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【咲-Saki-SS:爽揺】揺杏「年月は、私達の在り方を変えて」【ヤンデレ】
<あらすじ>
なし。リクエストがあらすじです。
<登場人物>
岩館揺杏,獅子原爽
<症状>
・依存(軽微)
・狂気
・異常行動
<その他>
次のリクエストに対する作品です。
・揺杏ちゃんと爽君。
小さい頃はじゃれ合いで取っ組み合いしてたけど、
成長するに連れて体格差が開いて、
いつの間にか爽を簡単に
抑え込める事に気付いた揺杏が
『爽ってこんな小さかったっけ?』とか
『私が本気出したら爽は
抵抗出来ないんだよな……』とか
思っちゃってドキドキモヤモヤして
取っ組み合いを避けるようになったお話。
それで揺杏宅でシャワー借りた爽君が
お前の服デッカいなーとか言って裸ワイシャツ云々。
その他の甘酸っぱさ(?)やヤンデレ要素はぷち任せ。
※R18にするか迷う程度の婉曲的な性描写があります。
苦手な方はご注意を
※揺杏の取った行動は現実で真似しないでください。
--------------------------------------------------------
爽と私の関係。
それは、わかりやすく言えば幼馴染で。
もう少し踏み込んでいえば姉妹みたいなもんだった。
どこに行くにも二人でセット。
時には喧嘩したりする事もあったけど、
そのたびにまた仲直りして。
結局はずっと二人で居た。
そう、まるで片時も離れない、家族のように。
そんな私達だったから。
気づくのが遅れたのかもしれない。
もう、じゃれ合って取っ組み合うような年でもない事に。
もしそれを続ければ――
――いかがわしい行為に発展するかもしれない事に。
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
『年月は、私達の在り方を変えて』
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
先に気づいたのは私の方だった。
展開はいつも通り陳腐。
爽が、また突拍子もない事を
思いついたのがきっかけだった。
「ユキの奴もアイドルとして
少しずつ開花し始めた」
「ふむ」
「となると、邪な目を向ける奴も出てくるだろう」
「ふむ」
「そんな時、私達がいつも
そばに居てやれるとは限らない」
「で?」
「護身術だ!自分より体格のいい男に
襲われても大丈夫なように、
護身術を覚えさせよう!」
「はあ」
「というわけでいくつか覚えて来たから
加害者兼被害者になってくれ!」
「それ、お前が技かけたいだけじゃないの?」
つまりは、ユキに護身術を教えるために
自分がその技を身につける必要があるから、
私を実験台にしたいという事だった。
「…ま、いいけどガチで痛いのは勘弁な。
寸止めでよろしく」
「わかってるって。じゃあまずは、
出会い頭に目潰しを狙う奴から行こう」
「ちょ、いきなり殺しにかかってるじゃん」
「そりゃ護身術だしなぁ。
普通にやったら勝てない相手にやるんだから
必然急所を狙う事になるんじゃないか?」
「暴漢に襲われるなり目を潰しに来る
アイドルとか嫌すぎるんだけど」
「そこはまあ、やっちゃったら
秘密裏にもみ消す方向で」
「ヤクザか」
爽が見つけてきた護身術は、
どれもガチで相手を再起不能にするような
危険な物ばかりだった。
もっともいざ実験してみると、
その技が私をとらえる事はなく。
指は空しく空を切る。
「ちょっと揺杏、本気で逃げ過ぎだって。
それでも卑猥な暴漢か!」
「もっとこう、いやらしく嘗め回すような視線で
軽薄に近寄って来いよ!」
最初から全力回避の姿勢で構える私に、
爽が不満そうに檄を飛ばす。
「無茶言うなって」
いくら寸止め前提とはいえ。
うっかり爽がミスったら、
私の人生から光が消える。
「んー、確かにこっちの手を先に
教えちゃったのはまずかったな。
ビビるのも仕方ないか」
「じゃあこうしよう。こっちが出す技は、
鼻骨を掌底で潰す技。
しかも、万が一当たっても大丈夫なように、
この鉄仮面をかぶってもらう」
「あー、昔ドンキで買った用途不明の鉄仮面ね。
ていうかそれ、もし喰らったら
鉄で鼻を強打される事になるんじゃね?」
「そっか。逆に攻撃力上がるだけかもな。
下手したら鼻ひしゃげるかも」
「駄目じゃん」
「んー…そうだなぁ。あ、じゃあ
ぬるいアイスノンを鼻につけて
包帯でグルグル巻きにしよう!」
「これならゲルっぽいし、当たっても
確実に衝撃を抑えられるはずだ!」
「あのさ、私も一応うら若き
女子高校二年生なんだけど。
何が悲しくてそんなダッセー
恰好しなきゃいけないわけ?」
「ユキのためだと思って我慢しろって」
「…後で攻守交替しろよ」
口では渋々承諾したものの。
なんだかんだ、私もこの手のバカは嫌いじゃない。
常温のアイスノンを持ってくると、
鼻に装着して固定する。
よそ様にお見せできない変態の完成だ。
ていうか、なんで私がダメージ
喰らう事前提になってんだ?
こうなったら絶対に爽を組み伏せてやる。
そして始まる、真剣勝負の殺し合い。
「…シッ!!」
「っ、喰らうかっ!!」
当てても大丈夫、そう判断したのだろう。
どこか遠慮がちだった爽の動きが
一気に鋭さを増した。
上等だ。こちらも一発くらいはお駄賃と考えて、
本気で爽を組み伏せに行く。
数分間のガチバトルの結果、
戦いを制したのは――
――私だった。
「殺った(とった)!」
全体重を乗せた掌底を辛くも躱した私は、
そのままバランスを崩した爽を
後ろから羽交い絞めにする。
こうなりゃもうこっちの勝ちだ。
体格で劣る爽には、払いのける力はない。
「さーて、茶番に付き合わされた
代償を払ってもらおうか」
「その、ちっこい体でさ」
「くっ…やめろ変態!
