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【咲-Saki-SS:淡ハーレム】淡「星は小さく縮んで、縮んで」【共依存】【シリアス】

<あらすじ>
大星淡は孤独だった。
生まれつき異能を抱える彼女に、
人々は理解を示さず疎外する。

それでも。寂しがり屋で孤独な彼女は、
やがて四人の理解者に出会った。

ようやく訪れた幸せに、
彼女はひしと縋り付く。
淡く輝き始めたその瞳には、
四人以外映っていなかった。


<登場人物>
宮永照,弘世菫,渋谷尭深,亦野誠子,大星淡

<症状>
・共依存
・異常行動
・淡ハーレム


<その他>
次のリクエストに対する作品です。
・淡ちゃんの総受け。キスのももちろん、
 照淡が特に好きなので。
 →照淡優先の淡ハーレムとなりました。



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まだ小学生だった頃。
一冊の本を読んだ事がある。

『星の一生』

子供向けに書かれたその本は、
宇宙のあらましについて触れていた。

特に私の関心を惹いたのは、
星々達の寿命について。

本によれば、小さな星程寿命は長く、
大きな星程短命だとか。
それも、生まれた時点で
すでに寿命が決まっているらしい。


そもそも星の寿命とは何なのだろう。
砕け散って消滅する事?
確かに、それもまた一つの終末だろう。

ただ、一般に言われる星の寿命は少し違う。
水素を燃料とした核融合ができなくなる事――
すなわち、輝けなくなった時を
死とみなすらしい。


さて。今私達の目の前に、
一人の少女が泣き崩れている。


彼女の名前は大星淡。
名前に反して小さな彼女は、
果たしてどんな星だろう。

細々と長く生き続けるのか、
それともいずれは超新星爆発を起こすような
ビッグスターなのか。


私は手を差し伸べる。
星の一生を見届けるために。



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星は小さく縮んで、縮んで




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初めて見た彼女の姿は、酷く小さくて暗かった。


その出会いは二年前。私、宮永照が
菫と二人で歩いていたら、突如絶叫に襲われた。
悲しさを纏うその叫びに、二人して思わず足を止める。


『私は……私はイカサマなんてしてない!!』


声のした方に振り向いた。
そこに居たのは金色の髪をなびかせる女の子。
そして少し距離を置いて、
冷たい目をした三人組が少女を見下している。

三人組の一人が言葉を返す。
その声はどこまでも冷たく、低く。
ありったけの拒絶が籠められていた。


『……アンタさ、確率って単語知らないの?
 アンタだけ毎回ジョーカー持ってるなんて事は
 起こりえないんだってば』

『パーティーゲームってのはさ、
 皆で楽しむためにやるものなの。
 ズルしてまで勝ちを求めるもんじゃないわけ』

『ま、それがわからないってんなら……
 ずっと一人でイカサマしてれば?』


『除け者』の少女が口を開く前に、
三人組は踵(きびす)を返す。

残された少女は一人。力なく膝から崩れ落ち。
顔を両手で覆って嗚咽した。


『してない……してないんだよ……っ本当にっっ!』


口の中に鉄の味が広がっていく。
気づけば唇を噛み締めていた。
彼女の嘆きが、悲しみが。私に流れ込んでくる。

思考が闇に染まっていく刹那。
存外に明るい菫の声が、私の思考を呼び戻した。


『運がいいな。思わぬ掘り出し物かもしれない』


不敵なような、優しいような。酷く複雑なその視線。
過去に菫がその目をした時、視線の先には私が居た。
つまりはそういう事だろう。


『あいつ、拾ってみないか?』


菫はニヒルに口元を歪ませる。
菫は言った。周りからイカサマと断定される程の有望株だ。
スカウトしない手はないと。
それは本心から来るものか、あるいは魔物に対する慈悲からか。
おそらくは両方なんだろう。


『そうだね』


頷きながら歩みを進める。
唐突に近寄ってきた年上の女性に、
少女はビクリと肩を震わせた。
それでも、プライドが高い子なんだろう。
頬に涙の痕をつけつつも、彼女は気丈に言葉を吐き出す。


