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【オリジナル百合SS】 「私が守りたかった世界」【共依存】【狂気】【絶望】

<あらすじ>
救いのない日々を送り続ける少女は、
ある日人生の転機を迎える。

『魔法少女になってほしい』

日曜朝のアニメを彷彿とさせるその言葉は、
彼女にとって救いだったのか。それとも。

<登場人物>
少女A,少女B


<症状>
・狂気(重度)
・共依存(重度)
・異常行動(重度)
・絶望(重度)

<その他>
・管理人が夢で見たシリーズ。
 本ブログの作中でもトップクラスの重苦しさです。

・個人的にはハッピーエンドですが
 大半の人は完全にバッドエンドと感じると思います。
 苦手な方はご注意を。


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――魔法少女。


この単語を耳にした時、貴方はどんな存在を
思い浮かべるでしょうか

夢と希望をふんだんに詰め込んで
おまけに砂糖でコーディングしたような
愛らしい存在を思い浮かべるでしょうか

それとも、謎生物に騙されて
報酬に見合わない労苦を背負わされる
不遇の少女を思い浮かべるでしょうか

この世にはいろんな魔法少女が存在します
先の例のように優しい世界に住む娘から、
悲惨な世界で生きる事を余儀なくされた娘まで


そんな中で『私』はと言うと――



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――おそらくは、後者に属するのでしょう




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『私が守りたかった世界』




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数多の少女から私が選ばれた理由
それにはいくつかの理由がありました


一つ、使い捨てても問題がない事

一つ、強烈な感情エネルギーを有している事

一つ、放置しておくと危険である事


つまりは、消耗品として最適だったという事です


生まれながらに愛を知りませんでした
ショットガンで受精した私は、
中絶による絶命と出産後遺棄される二択で
天秤にかけられたのです

後者を選択されました
ゆえに生まれ落ちはしたものの、
親の顔も名前も知りません

物心ついた時には薄暗い灰色の施設の中
人生を諦めた子供達に囲まれ
狂った子供の悲しみのはけ口として、
日々拳と唾を受け止めるのが私の全て


そんな私にとって、日曜日の朝姿を現す『魔法少女』は
まるで理解のできない存在でした

構成する全てが意味不明です
どこにあんな世界があるのでしょう
本当の世界はもっと薄汚れていて、
どこまでも暗くて、冷たくて、怖くて、醜い


『う゛ぇっ、え゛っ……っ!』


初めてあの世界を知った時
私は吐き気に耐えきれず嘔吐し、
胃の中のものを全てぶちまけて
その後、ずっと嗚咽し続けました

これは何?実在する世界なの?
いえ、魔法の事を問うてるのではありません
優しい両親、恵まれた友達、思慮深い大人、鷹揚な社会

どこにそんなモノがあるの?
ないでしょう?あるはずがないでしょう?
それとも、私の住む世界だけが狂っていて、
普通の人はみんな、こんな幸せな世界に生きてるの?

コレは何?私達を見捨てた大人達が、
捨てられなかった幸運な子供達のために
作ってあげた優しい世界?


「死ね!!!」


憎悪が口から漏れ出ていました
憎くて憎くて仕方ありませんでした
もう二度と見るものか、そう固く心に誓います


でも、同時にこうも思いました
もし仮に、本当にあんな世界が存在するのなら
どうか私を拾い上げてほしい
あの世界に連れて行ってほしい


そのためなら、なんでも――
それこそ、命だって捧げるから、と



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そしたら、本当に来たんです

私の元に、ありがちな謎生物が




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もっとも、そこに救いはありませんでしたけど




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『それ』は、確かに愛らしい謎生物でした
でも、筋書きは冒頭から狂っていました

私の前に現れた謎生物
それはすでに血塗れで虫の息

かの生き物は血と共に言葉を吐き出しました


『どう、か…魔法少女に、なって……
 キミの、世界を…救ってほしい』


そして、ただそれだけを口にして絶命


残されたのは私と骸
後は、私に渡す前に前足からこぼれ落ちたロッドのみ
唐突に押し付けられた絶望に、
私はただ立ち竦むしかありません


不幸にも敵はすぐに判明しました
そして、力の使い方も


あの生き物を屠った化け物が追い掛けてきたからです


「なっ、なに、これっ……!?」


化け物としか形容しようのない存在でした

夥しい数の触手を蠢かせ
それは悪臭と粘液に塗れており

本能的に、存在してはいけない
冒涜的な生き物だと直感しました


「…ッ!!」


咄嗟に例のロッドを手に取ると、
ありったけの想いを杖に籠めます

ただだだ助かりたい一心で、
目の前の生物にそれを叩きつけました



『――死んで!!!』



願った通りその生き物は死にました
この世の終わりと紛うばかりの断末魔と共に、
その身を劫火に焼かれながら


「……はぁっ」


思わずその場にへたり込みます
理解を超えた出来事の連続が飲み込めなくて
だから脱力した、ううん違う
あれ、動けない、体が、動かなくて、
このままじゃ、私、倒れ――