私をどうするつもりだ!!」
ねちっこく笑い掛ける私の声に、
爽が手足をジタバタさせる。
いつもの事ながらノリいいなこいつ。
「で、これでおしまい?
ここから脱出する護身術とかは
ないわけ?」
「あるかもしれないけど見てないな。
ユキが暴漢に捕まる姿なんて
想像したくないし、
捕まる前に一撃食らわして
逃げる技ばっか見てた」
「あー…なんとなく気持ちはわかっけど。
でも、実際はこっちの
パターンの方が多いんじゃない?」
「ふむ。じゃあこの状態でも
本気でやったら払いのけられるのか
実験してみるとしようか」
「あいよ。バトル続行で」
今思えばここでやめておけばよかったと思う。
でも、私達は続けてしまった。
そしてその取り組みは。私に、
気づいてはいけない気づきを与えてしまう。
(…こいつ、こんな小さかったっけ)
単純に身長差がある事、そんな事はわかってた。
でも、いざこうして組み伏せてみると、
その小ささを肌で感じる。
(…そっか)
(もし私が、本気で爽を襲ったら)
(爽は抵抗できないんだな)
顔を真っ赤にしながらもがく爽。
でも拘束はびくともせず。
ただ私の腕の中で荒い息を吐く。
締め上げる力を少し強める。
爽は小さく呻きながら、
苦悶の表情を浮かべて見せる。
不意に、ごくりと喉が鳴った。
もし、もしこのまま。私が。爽を。
本気で。犯そうとしたら。
爽は。なすすべもなく私に――
――犯される。
「……っ」
気付けば私は、爽を腕から解放していた。
「う〜っ……あれ?どうした揺杏?」
唐突に束縛を外され。
きょとんとした顔で爽が私を覗き込む。
慌ててそっぽを向きながら、
ぶっきらぼうな言葉を吐いた。
「や、もう充分っしょ。
捕まったらジエンドって事で」
「確かになー。岩みたいにびくともしなかったし。
揺杏岩と名付けよう」
「私も一応、花も恥じらう女子高生なんだけど?」
いつも通りのバカ話を続けながらも。
胸の鼓動を抑える事ができずにいた。
まだ腕に残る爽の感触。
鼻をくすぐる爽の匂い。
私はそいつに欲情した。あまつさえ、
一瞬とはいえ、欲望に身を任せそうになった。
(…気づきたくなかったなー)
自分の中に、こんな醜い欲望が潜んでいる事に。
しかもそれを満たそうと思えば、
簡単に実現できてしまうという事実に。
気づきたくなかった。
でも、気づいてしまった。
そして気付いてしまった以上――
――もう、爽とじゃれ合う事はできないだろう。
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--------------------------------------------------------
爽の事を今まで通り見る事ができなくなった。
私の中で、あいつは『そういう』対象になっちゃったから。
でもそれはあくまで私視点の話。
爽は今まで通りに私に絡んでくる。
無理もない話だろう。いくら
女性同士の恋愛がそこまで珍しくないとはいえ。
オムツしてるような年から一緒に居た幼馴染が、
自分を性的な目で見てるなんて誰が思う?
おかしいのは爽じゃない。私の方なんだ。
わかってはいる。わかってはいるんだけど。
爽の無防備さは、どこまでも私の欲望を刺激するんだ。
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私は必死で抗い続けた。
胸のうちで暴れ続ける衝動に。
でも、欲望に打ち勝つにはあまりにも。
あまりにも、爽との距離が近過ぎた。
それこそ、毎日のように続けられる
爽の無意識な誘惑に。
少しずつ、少しずつ私は
追い詰められていく。
--------------------------------------------------------
そして。自分でも情けない事に。
あっさりと、欲望に転ぶ日がやってきたわけだった。
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--------------------------------------------------------
それは、雨に降られた日の事だった。
天気予報が大外れで、
二人して雨の中を突っ走る。
とりあえず避難しようってなって、
私の家に駆けこんだ頃には、
私達は二人とも濡れ鼠になっていた。
「びしょ濡れだなー。シャワー借りていい?」
「あいよ。着替えとか準備してくるから
先に入ってきなよ」
「了解」
何気ない会話。爽は気づいただろうか。
私が密かに、一緒に入る事を回避した事に。
正直限界だったんだ。
濡れた髪。濡れた肌。
肌に張り付いたシャツは薄く透けていて。
普段は隠されているはずのブラの線まで
くっきりと映し出していた。
前はそんなの全然意識しなかったのに。
これがユキだったら、目の前で裸になられても
全然なんとも思わないのに。
相手が、爽だって言うだけで。
まるで自分の性別が逆転してしまったかのように、
何でもかんでも『そういう』目で見てしまう。
(駄目だ駄目だ。早くしないと爽が出てくる)
私は慌ててかぶりを振った。
うっかり出てくるところにカチ会ったりしたら。
裸なんて見せられたら、
何しちゃうかわかったもんじゃない。
ざっとクローゼットに目を通すと、
だぼっとしたスウェットを取り出す。
できるだけ体のラインが出ない奴を爽用に。
私用に普段着のワイシャツを取り出して。
持ってきた着替えを脱衣籠にほおりこむと同時に、
風呂場の扉がガラリと開いた。
「ふー、スッキリした!」
「っ!!」
慌てて肌から視線を逸らす。
幸い爽は気づかなかったのか、
何気ない口調で話し掛けてきた。
「悪いね。どっちが私用の奴?」
「そっちのフリーサイズのスウェット」
「そりゃそっか。揺杏のワイシャツなんて着たら
彼シャツ状態だしな」
「あのさ、私も一応女子なんだけど。
ていうかいつまでも裸で居ないで
さっさと着なって」
できるだけ裸の爽から目をそらして、
自分の着替えに没頭する。
目の前に裸の爽が居る。
腕力にものを言わせれば簡単に押し倒せる。
そんな事実からも目を背けながら。
「はいはい、揺杏って意外とお母さんだよな」
「言ってろ。じゃあ私も入ってくるから」
「あいよー」
風呂場に視線を固定する。
