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【咲-Saki-SS:郁恭】郁乃「貴女を従える魔法の言葉」【依存】

<あらすじ>
病に伏せる善野一美。
もはや再起が難しいと判断した彼女は、
教え子たちを後輩である赤阪郁乃に託す。

その中には、彼女が特別目を掛けていた
末原恭子も含まれていた。

恭子のスランプを治すべく接触を試みる郁乃。
でも、ただでさえスランプの中
憧れの人を失った恭子は、
その後釜の郁乃に牙をむく。


<登場人物>
赤阪郁乃,末原恭子,善野一美,その他

<症状>
・依存
・ヤンデレ

<その他>
以下のリクエストに対する作品です。
・赤坂代行の話、病み成分を増量してもう一作
 ※相手は末原恭子になります

<注意!!>
※病み成分を追加する上で、原作の美しい話を
 どろどろの醜い話にしています。
 拒絶反応を覚える方は
 即座に読むのをおやめください。

※病み成分増量し過ぎて酷い事になったので
 すっぱりカットして書き直しました。
 結果そんなに病んでないかも。
 病み足りない、という方はコメントで教えてください。
 お蔵入りしたバージョンを
 こっそり公開するかもしれません。



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末原ちゃんにとって、
私はどんな存在なんだろう。


いい感情を持たれていないのはわかる。
だって私は、末原ちゃんが心酔していた
善野さんの代役に過ぎなくて。
あまつさえ、監督という座を
奪った人間なのだから。


でも。私にとっての末原ちゃんは。
めんどくさくって、愛おしくって。
気になって仕方がなくって――



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――なのに、絶対手に入らない子。







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『貴女を従える魔法の言葉』







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末原恭子。

会う前から名前だけは知っていた。
病魔に侵され、床に臥せった善野さん。
彼女から直々に頼まれたから。


『というわけで、私はおそらく
 もう監督職には戻れんと思う』

『ひとまずは代行っちゅぅ扱いになるけど、
 多分そのまま引き継いでもらう事になるわ』

『悪いけど、姫松をよろしく頼む』

『わっかりました〰。
 うちに代役が務まるかわからんけど〰、
 精一杯頑張ってみます〰』


監督代行を任され、姫松の状況を一通り聞いて。
立ち去ろうとする私を、善野さんが呼び止める。


『ああ、それと。もう一つ
 言っときたい事があるんよ』

『はいはい〰?』

『一人、気にかけといて欲しい子がおってな』

『へぇ〰。どんな子ですか〰』

『末原恭子っちゅぅ1軍候補の2年生や。
 絶賛スランプ真っ最中やけどな』

『あの子が立ち直れるかどうか。
 それがそのまま、大会の結果を左右すると思う』

『早めに立ち直らせたって』

『え、えぇ〰?そんな重要な子なら、
 倒れる前に立て直しといて欲しかった〰』

『勿論そうしたかったんやけどな。
 色々やったけど、私では無理やった』

『だから…よろしく頼むわ』


会話はそこでお開きになった。
病院を後にしながら、その子の名前を反芻する。


(末原恭子…末原ちゃんかぁ)


あの善野さんが気にかけて、
それでいて立ち直らせる事ができなかった子。

一体どんな子なんだろう。
私も彼女に興味を持った。



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末原ちゃんの第一印象。

端的に言い現わすとすれば、
『めんどくさい』の一言に尽きた。
そう。末原ちゃんはいちいち面倒くさいのだ。


「うち、凡人なんで」


自分を凡人だと決めつけて。
魔物を目の敵にして、追い付こうと躍起になって。
それで自らペースを崩し、
泥沼に嵌って(はまって)もがいてる。

必死に手足を動かしながら、でもその足は止まってる。
思考は止めずに考えているようで堂々巡り。


ああ、本当にめんどくさ可愛い。


それは私にはない性質だった。
比較的いつも楽観的で、やるべき事が
一直線に見えている私にとって。

末原ちゃんみたいにあれこれ思い悩める事は
羨ましいとすら思えた。
できればそんな末原ちゃんが、散々苦労した末に。
苦労が報われて、嬉しそうに微笑む姿が見たいと思った。


(よ〰し。いくのんが末原ちゃんを
 救い出してあげるかんな〰?)


