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【咲-Saki-SS:久咲】そして私たちは、空へ、空へ【絶望】【共依存】【前編】
<あらすじ>
リクエストがあらすじ代わりです。
<登場人物>
竹井久,宮永咲,宮永照,弘世菫
<症状>
・狂気(重度)
・共依存(重度)
・絶望(重度)
<その他>
次のリクエストに対する作品です。
・猫が死の直前身を隠すことを題材にした久咲か咲久
予め決めていた時期に消えようとしたが、
相手が察していて止めにくる
※本ブログにおける別作品の世界観を踏襲していますが、
この話だけでもお読みいただけます
『堕ちる。深く、深く。』
http://yandereyuri.sblo.jp/article/101983336.html
※リクエストテーマの都合上、
絶望と死が付き纏う重苦しい話になります。
苦手な方はご注意を。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
貴女はいつも言ってましたね
『それってハッピーエンドなのかしら?』って
胸を張って断言できます
私が歩んだ人生は、貴女のお陰で幸せでした
私はもう十分です
だから、どうか、生きて、ください
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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『そして私たちは、空へ、空へ』
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その昔。私、宮永咲は、救いのない物語が好きでした。
正確には、幸せな話が嫌いだったんです。
眩しくて直視できないから。
本の中の奇麗な世界は、私をいつも苦しめました。
きらきらと輝く空想と、からから渇いた空虚な現実。
鮮やかな世界の対比が、心を深く抉るんです。
本にも滅びを要求しました。寒々しく、絶望に満ちた世界を。
特にお気に入りなのは、悲惨な末路を迎える少女の話。
欲しかったんです。みじめに傷を舐めあう相手が。
本の登場人物に仲間を見出して、
『貴女も私と一緒なんだね』なんて勝手に寄り添う。
そうすると、じくじくと痛み続ける心の傷が、
少しだけ楽になる気がしたんです。
そんな私の仄暗い趣味嗜好。
一人だけ、目ざとく気づいた人がいました。
清澄高校麻雀部の元部長。そう、竹井久さんです。
部長は私の手を取ると、目を見つめながら言いました。
『もう、救いのない世界に自分を投影するのはやめましょう?』
『救い出すわ。私の残りの人生を懸けて。
きっと、貴女を幸せにして見せる』
ある種、自分に言い聞かせるような声音。
それは気のせいではなかったでしょう。
私は知っていたんです。
部長だって、救いのない話が好きな事を。
それも、私と同じ理由で。
家族との離別を経験した部長。
捨てられて、泣きじゃくって、世界の全てに絶望した部長。
でも、だからこそ。この人の言葉は重い。
『……努力、してみます』
もう一度、誰かにすがってみよう。
こうして私は、絶望との決別を目指したのです。
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学校を卒業してプロ雀士になるや否や、
部長は一軒家を建てました。
そして完成初日から、私を迎え入れたんです。
『じゃーん!これが私たちの愛の巣です!』
『わぁぁ……!』
ひときわ目を引いたのは、壁一面に広がる本棚。
そう、部屋の壁がそのまま本棚になっていました。
『本の虫のロマンよねー。壁一面オール本棚!』
『あ、あはは…これ、地震が来たら死にますね』
『本で埋葬されるなら本望だわ!
それに、多分これでもすぐ足りなくなるわよ?
ひょっとしたら、手持ちの本だけで埋まっちゃうかも』
幸い部長の懸念は杞憂に終わりました。
二人で一冊ずつ順番に、お気に入りの本を差し込んでいって。
全ての本を詰め終わり、それでも本棚は
まだ半分くらい空いています。
なのに、部長はどこか陰のある笑みを浮かべました。
『随分とまぁ…悲しみと絶望に満ち満ちてるわねぇ』
救いのない本が好き、それは二人の共通項。
そんな私たちの本棚は、澱んだ本ばかりが整然と並んでいて。
新生活に相応しいとは言い難い、
酷く陰鬱な雰囲気が漂っています。
『別にそれが悪い事とも思わないけどね。でも……』
『多分これからは、明るい本が増えてくると思うわ』
にやりと口角を上げる部長。
対して私は曖昧な笑顔を浮かべました。
その時の私には、真意が掴めなかったから。
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明るい本を読みたいとは思いませんでした。
なのにどうしてなのでしょう。
いつからか私は、自然と暗い表題の本を
選択から外すようになりました。
久さんに遠慮して、意図的に排除したわけではありません。
なぜか惹かれなくなったんです。
ううん、むしろ苦手になったと言っても
過言ではありませんでした。
本棚に温もりが灯り始めます。
やがて輝きは強さを増して。
本棚の半分は、希望に満ち満ちていきました。
『不思議だなぁ。別に、わざと
そうしてるわけじゃないんだけど』
『本当に、久さんの言ったとおりになっちゃった』
『ん?個人的には当然だと思うけど』
『どうして?』
『絶望から這い出した人間は、だからこそ絶望を恐れるの。
もうあそこには戻りたくない、ってね。
そして希望を追い求めるのよ』
柔らかくぬくもりに溢れた久さんの微笑み。
その目は遠い過去を見通すようでした。
ならこれは、おそらく経験談なのでしょう。
『救いのない話を、第三者視点で
楽しめるようになった時』
『その時こそ…私たちは、本当に
絶望を脱したと言えるんでしょうね』
そう笑いかける久さんの顔に、
もう陰はありません。
いつかきっとその日が来る。
そう信じて疑わない表情でした。
私も、久さんと二人なら。
きっとその日を迎えられると、
素直に信じられたんです。
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『過去を完全に乗り越えた』
そう確信できたのは、夕陽に照らされた時でした。
久しぶりに久さんがオフの日。
二人で日向ぼっこしながら本を読んで、
気づいたらすっかり眠り込んでいました。
『ん…』
夢を揺蕩う事二時間後。
顔を差す眩しさに目を覚ますと、
窓一面に紅い光が差し込んでいます。
『…綺麗』
思わず誘い出されるように、ベランダに足を運びます。
燃えるような真っ赤な夕陽。
身を焼きそうな落陽は、私の心に暗い影を落としました。
『…あの時、みたい』
そう
久さんと二人で飛び降りた
あの日もこんな夕焼けでした
そう私は…『自殺を試みた事がある』んです
屋上からの飛び降り自殺
苦しみに耐えて、耐えて、耐えて、耐えて
苦しみ抜いた上での『あの』言葉に、
打ち勝つ事ができませんでした
『私に、妹は居ません』
もう生きるのがつらかった
全ての望みがなくなって
終わりにしたくて仕方がなかった
だから燃える事にしました
空に飛んで、焦がされ消える
自然と足は校舎の屋上に向かっていました
何もかも燃やし尽くして欲しい
悲しみも、苦しみも、失望も、全部
全部焼き払って、消えて、消えて、消えて、消して
ふらふらと空に近づいた時
その腕を掴む人が居ました
その人は涙をぼろぼろ零しながら、
私の自殺を阻もうとして
でも最後には、私の狂気に穢されて
『最期くらい、付き合わせて』
私を強く抱き寄せながら、一緒に逝くと誓ってくれました