そのまま風呂場に消えた私は、
爽がどちらの服を手に取ったのか
見る事はなかった。
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「…っ…で、なんでそっち着てるわけ?」
「ほーらほら。憧れの裸ワイシャツだぞー」
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一切の煩悩を洗い流すかのように、
随分と長めのシャワーを浴びた私。
そんな私を待ち受けていたのは、
なぜかワイシャツの上だけを着た爽だった。
「いや、マジで何してんの?」
「こんな機会でもなければ着ないだろうしさ。
一度は経験しておこうかと思ってね」
なんて言いながら笑う爽。
ご丁寧にわざわざ着崩してるもんだから、
いろいろと見えちゃいけない部分が
チラチラと見え隠れしている。
「そういうのは彼氏にやってやりなよ」
「だから今やってるだろ?」
「いつの間に私は性転換したんですかー」
「こんな男物みたいなワイシャツ
着てる方が悪いんですー」
「ていうか揺杏の服でっかいな!
いや、むしろ私がちっさいのか!
これ、本当に彼氏彼女くらい
差があるんじゃないか?」
こっちの気も知らないで、
爽はいつものノリを繰り返す。
私はもうとっくに限界だって言うのに。
膨れ上がる欲望を必死で
押さえつけてるって言うのに。
なのに。
「っ、私は、爽の、彼氏じゃありませんー」
「…揺杏はこういう時かったいなー。
ちょっとくらい乗ってくれてもいいと思いますー」
こんな、爆弾発言を投げて返してくる。
その返事を聞いた時。私の中で、
何かがプチンと千切れて飛んだ。
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「……へえ」
「爽は私に乗っかってほしいんだ?」
「おうさ。甘酸っぱいカレカノプレイと
洒落込もうじゃないか」
「……」
「ふーん。ま、仕方ないから乗ってやるさ」
「でも……」
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『後から、泣いても嫌がってもやめないから
そこんとこよろしく』
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へらへらと笑っていた爽に詰め寄ると、
ワイシャツを力任せに引っ張った
ブチブチと音を立ててボタンが千切れ
爽の胸が露わになる
驚いたように目を見開く爽の唇を
乱暴に塞いで貪った
もがくように身をよじる抵抗も空しく
爽は唇を奪われ続ける
一しきりその柔らかさを蹂躙したら、
無理矢理ワイシャツを剥ぎ取った
身を包む布が一切なくなった爽は
咄嗟に胸と股間を隠す
細っこい手首を掴んで強引に秘密を暴いた
爽は呻きながら秘部を晒すしかない
そこからはよく覚えてない
ただ、ただ私は夢中になって
逃げようとする爽に組み付いて
力任せに足を開いて
そして
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ようやく正気に戻った時
震える私の中指には
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取り返しのつかない罪を犯した事を示す
鮮やかに赤い液体が
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てらてらと、私の罪を主張するかのように
光を反射して輝いていた――
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とんでもない事をしてしまった
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自らの悍ましさ(おぞましさ)に震え
罪の意識に潰れそうになる私に
爽の視線が突き刺さる
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どんな視線も、どんな罵倒も受け入れよう
爽が望むなら命をもって償おう
そんな事を考えていた私は、
爽の表情を見て目を見開いた
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爽は、なぜか笑っていた
そしてこう言ったのだ
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『ったく、やっと襲ってくれたか』と
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二の句も告げずたじろぐ私を前に
爽は今まで見た事もないような
蠱惑的な笑みを浮かべて
滔々(とうとう)と、
唄うように語り始めた――
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揺杏と私の関係
それは、わかりやすく言えば幼馴染で
もう少し踏み込んでいえば姉妹みたいなもんだった
どこに行くにも二人でセット
時には喧嘩したりする事もあったけど、
そのたびにまた仲直りして
結局はずっと二人で居た
そう、まるで片時も離れない、家族のように
ただ、私と揺杏が違ってたのは
異形をその身に宿していた事
小さい頃から事故や事件に
巻き込まれる事が多かった私は、
そのたびにカムイに助けられてきた
まだ小さかった私は、自分に
他の人間にはない力がある事を喜んで
その力を生かそうと、たくさんの厄介事に
首をつっこんできた
その中には当然、肉欲が引き起こした事件もあった
そう、それは例えを挙げるなら――
――女が、女を襲うレイプ事件も
--------------------------------------------------------
だから、私は知っていた
優しさも、思いやりも、これまで大切に築いた絆も
全て、全て無にしてしまう程に
荒々しい欲望の存在を
知っていたんだ
直接現場を何度も見たから
さらにはカムイが拍車をかけた
パウチカムイ、それは性欲を司る神
そんな力を不用意に手にしたら、
無知で浅はかな小娘が何をするか
容易に想像できそうなもんだろう?