監督が一人の部員に熱を上げるのは
あまり好ましい事ではないけれど。
まだ代行に過ぎない私は、そんな事は棚に上げて。

末原ちゃんに熱を上げる。そう心に決めたのだ。



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もっとも、そんな愛すべき末原ちゃんの面倒くささは、
思いっきりマイナス方向に作用した。


末原ちゃんは、私の事を認めなかった。
事あるごとに『代行』『代行』と
私が代役に過ぎない事を強調した。

そんなところも可愛いけれど、末原ちゃんは
さらにもう一歩噛みついて来たのだ。


『やぁ〰ん、その「代行」ってのやめてや〰』

『これでもちゃ〰んとした監督さんになろうと
 がんばってるんやから〰〰』


もちろん、この言葉に他意なんかない。
なかったけれど、末原ちゃんの中では地雷だったらしい。


末原ちゃんの目がぎらりと光る。


『…まだ、善野監督が入院中やのに。
 少し不謹慎じゃありませんか。
 そーいうの』


その抜身の刃のような鋭さに、
密かに内心舌を巻いた。

言い訳をさせてもらうなら。
私は確かに代行ではあったけれど、
いずれ監督になるのはほぼ既定路線だった。

もちろん善野さんが全快すれば
退く気ではあったけど。それが
万に一つの可能性である事も知らされていた。

だからこそ、善野さんは知古の私に
姫松の未来を託したわけで。
私からすれば、この言葉にやましい思いもない。


それでも、末原ちゃんにとっては地雷だった。


善野さんに心酔する末原ちゃんにとって。
私の物言いは、まるで善野さんから
監督の座を奪い取ろうと画策しているように
聞こえたのかもしれない。

やってしまった、と思った頃にはもう遅い。
末原ちゃんの中で、私は
『敵』扱いされてしまったようだった。


案の定、それからの交渉は難航した。


『…で、本題なんやけど…
 団体戦のレギュラーにあんたを入れようかな〰って』

『辞退します』

『え、えぇ…!?』


一刀両断。

まるで聞く耳持たないとばかりの即答だった。

もちろん、実際には末原ちゃんにも
色々と思うところがあって。
本当のところは、スランプが
一番の理由だったんだろうけれど。

少なくともそこには、私に対する
拒絶の意味も色濃く含まれていた。


以降、末原ちゃんは私が声を掛けるだけで眉を潜め。
どこかうっとおしそうに
対応されるようになってしまった。

まあ、それでも。
めんどくさい子大好きな私は、
むしろ余計に末原ちゃんへの想いを
募らせていったわけだけど。



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そんなわけで、印象最悪になった私。
それでも私はしつこく末原ちゃんを観察し続けた。


ちなみにスランプの原因はすぐ見つかった。
というより一目瞭然だった。

洋榎ちゃんを意識し過ぎ。
そしてそれには、末原ちゃん自身も
気づいているようで。
真瀬ちゃんや洋榎ちゃんにも指摘されていた。

なのに、まるで耳を貸そうともせず、
目の敵にした『バケモノ連中』の
真似事なんかしたりする。

自分の力を信じられないから。
地力では到底勝ち目がないと思っているから。
だから、相手と比較したがる。
相手から糸口を見つけ出そうとする。
本当の自分には目を背けながら。


ああ、めんどくさ愛おしい。


解決策はシンプルだった。
他者との比較を止めて自分を磨けばいい。
ただそれだけで、末原ちゃんはスランプを脱出できる。
そもそも自分で言う程凡人ではないのだから。


でも。


善野さんなら容易く掴んだであろう救いの手。
でも、私が差し伸べたそれを、
末原ちゃんは邪険に払いのけた。


なぜなら、私は敵だったから。



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解決策はシンプルなのに。
誰からみても問題は明らかなのに。


それを受け入れず一人ずぶずぶと
沈んでいく末原ちゃん。


それとなく提示した答えは受け入れてもらえず。
末原ちゃんはインターハイを無為に逃した。


それからもどんどん調子は
落ち込んでいく一方だった。




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そんな末原ちゃんを見て。
私はついに、伝家の宝刀を抜く事にした。


効果覿面なのは知っていたけれど、
できれば最後まで使いたくなかった切り札。


そう、それは――




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――善野さんを、ダシに使う事。







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『これはあんまり言いたくなかったんやけど〰
 善野さんにな〰頼まれてん』


『スランプの子をよろしく〰って』


『……』





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末原ちゃんの善野さんに対する妄信ぶりは、
プラスの方向にも働いた。


善野さんからのお墨付き。
ただそれだけの一言で、
私は『敵』から『味方』へと裏返る。


私の考えたアドバイスを素直に受け入れた末原ちゃんは、
あっさりとスランプを脱出した。




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それは、監督赤阪郁乃としては。

事実上の敗北宣言でもあった。






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一度禁じ手を使ってしまった後は。
末原ちゃんに何かを言う時、
必ず善野さんを持ち出す事にした。


