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【咲-Saki-SS:憧穏】穏乃「ねえ、一体どこからどこまでが、憧の計算だったわけ?」【普通?】

<あらすじ>
憧は頭がすごくいい。
それでいて何でも自分で決めちゃう。

だから、今のままじゃ駄目なんだ。
今のままじゃ、憧は私と離れる道を選ぶだろうから。
そうそれは、中学進学で別れた時と同じように。

憧の未来を私に寄せる。私が憧の未来を描く。
そうすれば、憧はついてきてくれるよね?


<登場人物>
高鴨穏乃,新子憧

<症状>
・依存
・執着(軽微)

<その他>
次のリクエストに対する作品です。
・偏差値70は余裕の憧が知略を尽くして穏乃を手に入れる話
 ギャグでもシリアスでもOK

 ※あえて被害者視点から書きました。
  憧視点がないとあんまり病んでる感じしないかも。
  (憧視点は重度の共依存)
  というわけで興味のある方は例によって
  真相希望をコメントに書き込んでください。



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これまで出会ってきた人の中で、一番頭がいいと思う人。
もしそれを問われたら、私は憧の名前を挙げると思う。

新子憧。私、高鴨穏乃の同級生であり、
小学校から付き合いのある親友だ。

通う学校は一応同じ。でも、憧だけ他とは次元が違う。
テストをすれば当然のように学年一位。
下から数えた方が早い私とは大違いだ。

まあ、そんなわけで。テストの時期が近づいてきた今、
私は憧の家に軟禁され……もとい勉強会に誘われて
地獄の猛特訓に勤しんでいる。


「あー、駄目だ!テストまでに全然間に合う気がしない!」

「自業自得。普段サボってるからそうなるんだってば。
 あ、そこの問2計算間違ってるからやり直しね」


広大なテスト範囲に絶望してテーブルに突っ伏す私。
そんな私とは対照的に、憧は一人優雅にお茶をたしなんでいる。
私が参考書を開いた最初のページで躓いている間に、
憧はあっさり復習を終わらせてしまっていた。


「憧はいいよなー、もともと頭いいから
 勉強しなくても成績いいし」

「なんで私が勉強してない事になってんのよ」

「えー、だって今だって2時間くらいで
 ささーっと終わっちゃったじゃん」

「これまで掛けてきた時間も計算に入れなって。
 あんたがサボってきた間、
 私はコツコツと研鑽を続けてきただけ」

「勉強は日々の積み重ね。授業で数か月掛けてやる範囲を
 たった2、3週間の自習で取り返せると思う?
 発想自体に無理があんのよ」


言わんとする事は理解できる。
憧が地道に勉強してきたのも本当だろう。
憧が中学校の頃から優等生だったのは知ってる。
何しろ、本来なら憧はあの晩成に入学する予定だったんだから。

晩成と言えば偏差値70はある超進学校。
エスカレーターで入学できると遊びまくってた私とでは、
その時点で相当開きがあるのは確か。

一応、そこは理解してるんだけど。


「ごもっともだけどさぁ。
 勉強してる時間なんてなかったじゃん」


でも、やっぱり地頭の差を疑わずにはいられない。

だって、再会してからの私達は。
麻雀部を復活させてからの私達は、
ほとんど同じ生活をしてきたはずなのだから。

朝から晩まで麻雀漬け。この夏に全てを懸けるつもりで、
私達は麻雀に打ち込んできた。
この私が山登りをやめたくらいだ。
憧だって勉強する時間はろくに取れなかっただろう。