だから、私は知っていた
揺杏が時折私に向ける、
視線に籠もった恥熱の意味を
もしその熱が揺杏を支配したら、
どうなってしまうのかを
私は知っていた 知っていた 知っていたんだ
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知っていたから…揺杏を誘惑した
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揺杏は必死で耐えていた
私との関係を壊すまいと耐えていた
自分がその気になりさえすれば
簡単に私を犯せると
誤認しながら、それでも誘惑を退けた
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本当は完全に逆なのにな
もし私が望むなら、揺杏なんていつでも殺せる
指一本触れずに血塗れの肉塊に変える事ができる
当然指一本動かせないように拘束する事もできるし、
私を犯す事以外何も考えられない獣に貶める事もできる
--------------------------------------------------------
ま、だからこそ…揺杏から襲ってほしいわけだけど
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「…という事で、誘惑し続ける事数か月。
ようやくヘタレ揺杏が
女を見せてくれたってわけだ!」
えっへん、とばかりに胸を張る爽。
その満足げな姿に罪悪感は融け出していって。
代わりに、それを上回るモヤモヤがこみ上げてくる。
「…や、マジで意味わかんないんですけど。
こっちの気持ちがわかってたんなら、
素直に告白でもしてくれりゃいいじゃん」
「んー。さっきも言ったけど、
私からって言うのは嫌だったんだよね」
「…爽ってそんなお姫様思考だったっけ?」
「そういうわけでもないんだけど。
もし私が、本気で揺杏を落とそうと思ったら――」
「揺杏の気持ちとか、そういうの全然関係なしに。
簡単に手に入っちゃうからさ」
ぞくり、と肌を悪寒が撫でた。
爽は少し陰りを孕んで微笑む。
「…だから。初めては揺杏からがよかったんだ。
私が、愛を疑わなくて済むように」
「揺杏を『作り変え』ちゃったのかも知れない。
そうやって悩まなくて済むように」
「……」
「…んなくだらない事で悩むなっての」
爽の奴が、小さい頃から
普通じゃなかったのはわかってる。
普通の人間なら絶対に解決できないような事件を、
あっさり解決してきた事も。
それが理由で周りから気味悪がられていた事も、
幼馴染だから全部知ってる。
もし仮に、それが不可思議な力のおかげだとして。
その力を爽が自由自在に使えたとして。
それを使って、私を手籠めにしようとしたとしても。
私は普通に受け入れるだろう。
それは、洗脳とかそういう話じゃなくて。
そういうキショい力も含めて、爽自身なんだから。
「だからさ……」
「そーゆーのも含めて受け止めてやるから、
素直にぶつかってこいっての」
「……っ」
ぶっきらぼうな私の言葉に、
爽は驚いたように両眉を上げた。
でもやがて、噛みしめる様に瞼を閉じた後。
小さく、小さく呟いた。
「…そっか。ありがとな」
そして爽は目を開く。
まるで憑き物が落ちたかのように、
その目はキラキラ輝いていた。
うん、いつもの爽の目だ。
それでいい。お前はそうやって
笑ってるのが一番だ。
「で?爽の悩みは解消されたわけ?」
「おかげさまで。というわけで、
ここからは攻守交代だな!」
「はいはい。できるだけ優しくしてくださいよっと」
「私のは力任せにぶち破ったのに?」
「自分でそう仕向けたんだろ?
私はそういうマゾ的趣味ないんでー」
いつも通りのかるーいやり取りを口にしながら、
私は爽に体を開く
爽はニヤリと不敵に微笑むと…
そのまま私に覆いかぶさって来た
--------------------------------------------------------
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爽と私の関係。
それは、わかりやすく言えば幼馴染で。
もう少し踏み込んでいえば姉妹みたいなもんだった。
どこに行くにも二人でセット。
時には喧嘩したりする事もあったけど、
そのたびにまた仲直りして。
結局はずっと二人で居た。
そう、まるで片時も離れない、家族のように。
でも、いつしか年月は私達の在り方を変えた。
そう、それは『家族のように』じゃなくて――
――『本当の家族』へと。
あれから数年が経った今。
爽は変わらず傍に居る。
愛すべき、一生添い遂げる伴侶として。
(完)
なし。リクエストがあらすじです。
<登場人物>
岩館揺杏,獅子原爽
<症状>
・依存(軽微)
・狂気
・異常行動
<その他>
次のリクエストに対する作品です。
・揺杏ちゃんと爽君。
小さい頃はじゃれ合いで取っ組み合いしてたけど、
成長するに連れて体格差が開いて、
いつの間にか爽を簡単に
抑え込める事に気付いた揺杏が
『爽ってこんな小さかったっけ?』とか
『私が本気出したら爽は
抵抗出来ないんだよな……』とか
思っちゃってドキドキモヤモヤして