『……何。別に見世物じゃないんだけど。あっち行ってよ』

『貴女の力に興味が沸いた。イカサマと誤解されたその力、
 私達にも見せてほしい』


『もしかしたら。貴女は私達の仲間かもしれない』


仲間。その言葉に少女は目を見開く。
差し伸べられた救いの手を、
戸惑うように何度も見やる。


『しんじて、くれるの?』

『イカサマだって、おこったりしない?』


後ろをついてきた菫と二人、心を籠めて頷いた。
次の瞬間。彼女の大きな瞳から、ぼろぼろと涙が溢れ出す。

これが彼女との出会い。
一人ぼっちの迷い星。大星淡は、
この日から私達の周りを公転し始めた。



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牌に愛された子。

理屈では説明できない雀士の事を、
時にこう呼ぶらしい。

大星はまさに牌に愛されており、
それゆえに人から疎まれ捨てられていた。


『どうだ、照』

『他人の配牌を重くする力を持ってるね。
 今はまだ三向聴くらいだけど、
 これからまだまだ伸びると思う』

『成程。という事は、トランプとかだと
 その分自分の手もよくなるわけだな。
 イカサマ扱いされたのはそれが原因か』

『多分』


淡々と能力の分析を始めた私達を前に、
大星はあっけにとられた表情で疑問を投げかける。


『え、と。能力とか当たり前に言っちゃってるけど、
 お姉さん達何者なの?』

『しがない女子高校生だ。ただ、
 お前と同じ異能持ちというだけの』

『同じ!?じゃあお姉さん達も何かできるの!?』

『菫は対局中の相手をアーチェリーの矢で射貫く事ができる』

『なんで!?それただの殺人じゃん!?』

『……照は右手から竜巻を出して
 扇風機の代わりにできる』

『凄いけどそれ麻雀に必要なの!?』

『まあ、その辺は実際に見せた方が早いだろう。
 麻雀のルールは知ってるか?』

『知ってるけどまだ死にたくない!!』

『大丈夫。射貫かれるのはあくまで精神だから』

『それ廃人になる奴とかじゃないよね!?』


冗談を交えながら卓を囲む。
できるだけ雰囲気が重くならないように打ち続ける。
精神的外傷を植え付けられた大星が、
笑って麻雀を打てるように。


試みは成功したようだった。
おそらくいつもは『イカサマ』のせいで
負けた事がなかったのだろう。

飛ばされたにもかかわらず、
大星は嬉しそうに目を細める。
端にはわずかに涙が滲んでいた。


『私にも仲間が居たんだね』

『ここでなら、私も一緒に遊んでいいんだよね』


唇を震わせる大星の頬を、一筋の涙が伝う。
やがて涙はぽろぽろと零れ落ちた。

ほんのわずかに零した言葉は、
大星の境遇を端的に表している。

きっと、これまで仲間は居なかったのだろう。
一緒に遊ぶ事も許されなかったのだろう。
ごくまれに輪に入れてもらえたと思ったら、
イカサマを疑われて拒絶される。

この痩せぎすの小さな体で、
一体どれ程の孤独に耐えてきたのか。
だが、そんな思いも今日で終わりだ。


そっと頭を撫でて伝える。
思いが心に届くようにと。


『ああ。このチームは能力特化だ。
 お前と同じで、オカルトな奴しか存在しない』

『好きなだけ暴れるといい。それが私達の助けになる。
 誰もお前を咎めはしない』

『お前はもう、一人ぼっちの魔物じゃないんだ』


大星は私にしがみ付くと、そのまま大声で泣きじゃくる。
照と二人、気が済むまでずっと抱き締めてやる。

瞳から涙がひいた時。
その目には淡い光が輝いていた。


『決めた!私、白糸台に入学するよ!』


進むべき道を見つけ、意志を湛えた仄かな光。
やがて小さな大星淡は、自ら少しずつ輝き始めた。



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チーム虎姫に加入した淡ちゃんは、
猫可愛がりされました。

純粋で、寂しがり屋で、甘えん坊の淡ちゃん。
時々ちょっとワガママで自由だけど、
そんなところも可愛くて。

特にこのチームでは最年少だった私達としては、
ついつい甘やかしてしまいます。
先輩方も特に止めようとはしませんでした。


『淡はその能力ゆえに孤立していた。
 今はとにかくその寂しさを埋めてあげたい』

『大星はまだ力をセーブしている。
 無意識のうちに怖がっているんだ。
 もう仲間外れにはなりたくないと』

『可愛がってやってくれ。麻雀とは関係なしに、
 普通の先輩後輩としても』

『それだけで、淡はもっと輝けるから』


先輩方の言う通りでした。淡ちゃんは
日に日にその力を増していきます。
出会った頃は三向聴どまりだった絶対安全圏は、
やがて四向聴や五向聴にまで広がりました。


でも。


『……っ』


能力が強化した気づいた時、
淡ちゃんの目に宿った感情は恐怖。

おどおどとこちらの目を覗き込むその姿に、
いつもの快活さはありません。

そんな淡ちゃんの手を握り、
優しく微笑みかけました。


『すごいね淡ちゃん。また強くなったんだ』

『……嫌じゃないの?つまらなくないの?』

『嬉しいよ?仲間が強くなったんだから。
 どうせなら、宮永先輩や弘世先輩が居なくなっても
 安心なくらいに強くなって欲しいな』

『……っ』


一瞬、淡ちゃんはくしゃりと顔を歪めて。
でも、次の瞬間、満面の笑みで胸を張りました。


『まっかせといてよ!
 このニュースター大星淡が
 来年も白糸台を導いちゃうから!』


高らかと宣言する彼女の瞳は、
眩いほどに輝いています。

星は煌き、輝きを増す。
虎姫に来た時は小さく縮こまっていた淡ちゃんが、
少しずつ大きくなっていきます。

『大星淡』。きっとのその名に負けないくらい、
彼女は大きくなるのでしょう。



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夏の大会に向けて先輩方が組んだオーダー。
淡は大将に抜擢された。