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こうして、私の魔法少女としての初戦は

命を魔法につぎ込み過ぎた末

救急車によって運ばれるという結果に終わったのです




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施設のベッドで寝た切り生活を3日程過ごした後
私はあの現場へと舞い戻りました


「……!」


驚きに目を開きます
かの哀れな謎生物の亡骸は、
いまだ無造作に転がっていたのです


行き場のない怒りが全身を駆け巡りました


(どうして誰も埋葬してあげないの!?)

(この子は…世界のために
 頑張った子じゃなかったの!?)

(そんな子が…どうしてこんな
 扱いを受けないといけないの!?)


でも次の瞬間納得しました
ええ、私だって第三者の立場なら
きっとそうするでしょう
あえて面倒な事に関わる必要なんてないのですから


それでも、あまりにもむご過ぎる


私は一人唇を噛みしめながら、小さな骸を抱き上げます
血は乾いていたものの、腐臭が鼻を突きました
それにまた涙腺を刺激された時
死体から何かがこぼれ落ちます


「…手紙?」


それは、世界のために尽くした獣が遺した
悲しい悲しい遺言でした――



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初めましてになるのかな?
それとも、もう友達かもしれない。

ボクがもう魔法少女についてキミに説明済みなら、
どうか、この手紙は読まないで捨ててほしい。

でも、もし何らかの不幸があって、
ボクがキミと会話する前に居なくなっていたのなら。
その時は悪いけど、心の準備をして
この手紙を読んでください。



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この世界には、人間の暗い気持ちが充満してる。
で、そういった負のエネルギーが化け物に変わるんだ。

そういう化け物は、とっても強くて、
とっても醜くて、とっても凶暴だ。
だから誰かが退治しないといけない。

その役目を担うのが魔法少女――つまりはキミだ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



なぜキミなのかって?それはキミが彼らと同類だからだ。
強い感情のエネルギーを持ってる。
放置しておけばキミは化け物になるだろう。
だから、そうなる前に有効利用しようってわけだ。

わかってる、酷い言い草だって。
でも、隠し続ける方が酷いと思ったんだ。

この世界は腐ってる。
ここが夢と希望に満ち溢れてる世界なら、
誰が年端も行かない女の子に
化け物退治なんかさせる?
でもこれが、この世界のルールなんだよ。



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魔法少女として戦い続けるか、
それとも義務を捨てて逃げ出すか。
キミは選ぶことができる。

でも、戦わない場合キミは殺されてしまうだろう。
こわいこわい化け物予備軍として。

できればボクは、キミに生きてほしい。



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こんなこと書いたら、上の奴らには
怒られるかもしれないけど。

世界全部を救う必要はないと思う。
でもせめて、キミ自身の世界を救ってほしいんだ。
それだけでいい。


ちょっと周囲をパトロールして、
化け物がいたら襲われる前に
先手必勝で倒すだけでいい。

キミはおそらく苦も無く勝てるだろうし、
万が一傷を負っても魔法で治せるだろう。

魔法を悪事に使わなければ、
ほんのちょっとの仕事をこなすだけで、
君はどっちからも身を守ることができるんだ。

本当ならそれをサポートしたかったんだけど。
キミがこれ読んでるってことは、
多分ボク死んでるよね。ごめん。



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面倒事を押し付けてごめんよ。

どうか、キミの世界が少しでも長く続きますように。




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「……っ、……っ」


涙が止まりませんでした
自分が置かれた境遇に、この獣の結末に

こんな世界に生み落としておいて
負の感情を持ったから殺される?
殺されたくなければ同族殺しをしろ?
理不尽にも程があります

この子に対する扱いも酷過ぎる
きっとこの子は、化け物と魔法少女との間で板挟みになって

それでも少女をサポートしようと
文字通り命を削ってきたのでしょう

事切れる瞬間までその身を捧げた結果、
遺体すら葬ってもらえず野ざらしにされるなんて
一体この子はどんな罪を犯したというの?