なのにこの差は一体なんだ。もし理由があるとすれば、
『憧は頭がいいから授業中に全部理解できちゃう』
くらいしかない気がする。

なんて愚痴をこぼした私を、
憧はあっさりと一刀両断に切って捨てた。


「時間はねだるんじゃなくて作るもんだよ?
 やろうと思えば隙間時間でも十分勉強できるって」

「いやいや、それが普通の人には無理なんだってば。
 例えば休憩時間の10分とか使ったって
 問題1問も解けないじゃん」


憧の勉強法も理解はできる。でも、
それはやっぱり頭のいい人にだけ許された方法だ。
そう口を尖らせた私とは対照的に、
憧は腑に落ちたとばかりにポンと手を叩いた。


「あー、やっぱそういう事?理解したわ。
 しず、あんた勉強の仕方が悪い」

「へ?」


「がらっと、思い切って発想を転換しよう」


憧はそう宣言すると、私から参考書を取り上げる。
そしてページをパラパラめくると、とあるページを開いて見せた。


「はい。アンタが悩んでた問題の解答。
 今から読んで暗記しなさい」

「……へ?解ける前から答え見ちゃうの?」


確かに、学校で使ってる参考書には漏れなく解答もついてくる。
でも自分で解く前から解答を見ちゃうのは、
なんというかズルなんじゃないだろうか。


「悩むって事は理解できてないのよ。
 問題を解くためのインプットが圧倒的に足りてない。
 自力で正答する必要はないから
 模範解答を頭に叩き込みなさい」

「まず答えを見る、それから問題を解く。
 詰まるようならまた答えを見る。
 インプットとアウトプットを繰り返すの。
 悩んで時間を浪費するより、
 よっぽど効率的に勉強できるよ?」

「もっと言っちゃえばさ、初見で悩まず解けるんだったら
 問題解くだけ時間の無駄っしょ?
 それこそ解答見て終わりにしていい」

「ま、先生によってはこのやり方嫌がるけどね。
 自分で悩まないと身にならないーとか言ってさ」

「へぇぇぇー。こんな勉強法全然知らなかった」


目から鱗が落ちた気分。
参考書は難問に頭を煮詰めながら使うものだとばっかり思ってた。
答えから見ろ、なんて今まで聞いた事もない。

でも実際試しにやってみると、驚く程サクサク勉強が進む。
そりゃそうだ。だって答えを見てるんだから。


「でもさ、これだと全然知らない問題解けなくない?」

「これが意外と解けるんだよね。1問を頑張って悩んで解くより、
 10問答えを覚えた方が応用力が付くわ。
 ていうか、ぶっちゃけ悩んでる間の試行錯誤なんか
 記憶しても邪魔になるだけだしね」

「問題と模範解答にたくさん触れて、
 共通する解法のパターンを叩きこむ。
 そうすりゃ自然と解けるようになるから」

「ふーん。よくこんな方法思いつくよなぁ」

「あ、これ私のアイデアじゃないよ?
 ネットで効率のいい勉強法とかを検索して
 自分に合ってる方法を採用しただけ」

「勉強の仕方も勉強と同じよ。下手に自分だけで悩むより、
 先人の知恵を活用した方が手っ取り早いでしょ」


事も無げに語る憧。だからこそ私は感心する。

思えば憧の行動はいつもそうだ。
効率的で要領がよくて、計算や根拠に裏打ちされている。
とりあえず思い付きで動き始める私とは大違い。
こういうのを聞いちゃうと、
やっぱり憧は頭がいいんだなって思う。


「今度から悩んだらまず憧に聞こう」

「や、そこは自分で答えを探す癖をつけなよ」

「憧に聞くのが一番早い!これが私の見つけた
 一番効率的な学習方法だ!」

「あっちゃー……余計な知恵つけさせちゃったかなぁ」

「で、早速だけどさ。この手のノウハウ、
 他にも隠し持ってない?」


この際だ。新子メソッドを
骨の髄までしゃぶり尽くす事にしよう。
憧は呆れたように苦笑しつつも、
いつも通りの世話焼きを発揮して
懇切丁寧に教えてくれる。

二週間後。新子憧勉強法を身に着けた私は、
短い勉強時間にも関わらず、なんとか
平均点をちょっと超える快挙を成し遂げる。

ちなみに私に付き纏われ続けた憧は、
それでも当然のように学年一位をキープしていた。



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この一件があって以来、
私は憧を注意深く観察するようになった。

憧の行動からは学べる事がたくさんある。
その事実に気づいたからだ。
少しずつでも参考にすれば、
私も憧みたいにレベルアップできるかもしれない。


(……なんて思ったりしたんだけど。
 正直ここまで差があるとは思ってなかったなあ)


