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【咲-Saki-SS:久咲】 久「喉元過ぎれば熱さを忘れる」【誕生日SS】

<あらすじ>
咲「う、うぅ…久さんの誕生日プレゼント思いつかないよう」

久「別にいいわよ?去年みたいに
  『一日なんでも言う事を聞く券』をくれれば」

咲「それを回避したいから悩んでるんですよ!?」


<登場人物>
竹井久,宮永咲,その他

<症状>
・依存(咲)

<その他>
・竹井久誕生日SSです。Twitterでいただいたお題
『喉元過ぎれば熱さを忘れる』より。
 割とほのぼのまったりです。

・久さんは卒業して大学2年生です。
 咲さんは高校3年生。



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11月12日。

もう3度目となるその日を目前にして、
私、宮永咲は一人頭を悩ませていた。


「うーん。流石に3回目ともなると、
 いい加減ネタも思いつかないよ……」


11月12日。

つまりは久さんの誕生日前夜。
なんとしても今日中にプレゼントを決めて
調達しないといけない。
でないと、今年もアレになってしまう。


そう……『一日なんでも言う事を聞く券』に。


「別に私はそれでもいいわよ?
 ちゃーんとネタは考えてあるし」

「嫌ですよ!久さん、ここぞとばかりに
 とんでもない要求してくるじゃないですか!」

「そりゃあ誕生日だし特別感が欲しいでしょ?
 それが嫌なら何かテキトーなプレゼント
 見繕ってくれていいのよ?」

「ま、前日にもなって恋人の家で唸ってる時点で
 もうゲームオーバー寸前だと思うけど」

「う」


思わず言葉を詰まらせる。

この意地悪な人は知っているのだ。
私が妥協を許さない人間である事を。

大好きな人が生まれてきた日。今も居てくれる事に感謝する日。
どうせ贈るなら、誰よりも素敵なプレゼントを贈りたい。
誰にも負けない文句なしに最高のプレゼントを。


でも、そこは絶大な人気を誇る久さんの事。
『これが欲しい』なんて喋った物は、他の人と被る事間違いなし。
例えば久さんの好きな著者の新刊。これは誕生日に5冊も被った。
つまり、わかりやすく『欲しい』なんて言いそうな品は
むしろ除外しないといけない。

だからと言って、心のうちに秘めた願望を
くみ取るなんて至難の業だ。
ただでさえ、久さんはその手の気持ちを隠しがちなのだから。


「うぅ……。久さん、欲しいものありませんか?
 私にだけこっそり教えてください」

「あらら、それ聞いちゃうんだ?
 だったら『一日何でも言う事を聞く券』が欲しいわねー」

「まあ、そうなりますよね……」


がっくりと肩を落としながらも、
少し嬉しくなってしまう自分が悔しい。

だってそれは、『私が用意できる何かより私自身が欲しい』
そう暗に言われてるようなものだから。
でも、そう考えると余計に敗北濃厚でもある。
裏を返せば、『何を用意しても無駄』とも取れるから。


そうして悩む事2時間後。
私は結局、久さんの前に白旗をあげた。


「わかりました……今年も、
 『一日何でも言う事を聞く券』をプレゼントします」

「やたっっ!!!」


目に見えて喜色を増す久さんの顔。
それを見て心がポカポカ温もると同時に、
言いようのしれない不安が頭をもたげる。


ああ、私。明日何をされるんだろう。



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11月13日。




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早くも朝から後悔していた。
ああ、どうして私は、
もっと限界まで悩まなかったのか。


去年だってそうだった。散々後悔したはずだったのに。
『喉元過ぎれば熱さを忘れる』とは
まさにこの事だろう。


「はい、じゃあ咲は今日一日これをつけて過ごしてね!」


久さんから満面の笑みで差し出されたそれは、
大きなリボンに首輪と看板。


「ええと……どういう事か聞いてもいいですか?」

「単純よ?今日一日咲は私のプレゼントだから、
 みんなに思いっきり自慢するの」

「大きなリボンで蝶々結びしてー、
 首輪つけてー、最後にこの看板を首から下げて……と」


「はい!マイプレゼントのできあがり!!」


胸におろされた看板には、
でかでかとこう書かれている。


『私は竹井久の所有物です。絶対に手を出さないでください』


「えと、その……これ。私の社会生命が終わりませんか?」

「大丈夫!終わっても私が責任もって飼ってあげるから!
 じゃ、学校楽しんできてね!私も大学行ってくるわ!」

「あ、ちなみにエスケープは駄目よ?
 ちゃーんと後で麻雀部の皆に確認取るから」


いっそ学校を休もうかと思った刹那、
先回りして逃げ道を塞がれた。
ああ、もう諦めよう。
私はがっくり肩を落とすと、学校への道を歩き始めた。



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荒波のような一日に揉まれてようやく放課後。
這う這うの体で部室に飛び込む。