この世に救いなんてない
そう悟らずにはいられなくて
私はひたすら泣き続けました


それでも、敵はやってくる


私は敵と味方の両方に殺される恐怖に怯えながら
日々殺し合いを続けるしかなかったんです

いつの日か、訪れるかもわからない救済を
ただただ希い(こいねがい)ながら



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取るに足らない一日でした

いつものように世間から身を隠すように生きて
襲い掛かって来た化け物を正当防衛で惨殺する
ただそれだけの事でした


一つだけ、いつもと違っていたとすれば
巻き添えを喰らった子がいた事でしょう

化け物が現れた時、たまたま私の近くに居た少女
たまたま、化け物との距離が私より近かった少女

化け物が少女に襲い掛かって、私はそれを撃退した
どうせ次は自分だから
ただそれだけの事でした


それでも少女は目に大粒の涙を浮かべ
何度も、何度も頭を下げたのです


「あ、ありがとう…!ホントに、ホントにありがとう!!」


それは、私にとって初めての事でした
誰かに心からのお礼を言われる事
好意的な感情を向けられる事


十数年生きてきて、本当に初めてだったんです


気付けば立場は逆転していました
私は大声をあげて泣き出して
狼狽した彼女に抱き締められていました
そのぬくもりが、あまりにも優し過ぎて
私はまた、涙が止まらなくなったのです



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聞けば彼女は私と同い年で、
境遇も似たようなものでした

生まれてすぐに親から捨てられて
親類に拾われたものの関係は冷え切ってる
餌も満足に与えられず、
着る物も私と同じで薄汚れてる

今思えば、彼女と私のもとに化け物が現れたのも
偶然ではなかったのでしょう
深い負の感情を纏った二人
言うなれば、彼女も化け物予備軍だったのです

事情を説明した私を前に、
彼女は寂しそうな笑みを浮かべました


「…そ、そっか。魔法少女ってそんな存在だったんだね」

「はい。アニメの世界は嘘でした。
 …優しい、嘘の世界だったんです」

「そっか…そっかぁ……」


重苦しい沈黙に襲われます
でも、どこか安らぎを覚えました
私達の未来は暗い
それでも、悲しみを共有できる存在が居る
それが嬉しかったのです


「…わ、私も、魔法少女になれないのかな。
 そ、素質は十分だと思うけど」

「……」

「やめておいた方がいいです。
 狙われる確率が跳ね上がりますし、
 力があっても自分のために
 使えるわけでもないですから」


それは紛れもない本心でした

魔法少女は完全な貧乏くじです
自分から志願するようなものじゃない

この力を得て得した事なんてない
確かに力は得たけれど、
それを上回る命の恐怖に晒される

それでもあえて言うのならせいぜい
自分を虐めている相手を前に、
『その気になればお前なんていつでも殺せる』
と、暗い笑みを浮かべられる程度でしょう

それでも、彼女はどこかおどおどと、
物怖じしながらもこう続けます


「で、でもさ。アナタと一緒に、た、戦えるんでしょ?」

「そしたら…その」

「と、トモダチに……なれるかなって」

「……!?」


刹那
体内を、熱い何かが駆け巡りました


『トモダチ』…いま、彼女はそう言った?