それは例えば、こんな時。


『末原ちゃ〰ん、ま〰だちょっと
 相手を意識し過ぎやんな〰』

『そうですか?』

『宮守の姉帯ちゃん〰、ちょぉ〰っと
 意識し過ぎやったよね〰』

『…でも、対策立てへんと。うちみたいな
 凡人じゃすぐやられてしまうんで』

『末原ちゃんは凡人なんかやないよ〰?
 あの善野さんに見込まれてんやで〰?』

『…!じゃあ、どしたらよかったんですかね』

『やる事はかわらへん〰、自分を信じればええよ〰。
 もちろん対策は必要やけど〰、
 振り回され過ぎるのは逆効果〰』

『スランプの時もそうやったや〰〰ん?』

『…そうですね』


いまいち自分の価値を信じ切れなかった末原ちゃん。
なのに、『善野さんに見込まれた』ただその一言で、
末原ちゃんは自分に価値を見出した。


例えば、これも。


『まずは〰、見かけから〰〰』

『まじめにお願いしますよ!』


スカートを穿かせ、可愛い大きなリボンを結び。
そっと肩に添えた手を、末原ちゃんは払いのけた。


なのに。


『これな〰?実は私のアイデアやないんよ〰〰』

『へ』

『末原ちゃんが敬愛する人の案なんやけど〰。
 それでも止める〰〰?』

『…それ、本当ですか?』

『何なら本人に聞いてみる〰?』

『…いいです。そういう事ならやってみます』


善野さんが言った事。たったその一言で、
末原ちゃんはその格好を受け入れる。


…私の手を乱暴に振りほどいてまで拒絶した格好を。


善野さん、善野さん、善野さん、善野さん。


それは、末原ちゃんにとって魔法のキーワード。
ただ一言口にすれば、末原ちゃんは反論をやめて、
盲目的に従うようになる。


私の言葉は聞き入れてもらえないのに。


末原ちゃんをスランプから立ち直らせたのは
間違いなく私のアドバイスなのに。
私の方が、もう善野さんより長く
末原ちゃんと一緒に居るはずなのに。

本当は使いたくなかった。
赤阪郁乃単品でも話を聞いて欲しかった。


それでも、唱えずにはいられない。


だってそうしなければ、末原ちゃんは
私を受け入れてくれないから。
末原ちゃんを導く事ができないから。


善野さん、善野さん、善野さん、善野さん。


それは魔法のキーワード。
末原ちゃんを従えるための呪詛。
魔法の呪文を唱える度に、私の心は澱んでいく。


善野さん、善野さん、善野さん、善野さん。


善野さん、善野さん、善野さん、善野さん。


善野さん、善野さん、善野さん、善野さん。
善野さん、善野さん、善野さん、善野さん。
善野さん、善野さん、善野さん、善野さん。
善野さん、善野さん、善野さん、善野さん。
善野さん、善野さん、善野さん、善野さん。
善野さん、善野さん、善野さん、善野さん。


善野さん、善野さん、善野さん、善野さん――



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――心が、黒く染まっていった。






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そして、『善野さん』が私を
決定的に壊したのは……


末原ちゃんのインターハイが終わった
『あの日』の事だった。




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敗戦報告。


皆が皆目に涙を浮かべる中、
末原ちゃんは頑として泣かなかった。

最上級生としての矜持もあったんだと思う。
目に悲壮を纏い、唇を真一文字に結びながらも。
末原ちゃんが涙を見せる事はなかった。


「…では、失礼します」


でも報告を終え、私を先頭に皆が部屋を立ち去る最中。
末原ちゃん一人だけが名前を呼ばれる。


「恭子」


末原ちゃんは立ち止まり。そして、
部屋は二人だけのものになった。


「……」


私は一人、部屋の外で腕組をして待つ。
程なくして、部屋から微かな
すすり泣きの音が聞こえた。


末原ちゃんが、泣いている。


私達の前では決して見せなかった涙を。
善野さんにだけは見せている。

そして善野さんは末原ちゃんを癒し。
また、二人は結束を強めていくのだろう。


「……」


自然と笑みがこぼれた。
ああ、美しきかな師弟愛。


「……っ」


自然と涙が零れた。
ああ、その輪の中に私は居ない。


「……っ……」


涙が頬を伝って流れる。
ああ、ああ、ああ、ああ。


もう、涙を止める事はできそうになくて。
末原ちゃんが出てくる前に、
こっそりとその場を後にした。

きりきりと、悲鳴を上げる胸を押さえながら。



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なあ、末原ちゃん
その役目、私じゃ駄目やったんかなぁ


私には末原ちゃんの悲しみ
受け止める権利はなかったんかなぁ





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私なんて要らん子やったんかなぁ


末原ちゃんにとって私は、
善野さんのメッセンジャーに
過ぎひんかったんかなぁ





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でもなあ







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今、末原ちゃんの中に息づいてる
雀士としての力


麻雀における戦術の立て方


そのうちの、半分くらいは……




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私っ…赤阪郁乃のものなんよ……っ?







