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【オリジナル百合SS】「黒いものすべて、捨てて、捨てて」【依存】【狂気】【クトゥルフ】

<あらすじ>
少女が眠りから覚めた時。
世界には何も存在しなかった。
ただ、ただ。白で埋め尽くされている。

明らかに異常な状況。事態を把握しようにも、
少女は記憶も真っ白だった。

途方に暮れる少女を前に、一人の娘が現れる。
驚き戸惑う少女をなだめ、穏やかな顔で娘は告げた。

『この空間は、貴女を癒す空間です。
 貴女を導く空間です。
 貴女を…蘇らせる空間です』

『貴女が失くしてしまったもの。
 一つずつ。順番に取り戻していきましょう』

蘇生の儀式が始まった。
果たして、少女は覚醒の世界に還れるだろうか。


<登場人物>
少女A,少女B

<症状>
・狂気
・依存
・クトゥルフ

<その他>
・管理人が夢で見たシリーズ。
 話的には複雑ではないので
 肩の力を抜いて読んでいただければ。
 (SAN値回復シナリオだと思ってたのに)

・本当に一部ですが性描写を含みます。
 18歳未満の方、性的描写が苦手な方は
 閲覧されないようお願いします。

・一部やんわりとしたホラー的表現を含みます。
 苦手な方はご注意を。



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瞼を開けると、そこには『白』が広がっていた。


眠っていたのか、それとも気を失っていたのか。
私の体はうつ伏せで、地面に転がされている。

起き上がり周囲に目を配るも真っ白。
比喩じゃない。本当にホワイト、完全なる純白だった。

壁もない。空もない。境界もない。
ただただ、『白』だけで埋め尽くされた空間。
一体全体どうしてこんな場所に?
記憶の糸を手繰ろうと、
脳を回転させて一つの事実に気づく。


『何も…思い出せない』


厳密に言えば少し違う。
今の自分をどう表現すべきかは覚えていた。
『記憶喪失』だ。つまり言語の記憶まで
喪失したわけではないらしい。

でもそれだけだ。なぜここにいるかはもちろん、
自身の名も生い立ちも、何一つ情報が引き出せない。
まるで、この空間のように空っぽだった。

自分が、『ない』。
その事実は底知れぬ恐怖となって私自身に襲い掛かる。
思わず叫びだしそうになった瞬間、
目の前の空間から、ポンッと音を立てて一人の少女が現れた。


『落ち着いてください。大丈夫です。
 この空間は貴女に害は与えません』


誰だ。

私に縁のある者なのか。
わからない。ただ、その声音は酷く優しくて儚い。
まるで憐憫、否、悲哀?
もはや癒える事のない傷を、そっと舌を這わせて舐めるような。
そんな、愛と哀に塗れた声だった。

何の情報もない状況。でも、感情が瞬時に決断を下す。
『彼女は味方だ』
少女が唐突に無から出現した非現実には、
もはや疑問を抱かなかった。


『はい、その調子です。大丈夫、
 この空間は、貴女にとって安全な空間です』

『この空間は、貴女を癒す空間です。
 貴女を導く空間です。
 貴女を…蘇らせる空間です』

『貴女が失くしてしまったもの。
 一つずつ。順番に取り戻していきましょう』


幼子に呼び掛けるようなその声に、白痴がごとく頷いた。
疑問に思う事はたくさんある。
それでも、彼女を否定する気はまるで起きなかった。



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何も思い出せない私のために、
彼女はいくつかの情報を与えてくれた。

一つ。私は今、生死の境を彷徨っている事。
一つ。この空間は、私自身が作り出した精神世界である事。
一つ。ここにいる私は精神体。そして現実世界では――


――『廃人』になっているという事。


『辛い事がありました。悲しい事がありました。
 貴女の心は、その事実に耐えられなかった』

『現実を放棄したんです。
 生きる事を諦めて、精神の死を選んだんです。
 その方がずっと楽だったから』

『全てを自ら放棄して、安らかな死を得るために。
 貴女はここに逃げ込んだ』


そこまで言って言葉を区切り、少女はそっと目を伏せる。
穏やかに流れる空気とは対照的に、
少女の眉間には皺が刻まれていた。
責めているのか、悔やんでいるのか。
今の私ではその機微を読み取れない。