それは、一生手に入る事はないと諦めていたもの
人から憎まれて生まれ落ち、
周りが敵ばかりの私にとって
願うのも愚かしい存在のはずでした


「わ、私ね。トモダチいないんだ。
 ほら、その、こ、こんなカッコでしょ?
 だから、が、学校でもイジメられて」

「ず、ずっと周りが憎かった。
 なんで、わた、私だけこんな目に…って、
 ずっと、ずっと、お、思ってた」

「で、でも」

「あ、アナタとなら…と、
 トモダチになれるかもしれない……っ」


どろりと濁った眼を鈍く輝かせながら、
少女は私に詰め寄ります

ゾクゾクと背筋が粟立って
ドキドキと胸が波打って
それでも私は、素直になる事ができませんでした
本音を語る方法なんて、誰も教えてくれなかったから


「…それって、同族で傷を舐め合うだけじゃないですか?」

「…そ、それってダメなのかなぁ?
 私、ど、同族以外、トモダチになれるとは、お、思えないよ」

「手を差し伸べてくれるなら、
 誰でもいいんじゃないですか?」

「…それ、は…そうかもしれない。
 で、でも!でも!!」


「わ、わた、私に手を伸ばしてくれたのは……
 アナタだけだったよ!!!」


「……」

「…だから、お、お願いします!わ、私と、
 と、トモダチになってください!
 なんでも、い、いの、命だって差し出すから!!」


彼女の目は血走り、体は酷く震えていました

まるでこの機を逃したら、
一生幸せになれないとばかりに

生と死のふちに足を掛けて叫ぶような、
追い詰められた懇願でした


でも、だからこそ…
その魂の叫びは、私の心を打ちました


友達なんて、一生縁がないと思っていたのに
手を伸ばす事すら烏滸がましいと戒めてたのに

今、彼女は私みたいな汚物を求めて
泣きながら手を伸ばしてくれている


その事実が、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて


自然と彼女を抱き締めていました
抱き締めた彼女は汚臭がします
その臭いすら愛おしいと思いました


「私の方こそ……っ、お願いしますっ……」


みるみる彼女の顔が崩れて、
そのまま二人で泣き続けます


世界が救われた瞬間でした


ただ死にたくないから戦い続ける私の中に、
生きる目的ができたんです



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一度意識が変わり始めると
世界はめまぐるしく変化し始めました

まず、親族から虐待を受けていた彼女を守るため、
二人で廃墟に移住しました

守る場所ができたんです
人付き合いに苦しむ必要もない
心を許した人だけが傍に居る世界

隙間風が通り抜けて肌から体温を奪うけれど
心はぽかぽか温かでした

着替えも持たずに飛び出したけど
ゴミ捨て場を漁ったら私達が着てるものより
上等な服が捨てられていました

後は、餌だけが問題でしたが…
彼女が交尾の真似事でもらってきてくれました


「ど、どうせオジサンにも犯されてたし。
 お、お金がもらえる分天国だよ」

「…私も、やります」

「ぜ、絶対にダメだよ?ショジョって貴重なんだから。
 それに、あな、アナタには汚れてほしくない」

「…私、汚れてますよ?見ての通り傷だらけです。
 もう二度と消えない火傷の跡だって一杯あります。
 傷のついてる場所が全身か、
 膣かの違いじゃないですか」

「そ、それでもダメだよ。『あれ』は
 な、流し込まれないとわからないんだよ。
 ホントに、ホントに、ゼッタイに、ダメ」

「お、お願い、約束して。そ、それだけはしないって」

「…わかりました」


私が外敵から彼女を守るように、
彼女は私を守ってくれました

それは、人として守り通すべき最後の砦
誇りとか、純潔…そんな、何の役にも立たないもの
私のそれを守るために、彼女は自らを貶める


だから私は思うんです
もし何かあったとしたら、
命に代えてでも彼女を守る

全世界とかじゃなく貴女だけのために
私は世界を守るんです


そう、心に決めたんです



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……ちなみに




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そんな私の決意が試されたのは


私達の世界が危機に晒されたのは


それからすぐの事でした




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第三次世界恐慌


学のない私には何が引き金となったのかは
わかりませんが
それは瞬く間に世界を侵食しました

日本中の人が職にあぶれ
生活水準が大幅に下落しました

それまで私達にとって雲の上だった大衆が
私達と同じ位置まで転がり落ちてきたのです


そんな事が起きればどうなるか
当然人々の心は荒みます
一部の特権階級にのみ約束されていた秩序は
無残にも崩れ去り
憎しみ、妬み、飢餓…様々な感情が蔓延りました



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そしてそれらは全て…
魔法少女の私に牙を剥いたのです




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「…た、だいま帰りました」

「おかえり…ってす、すごい傷だよ!?」

「…治しきれなくて」

「と、とりあえずここに寝て!手当てするから!」

「……待ってください」

「…え?」

「貴女こそ、その包帯は何ですか?」

「え、えーと。い、今は私の事よりも、アナタの方を」

「その包帯は何ですか?」

「……えっと」

「……」

「その…ほら。さ、最近エサがね。て、手に入りにくくて。
 ちょ、ちょっと乱暴な人と交尾しただけだよ」

「だ、大丈夫!た、大したことないから!
 というか私よりゼッタイアナタの方が
 ジューショーだから!」

「…そいつを、殺しに行ってきます」

「!だ、ダメだよ!魔法少女でしょ!?
 偉い人に殺されちゃうよ!!」



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全てが牙を剥いてきました
それは単に化け物が増えるだけでなく