すでに皆は一局打っていた。私の姿を見とめると、
何とも言えない複雑な笑顔でねぎらってくれる。


「あー、なんというかご愁傷様だじょ」

「学校中の噂になってたな。多分また新聞になるぞ」

「うぅ……最悪にも程があるよぉ……」


京ちゃんの予言は現実になるだろう。
実際何十人と写真を撮られたし、その中には明らかに
趣味の範疇を超えたカメラで連射する人もいた。


「というか、よく風紀委員も許可しましたね。
 普通に校則違反なのでは?」

「久さんが根回ししてたんだよ!
 今日一日だけ私が仮装するからって!
 いっそ登校不可にして欲しかったのに!!」


『校則違反だから入れませんよね?』

恐る恐るそう問い掛けた後、淡々と告げられた風紀委員の言葉。
それは、私に対する死刑宣告だった。

『今日一日、宮永さんの素行は不問にすると
 学生議会から通達が来ています』

この清澄高校において、久さんは今でも絶大な権限を誇る。
目をつけられて逃れられる人間は居ない。
まあ、職権濫用の被害を被るのは私だけなんだけど。

うなだれる私を前に、なぜか居る染谷先輩が
肩をすくめながら苦笑する。


「じゃが咲も咲じゃろう。久の無茶ぶりなんて
 鼻で笑って突っぱねりゃええんじゃ」

「無理ですよ!久さん、すっごい目を
 キラキラさせるんですよ!
 もう普段見せないような
 子供みたいに無垢な笑顔で
 キラキラ輝いてるんですよ!?
 あんなの断れるわけないですよ!!」

「げ、出たよバカップルの砂吐きノロケ」

「竹井先輩も心配し過ぎだじぇ。
 今更こんな主張しなくても、
 誰も咲ちゃんにちょっかいなんか出さないのにな。
 咲ちゃんも割とこんなだし」

「竹井先輩、咲さんの事になると
 完全におかしくなりますからね……」

「まあ今年はこの程度で済んで
 よかったんじゃないか?」


この程度。この程度、かぁ。
私の社会生命は完全に粉々だと思うんだけど。

まあでもこれで終わるなら、去年に比べたら
確かにまだましかもしれな――


――なんて思った刹那、
部室の扉が勢いよく開け放たれた。


「甘いわね!これで終わりにするはずないじゃない!」
「そーだそーだ!!」


次の瞬間、大量のシャッター音が鼓膜を揺らす。
フラッシュが瞬き、眩しさに目をくらませる。


「わっ、わわっ!?」


記者会見を彷彿とするようなカメラのラッシュ。
数秒後、ようやく戻った視界の先には。
腰に手を当てて胸を張る部長と、
撮影器具をビデオカメラに持ち替えて
レンズを向ける福与アナの姿があった。


「というわけでちわーす、
 『こーこブログ』管理人の福与恒子でーす。
 偶々長野に出張してたら
 竹井ちゃんから面白い話聞いたんで垂れ流しに来ましたー」

「垂れ流し!?え、これ報道されちゃうんですか!?」

「むしろすでに垂れ流してるよ!
 これ生中継でネットに公開してるからね!
 もちろんご主人様の許可は頂きずみで!
 記事は別でちゃんと書くけど」

「あ、記事のタイトルどっちがいい?
 『宮永咲、実は竹井久の所有物だった!』
 みたいなフツーの奴と、
 『私はあの人の所有物
  −誕生日に自分を捧げる狂気じみた愛−』みたいなの」