虎姫が掲げる戦略はこうだ。
まずは先鋒で宮永先輩が他校のエースを蹂躙する。
さらに続く次鋒では、危険視されるチームを
弘世先輩が徹底的に狙って失速させる。

前半で大勢を決するための戦法だ。
他チームは点差に縛られて手が重くなるだろうから、
さらに私達がスピード勝負で点差を広げる。

大将にタスキが回る頃。相手チームはもう
逆転手に賭けるしかなくなっているだろう。
そこを淡の絶対安全圏で封殺する。
どこまでも相手を追い込む、超攻撃的チームの完成だ。


1年にして大将という重役に、
淡はむしろ目を輝かせた。


『どーんと任せてくださいよ。
 どれだけ亦野先輩が失点しても、
 私が取り返してあげますから!』


憎たらしい事この上ない台詞を吐く淡だけれど、
私は本当の気持ちを知ってる。

役に立てる事が嬉しいのだ。
イカサマと蔑まれ、自分でも忌み嫌っていたその能力が、
大好きな仲間の役に立つ。
その事実が嬉しくて仕方ない。

一見唯我独尊な大星淡は、その実
懐きまくった子犬みたいなものだ。


『はいはい。ま、残念ながら私も負ける気はないから、
 大星に見せ場は作ってやれないけどな』

『…ええと、中堅で飛ばしちゃったらごめんね』

『そんなのやだよ!二人ともそこそこ
 ピンチになって私にしがみ付いてくれないと!』

『まったく、注文の多い大星店だなあ』


部室が笑いに包まれる。
傲慢にも程があるやり取りをたしなめながら、
でも先輩方も微笑んでいた。

願わくばこの不遜な後輩に、最後まで笑っていて欲しい。
そのために私達も頑張らないと。
尭深や先輩方も同じ思いだったろう。


こうしてチーム虎姫は、いつしか淡を中心に回り始める。
大きくなった惑星はいつしか恒星に代わり。
仲間を明るく照らし始めたんだ。



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もっとも、そう考えていたのは……
『虎姫だけ』だったけど。




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淡は虎姫に酷く懐いた。
否。虎姫以外には懐かなかった。

線を引いてしまったのだ。
異常な自分を受け入れてくれるのは、
同じく異能を持った仲間だけだと。

そして、それは残念ながら間違いではない。
淡の危惧が杞憂でない事。
他ならぬ私が一番よく知っていた。


六月に入り始まった、部内のチーム交流戦。
虎姫は破竹の勢いで他を蹂躙する。
無論淡も例外ではない。
絶対安全圏をさらに強化した淡は、
対戦した三人全員を焼き鳥で終わらせた。

まずい、と思った時にはもう遅い。
異能を目の当たりにした部員達は、
淡を罵りこそしなかったけど。
その目には、ありありと絶望の色が浮かんでいた。


「……こんなの勝てるわけないじゃん」


対面の子が放った言葉に、淡はビクリと大きく震える。
ぼやきたくなる気持ちはわかる。
開始から終了まで、ずっと六向聴のままで
焼き鳥を食らったのだ。

彼女を攻めるのは酷だろう。
でも、それは淡にとって禁句の一つだった。


「なんかもう別のゲームって感じだよね」


苦笑しながら上家が同意する。
そこに悪意はなかったのだろう。
でも、淡の目には涙が滲んだ。


「ま、一年で虎姫に入るような子だもんね。
 そりゃぁ普通なはずがないよね」


そして最後に下家の台詞。これが決定打となった。
小さく声を震わせながら、それでも淡は縋り付く。


「……やっぱ、り、虎姫って、フツーじゃないんですか?」

「ん?ああうん、アンタのチームは別格だよ。
 ホント、魔物の巣窟って感じ」

「他に、似たような人は居ないんですか?」

「居るわけないじゃん。
 むしろ五人も居るのが驚きだって」

「……そっか。他には、居ないんだ」


「仲間に、なってくれる人」


その日以来。淡は虎姫以外の部員と
話す事はなくなった。



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憂慮していた事ではあった。
だが、その時は存外早く訪れた。