貴女を救ってあげられなかった
せめて一緒に逝かせて欲しい
そう、小さく声を震わせながら
手を繋いで飛び降りた私たちは、
地面に真っ赤な華を散らして。
それでも、死ぬ事はありませんでした。
その後、実はお姉ちゃんの言葉には
別の真意があった事を知り。
結局今も生き永らえています。
『……』
暗い過去を振り払い、再び夕陽に目向けました。
あの頃の私は、この赤に終わりを求めた。
美しくて、悲しくて、大好きだった。
でも今は、ずっと見てると恐怖を覚えて、
心が酷く騒めいていきます。
『ああ、私。燃えるのが怖いんだ』
今が希望に満ちているから。
もう燃える必要なんてないから。
だから、死を思わせる夕陽が怖い。
でもそれは、きっと幸せな事でしょう。
私は夕日を眺めます。赤と黒に彩られた世界は、
やっぱりちょっと怖くって。
でもどうしようもなく嬉しくて、自然と笑顔になれたんです。
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一度は生きる事を諦めた私が
立ち直る事ができたのは、久さんのおかげです。
久さんが一緒に飛び降りてくれたから。
そして生き残った後、その後の人生を
全部私にくれると約束してくれたから。
私は今、人並みの幸せを掴めています。
もっとも久さんとの関係は、
決して褒められたものではないのでしょう。
互いに複雑な家庭環境に生まれ、
傷を舐めあうように寄り添った。
久さんは親から見捨てられ。
私はお姉ちゃんに拒絶された。
余り者同士身を寄せ合って、
小さく縮こまって夜を過ごした
依存は深く心を蝕み、もう離れる事はできない
どんなに気味悪がられても、いつも一緒にあり続ける
それが、私たち二人の世界
立ち直ったつもりです。
それでも、依存で接着された私たちは、
依然『病気』のままなのでしょう。
でも、それでいいと思ってました。
久さん以外は誰も要らない。
依存にまみれた二人だけの世界に埋没して。
やがて、どちらかが身罷る(みまかる)時は、
互いに手を取り合ってこの世を去る。
『それって、文句なしにハッピーエンドでしょ?』
『うん、ハッピーエンドだよ』
笑顔で問いかける久さんに、私も笑顔で頷きました。
その頃は、本気でそう思ってたんです。
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あの日、死を宣告されるまでは
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幸せな世界が終わりのカウントダウンを始めました
あの日の誓いを果たす時が来たのです
なんて事ないはずでした
だって私は、すでに一度死を選んでいるのですから
なのに宣告を受けた時
私に襲い掛かった感情は――
――『恐怖』
私たちが身を投げた時
あの時は、生き死にを自分で決められました
世界の全てに絶望し、自ら死を選ぶ事に戸惑いもなく
死に寄り添って飛び降りる事ができました
でも今は違います
世界は幸せに溢れていて
いつまでも続けばいいと願ってる
目を開けばすぐそばに愛する人がいて、
優しいキスを落としてくれる
なのに、私は、もうすぐ、死ぬ
死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ!!!
唐突に終わりを告げられて、
目の前が真っ暗になりました
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう
考える必要もないはずでした
こうなった時どうするか
私たちはもうとっくに決めていたのですから
『逝く時は、手を取り合って必ず二人で』
間違いなく本心のはずでした
今まで疑った事すらありませんでした
なのに、いざ、その時が近づいてきて
自分が原因で、まだ生きられる久さんの命を
摘み取る事が確定した時
私の胸に、新たな願いが生まれたんです
それは――
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――久さんには、生きて欲しい
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酷く、我儘で自分勝手な願いでした
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それなりの期間生きてきて
人は変われる事を学びました
死に至る悲しみを乗り越え
幸せを掴める事を知りました
私が独り逝ったなら
貴女は後を追うのでしょう
それでも周りがそれを阻止して
絶望を乗り越えられたなら
貴女はまだ生きていける
私への想いはいつか風化して
生きて、幸せになれるはず
優しい貴女の事だから
きっと、誰かが救ってくれる
あの日、私が貴女に救われたように
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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『というわけで、私の病気は久さんに隠して欲しいんだ』
『まさか咲にそんなお願いをされるとは思わなかった』
『そうかな?』
『うん。てっきり当たり前に打ち明けて、二人で一緒に逝くのかと』
『あはは。高校の頃だったら多分そうだったんだろうね』
『……でも、今はそれが正解とは思えないんだ』
『人は変われる、変われちゃう。時間が傷を癒してくれる』
『なのに、私のために五体満足な
久さんを道連れにするのって……
ハッピーエンドって言えるのかな』
『…どうだろう。でも。…私が言うのもなんだけど。
残された側のつらさは、咲が一番わかってるでしょ?』
『…あはは、そうだね。でも――』
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『――きっかけがあれば立ち直れる事も、
私自身が証明したよ?』
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日に日に体が動かなくなっていく
身をよじるだけで激痛が走り、
薬が思考を奪いとる
ぼーっとする事が多くなった
何もしなければ苦痛は多少ましになるし、
久さんに心配をかける必要もないから
別れの日が刻一刻と近づいてくる
あの日燃やされた時見た死のイメージが、
今再び明確な現実となって襲い掛かる
思ったより病気の進行が早い
でもむしろ歓迎するべきかもしれない
私が苦しみにうめくたび、久さんは表情を曇らせる
私が長く生き続ければ、それだけ久さんを苦しめるんだ
『久さんから離れよう』
猫にでもなった気分だった
確か猫は、自分の異変を周囲に悟らせないんだっけ
死期を悟ったら、自らひっそり姿を消して
独りで一生を終えるんだって
理想的だ
私もそんな風に消え去りたい
でもどうしたらいいんだろう
何も言わずにそっと消えたら、
きっと久さんは私を探す
いっそ突き放してみるべきか
別れ話でもでっちあげて
ううん、小細工してもきっと無駄
久さんは絶対気づく
たやすく私の本音を暴いて、
隠された真実を見抜いてしまう
結局私にできる事は、平穏な生活を偽装しながら
ある日、ぷつりと姿を消す事だけ
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プロ遠征
久さんが旅立つ時を見計らって
姿を消す事にした
私は久さんのマネージャー
本来同行しないのはありえない
でも、体調不良だから大事をとると伝えたら、
二つ返事で許してくれた
むしろ私も残ると主張されて困ったけれど
「いい、咲?私が帰ってくるまで安静にしてるのよ?