観察してみて驚いた。一見すれば他人と差がないようで、
でも酷く効率的で合理的なのだ。
一つ一つの行動が、実に無駄なく洗練されている。


「あれ?宥姉なんで居るの?今日は
 家の用事で帰るって不参加じゃなかったっけ」

「わぁっ、わ、忘れてた……憧ちゃんありがとう!」


二人で部室に到着するなり、憧が宥さんに声を掛ける。
本人すら忘れた用事、でも憧はしっかり覚えていた。
しかも、その話が出たのは確か2週間以上前のはずだ。


「そういえばそんな話してたっけ。
 憧もよくそんなの覚えてるなぁ」

「覚えてないよ?聞いた時に携帯でアラーム掛けただけ」

「え、いちいち予定全部入れてるの?めんどくない?」

「逆よ逆。楽したいからやってんの。
 やってみりゃわかるわ。
 『機械的に管理してるから忘れても大丈夫』
 ってすっごい楽なんだから」


言われてみればそうかもしれない。
実際、『覚えておかないといけない』ってのは結構大変だ。
今回みたいに忘れちゃって困る事も多々あるし。


「じゃ、うちらも今日は早めに帰ろっか。
 遅くなると大雨になるって予報だし」

「うげ、そうなんだ?私傘持ってきてないや」


言い終わるや否や、教室の窓を雨粒が打ち付け始める。
どうやら一足遅かったらしい。
うなだれる私に苦笑しながら、憧が鞄をがさごそ漁り始める。


「そんな事だろうと思った。はい、折り畳み傘」

「え?でもこれ憧の分でしょ?」

「ああ、あたしは普通の傘も持ってきてるから。
 これは鞄に常備してる奴」

「え?2本持ってきたの?」

「いつ雨が降ってもいいように折り畳みは常備してんだよね。
 でも、雨がほぼ確定してる時は普通の傘の方が楽でしょ?」


これだ、このスマートさ。
思い返せば、憧が傘を忘れたところを見た事がない。
これも、『忘れても大丈夫』な仕組みが
事前に組み込まれているからだろう。

憧の行動には、こんな感じで一手間掛ける代わりに
後の手間を大幅に解消する工夫が散りばめられてる。


「そういう知恵袋的な奴ってどうやって身に着けてるの?」

「勉強と同じ。何か失敗したとして、
 どうすれば楽にその失敗を回避できるか考えるだけ」

「天気予報を見るのを忘れたって言うなら、
 雨が降りそうな日に通知が来るようにすればいい。
 傘を忘れちゃうなら邪魔にならない折り畳みを常備すればいい」

「んで、しずは天気予報見ないから傘忘れがち。
 なら、雨が降りそうな日は2本持ちすればいい。
 別にしずが忘れてなくても無駄にはならないしね」


ほら、簡単でしょ?、と続けられた憧の言葉に、
うーんと思わず唸ってしまう。

種明かしをされれば確かに簡単。
けど、その一つ一つをこなせるかと聞かれたら答えはノーだ。
こういうのが自然とできるあたりが、
憧の憧たる所以なんだろう。
多分、それは私には無理な事だ。


「うん、もう諦めようかな」

「何が?」

「いやー、憧のいいところを見習おうと思ったんだけどさ。
 正直私には無理そうだし。
 憧に面倒見てもらう方が早い気がしてきた」


自分にないものをねだるよりも、
それが得意な誰かで埋め合わせる方が合理的だ。
あ、ちょっとこの考え憧っぽい。

そう、憧も言ってたじゃないか。
自分一人であれこれ悩むより、
さっさと誰かの力を借りた方が効率がいいって。


「うん、決めた。私は憧にべったり甘える事にする!」

「はぁ、あんたねぇ…それ、私が
 ある日突然居なくなったらどうするつもりなのよ」

「その時は探し回って連れ戻す!」

「どうしよう、親友の発想が軽く狂気」


若干引くようにたじろぎながらも、
憧は呆れたように苦笑する。

そう、これだ。この関係こそが私達のベスト。

私がなんか突拍子もない事を言って、
憧が呆れながら肩をすくめて。
でも、なんだかんだで支えてくれる。

そんな関係が続いていくなら、
無理に憧をまねる必要なんてない。
私はそう結論付けて、憧にぎゅうっとしがみつく。


「と、言うわけで。私は一生憧にしがみ付く!」


それでこの話はおしまい。
私の中ではそうなるはずだった。



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なのに。



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「しずは、本当に計算ができないよね。
 そういうとこ、割と本気で羨ましいわ」