「どっちにしても最悪ですよ!?せめてもっと
 お祭りっぽい感じのタイトルにしてください!」

「ていうか狂気は久さんの方ですから!」


怒涛のマシンガントークを繰り出してくる福与アナ。
必死に反論を続ける中、妙に冷やかな
優希ちゃんのツッコミが耳に残った。


「いや…狂気を受け入れちゃうのもまた狂気だじょ?」



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夜。

思い出すだけで熱が噴き出す地獄の取材と、
幸せなぬくもりに包まれた誕生日会が終わる。

二人で久さんの家に帰ってきた私は、
ようやく呪いの看板から解放されて、
だらしなく久さんのベッドにダイブした。
まだリボンと首輪は付けたままだけど。


「つ、疲れた……今日は本当に酷い目にあったよ」

「あはは、ごめんごめん。
 でもこれでちょっと安心できると思うわ」

「あれだけ見せつけてやれば、当分は
 咲を狙う輩もなりを潜めるでしょ」


「ね?『私の所有物』の宮永咲さん?」


私の横にボスンと腰掛けた久さんが、
にっこり微笑みかけてくる。


「……っ」


本当にズルい人だと思う。

こんな、病的なくらいの独占欲で人を縛り付けておいて。
なのに、そうされる事が嬉しいとすら
思わせてしまうなんて。

なんだか悔しくて頬を膨らませていると、
私を覗き込む部長の瞳に、少し妖しい色が灯った。


「さてと。じゃあそろそろ、
 本命のプレゼントをいただきましょっか!」
「へ?な、何の事ですか?」
「何の事って。今日一日、貴女がリボンしてる理由は何?」
「……あ」


部長の手がリボンを掴み、しゅるんと紐解いていく。
リボンをほどいて、私を包む布を取り除く。


「リボンを解いて、プレゼントを取り出したら。
 する事なんて一つ、よね?」


蕩けそうな声で囁きながら、
部長の腕が私を包み込んでくる。

私はそっと瞳を閉じると、部長に自分を差し出した。



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23時45分。

誕生日が終わりを告げようとしている。
昨年同様、今年も美味しく頂いた。


「ん、ぅ……」


少し無理をさせ過ぎただろうか。
汗と蜜に塗れた素肌を晒したまま、
咲は眠りに落ちてしまった。

規則正しく上下する胸に、
キスマークが大量に浮かんでいる。
つけ過ぎたかな、まあ服で隠れる位置だからいっか。
自分を一人納得させる。


「ありがとね。咲」


そっと唇を重ね合わせた。
よほど深い眠りに落ちているのだろうか、
咲は一切反応しない。
瞳を閉じて寝息を立てる咲は、
実際の年齢上に幼く見えた。

こんなあどけない子を手籠めにしてると思うと、
背徳的な炎がまたチリチリと火の粉を上げ始める。
駄目駄目、今日はもう終わりにしないと。

自らの欲望を鎮めるように、栗毛の髪を優しく撫でる。
しばらくそうして愛でていると、
マナーモードにしていた携帯が震え始めた。

画面に映しだされるは『照』の1文字。
静かにその場を離れると、通話ボタンを押して答える。


「もしもし?」

『誕生日おめでとう。……この時間なら
 そろそろ終わってるかなと思って電話した』


何がだ。いや、聞くまでもないだろう。
一見朴念仁のようでいて、
意外とこういうところで気が回る子だ。


「ええ、狙いすましたかのようにピッタリ。
 もしかして盗撮とかしてないわよね?」

「私は貴女達とは違う。ところで、
 今年もすごい事したみたいだね」

「ありゃ、もう知ってるんだ」

『「こーこブログ」はプロも監視してるから。
 菫が血相変えて教えてくれた。
 「お前の妹、大変な事になってるぞ」って』


相変わらず照の声に抑揚はない。

でも、血を分けた妹がリボンと首輪で彩られた上、
挙句『所有物』の看板を下げた姿を報道されるのは
果たしてどんな気分だろう。
やらかした事に悔いはないけど、
ほんの少しだけ申し訳なく思う。


「あはは。ごめんなさいね?
 貴女の妹傷物にしちゃったわ。いろんな意味で」

『去年の時点でもう諦めた』


電話の先から軽い溜息が聞こえてくる。
釣られてこちらも苦笑した。
間の抜けた空気が周囲に広がる。

でも、次の瞬間。
呆れたような口調が一転して、
照が真剣な声音で尋ねてきた。



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『それで。「咲の」不安は拭えた?』




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静寂が訪れる。予想外だった質問は、
一瞬私の頭を空白で染め上げた。


「……気づいてたんだ?」
「大切な妹の事だから。で、咲は大丈夫そう?」

「ええ。当分は大丈夫だと思うわ。
 来年になれば大学でも一緒になるし、
 もう心配いらないと思う」

『そっか。それなら安心した。これからもよろしくね』

「りょーかい」


プツリと通話が途切れたのを確認して一息つく。
そうか、照も気づいてたのか。咲が不安定になっていた事に。


(流石はお姉さんってところかしらね。
 ちょっと妬けるけど)