生きるための糧も少なくなり
結果として彼女にも牙を剥きました

幸せな世界は一転、また理不尽に姿を変えたのです




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それでもまだ、不幸中の幸いと言えるでしょう

彼女は傷の対価として餌を手に入れた

何より彼女の相手は人間だったのですから

もしこれが化け物だったらどうだったか




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彼女も私と同じで化け物予備軍

ゆえに化け物に狙われる

次目を離した時は、生きているかわからない




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私は、彼女から片時も目を離さないと決めました




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でもそれは、奢りだったんです




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だって、私が、私自身が――




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――自分を守り切れる程、強くなかったのですから




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「い゛やぁぁぁぁあ゛ぁぁあ゛ぁ゛ぁぁっ!!!!」




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彼女の叫び声が木霊しました

私は自らが作り上げた血の海に沈みながら
朦朧とした意識の中で
眼球だけぎょろりと動かしました

敵の姿はなくなっている
よかった、彼女だけは守り通す事ができた

でもそれは今この瞬間だけ
すぐに彼女は次の化け物に襲われてしまうのでしょう


「お、お願い!し、死なないで!お願い!!」


彼女は顔をあらゆる体液でぐしゃぐしゃにしながら
必死で私の体を揺り動かします

心配させまいと笑顔を作ろうとするも、
ただ悲しみを助長しただけでした


「そ、そうだよ!私が魔法少女になればいい!
 そしたら傷を魔法で治せる!」

「なんで、なんで私には来てくれないの!?」

「ね、ねえ偉い人!見てるんでしょ!?お願い、来て!
 いいの!?わた、私、化け物になっちゃうよ!?」


「お願いだから、私を魔法少女に変えてよぉぉっ!!!」


彼女の絶叫が虚空に木霊しました
それでも声に応える者はなく
少しずつ、少しずつ
私の体から体温が奪われていきます


「も…いいん、です」

「私は、たすかり、ません」

「だから、もういいです」

「いままで、ありがとう」

「…さきに、いって、ごめ、ん、なさ」


最後まで言い切る前に、代わりに血が飛び出しました
それ以上私は喋れなくって
視界が暗転して、意識が闇に同化します


最期に映った光景は、泣きじゃくるあの子の姿


気が狂ったように叫び
世界を憎み
化け物のように咆哮する

そんな、そんな彼女の姿



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嗚呼、嗚呼、ごめんなさい

私は、貴女の世界を守る事ができなかった




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救済なんてこなかった

願った私が馬鹿だった

それでも、まだ考えずにはいられない

本当に、神様なんて奴がいるのなら




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どうかもうこれ以上、あの子を無駄に苦しめないで




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こうして――私の息の根は止まったのです




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――そう、思っていたのだけれど




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永い眠りから目を覚ますように、
瞼をゆっくりと開きました

いえ、それは錯覚だったのでしょう
実際には私に身体はなくて
誰かの脳に寄生しているような
思念だけが存在するような感覚でした


『あ、起きたんだ!よかった!!』


脳内に声が響き渡ります
それは愛しい彼女の声でした
ただ少し違うのは、彼女から怯えが抜けている事


『…ええと、状況を説明してもらっていいですか?』

『あ、ごめんね。私、あの後バケモノになったんだよ!』

『魔法少女にしてもらえなかったからバケモノになったの!
 それで、アナタを食べちゃった!』

『頭からつま先までぜーんぶ!すっごく美味しかったよ!
 それでね!今アナタは、私の中で生き続けてるんだよ!』


朗らかに語る彼女の声には一点の曇りすらなく
でも語られた内容は、全てが狂気に染まっています


『ど、どうして、そんな事を』

『私にとって、アナタは私の世界そのものだったから』

『アナタがいない世界なんてどうでもいいんだよ。
 ニンゲンとか、バケモノとかもどうでもいい。
 アナタさえ傍にいてくれればそれでいい』

『って思ったんだけど…だ…ダメ、だったかな』


脳内に響く彼女の声に、ようやく怯えが生まれます
是か非かと問われて初めて、
選択肢などない事に気づきました


『…ううん。これでよかったと思います』


どの道あのまま人でいたなら、
彼女は化け物に食い殺されていたでしょう
助かるためには同類になるしかなかった

そして、私を救うためには食べて取り込むしかなかった
冷静に思い返してみれば、
彼女の対応は完璧とすら思えました


『ありがとうございます。貴女のおかげで、
 もう少し一緒に居られそうです』

『っ、い、いいんだよ!もとはと言えば
 私を守って死んじゃったんだし!』

『これで、これからはずっと一緒だよ!』


声は明るく弾んでいました
私もなんだか嬉しくなって、
彼女の意識に同調しました



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わかってます




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これから私達が迎える結末
そこに光が差す事はないのでしょう