刹那、少女は表情を一転し。
花が咲くような笑顔を見せた。


『でも、死ぬ必要はないと思います』

『いい事もいっぱいあるんです。
 貴女の帰りを待っていてくれる人がいる。
 貴女には帰る場所があるんです』

『……だから』

『いい事だけ思い出しましょう。
 悪い事は忘れたまま捨てちゃいましょう』


『そうすれば、貴女は。
 希望を胸に蘇る事ができる』


顔に笑顔を模り(かたどり)ながら、
少女は再起を促した。


正直言って気乗りはしない。
全てに絶望し死を希うほどの記憶。
わざわざ、そんなものに触れる意味はあるのだろうか。

過去の私が望んだとおり。
このまま。全てを『白』で塗り潰した方が
幸せではないのだろうか。

でも。

もし私が記憶を取り戻したら、
彼女の複雑な表情の意味もわかるのだろうか。

そう考えたら。『知りたい』という欲求を
拭い去る事はできなかった。



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少女は言う。この空間が真っ白なのは、
私自身が記憶を失っているからだと。

少女は言う。私が記憶を取り戻せば、
この空間は色とモノに満ちていくと。

少女は言う。この『白』は優しいまやかし。
『黒い』真実を覆い隠す防護のカーテン。
真実は隠れているにすぎないと。


見たいものだけ見ればいい。
聞きたいものだけ聞けばいい。
欲しい記憶だけ選びとり、後は捨てればそれでいい。


そう告げた後、彼女は一つの記憶を私にくれた。
いくつかの輝かしい記憶の中で、
これは間違いなく『幸せ』に属する記憶だと。

少女が右手を横に振る。
真っ白な空間に巨大なスクリーンが出現し、
一人の幼女が映し出された。


『4歳のころの貴女です。貴女は、
 両親の愛を一身に受けて育ちました』

『この記憶は捨てる必要ないでしょう?
 さあ、思い出してください』


私の双眸はスクリーンに釘付けとなる。
食い入るように眺めるうちにスクリーンは消え、
映像が脳内に直接投影される。
いつしか私は、幼少の記憶を取り戻していた。



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少女はルーチンを繰り返す。
繰り返すたび、世界に色が生まれていく。
空っぽだった空間にモノが現れ、
雑然さが人らしさを作り上げていく。