交流戦の一日目が終了するなり、
淡は虚ろな瞳で私に告げる。


「菫先輩。私、もう虎姫以外の人とは打たないから」

「馬鹿なのか?交流戦は始まったばかりだろう」

「じゃあチーム戦だけは我慢するよ。
 でもそれ以外は絶対打たない」

「……何があった」

「別に何も。ただ、気づいただけだよ」


「私の居場所は、虎姫だけだって」


その言葉だけで理解できた。
淡は、『また』拒絶されたのだ。

そして気づいた。虎姫以外に、
自分を受け入れてくれる部員は居ないのだと。


眉を顰めて歯噛みする。
淡が浮かべた表情に、酷い既視感を覚えたからだ。

表情のない顔。一切の期待を捨てた冷たい目。
そう。今の淡は、あの時の照と同じ目をしている。

あの時は私が照を笑顔に変えた。今回も同じ事はできるだろう。
ただ一つ問題があるとすれば、私は淡の先輩だという事だ。

今はいい。来年もまだいいとしよう。
でも、再来年。淡が一人になった時。
果たして淡の孤独を共有してくれる仲間は現れるだろうか。


残念ながら。現状では望みは薄い。


「……はい、それロン。焼き鳥3丁できあがり」


淡は約束を守って交流戦を完遂した。
相対する者全てを焼き鳥にし、何人かを退部に追い込んだ上で。
淡は嘲るように口を歪ませる。


「ね、わかったでしょ。私は、
 虎姫以外と打っちゃいけないんだよ」

「だって私は……『イカサマ』なんだから」


笑うその声は掠れていた。

我慢しきれず淡を抱き締める。
私の背中に手を回し。淡は、静かに肩を震わせた。



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その話を聞いた時。何があっても
淡ちゃんを甘やかす事に決めました。

酷く共感したんです。厄介者扱いされる悲しみに。

とある南四局の開始前。対局していた部員が放った言葉。
その言葉は、今でも私の胸に深々と刺さり続けています。


『あー、もう終わりにしない?どうせこれ、
 渋谷さんが大三元ツモって終わりでしょ』

『結果見えてるしやる意味ないよね?』


言葉を返せませんでした。事実このまま続けても、
彼女が言ったとおりになるのです。

でも、このオーラスは私にとって。
長い長い種まきを耐えた末での収穫の時。
『結果が見えている』のも、私の努力が実った結果なのに。

もっとも、それを訴えても仕方ないのでしょう。
私だけが持つ特別ルール。無能力者の彼女達からすれば、
そんなルールを強制されるだけで
酷く興ざめなのでしょうから。


「……無理に他の部員と打たなくてもいいんじゃないかな。
 お互いにストレスになるだけだと思う」

「やっぱりタカミもそう思う?」

「うん。後ね、これは宮永先輩に聞いたんだけど。
 能力って、人の生き方に大きく左右されるんだって」

「だから、能力を否定するって言うのは。
 その人の人生を否定するのと同じなんだよ」

「自分を否定してくる人と、
 無理に付き合う事はないと思う」

「……っ、だよね!だよね!!
 虎姫が居るんだし他は必要ないよね!!」


わかってはいるんです。淡ちゃんより
1年先を歩む者として、私はこの子を導く義務がある。
純粋無垢でまっすぐな淡ちゃんが、明るい道を歩めるように。

でも、思ってしまうんです。
心を何度も傷つけてまで、不特定多数の人と付き合う。
それは果たして、本当に必要な事なのでしょうか。
分かり合えた少数同士、互いに支えあうだけで
十分ではないでしょうか。

少なくとも。私は淡ちゃんを傷つけるような人間と、
関わりたいとは思いませんでした。



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淡の雰囲気が大きく変わった。

虎姫の皆にはすごく懐いてるのに、
他の部員には態度が悪い。

ううん、悪いとかそういうレベルじゃない。
まるで、敵か何かだと思ってるみたいだった。


「ちょっと亦野先輩、
 こんなところで何油打ってるの。
 面子足りないんだけど?」

「あれ、そうなんだ?ちょっと今こっちの皆と
 牌譜分析してるから終わったら行くよ」

「あ、せっかくだしお前もやってくか?」
「要らない!それより早く一緒に来てよ!!」

「待て待て、どうせ後少しで終わるから」
「いいから早く!!」


淡は強引に私の手を取ると、そのまま
虎姫ルームに引っ張っていこうとする。


(流石に、これは叱らないといけないかな)


なんて、心の中で先輩風を吹かせてみたりして。
淡の目を正面から見据えて一言。
言おうとして、私は息を飲み込んだ。


(な、なんで……そんな目してるんだよ)


生意気な後輩が我儘言ってる。そのくらいの認識だった。
全然違う。だって、淡のその表情は。

まるで、見捨てられた子犬のような。
崖っぷちに追い詰められた顔をしていた。


「ねえ、亦野先輩。虎姫の皆が待ってるんだよ……?」

「それとも。亦野先輩にとって、
 この人達の方が大切なの……?」


「亦野先輩は。仲間じゃ、なかったの……?」


投げ掛けられたその問いは、まるで異端審問みたいだった。
淡の瞳が大きく揺らぐ。体も小刻みに震えていた。


心の声が聞こえてくる。


− 違うよね?どうか違うって言ってください −

−  仲間だよね?私達の方が大切だよね?  −


理屈が通じるようには思えなかった。
でも、これを肯定する事が、正しい事だとも思えない。
答えに窮して沈黙する。そうこうしているうちに、
淡の目には涙が溜まり始めて。