外に出ちゃ駄目だからね?」
「あ、あはは…わかってるよ」
「じゃ、サクッと行って戻ってくるわね」
「うん」
「行ってらっしゃい、久さん」
久さんが発つのを見送って、私も旅の支度を整える
もっとも私の方は、もう戻って来ない片道旅行だから
準備はすぐに終わってしまう
小さく荷物をまとめると、お姉ちゃんを呼び出した
「私が居なくなった後の事はお願いします」
お願いしたのは久さんの監視と癒し
ほおっておけば久さんは私を探して、
いずれ『後を追い掛ける』だろうから
「ねえ咲。本当にこれでいいの?」
「わかんないよ。でも、久さんまで死ぬ必要はないでしょ?」
お姉ちゃんは最後まで難色を示した
人生最後の瞬間に、愛する人と言葉すら交わせない
それで本当にいいのかと
「それって、本当にハッピーエンドなの」
「そこで終わったらバッドエンドだろうね。
でも、久さんの人生はまだ続いていくよ?」
「……っ、咲の人生は…そこで、終わるんだよ……?」
「それでも私は、久さんが幸せになれる道を選びたいよ」
お姉ちゃんは唇を固く噛み締めて、
ただ「さよなら」と呟いた
小さく縮こまったお姉ちゃんの背中を見送ると、
最後の準備を整え始める
最後の旅に赴く前に、一つだけ仕事が残っていた
私は筆を手に取ると、便箋をそっと机に広げる
久さんに向けた最後の手紙
つまりは、遺書
なかなか筆は動かなかった
伝えたい想い、遺したい言葉が多過ぎて
でも、何を書いても久さんを縛り付ける事になるのなら
いっそ何も書かない方がいいんじゃないかとも思う
数時間、書いては消し、書いては消しを繰り返し
結局、たった3行だけを遺した
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久さんのおかげで、わたしは本当に幸せでした
でも、久さんの人生はまだ続きます
どうか、わたしの分まで長生きして、幸せになってください
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そして私は、死出の旅に出る
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死に場所を求めてさ迷い歩く
できるだけ迷惑を掛けずに死ねる場所
そんな場所を探し求めて、
あてもなくふらふら漂い続ける
本音を言えばちょっとした欲もあった
人生の幕を閉じるにふさわしい場所で逝きたいと
どうせ短命で終わるのだから、
そのくらいの我儘は許してほしい
でも、そんな場所あったっけ
病理に蝕まれ回らない頭を捻っていると
ふと、頬に西日が差した
「夕陽……そっか」
心が真っ赤に染まりきる
もう『そこ』以外考えられなくなる
少し逡巡しながらも、私の足は動き始めた
そう、清澄高校の屋上へと
母校を悲劇で穢す事に、躊躇いがないわけじゃなかった
それでも、幸せが詰まったあの学び舎で
私は最後の幕を閉じたい
我儘なのはわかってる
酷く迷惑な事もわかってる
でも、どうか、どうか……
清澄高校を、終着点にする事を許してください
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久しぶりに見た清澄は、随分姿を変えていた
思い出深かった旧校舎は、老朽化を懸念して解体
時間って残酷だな、なんて考えて思わず嗤う
私はその時間を頼みに、久さんを置き去りにするくせに
「あ、でも…部室は残ってるんだ」
部室だった教会は新校舎に移築されていた
ああ、この学校は、私たちの思い出を大切に守ってくれている
そう考えたら、血を撒き散らすのが少し怖くなった
受付に行って見学の申請をする
事務員さんは驚いたように目を見開くと、
すぐに満面の笑みを浮かべた
『まさか、宮永さんに会えるとは思いませんでした!』
返す言葉を紡げなかった
ああ、この人にとって私はどういう存在なんだろう
もしかしたら、強豪清澄高校麻雀部の礎を築いた
憧れの人だったりするのかもしれない
その憧れの人が、自分が見学を許可したせいでこの世を去る
そしたら、この人の人生はどうなってしまうんだろう
頭の中がドロドロと混濁していく
駄目だ、余計な事を考えるのはやめよう
どうせ私は狂ってるんだ
久さんと自分の事だけ考えていればいい
結局私は、わずかな愛想笑いを浮かべて
一言も話す事なくその場を立ち去る
事務員さんはいつまでも手を振っていた
--------------------------------------------------------
当たり前の事だけど、屋上は鍵が掛かっていた
原因は言うまでもなく私たち
自殺未遂が起きるまで、
屋上は普通に開放されていたのだから
それでも、在学中何度もここで空を見た
久さんがまだ学生議会長だった頃
職権を濫用して合鍵を作ったから
「懐かしいな…何も、何も変わってないよ」
屋上への道を阻む門扉(もんぴ)
そして鍵も、在学中からそのままだった
いまや年に数回開放されるかも怪しい扉だから
そうそう錠前の交換なんてしないんだと思う
少し錆びた鍵穴に鍵を差し込むと、
ガチリと鈍く音をたて、あの頃と同じように扉が開く
空一面に、赤色が広がっていた
「……綺麗」
空を、地面を、すべてを赤が埋め尽くす
炎が燃え盛る炉のように、空は真っ赤に燃えていた
「この空なら、私を燃やしてくれるかな」
「っ……」
呟いて胸が苦しくなった
嗚呼、結局こうなった
一度は久さんと一緒に燃えて
絶望を克服できたと思ってたのに
あれから何年も経った今
結局はあの時と同じように、私は死に救いを求めている
「……違う。今度は違うんだ」
そう、これは久さんのため
病魔に侵された私から久さんを解放するため
だから私は、笑って人生に幕を閉じるんだ
空との境界に近づいて、そりたつ壁に阻まれる
あの時と同じように乗り越えようと
私はその壁に足を掛けて
そして――
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--------------------------------------------------------
「ねえ知ってる?猫が死ぬ前に姿を消す理由」
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背後から、声を掛けられた
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「死期を悟った猫は、死に目を
見せたくないから姿を消す」
「そしてひっそり一匹で孤独に死ぬ。
なーんて話があるけれど。
今では違うんじゃないかって言われてるのよね」
「…じゃあ、どうしてなの?」
「……猫はね。生命の危険を感じると、
安全を確保するために身を隠すの」
「つまりね、命を繋ぐために姿を消すのよ。
咲のそれとはまるで違うわ」
「…っ、そうかな。そんなに、違っちゃいないよね?」
「どこが?」
「だって、私が大っぴらに死んだら。
久さん絶対後を追うでしょ?」
「もちろん」
「だから、久さんの命を繋ぐために、私は姿を消すんだよ」
「あはは、なーに言ってんだか」
「……言った事なかったかしら?
