望もなかったけれど不満もなかった
ううん、もう少し詳しく言うなら、
希望も不満も知らなかったというのが正しい


元々竜は穴を掘って棲み処を構える
洞窟にはコボルトやオークといった
劣等モンスターが居たから餌にも事欠かない
本能に従って漫然と暮らしていくには
何の不自由もなかった


このまま私は、この暗闇の中で悠久の時を
独りで過ごしていくのだろう
それはそれで悪くないと思っていた



なのに…そんな暗い平安を、一人の少女がぶち壊した



『た、助けてぇぇええ〜〜〜っ!!』



何時ものように蹲って寝ていると、
聞き覚えのない声が聞こえた

声のする方に目を向けると、
巻き毛の愛らしい小動物が駆け回っている

見た事のない生き物だ
ただ、脈々と受け継がれてきた竜の遺伝子が、
それが『ニンゲン』という生き物である事を教えてくれた


『ぎゃぁああっ!!ど、ど、ど、ドラゴン!?』


目と鼻の先まで近づいてきたニンゲンは、
私の姿を見て愕然とした表情を浮かべる
そして、次の瞬間何をしたかと言うと……


寝た


『あ、もういいです。うん。
 コボルトとかオークにやられるのは流石にやだけど』

『竜ならいいです。うん。諦めます』

『……っ』



『さぁ私を食えぇええっ!!!』



頼んでもいないのに餌になる事を申し出るニンゲン
はっきり言って不気味だった
私は呆れながら言葉を返す


『…いや、食べないけど。なんか怖いし』

『マジで!?多分私美味しいよ!?』

『……食べられたいの?』

『いやいや滅相もございません!!』


奇妙な掛け合いを交わしていると、
ニンゲンが駆けてきた方向から砂煙が巻き起こる

見れば、いつも餌として美味しくいただいている
コボルトの群れだった
もっとも、コボルトは私の姿を目に留めると
慌てて方向転換して逃げ出し始める


『…貴女が連れてきてくれたの?』

『え?あ、うん。なんか奴らの縄張りに
 うっかり入っちゃったみたいで』

『ありがとう。ちょっと食べてくる』


言葉を返しながら私は動き出すと、
瞬く間に距離を詰めて、
コボルトの踊り食いを堪能する事にした



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腹が膨れて満足した私は、
ニンゲンとの会話を試みた


『どうしてこんなところに?』

『いやー、私近くの村に住んでるんだけどさ。
 トレジャーハンターを目指してるんだよね!』

『で、この洞窟はそんなに強いモンスターも出ないし、
 初心者冒険者の修行場としてはうってつけな訳!』

『…その割には、貴女は生死の境を
 彷徨っていた気がするけれど』

『あ、あれはほら、たまたまだよ。
 一対一だったら死闘の末なんとか勝てる』

『…ここ、貴女には早いんじゃない?』

『ここ以外に修行できる場所ないんです!
 辺境もいいところなんで!!』

『あ、そうだ!貴女ここに住んでるんだよね!』

『ええ』

『決めた!ここを、私のキャンプ地とします!』

『やられそうになったらとりあえず
 ここに逃げ込めば大丈夫だもんね!
 というわけでお世話になります!』

『…貴女、ちょっと頭おかしいんじゃないの?
 それともニンゲンってみんなこうなの?』

『私はごく一般的かつ標準な人間だよ?』

『……そう。じゃあニンゲン全般がおかしいのね』


こうして少女は、頻繁に私のもとを訪れるようになった
レベルが上がって独り立ちできるようになるまで、
ここで修行するらしい

私は呆れかえりながらも、居座る彼女を
追い出そうとはしなかった



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ずっと、独りぼっちで生きていくと思っていた


それでいいと思っていた


でも、私は知ってしまった


話す相手がいる事の喜びを




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私はそれに夢中になった


ころころと表情が変わるのが面白かった


楽しそうに喋る笑顔が愛らしかった


疲れて私にもたれかかった寝顔が愛おしかった


夢を語るその横顔が誇らしかった




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ああ、なんて素晴らしい


ずっと、こんな日が続けばいいのに


ずっと、彼女と一緒に居られたらいいのに




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日に日に想いは募っていった


会えない日は気が狂いそうだった


いつしか独りで居るのが苦痛になった


会えた日は全てが輝いて眩しかった




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私は、彼女を独り占めしたくなった


でも、彼女は、彼女は……





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私から、逃げようとした







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『…旅に出る?』

『うん!おかげさまでもうコボルトに囲まれても
 フルボッコできるようになったからね!』

『そろそろ私も一冒険者として
 新たなる冒険に踏み出そうと思うわけですよ!』

『…次はいつ帰ってくるの?』

『うーん。当分帰ってこないかなぁ。
 とりあえず世界一周したいし!』

『…もう、戻ってこないの?』

『んー。この村にはあんまり未練ないしなぁ。
 でも、貴女にはたまに会いたいかも』




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『じゃ、次はキリよく5年後って事で!!』







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今まで一人で生きてきた
それで問題ないと思っていた


でも、彼女と会って私は弱くなった
独りで生きる事に耐えられなかった


5年


竜にとってはひどく短い年月


でも、今の私にとっては死刑宣告だった




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そして、私は竜だった


欲しいものは全て、宝物として蒐集する


業の深い竜だった




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私は彼女を閉じ込めた

丁度、私は鉄格子がある独房のありかを知っていた

私はそこで彼女を飼うことにした

愛しい愛しい宝物

これからはずっと一緒に居られる

私は一人喜んだ




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彼女は喜んでくれなかった


泣き喚き、出してほしいと懇願した


私はそれを聞き入れなかった


だって、ここから出したら、彼女はもう