そこで私は限界だった。


「あーもう、わかったよ。まったく大星は泣き虫だな。
 ……という事で、ごめん。
 ちょっとこの我儘娘を黙らせてくる」

「……うん。気にしなくていいよ。
 亦野さんは虎姫なんだから、虎姫の方を優先して?」

「……無理して戻ってこなくていいからね」


ずん、と胃が重くなる。

多分、今、線を引かれた。
虎姫とそれ以外。淡がこの子にしたように、
この子も線を引いたんだ。

私なんて、もう『要らない』と。


「ほら、行こうよ!先輩は
 私達を選んでくれたんでしょ?
 虎姫ルームにレッツゴー!」


存外にショックを受けている私に腕を絡ませ、
淡はご満悦そうにくっついてくる。

抵抗する気力もなく引っ張られながら、
私は大きくため息を吐いた。


「お前なぁ。少しくらい悪びれろよ」

「えー、むしろ感謝して欲しいんだけど?
 先輩が道を間違えそうなのを正してあげたんだから」

「……あのな、淡。私はお前についてきたけど、
 お前が正しいとは思ってないからな」

「なんで虎姫かそれ以外かで分けるのさ。
 どっちも同じ白糸台の仲間だろ?」


「ホントに?」


ピタリ。淡は足を止めると、私の顔を覗き込む。
まるで心の奥を見透かすように。

抑揚のない声で淡は続ける。


「亦野先輩はそう思ってるんだろね。
 でも、多分向こうはそう思ってないよ」

「な、なにを」

「本当に亦野先輩が大切なら、
 もっと食って掛かるんじゃない?
 戻ってこなくていいなんて言うかなぁ?」

「……っ」


「気づいてるでしょ。
 亦野先輩、捨てられたんだよ」


ズブリ、と、淡の言葉が胸を突き刺す。
一番聞きたくなかった言葉。
でも、事実だとしか思えなかった。

動揺して声も出せない私の腕に、
淡がぎゅっと絡みつく。
二度と離さないとばかりにくっつくその腕は、
酷く柔らかくて温かい。


「私は、違うよ?虎姫は、違う」

「亦野先輩に居て欲しいよ。
 居ても居なくてもいいなんて思わない」


「ちゃんと聞かせて。亦野先輩はどっちを選ぶの?」


視線が私を貫いた。
どこまでも真摯なその眼差しは、
私に逃げる事を許さない。

答えなんて、もう聞かなくても
わかってるくせに。


「私は――」


答えを告げた次の瞬間、
淡が嬉しそうに抱き着いてきた。



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この事件を皮切りに。虎姫とその他部員の関係は、
悪化の一途をたどっていった。

元々どこか一線を引かれていた虎姫だったけど。
今回、晴れて『異常者集団』として
明確に認定されたらしい。

正直どうでもいい事だ。
淡が仲良くできないような子じゃ、
どうせ私にも無理だろう。

そんな人達は必要ない。
むしろ虎姫の結束が固まった事を喜ぶべきだ。


相談を持ち掛けてきた菫に対し、
そんな胸の内を隠さず吐露する。

菫は深いため息をつくと、
少し非難の籠った眼で私をねめつけた。


「お前って結構ドライだよな」
「違うよ。大切にしたい対象が深くて狭いだけ」
「そうやって他をあっさり切り捨てられるのが
 ドライだって言うんだよ」
「菫はそういうの苦手だもんね」