一体の醜悪な化け物として、同類の魔法少女に殺される
不要物と世界からレッテルを貼られ、
無残に死ぬ事を待つばかりです


それでも、彼女と一緒に死ねるなら
きっと幸せな終わり方でしょう


『どうか、私達の世界が少しでも長く続きますように』


心の中でそう願いながら、私は彼女に寄り添います
頬を摺り寄せた彼女の体は、優しい汚臭に塗れていました



<完>


















































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<夢の中設定>
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上記は私が実際に見た夢をSSに描き起こしています。
作中で語られていない設定もあるため
ここに書き殴っておきます。
興味のある方だけどうぞ。


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<化け物>
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人間が持つ負の感情の集合が具現化したものです。
完全に具現化すると化け物となりますが、
時に負の感情が強い人間に取り込まれる事で
その対象を化け物化します。

前者の場合は理性もなく人間に襲い掛かります。
理由はその化け物を構成する欲望に依存します。
犯したい、なら犯しますし、
食べたい、なら喰らうでしょう。

後者の場合は化け物化する時に抱いていた
強い感情が行動方針となります。


なお見た目は醜悪であり、一般に人間が
「化け物」と聞いて思い浮かべる不快な姿
そのままを模ります。


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<魔法少女>
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強い憎しみ、悲しみを持つ化け物一歩手前の人間が選ばれます。
作中にもあった通り、そのまま放置すれば
負の感情に取り込まれて化け物と化します。
その前に対化け物兵器として転用される存在です。
仕事内容はパトロールして化け物を駆逐する事です。

負の感情があればあるほど強いのですが、
そう言った少女はまともに働こうとはしません。
ゆえに魔法少女は刑務官が囚人を監視するかのように、
行動を制御されています。

犯罪行為に魔法を使う事は許されず、
悪用した時点で即座に殺されます。
命に首輪を掛けられて働く犬のようなものです。


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<謎生物>
--------------------------------------------------
「誰かを助けたい」という強い感情を持ったまま
死んだ人間が再利用されます。

人間として死んだ魂が意思を失う前に
謎生物に移し替えられた存在です。
こちらも魔法少女同様使い捨てです。

魔法少女と違うのは精神性で、
負の感情が弱いため戦力にはなりません。
代わりに軋轢を生みやすい魔法少女の干渉役として、
時には盾として少女を守ります。


--------------------------------------------------
<少女A>
--------------------------------------------------
才女です。ちゃんとした家に生まれ落ちていれば
その才能をもって順風満帆な人生を
送る事ができたでしょう。

ですが残念な事に両親の知能は低く、
避妊もせず性行為をした結果として
彼女が生まれます。

中途半端に罪悪感に駆られた母親は、
中絶こそ選択しなかったものの、
生まれたばかりの彼女を捨てて逃げ出します

結果彼女は施設に入れられますが、
施設の創始者が補助金を奪い取るために
設立した悪徳施設だったため、
子供達のケアなどは一切されませんでした
(あくまでこの話のケースです。現実ではありません)

鬱屈した感情をため込んだ先人達に
毎日のように虐げられ、でも
死への恐怖に打ち勝つ事はできず。
彼女は絶望を抱きながら日々を過ごしていました


--------------------------------------------------
<少女B>
--------------------------------------------------
若干知性に問題がある少女です。
その理由は幼い頃に適切な教育を
受けられなかった事に起因しています。

少女Bと同様に親から捨てられたのですが、
外道の親戚に引き取られた結果、
性的虐待を受ける事になりました。

また、それが原因で親戚夫婦は離婚しており、
叔父は多額の賠償金を払っているため
生活に困窮しています。
それらの鬱屈は全て少女Bにぶつけられました。

これらの経緯から、少女Bは自らを
穢れた子であると強く意識しています。
そんな彼女にとって、自らに
手を差し伸べてくれた少女Aは
女神のように映りました。


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<作中の彼女達が迎える結末>
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大半の化け物は何らかの負の感情を
外部に向かって吐き出す事が行動の目的であり、
それは世界にとって問題となるために駆逐されます。