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真っ暗闇の空に向け


掠れる声で投げ掛けた言葉


その声は、闇夜に掻き消えて――





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――末原ちゃんに、届く事はなかった







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『って…何一人で勝手にポエムっとんですか』







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突然空気を揺らす声



私は驚き振り向いた



そこには末原ちゃんが立っていた




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泣き腫らした私から目を背けるように
どこか明後日の方向を向きながら

末原ちゃんは、酷く低い声で語り出す


「なんか、誤解しとるみたいなんで言っときますわ」

「…一回しか言わんので、
 しっかり聞いといてください」


まるで威嚇するように
絞り出すように言葉を吐き出す


「……」

「確かに、うちにとって、
 善野監督は大切な人です」

「何もないただの凡人に過ぎんかったうちに、
 善野監督は超早和了りっちゅう武器をくれた」

「その恩は、どんだけ報いても
 返しきれんと思ってます」

「…でもな」

「……その」

「……っあ」


「あ、アンタにだってっ…!
 同じくらい、感謝しとるっ……!!」

「え……?」


末原ちゃんが紡いだ言葉

一字一句逃すまいと耳を傾けていたのに
確かに耳には入れたはずなのに

なのに、よくわからなくて
意味の意味を見出せなくて
つい、戸惑いの声をあげてしまう

そんな私の様子を見て
末原ちゃんは焦れるように
ボルテージを上げた


「だから、わかっとる言うてるんですよ!
 うちがスランプになって、もがいて苦しんどった時!
 助けてくれたんはアンタやった!」


「善野監督やない…アンタや!!」


一度は聞き返した言葉
そんな事はあり得ないと、
脳が受け入れる事を拒否した言葉

それを、末原ちゃんは繰り返してくれた
私にも意味があったのだと
怒鳴りながら訴えてくれた


いつの間にか、私を真正面から見つめながら


「胸張って言うたらええやん!
 『末原ちゃんを〰、
  立ち直らせたんは私やで〰〰』
 って言えばええやん!」

「ったく……普段はふらふら〜っと
 空気読まん発言する癖に、
 なんでそんなところだけ気ぃ遣うんや…」


一息に言葉を吐き出した後、
末原ちゃんは大きくため息をつく

心底きまりが悪そうに
頬を真っ赤に染めながら


感極まって何も言えずにいる
私の視線から逃げるように
再びふいっと目をそらしながら


ぽそりと、こんな言葉を口にした



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「…たく、ホンマめんどくさい監督やで」







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その一言を聞いた時
私の中で何かがすとんと落ちた


『ああ、そうやったんや』
なんて、酷く納得する事ができた





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末原ちゃんの事、ずっと
めんどくさいめんどくさいと思っていたけど
私もめんどくさかったんだ


だから私は、末原ちゃんの事が大好きで
気になって仕方なかったんだ




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そして






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どっちも、めんどくさいもん同士の私達なら……


きっと、きっと、お似合いやんな?





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「す…末原ちゃ〰ん……」


「…なんや」


「だ……」


「だ?」



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「大好きや〰〰〰〰〰〰〰っ」



「は、はぁぁぁぁあっ!!!?」





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夜の帳も落ちきって
周囲が闇に染まる中


静寂の闇を引き裂くように、
末原ちゃんの絶叫が木霊した――





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気持ちをぶつけあったあの夜以来。
私達の関係は少しだけ変化した。