ただ、菫も気づいているはずだ。
今回の件、悪いのは淡だけではないと。
だって菫は、『成功例』も一度経験しているのだから。


渡辺先輩に宇野沢先輩。
棚橋先輩に沖土居先輩。

多少異能と呼べる力はあったけど、
私からすれば大差はない。
実際三人まとめて飛ばしたし、
皆一様に打ちひしがれながら崩れ落ちた。

それでも。あの人達は私を拒絶したりはしなかった。
結局のところ、能力の有無は些細な違いで。
受け入れる度量と下地があるかどうかなんだと思う。


昔の先輩達にはそれがあった。
今の後輩達にはなかった。
相手に受け入れる気がないのなら、
あえて努力まではしない。
ただそれだけの事だ。


「逆に言えば私の責任だろう。
 淡が受け入れられる下地を作れなかった。
 私の、部長としての怠慢がもたらした結果だ」

「全部違うとは言わないけど。
 別に今の状況も悪くないと思うよ?」

「どこがだよ。部内で内部分裂が起きてるんだぞ」

「白糸台ではいつもの事でしょ?
 それに、大切な人は
 多ければいいってものじゃない」

「淡も、私と同じタイプだから」


そう。ほんの少数の人間を、
どこまでも深く愛するタイプ。
時に病的だと疎まれる程に。


「今はそれでもいいだろう。でも、再来年はどうする。
 その頃虎姫は淡一人になってるぞ」

「全てと繋がれとは言わないさ。それでも、
 せめて同学年に一人は仲間を持つべきだ」

「……菫は、卒業したら淡を捨てる気なの?」

「そんなわけないだろう。だが、
 在校している時と比べればどうしても接点が減る。
 隙間を埋める存在が必要だ」

「要らないよ」

「……照?」

「要らない。淡には、私達以外要らない」

「菫にもすぐにわかるよ」


同じタイプだからこそわかる。
淡は代替品で満足できるようなタイプじゃない。

私達でなければ意味がないんだ。
一人ぼっちの地獄から救い出した私達でなければ。

私達が一人でも欠けた時。淡は崩壊するだろう。
そして淡が壊れた時。私達も無事ではいられないはずだ。

淡の愛は深くて重い。もう、
私達は淡から逃げられない。



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照の放った不吉な予言は、ものの見事に的中した。

高校最後のインターハイを見事制覇してから一か月後。
白糸台にも引き継ぎの時期が訪れる。
私は胸をざわめかせながらも、虎姫解散を皆に告げた――


――刹那。


淡は全身を小刻みに痙攣させて、
崩れるように倒れこんだ。


「ハァッ…ァッ、フッ…かひゅっっ」

「どうした淡!しっかりしろ!」


浅い呼吸を繰り返す。口をパクパクと開閉し、
空気が足りないといわんばかりに。
苦しそうに、もがくように胸を手で締め付けている。

その反応には覚えがあった。どこでだ?
思い出せ、確か体育の時間に習ったはずだ――


――そうだ、過呼吸!
極度のストレスがもたらすパニック状態!


「落ち着け淡!浅い呼吸をやめろ!
 できるだけゆっくり呼吸するんだ!!」
「ゼーッ、ハァッ、ゼー、ハッッ」


今にも窒息しそうとばかりに、
激しく胸を上下させる
淡の呼吸は収まらない
浅く、速く、浅く、速く
淡は自らを追い込んでいく

淡のパニックが伝染してくる
このまま淡は死んでしまうのではないか
心拍が異常に早くなり、私まで呼吸が浅くなる


どうすればいい、どうすればいい、どうすればいい!!


「どうすればー……照!?」


視界が真っ白に染まっていく中
照が優しく淡の背中をさすり、囁くように語りかけた


「大丈夫だよ、淡。虎姫は解散しない。
 これからもずっと在り続ける」

「なっ……照!?お前、いったい」


私の言葉を遮って、尭深もその手を淡に添える
慈しむように、包み込むように

淡に言葉を流し込む


「宮永先輩の言う通りだよ。大丈夫。
 私達は淡ちゃんから離れて行かない」


続いて亦野が手を握った
固く、固く握りこんだ
決して離れる事のないように


「私達は仲間だろう?今更お前が嫌がったとしても、
 私は解散してやらないからな」


皆が言葉を注ぎ込む度に
わずかながら淡の痙攣が収まってくる
だがその瞳はまだ虚ろで、
予断を許さない事が一目でわかる


三人の視線が私に注がれた


「……さぁ、菫も」

「弘世先輩」

「お願いします」


三人が要求している事は理解できている
虎姫解散の撤回、ただそれだけだ

だが、それを口にしたところで何が解決する?
今症状を抑えても、問題を先延ばしにするだけだ
結局はより後になって、余計に淡を苦しめるだk


「菫、選んで。虎姫を解散して淡を殺すか、
 一生淡と寄り添うのかを」


否、間違いに気づく
私は理解していなかった
こいつらは本当に虎姫を解散させる気がないのだ
単なる口約束なんかではなく
きっと、この先、ずっと、一生

そんな事ができるのか?
違う、今はそれを論じる時じゃない!


できなければ……淡は死んでしまうのだ!


「わかった。虎姫解散を撤回する。
 もう、二度とお前から離れたりしない!」

「だから……死なないでくれ、淡!!」


4人で淡を抱き締める
代わる代わるに愛を囁き、
決して離れない事を誓う
やがて呼吸の速度が収まり……


淡はそのまま、ぐったりと意識を失った



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『……とりあえず急場は凌いだものの。
 実際どうするつもりなんだ?
 あと半年で私達は卒業するんだぞ』

『菫、お嬢様だよね?
 淡の一人や二人囲えるんじゃない?』

『不可能とは言わないが…
 それじゃ虎姫とは言えないだろう』

『あの、宮永先輩と弘世先輩に、
 白糸台の特別コーチになってもらうというのは?』

『まだ現実的な線ではあるが…
 選手としては二人補充するんだろう?
 それって虎姫と言えるのか?』

『……不純物が混じるのは嫌ですね。
 そもそも虎姫に入れるような子が
 入学するかもわからないですし』

『結論が出ないな。
 やっぱりこうなるんじゃないか』

『そもそも全員学年が違うんだ。
 白糸台に居る限り、
 虎姫を続けるなんて無理な話だろう』

『……っ!菫、それだよ』

『どれだよ』

『だから――』



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『白糸台に縛られるから駄目なんだよ。
 ならいっそ、全員で捨ててしまえばいい』