『これも、これも、これも、これも』

『ほら。貴女の半生は素晴らしい記憶ばかりです。
 高々一回の悲劇で捨て去るのはもったいない』


まるで我が事の如く喜びながら、
少女は記憶を私に与える。

彼女の指が軽やかに踊る。
そのたびにかけた記憶が脳裏にはまる。

欠けたピースが埋まっていく感覚が心地いい。
希望で胸が満たされていくのが気持ちいい。
もっと、もっと。もっと素敵な記憶を思い出させて。


繰り返す、繰り返す、繰り返す、繰り返す。
古い記憶から新しい記憶へ。
記憶の内容がどんどん現在に近づいていく。

もっと。そう呟いた私の唇に、
少女の指が押し当てられた。


『ここまでです。もう、貴女は十分幸せを詰め込んだ』

『今なら、現実に戻る事ができるでしょう?』


有無を言わせぬ迫力があった。
ごくりと言葉を飲み込むと、少女は再び笑顔に戻る。

少女の言う通りでもあった。
家族愛。友愛。ほどよい試練。そして達成。
客観的に判断しても、ここまで幸せな人間も珍しい。


でもどうしてなんだろう。
『欠けている』と感じてしまうのは。


否、欠けているのは当然だ。
記憶を取捨選択して、要らないものは捨てたのだから。

でも直感が告げている。私にとって一番の幸せ。
何にも代えがたい肝心の記憶。
それを、まだ取り戻せてないと。


それでも。少女は頑なに首を振った。


『これで、貴女の幸せは以上です。
 残っているのは悲しみと苦痛だけです』

『欲張っても仕方ありませんよ?
 ないものはないんですから』

『欲張って、パンドラの箱を開けては駄目』

『全てを取り戻してしまったら。貴女を待つ運命は』


『廃人、なのだから』


ぎょろりと目を剥いて少女が凄む。
その目に光は灯らない。
底知れぬ闇を感じて、思わずふいと目を背ける。

少女は悲しそうに微笑むと、
でも満足そうに眼を閉じた。



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モノで溢れかえった空間の中、
ベッドに潜り込んでいた。

少女は言う。私の精神は死を免れたものの、
肉体はまだ滅びと戦っている最中らしい。

『今はゆっくりと機を待ちましょう』

そして少女は姿を消した。
名残も惜しまず霧散した。


『もう会う事はないでしょう。
 生き返った貴女が幸せになる事を祈ります』

『ゆめゆめ、黒い絶望に囚われぬよう』


ただ、こんな言葉を残して。
記憶の導き手を失った私は、ただ緩慢に
肉体が目覚めるのを待っている。


欠けた違和感を拭えないまま。


好奇心は猫を滅ぼす。
猫になりたいわけじゃない。
それでもやっぱり欠けているのだ。
最も幸せな頃の記憶が。


私はむくりと起き上がり、
モノだらけの世界をうろつき始める。

少女は言った。この世界の『白』はまやかし。
真実は今もそこに在るのだと。

探してみよう。なに、危険だと思ったら手放せばいい。

思えば私は、幸せの取捨選択を
正体不明の少女に委ねていた。
異常だ。何が幸せで何か不幸か。
それは自分で決めるべきはずだ。


モノを掻き分け、世界を歩く。
鍵は少女だ。別れの瞬間、少女が視線を巡らせた方向。
そこに、真実が隠されている気がした。


探す、探す、探す、探す。

果てがあるかわからない世界を歩き続ける。
『白』を疑い、何もない空間に手を伸ばす。

永遠とも思える時間。あるかもわからない『それ』を、
ただ闇雲に探し続ける。


そして、私はついに見つけた。


一見して何もない『白』。手を伸ばすと『何か』が触れた。
『何か』をそっと手の中に握りこむと――



――指の隙間から。どろりと『黒』が漏れ始める。


溢れ出る『黒』。この世界で一度も見なかった色。
慌てて手を引っ込める。

冷気が逃げる冷蔵庫の扉を閉めた時のように、
闇は揺らいでそのまま消えた。

安堵する。あれを選択してはいけない。
そう本能が告げている。


でも、私の手には。掴んだ『黒』が握られたままだった。


恐る恐る指を開く。箱。
それは『黒い』箱だった。
真っ白な世界に残された真っ黒な箱は、
見ているだけで心を掻き乱される。

やめておくべきだ。この箱を開いてはいけない。
味方の少女も言ったではないか。
『黒』は絶望、捨てるべき。
さっき漏れた闇と同種のものだ。
なのに、どうして。手が離せない――



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『離してください』




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目の前の空間が割れ、例の少女が姿を現す。
瞳は大きく見開かれ、目は出血を疑う程に血走っている。

穏やかだった少女は血相を変え。
酷く冷たくて低い、威圧するような声で詰め寄った。


『早く。それを。離して。捨てて』

『それは要らないものなの。捨てるべきなのよ』


少女が必死になればなるほど。
私の手はそれを大事に握りこんだ。

理由はわからない。でも。
少女の言葉を受け入れられない。


これは、たぶん、大事なものだ。


『なんで?どうしてわかってくれないの?』

『捨てて、お願い!それは貴女に必要ない!』

『それを持ってたら、貴女は廃人のままなのよ!?』


ぼたり、ぼたり。涙が少女の目から零れ落ち、
彼女の服を濡らしていく。


零れた涙は『黒』かった。


『黒い』涙に濡れるたび。
少女の体が『黒』で塗り潰されていく。
『黒』は『絶望』。つまり、目の前の少女は『絶望』。


なのに、それを『愛おしい』と思う。


ああ。なんとなくわかった。
いかにも重要そうなこの少女が、
私の幸せな記憶に存在しない理由。

全ての幸せを取り戻したはずなのに、
決定的な何かが足りないと感じる理由。


多分一番の幸せは。
救いのない絶望と共にある。


『やめてぇ゛ぇぇえ゛え゛え゛っっっ!!!!』


少女の制止を振り切って、
私は『黒い』箱をゆっくり開く。



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開かれた箱の中には

どろりと赤黒い血でコーティングされた

黒いペンダントが転がっていた



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ああ、そうだ




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私は、『しゅb■=n』の『g◆sあt◎』を見て




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正気を、使い尽くしたんだった




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彼女が私に注いだ記憶
それは私を構成する要素の
ほんの一かけらに過ぎなかった


夥しい(おびただしい)量の記憶が流れ込んでくる
秘匿(ひとく)されていた真実こそが
私にとって本当に必要な記憶



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ねばりつく闇を纏い微笑む少女
旅先で出会った少女に、一目で心を奪われた