「でもそれ。『次は』通用しないかもよ?」



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優しく、穏やかで寂しい声音。
どこか大人びたその声に、妙に心をかき乱された。


「え、と。それ、どういう意味?」

「さぁてね。答えが知りたきゃ自分で考えなさいな」


儚げな顔が一転、憧は意地悪い笑みを浮かべて、
そのまま校門に向かって歩き始める。

問い詰めたくて仕方ないけど、こういう時
憧は絶対に答えてくれないのも知っていた。
私はあわてて追いかけながら、憧の言葉を反芻する。

『次は通用しない』ってなんだろう。
考える。『次』があるなら『前』があったはず。
『前』は通用したって事だ。
なら、『前』ってのは一体何を指しているんだろう。

考える、考える、考える、考える。
私が今みたいに憧に頼った時の事を。
『前』は憧が助けてくれた。それは何?
『次』は通用しないかもしれない事。それは何――


――ぞくり。


一瞬脳裏によぎった可能性が、
私の全身から体温を奪う。


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『まず一人!ここにいるっ……!!』



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蘇ったのはあの日の言葉。

計画性も根拠もなく、ただ身勝手な思いをぶつけた私に、
憧は計算を捨ててついてきてくれた。

あの頃の私はただそれに感動して、
憧が来てくれた事を素直に喜んだ。
散らばったピースが集まってきて、
何もかも上手くいくような全能感に包まれた。


よくよく思い返してみれば、結構異常な事なのに。


疎遠になった友達の一言を頼りに、将来有望な進学校を蹴る。
異常だ。計算高い憧じゃなくても、普通は取らない行動だろう。

なのに憧はそれをした。あの憧が、
小学校の頃から練っていたプランを捨てた。

あの時は、計算よりも仲間の絆を
優先してくれたとばかり思ってたけど。
でも、本当にそれだけだったんだろうか。


いぶかしむ。憧は、本当に計算を捨てたんだろうか。


実は、いつも通り憧は計算してて。
計算の結果、晩成と比較した上で
阿知賀に編入しても問題ないって
判断しただけなんじゃないだろうか。

だとしたら憧の本質は。
阿太峯中行きを決めたあの頃と何も変わりがなくて。


今から2年後。また自分の意思に従って、
私との別れを選ぶ可能性がある。


(……これ、憧に、甘えてるだけじゃ駄目だ)


憧に甘えるのはすごい楽。でも今の口ぶりを聞く限り、
憧はずっと私を支えるつもりはない。
もし憧が描いた道と私の道が分かれれば。
憧は毅然と自分の道を選ぶんだろう。

だから、ただ頼ってちゃ駄目なんだ。
憧を観察して、憧の過去から次の行動を予測して。
最悪の未来を回避しなくちゃいけないんだ。


(大丈夫、できるはずだ。私はもう一度失敗を経験してる)


経験から学んで、情報のインプットを続けて、
失敗を回避する方法を導き出す。
方法は憧が教えてくれた。
同じ過ちは繰り返さない。私は絶対――


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――憧と、離れない未来をつかみ取る!



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生まれてきてはや16年。
その場のノリと思いつきだけで生きてきた私は、
ようやく計算する事を覚え始めた。



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計算の基本はインプット。
私は憧から学んだ通り、まずは情報を集める事にした。
聞くべき事はもちろん一つ。
『あの日、憧はどうして阿知賀を選んだのか』だ。


「随分今更な事聞くねー。一体何を企んでんの?」

「ほら、阿知賀って中高エスカレーターだから
 私は受験とかなかったじゃん?
 でも大学行くならその辺は避けて通れないし。
 憧はどういう考えでこっちきたのかなあって」


本音を言えば、まだ願望が混じってたと思う。
憧は計算なんかしてなくて、ただ自身の思いに従って行動した。
損得なんか除外して、私の事を優先してくれたんだって。


「ま、ぶっちゃけるとね。どっち選んでもいいと思ったのよ」

「えー、阿知賀と晩成じゃ進学率全然違うと思うけど」

「晩成の方が勉強の環境が整ってるのは事実だけどねー。
 でも、正直勉強なんて本人の努力でどうにでもなるからさ。
 教材だってネットに転がってるし、
 その手のコミュニティもいくらでもある」