私はね、貴女と手を繋いで飛び降りたあの日に、
心に誓った事があるの」
「もし生き残れたなら、残りの人生は
全部貴女のために使おうって」
--------------------------------------------------------
「だからね?貴女がいなくなった時点で、
私はゲームオーバーなのよ」
--------------------------------------------------------
そう語る久さんの目は、あの日と同じ色をしていた
--------------------------------------------------------
月日が何度も流れる中で、
変わっていったものがある
ずっと久さんと一緒にいたい
いつか私が終わる時、久さんと二人で終わりたい
そう考えていた幼い私は、
年月を経て少しだけ大人になった
久さんに幸せになってほしい
私の命が途切れた後も、どうかそのまま幸せに
でも変わらないものもある
久さんの心は変わらなかった
常に私だけをその目に入れて、私の幸せだけを考えて
そしてあの日の誓いのままに
久さんは、私と共に逝こうとしてくれる
「というか、決定事項だとばかり思ってたんだけど?」
「……そうだね。でも、正直予想外だったんだよ」
「なにが?」
「先に駄目になっちゃうとは思わなかったんだ。
てっきり、久さんが先に寿命を迎えて。
それについていくんだって思ってたのに」
「わた、わたしが。久さんを殺す原因になるなんて」
「……どっちでも一緒でしょ?どうせ二人で逝くんだから」
肩をすくめる久さんに、この苦しみは伝わらない
愛する人についていくのと、愛する人を死に引き摺りこむ事
この罪悪感は、いざその立場にならなきゃわからないんだ
「そうかもね。じゃ、咲も逆に考えてみたら?」
「え?」
「私が先に逝っちゃって、でも、後を追う事は許されない。
残された世界でただ一人、死を待ちわびながら生き続けるの」
「時間が解決してくれるかもしれないわね。
だんだんと、私の声も、顔も、姿形も思い出せなくなる。
あんなに愛し合ったのに、愛情が脳から零れ落ちていく」
「想像してみて?そんな地獄に置き去りにされる事を」
言葉が脳を埋め尽くす
試しに少し思い浮かべて、脳が思考を停止する
考える事を拒絶した
まるで救いの見えない絶望
その想像に、私は耐えられる気がしなくて
考えるのはすぐやめた
なのに全身が震え出し、カチカチと歯が音を鳴らし、
涙腺が壊れたように涙が溢れ出してくる
--------------------------------------------------------
「わかった?貴女は自分が引きずり込む側になったせいで、
ちょっと冷静さを欠いているだけ」
「私たちが幸せを望むなら。二人で逝くのが一番なのよ」
--------------------------------------------------------
結局私は、久さんを説得する事ができなかった
私を見つめる二つの目、その瞳を見て無理だと悟る
だって久さんは、もう覚悟を決めていたから
「…いきましょ?」
囁くような小さな声
私にだけ聞こえた声は、
真っ赤な空に響いて消える
久さんは返事を待たず、
私を空との境界に導いた
空は今でも燃えている
あの日の空と同じように、
赤々と私たちを焦がしている
「……」
たった一歩を踏み出せば、
私たちは燃えるのだろう
まだ高校生だったあの日
悲しみに負けて、久さんを巻き添えに
身を投げた時のように
ああ、そっか
よく考えたらこれで二回目なんだ
私のせいで、久さんが死ぬ
違う、私が、久さんを殺す
「……これって、ハッピーエンドなのかな……」
「普通にハッピーエンドでしょ」
「…そうなの、かな」
「終わりはいつか絶対訪れるわ。
その時振り返りたい過去があるかで、
その人が幸せだったか決まると思う」
「病気になったのは確かに不幸よね。
でもね。ただそれだけで、今までの人生を
全部バッドエンド扱いしちゃうのは横暴よ?」
諭すような久さんの言葉
言いたい理屈は伝わるけれど
でも、でも、でも、でも!
「……でも!久さんに、もっと生きて欲しかった!」
「もっとっ、久さんと、いっしょにっ。わらってたがったっ」
「……それは、わたしも……よ」
「っ゛……ひささん゛っ゛っ゛」
「さき……っ゛」
堪えきれなかった涙が、後から後から伝っていく
私のせいで、物語がバッドエンドで終わってしまう
私のせいで、私のせいで、私のせいで」
「それはっ、ちがうわ…さきっ……!」
うずくまって嗚咽する私を抱き寄せて、
久さんがそっと耳元で囁く
「言ったでしょ…遅かれ早かれ、この日は来ていたの。
ちょっと早くなっただけ」
「そんな時に……っ、大好きな人と、二人で、手を繋いで逝けるの。
それは…すごく、幸せな結末なのよ?」
「だから……ね?……いきましょう?」
私は幼子のようにしゃくりあげると、
久さんの言葉に頷いた
--------------------------------------------------------
久さんがそっと私の手を取る
私はもう何も言わず、久さんの手を握り返した
見つめあって最期に口づけた後
揃って足を前に踏み出す
一面に広がる空、空、空
燃え盛る空が、私たちを燃やし尽くして
そして――
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
――私たちは、空へ、空へ
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ
薄暗い病室に、電子音だけが木霊する。
照は幽鬼が如く表情のない顔で、
死人のような妹の顔を見つめ続けていた。
「照。少し休め」
「……菫こそ」
たった数文字のやりとりの後、再び会話は閉ざされる。
死の匂いが色濃く纏わりつくこの空間に、
照は半ば屈しかけていた。
咲ちゃんと久は、命を繋ぎ止めている。
だがそれは風前の灯火で、今にも消えそうに揺らめいていた。
そもそも生き残ったからなんだという話もある。
仮に一命をとりとめたとして、二人に
死を決断させた元凶は依然残り続けるのだ。
「…一思いに逝ければよかったのにね」
目から光を失った照が、酷く掠れた声を吐き出す。
諌めるべきかと思ったものの、口を開くのも躊躇われた。
本心では同じ事を考えていたからだ。
私は唇を噛み締めると、目を剥いて空を睨みつける。
どうせ二人に未来はない。
なのに自ら幕を引く事すら許されないのかと。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ
電子音は今も彼女たちの生を伝え続けている。
でも私にはそれが、絶望のカウントダウンに
聞こえて仕方なかった。
(後編へ)
リクエストがあらすじ代わりです。
<登場人物>
竹井久,宮永咲,宮永照,弘世菫
<症状>
・狂気(重度)
・共依存(重度)
・絶望(重度)
<その他>
次のリクエストに対する作品です。
・猫が死の直前身を隠すことを題材にした久咲か咲久
予め決めていた時期に消えようとしたが、
相手が察していて止めにくる
※本ブログにおける別作品の世界観を踏襲していますが、
この話だけでもお読みいただけます
『堕ちる。深く、深く。』
http://yandereyuri.sblo.jp/article/101983336.html