少女の足先は黒い蹄(ひづめ)で終わっている
人間じゃない、でもそんな事どうでもいい
種の境などまるで気にならない程に、
私は彼女に囚われた


雌同士にも関わらず、内なる肉が激しく疼き
腰がわなないて蜜を吐き出す

幾度となく肌を重ねあう
気が違うほどに彼女に狂う

どれだけ柔肉を食み(はみ)
垂れ流される愛液を啜っても
欲望が尽きる日は訪れなかった

少女から、私という器に
濁流のごとく注ぎ込まれる獣欲
器から溢れてしまっても、
注がれ、注がれ、注がれ、注がれ


欲望より先に命が尽き始める
干乾びる手をのろのろ伸ばす

もっともっとせがむ私を目の当たりにして
少女はボロボロ涙を零しながら私を捨てた


『もうやめましょう。貴女を殺したくないの』

『アナタになら殺されてもいいよ?』

『私が殺したくないの』

『アナタと離れるくらいなら死んだ方がまし』

『お願い、わかって』


彼女は私の手を振りほどくと、
一人で閨(ねや)を後にする

起き上がる力もない私は
地面を這いずりながら彼女を追って
緩慢な動きで台所に辿りつく


そして、そして――



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――包丁を、胸に突き立てた彼女を見つけた




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部屋全体が
派手に飛び散った鮮血で覆われている


血の池の中心に浸る彼女に縋りつく
彼女はもう動かない
祈るように指を組み、何かを握り締めながら
事切れていた


手を繋ごうと指を解く(ほどく)
解けた指の隙間から何かが零れる


それは石
私がプレゼントした黒曜石のペンダント


零れ落ちた真っ黒な石が
彼女の胸の上で血に染まり
てらてら鈍く輝いていた



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人の心を闇に染め
肉に溺れた獣に貶める豊穣の女神


矮小な一人間に過ぎない私が
彼女の寵愛を一身に受け


それでも生き延びる事ができたのは
万に一つもない幸運だったのだろう


でも、私はそれを求めていなかった
彼女の黒に浸されて終わりたかった



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手から溢れ出る黒、赤、黒、赤

自らを廃人に貶めた『それ』を

私はぎゅっと握りこむ



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『どうしてわかってくれない゛の』

『お願い、生きて。私を忘れて』

『貴女の事が好きなの゛。だから、お願い゛』

『生きて……幸せを掴んでください゛』



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『アナタこそいい加減わかってよ゛』

『お願い、忘れさせないで』

『アナタの事が好きなの゛。だから、お願い゛』

『このまま……一緒に死なせてください゛』



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『っ゛……』

『馬゛鹿゛………………っ゛』



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少女は子供のようにぐずぐずと
泣きじゃくりながら

その時初めて私に触れて
震える私の手を取った



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一本一本指を絡める
もう、二度と離れる事がないように

指が絡まり繋がるたびに

世界が『黒』に染まっていく



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それが酷く幸せで

私は彼女を抱き締めて

自らの頬を摺り寄せた



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黒山羊女事件。


それはあまりの特異性から、
闇に葬られた事件の一つ。

ある街に少女が現れた。
黒い蹄を持つ足に、粘りつくような黒い髪。
およそ異形と呼んで差し支えないその姿に、
しかし人々はほだされた。

美しかったのだ。劣情を掻き立てられたのだ。
少女に魅入られた者は皆獣(けだもの)と化し、
雄雌関係なく命尽きるまで腰を振り続ける事になる。

ひなびた観光地に訪れた彼女は、街に欲情を撒き散らし。
何百、何千という人間を貪り殺した。


「そ、それで結局どうなったんですか?」

「迷宮入り。いつの間にか女は消えて、
 街には平穏が戻りましたとさ」

「えぇー。じゃあ、まだどこかに
 いるかもしれないって事ですか?」

「そうかもねぇ。あ、でも最後の被害者は
 死なずに生き残ったって話だよ?
 もしかしたら、その子が山羊を倒したのかもね」


「ま、生き残った子も廃人になって、
 結局は病院で発狂死しちゃったらしいけどさ」


黒山羊女事件。
その異常性から世間を大いに騒がせたこの事件は、
明確な解決を見る事無く幕を閉じる。


その事件の真相を知る者は、もうこの世に存在しない。



(完)
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真相
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黒山羊の少女は豊穣を司る神格。
精神を病んだ魔術者の娘に召喚され、
娘の体を器として具現した。