ですが彼女達の場合、
愛する人を失う悲しみが化け物化の発端であり、
その意識は内に向いています。

魔法少女の死骸を取り込んで
二人の世界を作った化け物は、
特に外界の害になる事もないので放置されるでしょう。

ただし化け物と化した二人は
幸せを満喫するために、
そもそもの存在意義を否定する事になるため
少しずつ弱体化していきます。

本来化け物に寿命はありませんが、
この化け物は例外的に寿命を迎えて
絶命する事になるでしょう。
それでも、彼女達にとってはハッピーエンドです。


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<彼女Bが魔法少女になれなかった理由>
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負の感情の強さでは化け物になれる程の彼女でしたが、
『偉い人』は彼女を魔法少女にはしませんでした。

この理由は酷く単純なもので、
彼女が処女喪失していたためです。
魔法少女は破瓜を迎えていない少女しかなれません。

作中で魔法少女になっているもう一方も、
彼女の負担を減らすために
『餌漁り』を行っていた場合、
その時点で資格を喪失して
ただの少女に戻っていたでしょう。


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posted by ぷちどろっぷ at 2017年06月07日 | Comment(8) | TrackBack(0) | オリジナル百合SS
この記事へのコメント
化け物になって、やっと2人の世界が手に入ったということでしょうか。
どんなものからも無視されるなら旅もできそうな気がします。綺麗な風景は日本中にあります。
長く生きられるか、短命に終わるかは不明ですし、他にどんなリスクがあるのかもしれませんが…。案外人だった頃より幸せに過ごせるかもしれませんね。
Posted by at 2017年06月07日 22:04
ふふふ……、重い。
意識が同調してお互いの精神を侵食しあって……そして愛し合う……
SSありがとうございます……。
Posted by at 2017年06月07日 23:02
読ませていただきました。
なんだろう…限りなく救いのなく狭い世界で完結したまどマギを連想しました。
幸せの形は人さまざまですから、彼女たちが幸せならそれは幸せなのでしょう。
彼女たちは今までの不幸せからは考えられないくらいの幸せを手にしました。どんな姿であれ2人はその寿命が尽きるまで共に生きられるのでしょうから。

私は『本当に愛する人が生き返るなら、神を殺し悪魔に全世界の人間の命を売り渡してもいい』というう考えの人間なので…。
Posted by 零 at 2017年06月08日 03:37
久々の重苦しいオリジナルすばらです!
こんな夢見れるなんて幸せですね…
Posted by at 2017年06月08日 21:03
とてもいいハッピーエンドでした!
もっと救いをなくしてあげたバージョンも読んでみたいです
Posted by at 2017年06月11日 04:21
どうやったら、作者さんのような夢を見ることができますか?
Posted by at 2017年06月12日 00:01
まるで、まどマギみたい
Posted by at 2017年06月19日 13:20
コメントありがとうございます!

案外人だった頃より幸せに過ごせるかも>
「間違いなく今の方が幸せだよね」
「人間として生きていても、
 虐げられて終わるだけだったでしょう」


意識が同調してお互いの精神を侵食しあって>
「やがては個を保てなくなるのでしょうね」
「最高の結末だよ」

限りなく救いのなく狭い世界で完結したまどマギ>
「実際、あの世界にもこんな魔法少女は
 いたんじゃないでしょうか」
「マミとまどか以外は守る世界小さいもんね」

こんな夢見れるなんて幸せですね>
「話として読む分にはいいのですが…
 夢を見る時は当事者の事が多いので」
「嗚咽が止まらないとか結構あるよね」

もっと救いをなくしてあげたバージョンも>
「見た夢をそのまま書いてますが…
 あの日、餌漁りを一緒にやっていたらと思うと
 ぞっとしますね」
「魔法が使えずに殺されちゃうんだろうね」

どうやったら、作者さんのような夢を見ることが>
「お勧めはしませんが…見たい夢の題材を
 脳に詰め込んで眠りを浅くすると
 いいかもしれませんね」
「ただ、狙った夢を見れた事はないよ!」

まるで、まどマギみたい>
「夢は記憶の再構築といいますし…
 まず間違いなく影響は受けてるでしょうね」
「マミまど好きです」
Posted by ぷちどろっぷ@管理人 at 2017年06月23日 23:54
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