取っ組み合いを避けるようになったお話。
それで揺杏宅でシャワー借りた爽君が
お前の服デッカいなーとか言って裸ワイシャツ云々。
その他の甘酸っぱさ(?)やヤンデレ要素はぷち任せ。
※R18にするか迷う程度の婉曲的な性描写があります。
苦手な方はご注意を
※揺杏の取った行動は現実で真似しないでください。
--------------------------------------------------------
爽と私の関係。
それは、わかりやすく言えば幼馴染で。
もう少し踏み込んでいえば姉妹みたいなもんだった。
どこに行くにも二人でセット。
時には喧嘩したりする事もあったけど、
そのたびにまた仲直りして。
結局はずっと二人で居た。
そう、まるで片時も離れない、家族のように。
そんな私達だったから。
気づくのが遅れたのかもしれない。
もう、じゃれ合って取っ組み合うような年でもない事に。
もしそれを続ければ――
――いかがわしい行為に発展するかもしれない事に。
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
『年月は、私達の在り方を変えて』
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先に気づいたのは私の方だった。
展開はいつも通り陳腐。
爽が、また突拍子もない事を
思いついたのがきっかけだった。
「ユキの奴もアイドルとして
少しずつ開花し始めた」
「ふむ」
「となると、邪な目を向ける奴も出てくるだろう」
「ふむ」
「そんな時、私達がいつも
そばに居てやれるとは限らない」
「で?」
「護身術だ!自分より体格のいい男に
襲われても大丈夫なように、
護身術を覚えさせよう!」
「はあ」
「というわけでいくつか覚えて来たから
加害者兼被害者になってくれ!」
「それ、お前が技かけたいだけじゃないの?」
つまりは、ユキに護身術を教えるために
自分がその技を身につける必要があるから、
私を実験台にしたいという事だった。
「…ま、いいけどガチで痛いのは勘弁な。
寸止めでよろしく」
「わかってるって。じゃあまずは、
出会い頭に目潰しを狙う奴から行こう」
「ちょ、いきなり殺しにかかってるじゃん」
「そりゃ護身術だしなぁ。
普通にやったら勝てない相手にやるんだから
必然急所を狙う事になるんじゃないか?」
「暴漢に襲われるなり目を潰しに来る
アイドルとか嫌すぎるんだけど」
「そこはまあ、やっちゃったら
秘密裏にもみ消す方向で」
「ヤクザか」
爽が見つけてきた護身術は、
どれもガチで相手を再起不能にするような
危険な物ばかりだった。
もっともいざ実験してみると、
その技が私をとらえる事はなく。
指は空しく空を切る。
「ちょっと揺杏、本気で逃げ過ぎだって。
それでも卑猥な暴漢か!」
「もっとこう、いやらしく嘗め回すような視線で
軽薄に近寄って来いよ!」
最初から全力回避の姿勢で構える私に、
爽が不満そうに檄を飛ばす。
「無茶言うなって」
いくら寸止め前提とはいえ。
うっかり爽がミスったら、
私の人生から光が消える。
「んー、確かにこっちの手を先に
教えちゃったのはまずかったな。
ビビるのも仕方ないか」
「じゃあこうしよう。こっちが出す技は、
鼻骨を掌底で潰す技。
しかも、万が一当たっても大丈夫なように、
この鉄仮面をかぶってもらう」
「あー、昔ドンキで買った用途不明の鉄仮面ね。
ていうかそれ、もし喰らったら
鉄で鼻を強打される事になるんじゃね?」
「そっか。逆に攻撃力上がるだけかもな。
下手したら鼻ひしゃげるかも」
「駄目じゃん」
「んー…そうだなぁ。あ、じゃあ
ぬるいアイスノンを鼻につけて
包帯でグルグル巻きにしよう!」
「これならゲルっぽいし、当たっても
確実に衝撃を抑えられるはずだ!」
「あのさ、私も一応うら若き
女子高校二年生なんだけど。
何が悲しくてそんなダッセー
恰好しなきゃいけないわけ?」
「ユキのためだと思って我慢しろって」
「…後で攻守交替しろよ」
口では渋々承諾したものの。
なんだかんだ、私もこの手のバカは嫌いじゃない。
常温のアイスノンを持ってくると、
鼻に装着して固定する。
よそ様にお見せできない変態の完成だ。
ていうか、なんで私がダメージ
喰らう事前提になってんだ?
こうなったら絶対に爽を組み伏せてやる。
そして始まる、真剣勝負の殺し合い。
「…シッ!!」
「っ、喰らうかっ!!」
当てても大丈夫、そう判断したのだろう。
どこか遠慮がちだった爽の動きが
一気に鋭さを増した。
上等だ。こちらも一発くらいはお駄賃と考えて、
本気で爽を組み伏せに行く。
数分間のガチバトルの結果、
戦いを制したのは――
――私だった。
「殺った(とった)!」
全体重を乗せた掌底を辛くも躱した私は、
そのままバランスを崩した爽を
後ろから羽交い絞めにする。
こうなりゃもうこっちの勝ちだ。
体格で劣る爽には、払いのける力はない。
「さーて、茶番に付き合わされた
代償を払ってもらおうか」
「その、ちっこい体でさ」
「くっ…やめろ変態!
私をどうするつもりだ!!」
ねちっこく笑い掛ける私の声に、
爽が手足をジタバタさせる。
いつもの事ながらノリいいなこいつ。
「で、これでおしまい?