黒山羊は気が向くままに人間の街を闊歩する。
彼女を目にした者は例外なく発情し、
彼女と交尾する事になった。

もっとも彼女にとってのそれは、
単なる捕食行為に過ぎない。
ゆえに黒山羊は何の感慨もなく、
本能のままに暴食を貪っていた。


そんな中、黒山羊はある少女と出会う。
彼女は別に特別な存在でもなかったが、
少しだけ黒山羊の魅了が効きにくい体質にあった。

このため彼女は肉に溺れるも、
それだけには留まらず。
幾度となく腰を振りつつも、同時に愛を囁いた。


愛される事。それは黒山羊にとって
初めての出来事だった。
黒山羊は瞬く間に彼女に溺れ、
互いに愛し合うようになる。
黒山羊は彼女の体調を気にかけて
(黒山羊にしては)無理な性交を控えたため、
比較的彼女は長く持つ事になった。


しかし少女が黒山羊に
魅了されている事実は変わらない。
このため少女は生きる事よりも
黒山羊との情交を優先しようとする。

黒山羊は悟る。このままでは、
いずれ少女を殺してしまうと。
それを良しとしない黒山羊は、
愛する少女のため自ら命を絶った。
(もっとも黒山羊は元々神格のため
 器がなくなるだけにすぎない)


黒山羊を喪った少女だったが、
魅了が解かれる事はなかった。
むしろ悲しみに耐えられず、
物言わぬ廃人と化してしまう。

肉欲に塗り固められてはいたが、
彼女の愛は本物だった。


黒山羊はこの結末を受け入れられず、
少女を救うべく精神世界に侵入する。

彼女の精神は崩壊し、真っ白に塗り潰されていた。
黒山羊は深く悲しむも、
そのまま自分を忘却させる方向で動く。
幸せな記憶だけを思い出させ、
極力自分に関する記憶からは彼女を遠ざけた。
(なお、この時の黒山羊は姿を偽っており
 完全に人間の姿をしている)
黒山羊の目論見は成功し、
後は衰弱から回復するだけかと思われた。


しかし、少女の愛は重過ぎた。
精神が崩壊し記憶を失っても、
少女は黒山羊を求め続ける。
諦めず探し続けた少女は、
最終的に黒山羊の存在に辿り着いてしまった。

ここは少女の精神世界のため
性欲に溺れる事はない。
それでも少女は黒山羊を求め、
共に生きられないなら
そのまま滅ぶ道を選んだ。


心から彼女の幸せを願っていた黒山羊だったが、
もはや彼女の幸せは、自分と切り離せない事を悟る。

何より肉欲を凌駕した深い愛に抗えなかった黒山羊は、
彼女の人としての幸せを諦め、
共に精神体として結ばれる事を選択した。


蘇生失敗。彼女は永遠に喪われる。

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posted by ぷちどろっぷ at 2017年07月29日 | Comment(5) | TrackBack(0) | オリジナル百合SS
この記事へのコメント
夢に見たシリーズのような夢はしょっちゅう見ているのでしょうか?ぷちさんはSAN値高そうです。
文字の色の使い方が上手いですね。赤くなると内容も相まってドキドキします。
Posted by at 2017年07月29日 21:20
ごちそう様でした。
心地好い狂気
やっぱり愛っていいですな……。
Posted by at 2017年07月29日 21:22
はーーー、神かよ
最近はここの小説だけが楽しみだわ
これからも頑張ってくだ
Posted by at 2017年08月17日 11:14
コメントありがとうございます!
夢はしょっちゅう見ているのでしょうか>

黒「悪夢とかはよく見るみたいですよ」
女「ちなみにキャラ作ると決まってSAN低い」
黒「文字色についてもありがとうございます。
  視覚に訴えられるとドキドキしますよね」

やっぱり愛っていいですな>
黒「鋭く純粋な愛は、それがどんな形であれ
  酷く胸を打ちますね」
女「これはハッピーエンドだったと思うけど?」

これからも頑張ってくだ>
黒「いろいろあって更新遅くなってますが
  またお読みくださるとうれしいです!」
Posted by ぷちどろっぷ@管理人 at 2017年08月19日 20:18
少女ちゃんが正気を取り戻して誰かしらと付き合いだしたら、今度は黒山羊ちゃんが病んじゃって、少女ちゃんの夢とかに無理やり入り込んだりして、無理やり自分のものにする。こんなifストーリーまで想像しました。
Posted by おぱんつ at 2017年08月20日 01:02
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