※リクエストテーマの都合上、
絶望と死が付き纏う重苦しい話になります。
苦手な方はご注意を。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
貴女はいつも言ってましたね
『それってハッピーエンドなのかしら?』って
胸を張って断言できます
私が歩んだ人生は、貴女のお陰で幸せでした
私はもう十分です
だから、どうか、生きて、ください
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
--------------------------------------------------------
『そして私たちは、空へ、空へ』
--------------------------------------------------------
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その昔。私、宮永咲は、救いのない物語が好きでした。
正確には、幸せな話が嫌いだったんです。
眩しくて直視できないから。
本の中の奇麗な世界は、私をいつも苦しめました。
きらきらと輝く空想と、からから渇いた空虚な現実。
鮮やかな世界の対比が、心を深く抉るんです。
本にも滅びを要求しました。寒々しく、絶望に満ちた世界を。
特にお気に入りなのは、悲惨な末路を迎える少女の話。
欲しかったんです。みじめに傷を舐めあう相手が。
本の登場人物に仲間を見出して、
『貴女も私と一緒なんだね』なんて勝手に寄り添う。
そうすると、じくじくと痛み続ける心の傷が、
少しだけ楽になる気がしたんです。
そんな私の仄暗い趣味嗜好。
一人だけ、目ざとく気づいた人がいました。
清澄高校麻雀部の元部長。そう、竹井久さんです。
部長は私の手を取ると、目を見つめながら言いました。
『もう、救いのない世界に自分を投影するのはやめましょう?』
『救い出すわ。私の残りの人生を懸けて。
きっと、貴女を幸せにして見せる』
ある種、自分に言い聞かせるような声音。
それは気のせいではなかったでしょう。
私は知っていたんです。
部長だって、救いのない話が好きな事を。
それも、私と同じ理由で。
家族との離別を経験した部長。
捨てられて、泣きじゃくって、世界の全てに絶望した部長。
でも、だからこそ。この人の言葉は重い。
『……努力、してみます』
もう一度、誰かにすがってみよう。
こうして私は、絶望との決別を目指したのです。
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学校を卒業してプロ雀士になるや否や、
部長は一軒家を建てました。
そして完成初日から、私を迎え入れたんです。
『じゃーん!これが私たちの愛の巣です!』
『わぁぁ……!』
ひときわ目を引いたのは、壁一面に広がる本棚。
そう、部屋の壁がそのまま本棚になっていました。
『本の虫のロマンよねー。壁一面オール本棚!』
『あ、あはは…これ、地震が来たら死にますね』
『本で埋葬されるなら本望だわ!
それに、多分これでもすぐ足りなくなるわよ?
ひょっとしたら、手持ちの本だけで埋まっちゃうかも』
幸い部長の懸念は杞憂に終わりました。
二人で一冊ずつ順番に、お気に入りの本を差し込んでいって。
全ての本を詰め終わり、それでも本棚は
まだ半分くらい空いています。
なのに、部長はどこか陰のある笑みを浮かべました。
『随分とまぁ…悲しみと絶望に満ち満ちてるわねぇ』
救いのない本が好き、それは二人の共通項。
そんな私たちの本棚は、澱んだ本ばかりが整然と並んでいて。
新生活に相応しいとは言い難い、
酷く陰鬱な雰囲気が漂っています。
『別にそれが悪い事とも思わないけどね。でも……』
『多分これからは、明るい本が増えてくると思うわ』
にやりと口角を上げる部長。
対して私は曖昧な笑顔を浮かべました。
その時の私には、真意が掴めなかったから。
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明るい本を読みたいとは思いませんでした。
なのにどうしてなのでしょう。
いつからか私は、自然と暗い表題の本を
選択から外すようになりました。
久さんに遠慮して、意図的に排除したわけではありません。
なぜか惹かれなくなったんです。
ううん、むしろ苦手になったと言っても
過言ではありませんでした。
本棚に温もりが灯り始めます。
やがて輝きは強さを増して。
本棚の半分は、希望に満ち満ちていきました。
『不思議だなぁ。別に、わざと
そうしてるわけじゃないんだけど』
『本当に、久さんの言ったとおりになっちゃった』
『ん?個人的には当然だと思うけど』
『どうして?』
『絶望から這い出した人間は、だからこそ絶望を恐れるの。
もうあそこには戻りたくない、ってね。
そして希望を追い求めるのよ』
柔らかくぬくもりに溢れた久さんの微笑み。
その目は遠い過去を見通すようでした。
ならこれは、おそらく経験談なのでしょう。
『救いのない話を、第三者視点で
楽しめるようになった時』
『その時こそ…私たちは、本当に
絶望を脱したと言えるんでしょうね』
そう笑いかける久さんの顔に、
もう陰はありません。
いつかきっとその日が来る。
そう信じて疑わない表情でした。
私も、久さんと二人なら。
きっとその日を迎えられると、
素直に信じられたんです。
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『過去を完全に乗り越えた』
そう確信できたのは、夕陽に照らされた時でした。
久しぶりに久さんがオフの日。
二人で日向ぼっこしながら本を読んで、
気づいたらすっかり眠り込んでいました。
『ん…』
夢を揺蕩う事二時間後。
顔を差す眩しさに目を覚ますと、
窓一面に紅い光が差し込んでいます。
『…綺麗』
思わず誘い出されるように、ベランダに足を運びます。
燃えるような真っ赤な夕陽。
身を焼きそうな落陽は、私の心に暗い影を落としました。
『…あの時、みたい』
そう
久さんと二人で飛び降りた
あの日もこんな夕焼けでした
そう私は…『自殺を試みた事がある』んです
屋上からの飛び降り自殺
苦しみに耐えて、耐えて、耐えて、耐えて
苦しみ抜いた上での『あの』言葉に、
打ち勝つ事ができませんでした
『私に、妹は居ません』
もう生きるのがつらかった
全ての望みがなくなって
終わりにしたくて仕方がなかった
だから燃える事にしました
空に飛んで、焦がされ消える
自然と足は校舎の屋上に向かっていました
何もかも燃やし尽くして欲しい
悲しみも、苦しみも、失望も、全部
全部焼き払って、消えて、消えて、消えて、消して
ふらふらと空に近づいた時
その腕を掴む人が居ました
その人は涙をぼろぼろ零しながら、
私の自殺を阻もうとして
でも最後には、私の狂気に穢されて
『最期くらい、付き合わせて』
私を強く抱き寄せながら、一緒に逝くと誓ってくれました
貴女を救ってあげられなかった
せめて一緒に逝かせて欲しい
そう、小さく声を震わせながら
手を繋いで飛び降りた私たちは、
地面に真っ赤な華を散らして。
それでも、死ぬ事はありませんでした。
その後、実はお姉ちゃんの言葉には
別の真意があった事を知り。
結局今も生き永らえています。