「だから進学率は選択の指標から除外した。
 実際、今のまま晩成高校に行っても十分ついてけると思うしね」

「じゃあ、やっぱり私達と麻雀を打つため?」

「まーね」


にわかに胸が高鳴った。やっぱり憧は私のために。
小躍りしそうになった瞬間、でも冷や水をぶっかけられる。


「ただ、打算がなかったかって言われると微妙なんだよね」

「……え?」

「麻雀が打ちたかったから阿太中行ってゆくゆくは晩成へ。
 小学生の時に考えた王道ルートだったけど、
 安定し過ぎて、だからこそ不安を感じてた」

「知ってた?和の中学ね、団体戦で初戦敗退してんのよ。
 個人戦王者を擁して地区予選初戦敗退って、
 他は相当弱かったって事だよね。
 つまり、和は学校とは関係なしに強くなったって事」

「実際阿太中は私にとって最適解だったと思う。
 でも、トップ集団に食い込むにはそれじゃ足りないんだよ。
 『強豪校が』じゃなくて、『私が』強くならないと駄目。
 和の全国優勝見てそれを痛感させられたわ」

「だから発想を一気に転換した。
 安定した環境で普通に強くなるんじゃなくて、
 もっと別のアプローチで徹底的に自分を追い込もうって」

「そう考えたらさ、阿知賀行きも別に悪くなかったんだよね。
 単に麻雀を打つって条件だけならなんとかクリアできそうだったし、
 しずや玄と一緒に麻雀を打てるってメリットを
 覆すだけのデメリットがなかった」

「つまり、阿知賀行きは割と理にかなってたってわけよ」


背筋を冷たい汗が下りる。

やっぱりだ。憧は私の思いに答えながらも、
計算を捨てたわけじゃなかった。
冷静に状況を比較して、計算づくで阿知賀を選んだんだ。

だとすれば十分にありうる。
憧が、中学進学と同じように私を置いていく可能性。

いや、むしろ可能性大だ。
大学こそこれまでの勉強の成果を発揮する集大成。
今真面目に勉強してるって事は、
ちゃんと偏差値の高い大学を
受験する意思があるって事なんだから。


(どうしよう。このままじゃ、憧がまた離れて行っちゃう)


順風満帆に思えた高校生活。
でもその先が薄氷に続いてる事に気づいた。

でも、だとしたら私はどうすればいいんだろう。
悩める時間は、もうそんなに多くない。



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私が掴み取りたい未来。それは憧と離れない事。
でも、具体的にどうしたらいいかと問われると、
正直足が動かなかった。