ここから脱出する護身術とかは
ないわけ?」
「あるかもしれないけど見てないな。
ユキが暴漢に捕まる姿なんて
想像したくないし、
捕まる前に一撃食らわして
逃げる技ばっか見てた」
「あー…なんとなく気持ちはわかっけど。
でも、実際はこっちの
パターンの方が多いんじゃない?」
「ふむ。じゃあこの状態でも
本気でやったら払いのけられるのか
実験してみるとしようか」
「あいよ。バトル続行で」
今思えばここでやめておけばよかったと思う。
でも、私達は続けてしまった。
そしてその取り組みは。私に、
気づいてはいけない気づきを与えてしまう。
(…こいつ、こんな小さかったっけ)
単純に身長差がある事、そんな事はわかってた。
でも、いざこうして組み伏せてみると、
その小ささを肌で感じる。
(…そっか)
(もし私が、本気で爽を襲ったら)
(爽は抵抗できないんだな)
顔を真っ赤にしながらもがく爽。
でも拘束はびくともせず。
ただ私の腕の中で荒い息を吐く。
締め上げる力を少し強める。
爽は小さく呻きながら、
苦悶の表情を浮かべて見せる。
不意に、ごくりと喉が鳴った。
もし、もしこのまま。私が。爽を。
本気で。犯そうとしたら。
爽は。なすすべもなく私に――
――犯される。
「……っ」
気付けば私は、爽を腕から解放していた。
「う〜っ……あれ?どうした揺杏?」
唐突に束縛を外され。
きょとんとした顔で爽が私を覗き込む。
慌ててそっぽを向きながら、
ぶっきらぼうな言葉を吐いた。
「や、もう充分っしょ。
捕まったらジエンドって事で」
「確かになー。岩みたいにびくともしなかったし。
揺杏岩と名付けよう」
「私も一応、花も恥じらう女子高生なんだけど?」
いつも通りのバカ話を続けながらも。
胸の鼓動を抑える事ができずにいた。
まだ腕に残る爽の感触。
鼻をくすぐる爽の匂い。
私はそいつに欲情した。あまつさえ、
一瞬とはいえ、欲望に身を任せそうになった。
(…気づきたくなかったなー)
自分の中に、こんな醜い欲望が潜んでいる事に。
しかもそれを満たそうと思えば、
簡単に実現できてしまうという事実に。
気づきたくなかった。
でも、気づいてしまった。
そして気付いてしまった以上――
――もう、爽とじゃれ合う事はできないだろう。
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爽の事を今まで通り見る事ができなくなった。
私の中で、あいつは『そういう』対象になっちゃったから。
でもそれはあくまで私視点の話。
爽は今まで通りに私に絡んでくる。
無理もない話だろう。いくら
女性同士の恋愛がそこまで珍しくないとはいえ。
オムツしてるような年から一緒に居た幼馴染が、
自分を性的な目で見てるなんて誰が思う?
おかしいのは爽じゃない。私の方なんだ。
わかってはいる。わかってはいるんだけど。
爽の無防備さは、どこまでも私の欲望を刺激するんだ。
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私は必死で抗い続けた。
胸のうちで暴れ続ける衝動に。
でも、欲望に打ち勝つにはあまりにも。
あまりにも、爽との距離が近過ぎた。
それこそ、毎日のように続けられる
爽の無意識な誘惑に。
少しずつ、少しずつ私は
追い詰められていく。
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そして。自分でも情けない事に。
あっさりと、欲望に転ぶ日がやってきたわけだった。
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それは、雨に降られた日の事だった。
天気予報が大外れで、
二人して雨の中を突っ走る。
とりあえず避難しようってなって、
私の家に駆けこんだ頃には、
私達は二人とも濡れ鼠になっていた。
「びしょ濡れだなー。シャワー借りていい?」
「あいよ。着替えとか準備してくるから
先に入ってきなよ」
「了解」
何気ない会話。爽は気づいただろうか。
私が密かに、一緒に入る事を回避した事に。
正直限界だったんだ。
濡れた髪。濡れた肌。
肌に張り付いたシャツは薄く透けていて。
普段は隠されているはずのブラの線まで
くっきりと映し出していた。
前はそんなの全然意識しなかったのに。
これがユキだったら、目の前で裸になられても
全然なんとも思わないのに。
相手が、爽だって言うだけで。
まるで自分の性別が逆転してしまったかのように、
何でもかんでも『そういう』目で見てしまう。
(駄目だ駄目だ。早くしないと爽が出てくる)
私は慌ててかぶりを振った。
うっかり出てくるところにカチ会ったりしたら。
裸なんて見せられたら、
何しちゃうかわかったもんじゃない。
ざっとクローゼットに目を通すと、
だぼっとしたスウェットを取り出す。
できるだけ体のラインが出ない奴を爽用に。
私用に普段着のワイシャツを取り出して。
持ってきた着替えを脱衣籠にほおりこむと同時に、
風呂場の扉がガラリと開いた。
「ふー、スッキリした!」
「っ!!」
慌てて肌から視線を逸らす。
幸い爽は気づかなかったのか、
何気ない口調で話し掛けてきた。
「悪いね。どっちが私用の奴?」
「そっちのフリーサイズのスウェット」
「そりゃそっか。揺杏のワイシャツなんて着たら
彼シャツ状態だしな」
「あのさ、私も一応女子なんだけど。
ていうかいつまでも裸で居ないで
さっさと着なって」
できるだけ裸の爽から目をそらして、
自分の着替えに没頭する。
目の前に裸の爽が居る。
腕力にものを言わせれば簡単に押し倒せる。
そんな事実からも目を背けながら。
「はいはい、揺杏って意外とお母さんだよな」
「言ってろ。じゃあ私も入ってくるから」
「あいよー」
風呂場に視線を固定する。
そのまま風呂場に消えた私は、
爽がどちらの服を手に取ったのか
見る事はなかった。
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「…っ…で、なんでそっち着てるわけ?」
「ほーらほら。憧れの裸ワイシャツだぞー」
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一切の煩悩を洗い流すかのように、
随分と長めのシャワーを浴びた私。
そんな私を待ち受けていたのは、
なぜかワイシャツの上だけを着た爽だった。
「いや、マジで何してんの?」
「こんな機会でもなければ着ないだろうしさ。
一度は経験しておこうかと思ってね」
なんて言いながら笑う爽。
ご丁寧にわざわざ着崩してるもんだから、
いろいろと見えちゃいけない部分が
チラチラと見え隠れしている。
「そういうのは彼氏にやってやりなよ」
「だから今やってるだろ?」
「いつの間に私は性転換したんですかー」
「こんな男物みたいなワイシャツ
着てる方が悪いんですー」
「ていうか揺杏の服でっかいな!