『……』
暗い過去を振り払い、再び夕陽に目向けました。
あの頃の私は、この赤に終わりを求めた。
美しくて、悲しくて、大好きだった。
でも今は、ずっと見てると恐怖を覚えて、
心が酷く騒めいていきます。
『ああ、私。燃えるのが怖いんだ』
今が希望に満ちているから。
もう燃える必要なんてないから。
だから、死を思わせる夕陽が怖い。
でもそれは、きっと幸せな事でしょう。
私は夕日を眺めます。赤と黒に彩られた世界は、
やっぱりちょっと怖くって。
でもどうしようもなく嬉しくて、自然と笑顔になれたんです。
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一度は生きる事を諦めた私が
立ち直る事ができたのは、久さんのおかげです。
久さんが一緒に飛び降りてくれたから。
そして生き残った後、その後の人生を
全部私にくれると約束してくれたから。
私は今、人並みの幸せを掴めています。
もっとも久さんとの関係は、
決して褒められたものではないのでしょう。
互いに複雑な家庭環境に生まれ、
傷を舐めあうように寄り添った。
久さんは親から見捨てられ。
私はお姉ちゃんに拒絶された。
余り者同士身を寄せ合って、
小さく縮こまって夜を過ごした
依存は深く心を蝕み、もう離れる事はできない
どんなに気味悪がられても、いつも一緒にあり続ける
それが、私たち二人の世界
立ち直ったつもりです。
それでも、依存で接着された私たちは、
依然『病気』のままなのでしょう。
でも、それでいいと思ってました。
久さん以外は誰も要らない。
依存にまみれた二人だけの世界に埋没して。
やがて、どちらかが身罷る(みまかる)時は、
互いに手を取り合ってこの世を去る。
『それって、文句なしにハッピーエンドでしょ?』
『うん、ハッピーエンドだよ』
笑顔で問いかける久さんに、私も笑顔で頷きました。
その頃は、本気でそう思ってたんです。
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あの日、死を宣告されるまでは
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幸せな世界が終わりのカウントダウンを始めました
あの日の誓いを果たす時が来たのです
なんて事ないはずでした
だって私は、すでに一度死を選んでいるのですから
なのに宣告を受けた時
私に襲い掛かった感情は――
――『恐怖』
私たちが身を投げた時
あの時は、生き死にを自分で決められました
世界の全てに絶望し、自ら死を選ぶ事に戸惑いもなく
死に寄り添って飛び降りる事ができました
でも今は違います
世界は幸せに溢れていて
いつまでも続けばいいと願ってる
目を開けばすぐそばに愛する人がいて、
優しいキスを落としてくれる
なのに、私は、もうすぐ、死ぬ
死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ
死ぬ!!!
唐突に終わりを告げられて、
目の前が真っ暗になりました
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう
考える必要もないはずでした
こうなった時どうするか
私たちはもうとっくに決めていたのですから
『逝く時は、手を取り合って必ず二人で』
間違いなく本心のはずでした
今まで疑った事すらありませんでした
なのに、いざ、その時が近づいてきて
自分が原因で、まだ生きられる久さんの命を
摘み取る事が確定した時
私の胸に、新たな願いが生まれたんです
それは――
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――久さんには、生きて欲しい
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酷く、我儘で自分勝手な願いでした
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それなりの期間生きてきて
人は変われる事を学びました
死に至る悲しみを乗り越え
幸せを掴める事を知りました
私が独り逝ったなら
貴女は後を追うのでしょう
それでも周りがそれを阻止して
絶望を乗り越えられたなら
貴女はまだ生きていける
私への想いはいつか風化して
生きて、幸せになれるはず
優しい貴女の事だから
きっと、誰かが救ってくれる
あの日、私が貴女に救われたように
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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『というわけで、私の病気は久さんに隠して欲しいんだ』
『まさか咲にそんなお願いをされるとは思わなかった』
『そうかな?』
『うん。てっきり当たり前に打ち明けて、二人で一緒に逝くのかと』
『あはは。高校の頃だったら多分そうだったんだろうね』
『……でも、今はそれが正解とは思えないんだ』
『人は変われる、変われちゃう。時間が傷を癒してくれる』
『なのに、私のために五体満足な
久さんを道連れにするのって……
ハッピーエンドって言えるのかな』
『…どうだろう。でも。…私が言うのもなんだけど。
残された側のつらさは、咲が一番わかってるでしょ?』
『…あはは、そうだね。でも――』
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『――きっかけがあれば立ち直れる事も、
私自身が証明したよ?』
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日に日に体が動かなくなっていく
身をよじるだけで激痛が走り、
薬が思考を奪いとる
ぼーっとする事が多くなった
何もしなければ苦痛は多少ましになるし、
久さんに心配をかける必要もないから
別れの日が刻一刻と近づいてくる
あの日燃やされた時見た死のイメージが、
今再び明確な現実となって襲い掛かる
思ったより病気の進行が早い
でもむしろ歓迎するべきかもしれない
私が苦しみにうめくたび、久さんは表情を曇らせる
私が長く生き続ければ、それだけ久さんを苦しめるんだ
『久さんから離れよう』
猫にでもなった気分だった
確か猫は、自分の異変を周囲に悟らせないんだっけ
死期を悟ったら、自らひっそり姿を消して
独りで一生を終えるんだって
理想的だ
私もそんな風に消え去りたい
でもどうしたらいいんだろう
何も言わずにそっと消えたら、
きっと久さんは私を探す
いっそ突き放してみるべきか
別れ話でもでっちあげて
ううん、小細工してもきっと無駄
久さんは絶対気づく
たやすく私の本音を暴いて、
隠された真実を見抜いてしまう
結局私にできる事は、平穏な生活を偽装しながら
ある日、ぷつりと姿を消す事だけ
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プロ遠征
久さんが旅立つ時を見計らって
姿を消す事にした
私は久さんのマネージャー
本来同行しないのはありえない
でも、体調不良だから大事をとると伝えたら、
二つ返事で許してくれた
むしろ私も残ると主張されて困ったけれど
「いい、咲?私が帰ってくるまで安静にしてるのよ?