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こうして、淡の重過ぎる愛は
私達四人をきっちり壊し切り。


二度と、離れないように縛り付けた。



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ちょっと暇になった昼下がり。
何気なく、自分達の事をネットで
検索してみる事にした。

チーム虎姫、検索結果124,000件。
一番先頭に来たページを選んでみると、
辞典みたいなページに飛んだ。



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『チーム虎姫とは』

宮永照、弘世菫、渋谷尭深、亦野誠子、大星淡の五人で
構成される女性雀士チームの名称。

メンバーが在籍していた白糸台高校で発足され、
インターハイでは団体戦で優勝を果たした。
その後、フリー参加のアマチュア大会に活動の場を移す。

アマチュア選手権大会をいくつか制した後、
東京の実業団にチームごとスカウトされた。

それからも順調に勝ち星を積み重ね、
今年は日本リーグ六連覇を達成。
実業団チーム王者として不動の地位を築いている。





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「うーん。知ってる事ばっかりだなぁ」

いや、そりゃ本人だから当たり前なんだけど。
書いてある事は単なる事実ばかりで、
私としては物足りない。

それでもだらだら読み進めていくと、
ちょっと面白そうなお題に切り替わった。


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『異常性』

チーム虎姫の異常性は、常軌を逸した結束にある。
チームが発足したのは高校生の時であり、
メンバーの構成は全学年が混合していた。

結果、虎姫は一年限りで解散されると思われていたが、
彼女達は驚くべき行動に出る。

三年生であり中心メンバーであった
宮永照、弘世菫の卒業とともに、
残りのメンバー全員が中退。
チーム虎姫を維持したまま、プロリーグ参画へと踏み切った。

これに対し、各プロチームは正式に卒業した二名だけに
スカウト行為を行ったため交渉は決裂。
虎姫はアマチュア参加可能な大会に活動の場を移し、
参加したほぼ全ての大会で優勝した。

その活躍が実業団の目に留まり、
団体戦で必ず五人全員を起用する事を条件に
虎姫はオファーを受け入れた。

なお、メンバーの代表である弘世菫は、
とあるインタビューでこう語っている。

「誰か一人でも欠けた時点で、
 虎姫のメンバー全員が引退する」

発言当初、この言葉を信じた者は皆無だった。
結束の強さを示すための
例え話に過ぎないと判断され、
大きく話題になる事もなかった。

しかしこの発言から数か月後、大きな転機が訪れる。
メンバーの大星淡が盲腸で入院すると、
虎姫のメンバー全員が看病のために活動を休止。
弘世の言葉は真実であった事が判明し、
業界全体を震撼させた。

余談だが、チーム虎姫は発足してから今年で10年になる。
これほどまでに一つのチームを堅持し続けたチームは
世界でも例がなく、ある種の精神疾患の可能性すらあると
分析する専門家も存在する。

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「ほほう、なかなか面白いじゃないですか!」

なんて、一人満足げに頷いた私は、
このページが誰でも編集可能な事に気づいた。

いいでしょう、楽しませてくれたお礼に、
ちょっとだけ秘密を教えてあげよう。
私は編集ボタンを押すと、ページの末尾に記述を加える。


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『淡係』

チーム最年少の大星淡は、
メンバーの全員に可愛がられている。

虎姫は五人で集団生活しているが、
その役割分担の一つに『淡係』なるものがあり、
係を担うメンバーは、一日大星淡を
いろいろな意味で可愛がる事になる。

なお、この役は日替わり制である。

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「これでよし、と」
「よし、じゃないよ」
「あれ?テルーもう起きたの?」

「淡がカタカタしてたから目が覚めた。
 ていうか淡係は書いちゃダメでしょ」
「大丈夫だって。どうせこんなの信じないよ」


私の膝の上で寝ていたテルが、いつの間にか起きていた。
テルは緩慢な動きでマウスを掴むと、
淡係の項目を削除する。


「あぁー、せっかく書いたのに!」
「こんなの書いたら、いやらしい記者が
 私達の関係を嗅ぎまわるようになる。
 淡だってそんなの嫌でしょ?」

「んー、それはそうなんだけどー」
「意外に食い下がるね。何か理由でもあるの?」


「えーと。もっと孤立したいんだよね」


ビョーキ、ビョーキ。私達は全員がビョーキ。
虎姫は全員が魔物で狂ってて、異常な程に結束してる。
その事実をもっと伝えたい。

今でも腫れ物を触るような扱いだけど。
メンバーの一人をペットみたいに
飼ってるなんて知れ渡れば、
余計に気味悪がるんじゃないかな!

そうやって、皆が皆私達から離れていけば。
私達はもっと仲間として繋がれる。
それってとっても素敵な事だと思う。


「というわけなんだけどダメかなぁ」
「……とりあえず虎姫会議で意見を仰ごうか」


やたっ、テルは折れてくれた!