取れる方法はあると思う。
例えば正攻法で憧と同じ大学を目指すとか。
でも、私は別に勉強に興味はないし、
成績優秀な大学に入る目的もない。

そもそも憧はどうして勉強してるんだろう。
どんな大学を何のために目指すんだろう。

そう考えると、まだまだ全然インプットが足りない。
誰よりよく知ってるはずの親友なのに、
意外と何も知らない事に愕然とした。


「……憧はさ、どうして勉強するの?」

「学生がそれを言っちゃうかね。
 学生の本文は勉強でしょうに」

「そりゃそうだけどさ。やっぱり大学行くため?」

「まーね」

「なんで大学行くの?何を目指してるの?
 もうなりたいものが決まってるとか?」

「な、なんかやけにぐいぐい来るわね。
 まだ進路に悩む時期でもないと思うけど」

「憧なら、そういうのもう決めてるのかなって」


小学生の私が何も考えずに阿知賀進学を決めた中、
一人別の道を選んだ憧だ。絶対に何か考えがあるはず。

まずはそこを聞き出そう。相手の手が見えないと
対策の打ちようもない。


「んー、勉強する理由かぁ。正直後ろ向きなんだけどね。
 ただ、選択肢を狭めないようにしてるだけっていうか」

「選択肢?」

「そ。保険みたいなもんよ。いざ本命が夢破れた時、
 そこそこの大学行ってればリカバリーきくっしょ?」

「その、本命って何?」

「麻雀教室の先生。つまり昔のハルエポジ。
 雀士として相当の実績がないと
 食べてくのは厳しいだろうけどね」

「でも、私の原点は……やっぱり、あの麻雀教室だからさ」


導かれた答えにハッとする。
確かに憧にぴったりで、人生全てが繋がっていた。

麻雀教室が大好きで、皆から慕われていた憧。
麻雀が大好きで、とりわけみんなで打つのが好きで。
私達の誰よりも麻雀が上手くて、さらに教えるのも上手い憧は、
きっと素晴らしい先生になれるだろう。

一度答えを聞いてしまえば、
これほど憧にピッタリな道もないと思えた。

しかも、そういう事なら簡単だ。


「じゃあ私も先生になる!」

「おバカ。言ったでしょうが、食べてくのは難しいって。
 将来の選択肢としては愚策も愚策よ」

「自分はそれを選ぶくせに?」

「いやだってねぇ。所詮道楽の習い事だから
 一人からもらえる月謝なんてたかが知れてるし。
 ネームバリューで人呼べるくらいの実績あるなら、
 素直にプロ雀士とかやってりゃいいでしょ?」

「職業としては中途半端過ぎるんだよねー。
 ハルエみたいにボランティアでやるか、
 主婦が昔取った杵柄で片手間にやるような職業だわ」

「正直私も決めかねてる。だから保険を掛けてんのよ。
 雀士として腕を磨くのもそうだし、
 教師にもなれるように勉学に励むのもそう。
 いざ挫折しちゃった時に、いつでも方向転換できるようにね」


そう言って憧は笑みを浮かべた。

憧らしい考え方だなって思う。
問題が起きる事を計算に入れた上で、
もう今から将来をちゃんと考えてる。

だからこそ、胸が酷く軋んだ。


「んじゃ、また明日」


憧と別れて家につき、一人机にがくりと突っ伏す。

今までと同じだ、置いてかれてる。
憧は確固たる意志を持って自分の道を模索していて、
そこに私の存在は考慮されてない。
憧が選ぶその道に、私は居ても居なくても関係ないんだ。


何より最悪なのは、憧自身の中で結論が出てない事だ。
今私がいくら対策を取ったとしても、憧の判断であっさり覆る。
憧が阿知賀行きを決めたのは、私にとってラッキーだったけど。
あれと同じレベルの方向転換が、悪い意味で起きてもおかしくないのだ。

そして、いつか憧が心を決める時が来たとして、
私はその決定事項をただ聞かされるだけで。
「そっか」って頷くしかないんだろう。


「……どうすれば、いいんだろ」


ぐるぐる、ぐるぐる。


思考の堂々巡りが続いていく。
だんだんと意識が摩耗していく。

いくら考えても結論が出ない。憧に振り回されてばっかりだ。
それで上手くいくならいいけど、問題は何も改善してない。


ぐるぐる、ぐるぐる。
どろどろ、ぐるぐる、どろどろ、ぐるぐる――



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『そういう時はね、がらっと発想を転換するのよ』




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思考の底なし沼に堕ちかけた私の頭に、
憧の言葉がぱっとひらめく。

そうだ。勉強を教えてくれる時、憧はよくそれを促した。
煮詰まった時、思い切って発想を切り替える事。
そうする事で見えてくる道があるって。


「発想の転換。この場合どうすればいいだろう」


今私が取ろうとしてる対策は、憧の考えを聞いて対策する事。
でも、憧の考えは柔軟だから全てに対応するのが難しい。
だとしたらどうする?どう考えたらもっと簡単になる?
今の発想を逆転するなら――


――っ、憧が。私に合わせてくれればいい……?」


ハッと目を見開く。これだ!

無理に憧に合わせようとするから大変なんだ。
今までと同じように、憧が自分で判断した上で
私に合わせてくれるのがベスト。

もちろん、単に思い付きで動いちゃだめだ。
それじゃぁ結局運頼みになる。

私の意思で憧の選択肢を狭める。狭めた上で、
私が望んだ道を憧が自分で選ぶように仕向けるんだ!