二度と戻ってこないだろうから




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少しずつ彼女は変わっていった


表情が消え、目は落ち窪み、活力が失われていった




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私と目を合わせればいつも同じ言葉を繰り返す


『出して』


それ以外の言葉を口にすることはなくなった




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そして、そんなやり取りが続いたある日…






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彼女は、自ら命を絶った






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いつものように餌のコボルトを捕まえて
戻ってきたら、彼女は冷たくなっていた


口が真っ赤に染まっている
噛みちぎったであろう舌が
だらんと口からこぼれていた



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洞窟中に、私の号泣が響き渡る


絶叫は落盤を生み、洞窟の地形を激しく変えた


それでもかまわず叫び続けた


叫ばずにはいられなかった





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外の世界で噂になったのだろう


やがて私の存在を聞きつけた冒険者達が


洞窟に乗り込んでくるようになった


鉄格子を守るように構える私を見て


その奥に押し入ろうと皆が皆剣を構えた




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宝物があると思ったのだろう


そしてその推測は正しかった


確かにそこには宝がある


私だけの、大切な、大切な、大切な




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あの子の、亡骸(なきがら)







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私は来る日も来る日も待ち続けた


呪いを一心に唱えながら待ち続けた


輪廻転生


私は彼女の運命に呪いをかける


いずれ彼女が生まれ変わった時


再び、自らの足でここを訪れるように





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そしたら今度は間違えない


もし再び会えたなら、即座に血を流し込もう


私の中に流れる熱い血潮を流しこもう


もう二度と、死が私達を分かつことがないように





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お願い、だから、早く、来て







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そして、数百年の月日が流れ――


彼女は再び、私の前に姿を現す







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「だから、貴女はこの子の生まれ変わりなの」

「私からしたら、どちらもかけがえのない貴女なのよ」

「だからお願い、私からこの骨を取らないで」


そう言って彼女は泣いて縋った
私は骨をちらりと見やる


あれは、前世の私の成れの果て
つまりは結局、どちらも私


彼女のこれは、浮気じゃない
なるほど、そういう事だったら…



「納得するわけないでしょ」



私は彼女を突き飛ばし、その骨に向かって劫火を吐きかける
一瞬のうちに骨は掻き消えた


「どっ……」

「どうして!!!!」


「むしろ、貴女どうしてわからないの?
 私を竜に変えたのは貴女でしょう?」

「竜だったら当然の考え方じゃない」

「私は、貴女を独り占めしたいの」


「過去の私の死体と分け合うなんて、絶対に嫌」


私は彼女を抱き締める


「大丈夫。過去の私の分まで、
 私が貴女を貪ってあげるから」

「安心して喘ぎまくって」


気づけば立場は逆転していた
泣きじゃくる彼女をひたすら鳴かせる
彼女の声が嗄れるまで、私は彼女をかき回し続けた




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「好きだよ。かわいいかわいい私の宝物」






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「だから、誰にも渡さない」







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「例え、過去の自分にだって」







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そこは取り立てて何もない辺境の村。
だが、かつてこの村には一つだけ。
場にそぐわない逸話があった。


村にほど近い山の麓にある洞窟。
その奥に紅き竜が潜んでいると。


だがそれも昔の話。竜は人々の記憶から消えた。
いつしか洞窟は轟音とともに塞がり、
そこに洞窟があった事を知る者はいない。


だが、実はまだそこに居るのだ。
出口のない暗闇の中、お互いの肉を貪りあう二体の竜が。


洞窟の奥の紅き竜。
竜は宝物となって闇に消えた。



(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2016年03月28日 | Comment(5) | TrackBack(0) | オリジナル百合SS
この記事へのコメント
お久しぶりのオリジナルSS、楽しませていただきました!
血を流し込むところとか最高です!
Posted by at 2016年03月28日 21:22
いいベッドタイムストーリーになったわ。おやすみなさい。
Posted by at 2016年03月29日 00:38
普段の咲ss(特に久咲)もすばらですけど、たまに書かれるこのオリジナルのssも最高です‼
ヤンデレssが癒しになるんで、これからも更新待ってます‼
Posted by momo at 2016年03月29日 03:07
竜人(?)来た! ファンタジーも夢が膨らみますな。
エルフとダークエルフとか。敗北に定評のある女騎士とか。亜人が奴隷として売買されてるとか。

そう言えば夢の内容を書き記すと明晰夢を見られる様になるとか。ぷちさん主人公化来る?
Posted by at 2016年03月29日 06:19
こういった夢をみてみたい
Posted by at 2016年04月04日 00:36
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