外に出ちゃ駄目だからね?」
「あ、あはは…わかってるよ」
「じゃ、サクッと行って戻ってくるわね」
「うん」
「行ってらっしゃい、久さん」
久さんが発つのを見送って、私も旅の支度を整える
もっとも私の方は、もう戻って来ない片道旅行だから
準備はすぐに終わってしまう
小さく荷物をまとめると、お姉ちゃんを呼び出した
「私が居なくなった後の事はお願いします」
お願いしたのは久さんの監視と癒し
ほおっておけば久さんは私を探して、
いずれ『後を追い掛ける』だろうから
「ねえ咲。本当にこれでいいの?」
「わかんないよ。でも、久さんまで死ぬ必要はないでしょ?」
お姉ちゃんは最後まで難色を示した
人生最後の瞬間に、愛する人と言葉すら交わせない
それで本当にいいのかと
「それって、本当にハッピーエンドなの」
「そこで終わったらバッドエンドだろうね。
でも、久さんの人生はまだ続いていくよ?」
「……っ、咲の人生は…そこで、終わるんだよ……?」
「それでも私は、久さんが幸せになれる道を選びたいよ」
お姉ちゃんは唇を固く噛み締めて、
ただ「さよなら」と呟いた
小さく縮こまったお姉ちゃんの背中を見送ると、
最後の準備を整え始める
最後の旅に赴く前に、一つだけ仕事が残っていた
私は筆を手に取ると、便箋をそっと机に広げる
久さんに向けた最後の手紙
つまりは、遺書
なかなか筆は動かなかった
伝えたい想い、遺したい言葉が多過ぎて
でも、何を書いても久さんを縛り付ける事になるのなら
いっそ何も書かない方がいいんじゃないかとも思う
数時間、書いては消し、書いては消しを繰り返し
結局、たった3行だけを遺した
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久さんのおかげで、わたしは本当に幸せでした
でも、久さんの人生はまだ続きます
どうか、わたしの分まで長生きして、幸せになってください
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そして私は、死出の旅に出る
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死に場所を求めてさ迷い歩く
できるだけ迷惑を掛けずに死ねる場所
そんな場所を探し求めて、
あてもなくふらふら漂い続ける
本音を言えばちょっとした欲もあった
人生の幕を閉じるにふさわしい場所で逝きたいと
どうせ短命で終わるのだから、
そのくらいの我儘は許してほしい
でも、そんな場所あったっけ
病理に蝕まれ回らない頭を捻っていると
ふと、頬に西日が差した
「夕陽……そっか」
心が真っ赤に染まりきる
もう『そこ』以外考えられなくなる
少し逡巡しながらも、私の足は動き始めた
そう、清澄高校の屋上へと
母校を悲劇で穢す事に、躊躇いがないわけじゃなかった
それでも、幸せが詰まったあの学び舎で
私は最後の幕を閉じたい
我儘なのはわかってる
酷く迷惑な事もわかってる
でも、どうか、どうか……
清澄高校を、終着点にする事を許してください
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久しぶりに見た清澄は、随分姿を変えていた
思い出深かった旧校舎は、老朽化を懸念して解体
時間って残酷だな、なんて考えて思わず嗤う
私はその時間を頼みに、久さんを置き去りにするくせに
「あ、でも…部室は残ってるんだ」
部室だった教会は新校舎に移築されていた
ああ、この学校は、私たちの思い出を大切に守ってくれている
そう考えたら、血を撒き散らすのが少し怖くなった
受付に行って見学の申請をする
事務員さんは驚いたように目を見開くと、
すぐに満面の笑みを浮かべた
『まさか、宮永さんに会えるとは思いませんでした!』
返す言葉を紡げなかった
ああ、この人にとって私はどういう存在なんだろう
もしかしたら、強豪清澄高校麻雀部の礎を築いた
憧れの人だったりするのかもしれない
その憧れの人が、自分が見学を許可したせいでこの世を去る
そしたら、この人の人生はどうなってしまうんだろう
頭の中がドロドロと混濁していく
駄目だ、余計な事を考えるのはやめよう
どうせ私は狂ってるんだ
久さんと自分の事だけ考えていればいい
結局私は、わずかな愛想笑いを浮かべて
一言も話す事なくその場を立ち去る
事務員さんはいつまでも手を振っていた
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当たり前の事だけど、屋上は鍵が掛かっていた
原因は言うまでもなく私たち
自殺未遂が起きるまで、
屋上は普通に開放されていたのだから
それでも、在学中何度もここで空を見た
久さんがまだ学生議会長だった頃
職権を濫用して合鍵を作ったから
「懐かしいな…何も、何も変わってないよ」
屋上への道を阻む門扉(もんぴ)
そして鍵も、在学中からそのままだった
いまや年に数回開放されるかも怪しい扉だから
そうそう錠前の交換なんてしないんだと思う
少し錆びた鍵穴に鍵を差し込むと、
ガチリと鈍く音をたて、あの頃と同じように扉が開く
空一面に、赤色が広がっていた
「……綺麗」
空を、地面を、すべてを赤が埋め尽くす
炎が燃え盛る炉のように、空は真っ赤に燃えていた
「この空なら、私を燃やしてくれるかな」
「っ……」
呟いて胸が苦しくなった
嗚呼、結局こうなった
一度は久さんと一緒に燃えて
絶望を克服できたと思ってたのに
あれから何年も経った今
結局はあの時と同じように、私は死に救いを求めている
「……違う。今度は違うんだ」
そう、これは久さんのため
病魔に侵された私から久さんを解放するため
だから私は、笑って人生に幕を閉じるんだ
空との境界に近づいて、そりたつ壁に阻まれる
あの時と同じように乗り越えようと
私はその壁に足を掛けて
そして――
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「ねえ知ってる?猫が死ぬ前に姿を消す理由」
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背後から、声を掛けられた
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「死期を悟った猫は、死に目を
見せたくないから姿を消す」
「そしてひっそり一匹で孤独に死ぬ。
なーんて話があるけれど。
今では違うんじゃないかって言われてるのよね」
「…じゃあ、どうしてなの?」
「……猫はね。生命の危険を感じると、
安全を確保するために身を隠すの」
「つまりね、命を繋ぐために姿を消すのよ。
咲のそれとはまるで違うわ」
「…っ、そうかな。そんなに、違っちゃいないよね?」
「どこが?」
「だって、私が大っぴらに死んだら。
久さん絶対後を追うでしょ?」
「もちろん」
「だから、久さんの命を繋ぐために、私は姿を消すんだよ」
「あはは、なーに言ってんだか」
「……言った事なかったかしら?