「なあなあ、末原ちゃ〰ん。
 これからは私も、『恭子』って
 呼んでい〰い?」

「なれなれし過ぎますわ」

「え、えぇ〰、なんでそこ否定するの〰?
 善野さんには恭子って呼ばせてるや〰ん。
 私と善野さん同列なんやろ〰?」

「ねぇねぇ〰。私も恭子って呼びたい〰〰」

「あーもうしつっこいな!?
 呼びたいなら勝手に呼べばええですやん!」

「…恭子」

「ま、真顔で呼ぶのやめ!!」


私はもう恭子ちゃんが大好きな事を
隠す事はしなくなり。
恭子ちゃんも私をよりぞんざいに扱うようになった。


「あーもう、もっと監督らしくしろや!」

「やぁ〰ん、だって恭子の事好き過ぎるんやも〰〰ん」

「な、何言うてんねんこのアホ監督!
 教え子に手ぇ出すつもりか!?」
 
「後数か月で解禁や〰ん?
 今のうちからツバつけてもええや〰〰ん」

「そ、れ、に〰〰〰」

「……」

「教え子やなくなったら、食べてもええの〰〰?」

「〜〜っ!?もうお前黙っとれ!!」


恭子ちゃんに言われて気づいた事がある。
私は確かにめんどくさい。
そして、恭子ちゃんがそんな私を
嫌がっている事も。

でもそれは、心から拒絶されてるわけじゃなくて。
恭子ちゃんは嫌がりながらも、
私の事をちゃんと見てくれている。


「…なんや。なんでニヤニヤ見てんねん」


ほら。視線を逸らしたふりをして、
しっかりちゃっかり様子をうかがっているのだ。


もし、監督としての優劣で言えば。
私は今でも善野さんに及ばないのかもしれない。
そしてそれは、一生覆せないのかもしれない。

でもそれは監督としての話。
一個人の、恭子ちゃんを狙っている
ハンターとして見れば……


(…案外、私の方が大幅リードしてるんちゃうかな?)


なんて事を思ってしまう。
もっとも。そもそも善野さんが
恭子ちゃんをそういう目で見てるとは
思えないけれど。


一人思案に耽る私を前に、
何か勘違いしたのか。

末原ちゃんは少し語調を弱めると、
私の顔を心配そうに覗き込んできた。


「だから、さっきから何じろじろ見とんねん」


それは言葉こそ辛辣なものの。
声音から、私を気遣う思いが伝わってくる。


ああ、もう。


「…好きやで、恭子」

「〜〜〜っ!死ね!死んでまえ!!」


突然の攻撃に、耳まで
真っ赤に染めて罵倒する恭子ちゃん。

この様子だと、恭子ちゃんを落とせる日は、
遠くないのかもしれない。

そんな事を考えて頬をゆるめながら、
私は爆発する恭子ちゃんに纏わりついた。


(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2016年08月26日 | Comment(8) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
赤阪さんがまるで乙女のようじゃないか! でも連続善野さんはちょっと怖かった。これで病み足りない人とか居るんですかね……
Posted by at 2016年08月26日 21:35
リクエスト受けて頂いてありがとうございます。
あまあまな感じですばらでした!出来ればボツ版も読んでみたいな〜
Posted by at 2016年08月26日 22:50
2人の組み合わせすばらです!前から出来上がるのを楽しみにしていました。魔法の言葉に心が黒くなり赤阪の心の辛さが最後に出ていてとても良かったです。ボツ案はぜひぜひ見たいです。病んだ赤阪さんもっと見たいです!
Posted by at 2016年08月27日 00:02
たまにはヤンデレじゃないあまあまもいいですよね〜 末原ちゃんが恥ずかしげに言った「アンタにも感謝してる」の一言に代行がどれだけ救われたか想像したらすごく心がぽかぽかしてふと涙が出そうになりました。おかげでよく眠れそうです。
ところでわたしもぜひ闇バージョンも読んでみたいです!お蔵入りだなんてとんでもない!
Posted by ひさっしも! at 2016年08月27日 00:57
甘々ハッピーエンド良かったです!
最後にちゃんと伝えた末原さんカッコイいですね。代行はお嫁さんでしょうか?夫(?)を支える良い奥さんになれそうな。
タイトルだけ読むと随分シリアスな話なのかなと思いましたが、ボツになったものも気になります。竜怜SSのような感じでしょうか?
楽しかったです!
Posted by at 2016年08月27日 01:08
お疲れさまです!

恭子と代行のやりとりはヤンデレでもホカホカしますね…♪
……善野監督と恭子ちゃんのイチャイチャもあったら…(ボソッ)

代行がもっと病んだ方も読みたいです♪
正直に申し上げまして、いくら病んでも僕にとってはご褒美です(キリッ)←
Posted by 如月ルーシェ at 2016年08月27日 11:10
病み成分が見当たらなかった ..
末原ちゃんといくのんがイチャイチャしてただけに見えた.... 。
それでもやっぱり最高でした!!!!!!!
病み病みなのみたいです!!!!!!!
Posted by at 2016年08月28日 21:23
郁末のリクエスト受けて頂きありがとうございました。
お互いめんどくさいと思いながらも、気にしてる2人がかわいかったです。
末原ちゃんも満更ではなさそう(笑)

今回はあまあまな感じだったので、病み増幅バージョンも是非読んでみたいなと思いました。
Posted by なな at 2016年08月29日 04:09
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