いや、むしろ私がちっさいのか!
これ、本当に彼氏彼女くらい
差があるんじゃないか?」
こっちの気も知らないで、
爽はいつものノリを繰り返す。
私はもうとっくに限界だって言うのに。
膨れ上がる欲望を必死で
押さえつけてるって言うのに。
なのに。
「っ、私は、爽の、彼氏じゃありませんー」
「…揺杏はこういう時かったいなー。
ちょっとくらい乗ってくれてもいいと思いますー」
こんな、爆弾発言を投げて返してくる。
その返事を聞いた時。私の中で、
何かがプチンと千切れて飛んだ。
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「……へえ」
「爽は私に乗っかってほしいんだ?」
「おうさ。甘酸っぱいカレカノプレイと
洒落込もうじゃないか」
「……」
「ふーん。ま、仕方ないから乗ってやるさ」
「でも……」
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『後から、泣いても嫌がってもやめないから
そこんとこよろしく』
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へらへらと笑っていた爽に詰め寄ると、
ワイシャツを力任せに引っ張った
ブチブチと音を立ててボタンが千切れ
爽の胸が露わになる
驚いたように目を見開く爽の唇を
乱暴に塞いで貪った
もがくように身をよじる抵抗も空しく
爽は唇を奪われ続ける
一しきりその柔らかさを蹂躙したら、
無理矢理ワイシャツを剥ぎ取った
身を包む布が一切なくなった爽は
咄嗟に胸と股間を隠す
細っこい手首を掴んで強引に秘密を暴いた
爽は呻きながら秘部を晒すしかない
そこからはよく覚えてない
ただ、ただ私は夢中になって
逃げようとする爽に組み付いて
力任せに足を開いて
そして
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ようやく正気に戻った時
震える私の中指には
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取り返しのつかない罪を犯した事を示す
鮮やかに赤い液体が
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てらてらと、私の罪を主張するかのように
光を反射して輝いていた――
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とんでもない事をしてしまった
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自らの悍ましさ(おぞましさ)に震え
罪の意識に潰れそうになる私に
爽の視線が突き刺さる
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どんな視線も、どんな罵倒も受け入れよう
爽が望むなら命をもって償おう
そんな事を考えていた私は、
爽の表情を見て目を見開いた
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爽は、なぜか笑っていた
そしてこう言ったのだ
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『ったく、やっと襲ってくれたか』と
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二の句も告げずたじろぐ私を前に
爽は今まで見た事もないような
蠱惑的な笑みを浮かべて
滔々(とうとう)と、
唄うように語り始めた――
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揺杏と私の関係
それは、わかりやすく言えば幼馴染で
もう少し踏み込んでいえば姉妹みたいなもんだった
どこに行くにも二人でセット
時には喧嘩したりする事もあったけど、
そのたびにまた仲直りして
結局はずっと二人で居た
そう、まるで片時も離れない、家族のように
ただ、私と揺杏が違ってたのは
異形をその身に宿していた事
小さい頃から事故や事件に
巻き込まれる事が多かった私は、
そのたびにカムイに助けられてきた
まだ小さかった私は、自分に
他の人間にはない力がある事を喜んで
その力を生かそうと、たくさんの厄介事に
首をつっこんできた
その中には当然、肉欲が引き起こした事件もあった
そう、それは例えを挙げるなら――
――女が、女を襲うレイプ事件も
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だから、私は知っていた
優しさも、思いやりも、これまで大切に築いた絆も
全て、全て無にしてしまう程に
荒々しい欲望の存在を
知っていたんだ
直接現場を何度も見たから
さらにはカムイが拍車をかけた
パウチカムイ、それは性欲を司る神
そんな力を不用意に手にしたら、
無知で浅はかな小娘が何をするか
容易に想像できそうなもんだろう?