私はね、貴女と手を繋いで飛び降りたあの日に、
心に誓った事があるの」
「もし生き残れたなら、残りの人生は
全部貴女のために使おうって」
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「だからね?貴女がいなくなった時点で、
私はゲームオーバーなのよ」
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そう語る久さんの目は、あの日と同じ色をしていた
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月日が何度も流れる中で、
変わっていったものがある
ずっと久さんと一緒にいたい
いつか私が終わる時、久さんと二人で終わりたい
そう考えていた幼い私は、
年月を経て少しだけ大人になった
久さんに幸せになってほしい
私の命が途切れた後も、どうかそのまま幸せに
でも変わらないものもある
久さんの心は変わらなかった
常に私だけをその目に入れて、私の幸せだけを考えて
そしてあの日の誓いのままに
久さんは、私と共に逝こうとしてくれる
「というか、決定事項だとばかり思ってたんだけど?」
「……そうだね。でも、正直予想外だったんだよ」
「なにが?」
「先に駄目になっちゃうとは思わなかったんだ。
てっきり、久さんが先に寿命を迎えて。
それについていくんだって思ってたのに」
「わた、わたしが。久さんを殺す原因になるなんて」
「……どっちでも一緒でしょ?どうせ二人で逝くんだから」
肩をすくめる久さんに、この苦しみは伝わらない
愛する人についていくのと、愛する人を死に引き摺りこむ事
この罪悪感は、いざその立場にならなきゃわからないんだ
「そうかもね。じゃ、咲も逆に考えてみたら?」
「え?」
「私が先に逝っちゃって、でも、後を追う事は許されない。
残された世界でただ一人、死を待ちわびながら生き続けるの」
「時間が解決してくれるかもしれないわね。
だんだんと、私の声も、顔も、姿形も思い出せなくなる。
あんなに愛し合ったのに、愛情が脳から零れ落ちていく」
「想像してみて?そんな地獄に置き去りにされる事を」
言葉が脳を埋め尽くす
試しに少し思い浮かべて、脳が思考を停止する
考える事を拒絶した
まるで救いの見えない絶望
その想像に、私は耐えられる気がしなくて
考えるのはすぐやめた
なのに全身が震え出し、カチカチと歯が音を鳴らし、
涙腺が壊れたように涙が溢れ出してくる
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「わかった?貴女は自分が引きずり込む側になったせいで、
ちょっと冷静さを欠いているだけ」
「私たちが幸せを望むなら。二人で逝くのが一番なのよ」
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結局私は、久さんを説得する事ができなかった
私を見つめる二つの目、その瞳を見て無理だと悟る
だって久さんは、もう覚悟を決めていたから
「…いきましょ?」
囁くような小さな声
私にだけ聞こえた声は、
真っ赤な空に響いて消える
久さんは返事を待たず、
私を空との境界に導いた
空は今でも燃えている
あの日の空と同じように、
赤々と私たちを焦がしている
「……」
たった一歩を踏み出せば、
私たちは燃えるのだろう
まだ高校生だったあの日
悲しみに負けて、久さんを巻き添えに
身を投げた時のように
ああ、そっか
よく考えたらこれで二回目なんだ
私のせいで、久さんが死ぬ
違う、私が、久さんを殺す
「……これって、ハッピーエンドなのかな……」
「普通にハッピーエンドでしょ」
「…そうなの、かな」
「終わりはいつか絶対訪れるわ。
その時振り返りたい過去があるかで、
その人が幸せだったか決まると思う」
「病気になったのは確かに不幸よね。
でもね。ただそれだけで、今までの人生を
全部バッドエンド扱いしちゃうのは横暴よ?」
諭すような久さんの言葉
言いたい理屈は伝わるけれど
でも、でも、でも、でも!
「……でも!久さんに、もっと生きて欲しかった!」
「もっとっ、久さんと、いっしょにっ。わらってたがったっ」
「……それは、わたしも……よ」
「っ゛……ひささん゛っ゛っ゛」
「さき……っ゛」
堪えきれなかった涙が、後から後から伝っていく
私のせいで、物語がバッドエンドで終わってしまう
私のせいで、私のせいで、私のせいで」
「それはっ、ちがうわ…さきっ……!」
うずくまって嗚咽する私を抱き寄せて、
久さんがそっと耳元で囁く
「言ったでしょ…遅かれ早かれ、この日は来ていたの。
ちょっと早くなっただけ」
「そんな時に……っ、大好きな人と、二人で、手を繋いで逝けるの。
それは…すごく、幸せな結末なのよ?」
「だから……ね?……いきましょう?」
私は幼子のようにしゃくりあげると、
久さんの言葉に頷いた
--------------------------------------------------------
久さんがそっと私の手を取る
私はもう何も言わず、久さんの手を握り返した
見つめあって最期に口づけた後
揃って足を前に踏み出す
一面に広がる空、空、空
燃え盛る空が、私たちを燃やし尽くして
そして――
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--------------------------------------------------------
――私たちは、空へ、空へ
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ
薄暗い病室に、電子音だけが木霊する。
照は幽鬼が如く表情のない顔で、
死人のような妹の顔を見つめ続けていた。
「照。少し休め」
「……菫こそ」
たった数文字のやりとりの後、再び会話は閉ざされる。
死の匂いが色濃く纏わりつくこの空間に、
照は半ば屈しかけていた。
咲ちゃんと久は、命を繋ぎ止めている。
だがそれは風前の灯火で、今にも消えそうに揺らめいていた。
そもそも生き残ったからなんだという話もある。
仮に一命をとりとめたとして、二人に
死を決断させた元凶は依然残り続けるのだ。
「…一思いに逝ければよかったのにね」
目から光を失った照が、酷く掠れた声を吐き出す。
諌めるべきかと思ったものの、口を開くのも躊躇われた。
本心では同じ事を考えていたからだ。
私は唇を噛み締めると、目を剥いて空を睨みつける。
どうせ二人に未来はない。
なのに自ら幕を引く事すら許されないのかと。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ
電子音は今も彼女たちの生を伝え続けている。
でも私にはそれが、絶望のカウントダウンに
聞こえて仕方なかった。
(後編へ)
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特に照さんの最後の一言がたまらなかったです
後編楽しみにしています
今回で完結するのか…?というとこまで来て前半終了ですか。後半に期待してます。
赤字の部分、特に久さんの語りの場面では思わず震えてしまいました。ぷちさんの力量は凄いです。
過去作も綺麗な終わり方で好きでしたが、その世界?は今作で再び暗い空気に…。
後編もあるのでしょうか。ひっそり待っています。