虎姫会議。それは、私達五人に
影響するような決断が必要な時に開かれる会議。

議長はスミレ。お菓子係はテル。
お茶係はタカミでセーコが書記。
え、私?私はお菓子を貪る係。

会議とは名がつくものの、この会議で
私の要求が撤回された事は一度もない。


「はぁ、また淡の病気が始まったのか」


その晩開かれた会議は荒れに荒れた。
最終的には私の要求が受理される結果となったけど、
少しだけ文言を変える事になる。

『いろいろな意味で可愛がる』を
『彼女が寂しがらないようにそばに寄り添う』へと。


私は笑顔で了承すると、
すぐに例のページを書き換えた。



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『星の一生』


かつて手に取ったその本は、
特異な星の結末についても触れていた。

星の中でもひと際巨大な星――そう、
太陽すらはるかに凌駕する星は、
極めて珍しい終わりを迎えるのだとか。


核融合を繰り返して輝き続けた星は、
その結果、中心部に核融合の副産物――
『鉄』が蓄積し始める。

重い元素である鉄が集まる事で強力な重力を生み、
やがて星は自らの重力で縮み出す。

縮めば縮む程、圧縮されればされる程。
高密度がさらに重力を生み。
やがて、その重力は光すらも閉じ込める檻と化す。


これが、ブラックホール誕生の原理だ。


さて。話の中心を淡に戻そう。
かの離れ星が迎えた結末は、
果たしてどんなものだったのか。


小さく小さく生まれた星は、
当初輝く事すらできなかった。

でも、やがて星は太陽達に出会い、
その周囲を回り始める。先輩星に優しく照らされ、
少しずつ淡く輝きながら。

かの星は徐々に肥大化していく。
大きく大きく膨らんだその愛は、
周囲を引き寄せ縛りつける。

やがて収縮が始まった。彼女自身が世界を縮める。
結果、重力は四人の人間を閉じ込めた。

たった四人。でも、淡にはそれで十分。
彼女は閉じ込めた四人と添い遂げる。
それ以外は何もない、酷く隔絶された空間で。


これが淡の迎えた結末。
大星淡という星は、あまりに大きくなり過ぎて。
そして愛が重過ぎた。


だから。最期にはブラックホールになってしまったんだ。


大星淡。その愛しい縮退星は、
今も私達を閉じ込めている。


もっとも、逃げ出したいなんて思わないけれど。


(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2017年09月30日 | Comment(11) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
虎姫が化け物扱い、切ない…。
Posted by at 2017年09月30日 23:25
淡係というとんでもワード……
まあチーム虎姫自体、
淡の為にあるようなものだから……。
いや、淡に尽くす人の為にあるのかも……。
やっぱりそう考えると共依存ですね……。
Posted by at 2017年09月30日 23:59
なんだかいつものより闇が深い……
とうとう亦野さんまでヤンデレ側に行ってしまいましたね
すばら!
Posted by at 2017年10月01日 01:29
ぷちさんのssで淡尭好きになりすぎてヤバい…
Posted by at 2017年10月01日 18:36
成功例のところで目が潤んでしまった
そうですよね...照が白糸台の絶対的エースになれたのも琉音ちゃん先輩達、受け入れてくれる人達がいたからですもんね...
手加減するわけにもいかないし魔物としては相手にその気がないとどうしようもない
Posted by at 2017年10月01日 19:48
なんと今回わりとハッピーエンド!複数人の共依存は支え合いで切り抜ける強みがありますね
淡ちゃんかわいい!
Posted by at 2017年10月02日 01:50
はじめてコメントします
ぷちどろっぷさんの書く淡ちゃんが、菫さんが、虎姫が大好きです
これからも更新楽しみにしてます
Posted by at 2017年10月02日 13:04
甘々やなぁとほくほく感のまま読み終えたら、タグにシリアスが……。
今回は皆がハッピーなせいでシリアスに感じなかった!甘々ご馳走様です!
Posted by at 2017年10月03日 13:06
貴重な誠子の病みシーンをありがとうございます。
最後のブラックホールの件には軽く鳥肌が立ちました。話の構成が見事すぎる…。
Posted by at 2017年10月04日 20:32
ハッピーはハッピーなんでしょうね。
幸せの基準は人それぞれですし。
私もここまでドロドロに誰かに依存したい。貴方のSSを読んだあとはいつもそんな思いに駆られます。
Posted by まほっち at 2017年10月06日 02:12
私のリクエストがやっと。。ついに。。うれしい限りです。。信じていなかったわけではないんですけどね、お忙しいでしょうし。。だけど待っててよかったーー!!淡総受けですよ!闇深淡総受け!他じゃ見れません!本当に有難うございます。これからも淡天然誘い受け応援するっ!
Posted by あわわー at 2017年12月07日 22:25
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