だから、私は知っていた
揺杏が時折私に向ける、
視線に籠もった恥熱の意味を
もしその熱が揺杏を支配したら、
どうなってしまうのかを
私は知っていた 知っていた 知っていたんだ
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知っていたから…揺杏を誘惑した
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揺杏は必死で耐えていた
私との関係を壊すまいと耐えていた
自分がその気になりさえすれば
簡単に私を犯せると
誤認しながら、それでも誘惑を退けた
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本当は完全に逆なのにな
もし私が望むなら、揺杏なんていつでも殺せる
指一本触れずに血塗れの肉塊に変える事ができる
当然指一本動かせないように拘束する事もできるし、
私を犯す事以外何も考えられない獣に貶める事もできる
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ま、だからこそ…揺杏から襲ってほしいわけだけど
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「…という事で、誘惑し続ける事数か月。
ようやくヘタレ揺杏が
女を見せてくれたってわけだ!」
えっへん、とばかりに胸を張る爽。
その満足げな姿に罪悪感は融け出していって。
代わりに、それを上回るモヤモヤがこみ上げてくる。
「…や、マジで意味わかんないんですけど。
こっちの気持ちがわかってたんなら、
素直に告白でもしてくれりゃいいじゃん」
「んー。さっきも言ったけど、
私からって言うのは嫌だったんだよね」
「…爽ってそんなお姫様思考だったっけ?」
「そういうわけでもないんだけど。
もし私が、本気で揺杏を落とそうと思ったら――」
「揺杏の気持ちとか、そういうの全然関係なしに。
簡単に手に入っちゃうからさ」
ぞくり、と肌を悪寒が撫でた。
爽は少し陰りを孕んで微笑む。
「…だから。初めては揺杏からがよかったんだ。
私が、愛を疑わなくて済むように」
「揺杏を『作り変え』ちゃったのかも知れない。
そうやって悩まなくて済むように」
「……」
「…んなくだらない事で悩むなっての」
爽の奴が、小さい頃から
普通じゃなかったのはわかってる。
普通の人間なら絶対に解決できないような事件を、
あっさり解決してきた事も。
それが理由で周りから気味悪がられていた事も、
幼馴染だから全部知ってる。
もし仮に、それが不可思議な力のおかげだとして。
その力を爽が自由自在に使えたとして。
それを使って、私を手籠めにしようとしたとしても。
私は普通に受け入れるだろう。
それは、洗脳とかそういう話じゃなくて。
そういうキショい力も含めて、爽自身なんだから。
「だからさ……」
「そーゆーのも含めて受け止めてやるから、
素直にぶつかってこいっての」
「……っ」
ぶっきらぼうな私の言葉に、
爽は驚いたように両眉を上げた。
でもやがて、噛みしめる様に瞼を閉じた後。
小さく、小さく呟いた。
「…そっか。ありがとな」
そして爽は目を開く。
まるで憑き物が落ちたかのように、
その目はキラキラ輝いていた。
うん、いつもの爽の目だ。
それでいい。お前はそうやって
笑ってるのが一番だ。
「で?爽の悩みは解消されたわけ?」
「おかげさまで。というわけで、
ここからは攻守交代だな!」
「はいはい。できるだけ優しくしてくださいよっと」
「私のは力任せにぶち破ったのに?」
「自分でそう仕向けたんだろ?
私はそういうマゾ的趣味ないんでー」
いつも通りのかるーいやり取りを口にしながら、
私は爽に体を開く
爽はニヤリと不敵に微笑むと…
そのまま私に覆いかぶさって来た
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
爽と私の関係。
それは、わかりやすく言えば幼馴染で。
もう少し踏み込んでいえば姉妹みたいなもんだった。
どこに行くにも二人でセット。
時には喧嘩したりする事もあったけど、
そのたびにまた仲直りして。
結局はずっと二人で居た。
そう、まるで片時も離れない、家族のように。
でも、いつしか年月は私達の在り方を変えた。
そう、それは『家族のように』じゃなくて――
――『本当の家族』へと。
あれから数年が経った今。
爽は変わらず傍に居る。
愛すべき、一生添い遂げる伴侶として。
(完)
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爽君がパウチカムイで「ふひゃっ」させたりアッコロでヌルヌルして河以外も赤く…ゲフンゲフンさせるのかと思ってました。
ぷちさんのは、辛抱堪らんくなって襲っちゃうけど、実は相手がそう仕向けている場合が多いから、余り悲しい事にならないのが好きです。
きっと爽君は揺杏ちゃんを指一本動かせないように拘束してパウチカムイで散々焦らして、時間経過(?)でカムイが帰ったら獣となった揺杏ちゃんに襲われるプレイとかやってる。多分。
こんにちは!
お疲れ様です(^^)
実は前々からブログ読ませていただいております!
ヤンデレ大好きで読む度にゾクゾクしてますw←
揺杏×爽が大好きなので、このお話すごく楽しかったです♪
これからも応援しています!!
《Twitter垢→@IF_toki510_ 》
素敵です…!>
誓子
「大変、なるかが毒されてる!」
爽「こっちの世界もいいもんだよ?」
パウチカムイで>
揺杏
「まあガチで使ったらただのレイプだよな」
爽「仲良くなってからのプレイ用だな!」
誓子
「プレイとか言わないの」
余り悲しい事にならないのが好き>
爽「お題が青春っぽかったからね」
揺杏
「青春ってか私が持て余した
男子高校生っぽいんだけど」
きっと爽君は>
爽「私を何だと思ってるんだ」
揺杏
「あんなエロ化物飼ってたら
そう言われても仕方ないっしょ」
揺杏×爽が大好きなので>
爽「何気に初めてだったりするね」
揺杏
「というより有珠山自体が少ないな」
爽「今後ともよろしく!Twitterの方は
うちのツイプロ見てくれな」
気づいていて弄ぶのはズルい>
爽「楽しいって言うか…ま、不安だったんだよ」
爽「自分から相手を変えちゃうのが」
揺杏
「いや、でも楽しんでたろ」
爽「まあちょっとは」
こういうほのぼのした関係すごく好き>
爽「このブログだと珍しいかもね」
揺杏
「悪友っていうか幼馴染自体が
意外に少ないしな」
生々しい心理描写>
爽「言われてますわよ揺杏さん?」
揺杏
「誰のせいですか爽さん?」
揺杏岩>
爽「だとしたら私は神か?」
揺杏
「時々私の上に乗っかってるしな」
突然の大雨は>
爽「なんか私が物凄い黒幕になってるけど
雨は普通に自然現象だよ」
揺杏
「…その割にはタイミングよかったよな?」
すてきにすばらです!>
姫子
「花田が壊れよった!?」
煌「幼馴染だからこその相手を気遣い
互いに一歩踏み込めない
愛の深さがすばらです!」
姫子
「そいでもなかった」