再び咲が眠る寝室に戻る。
すやすやと安らかな寝息を立てる咲。
その顔色は満足そうで、不安の色は見て取れない。

幸せそうに眠るほっぺをつつきながら、
咲の寝顔に語り掛ける。


「お姉ちゃんまで心配してたみたいよ?
 まったく、世話の焼ける子なんだから」


ここ最近、咲は浮かない表情が続いていた。
私がインカレで優勝したあたりからだろうか。
物憂げに沈み込んだり、些細な事で嫉妬する日が多くなった。

仕方のない事だとは思う。
片時も離れたくないと焦がれる人が、
自分の知らない仲間と肩を組み。
自分の手の届かない場所で楽しそうに笑っているのだから。


仕方のない事だとは思う。
でも。


「あれだけ愛し合ったのに。
 その程度で不安になっちゃうなんて、ね」

「『喉元過ぎれば熱さを忘れる』、か。
 熱さを忘れちゃうのって、悪い事だけじゃないのよね」


今回痛感させられた。嬉しい事も、幸せな事も。
いつか風化して薄れてしまう。
それが、どれほど大切な記憶であっても。


一年前の今日。私達は熱く燃え上がった。

お互いの初めてを相手に捧げて、
一生消えない裂傷を、体の奥に刻み込んだ。

汗ばむ肌を抱き寄せながら、涙ながらに誓ったはずだ。
『貴女だけを愛する』と。
そう、確かにあの日、私達は結ばれた。


そんな幸せの絶頂からたった一年。
咲は不安に押し潰されそうになっている。


『あの時は確かに愛し合ってた。でも今は?』
『その愛はいつまで続くの?』
『自分より素敵な誰かが、
 久さんを攫って行かない保証なんてある?』


必要のない不安に襲われながら、
咲は、毎日すがる様に私の家に通ってくる。


だから私は縛り付けるのだ。独占欲を剥き出しにして、
誰にも触れさせないと牙を剥いて。
咲は自分のものなのだと、全世界に発信してやるのだ。


「だから大丈夫よ。心配なんかしなくても、
 私は貴女を逃がしてなんてあげないから」


欲を言えばもう少し信じて欲しいけど。
咲が不安になるのなら仕方がない。


「貴女が熱さを忘れてしまうなら。
 何度でも熱を注ぎ込んであげる」

「注いで、注いで、注いで、注いで。
 熱さから逃れられなくしてあげる」


「そうすれば……不安になる暇なんてないでしょう?」


咲の頬をちょんちょんつつく。咲がくすぐったそうに身をよじると、
首輪に覆われた首があらわになった。
表面にはエンボス加工で『ひさ』の文字が刻まれている。

「ま、忘れちゃってもいいけどね。
 そしたらまた、『一日何でも言う事を聞く券』をもらうから」


私は薄く微笑んで。咲の唇にキスを落とした。



(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2017年11月13日 | Comment(6) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
冷ややかなタコスのツッコミが
とても印象的でした(;´・_・`)
Posted by at 2017年11月13日 16:46
毒をもって毒を制すですかね、
狂気を持って狂気を制し、
久さんはやっぱり優しいですね……。
Posted by at 2017年11月13日 18:19
久さん優しすぎかわいい
咲さんかわいすぎかわいい

この久さんが誕生日なにをおくるのかも
ちょっときになるなぁ
Posted by at 2017年11月14日 00:51
一瞬、チョロ可愛い咲の後日談なのかと思いましたが、こちらでは二年生時で掘った場所も違いましたか……。
久さんも咲もすごく健全に感じました(混乱)
Posted by at 2017年11月15日 00:33
一貫して終始あまあまなのにこのじわじわくる不穏な感じ...いやぁ、癖になりますね
Posted by at 2017年11月15日 01:42
コメントありがとうございます!

冷ややかなタコス>
咲「番外編とかも含めると優希ちゃんって
  結構クールだよね」
優希
 「実は一番まともです!」
和「それを許容するのは難しいですが」

久さんはやっぱり優しい>
久「自分の独占欲を満たすのもあるけどね。
  離れた時の不安定さは
  咲の方が重いと思うから」
咲「優しいけどずるいなぁ」

久さんも咲もすごく健全>
優希
 「狂気を受け入れちゃうのも
  また狂気だじょ?」
和「読者さんにも当てはまりそうですね…」
咲「というかチョロくないもん!」
久「いやこれは割とチョロ咲でしょ」

このじわじわくる不穏な感じ>
久「そ、そんな事ないわよ?あまあまよ?」
咲「いや、この独占欲はもう狂気だよ……」
Posted by ぷちどろっぷ@管理人 at 2017年11月15日 21:50
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