「でも、そんな事できるのかな」

「……ううん、できるはずだ!私は一度成功してる。
 同じ事を意図的に起こせばいいんだ!」


憧の未来に無理やり干渉する。私なしの選択肢を除外する。

幸い、憧が何をしたいかはもうインプット済みだ。
一気に視界が開けてくる。
一度思いついてみれば、もうこれ以外にない気がしてきた。


「よーし決めた!絶対に憧をついてこさせる!!」


見てろ憧。私の思い付きと憧の計算。
両方を融合した完璧な答えを用意してやるから!

私は拳を強く握ると、天高くそれを突き上げる。
そしてひとしきりポーズをとった後、
改めて携帯電話を取り出した。



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『お久しぶり、でもないか。何かあった?』

『プロになるのってどうすればいいか聞きたくて』

『お、穏乃もこっちに興味持ったんだ?』

『はい!やっぱり実績がないと難しいですか?』

『そんなに気張らなくてもいいんじゃないかな。
 去年と同じ結果を継続できれば
 十分スカウトの眼鏡に叶うと思うよ』

『ただ、私を見てりゃわかると思うけどさ。
 プロになるだけじゃ駄目だ。
 そこをゴールにしちゃうと入った後にあっさり潰れるぞ?』

『はい!そこは大丈夫です!
 私もプロになる事が目的じゃないですから!』

『……?まあ、そこをわかってるなら大丈夫かな。
 ならインターハイで地道に結果を出せば大丈夫だと思うよ』



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『今年も何とか団体戦出られそうだね!
 個人戦の方はどうする?』

『んー……』

『はい、私は出ます!
 高鴨穏乃でエントリーお願いします!』

『どういう心境の変化……?』

『みんなで遊ぼうって気持ちは変わりません。
 ただ、遊べる人は多い方がいいですから!』

『去年の荒川さんみたいに、
 個人戦に出ないと遊べない人も
 きっといますよね?そういう人とも遊びたい!』

『なるほど……穏乃らし』



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『えーと望さん、ちょっと質問したい事が』

『何々?憧のスリーサイズとか?』

『あ、それはもう知ってるんで。
 確か阿知賀こども麻雀クラブ作ったのって
 発端は望さんですよね?』

『設立した後は晴絵にぶん投げたけどね。
 でもそれがどうかした?』

『ちょっと似たような事考えてまして。
 できればその時のお話を聞きたいなって』



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条件は全て整えた。3年生最後となる進路希望調査、
私は満を持して憧の前に姿を現す。

前もって、記入済みの進路を書き込んだプリントを携えて。


「憧、それまだ出してないんだ?」

「書いたには書いたんだけどねー。
 ちょっと決めあぐねてる感じ」


机に広げられた紙に目を通す。
そこに刻まれた希望進路は、やっぱり私と別れる道だった。
でも予想の範囲を超えてはいない。
満面の笑みで首をシェイクしながら、
私はもう一枚の紙を横に広げる。


「憧にしては微妙だな。もっといい案があると思うよ。
 そんなわけで、お薦めプランを書いてきた!」

「出たよしずの謎暴走。ま、一応見てはあげるけどさ」


軽く苦笑しながらも、憧は差し出された紙を手に取った。

視線を上から下に移動させていくうちに、
みるみる憧の眉が下がっていく……


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      進 路 希 望 調 査

       3年5組1番  氏名:新子 憧


(1)卒業後の進路希望(該当の■を塗り潰すこと)
  □進学 /■就職 /■その他


(2)志望校(進学希望者のみ記入)

  第一志望:    学部    学科・コース
  第二志望:    学部    学科・コース
  第三志望:    学部    学科・コース


(3)志望職種(就職希望者のみ記入)

  第一志望:麻雀教室の先生
  第二志望:
  第三志望:


(4)詳細(その他希望者のみ記入)
  高鴨穏乃の妻(高鴨憧)



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「えーと、しず?ツッコミどころ満載なんだけど
 どこから突っ込めばいい?」

「思うところ全部!」

「ああ、うん。じゃあ最初から行くけど。
 『麻雀教室の先生』って何?」

「え、憧なりたいって言ってたよね?」

「いやいや小学生の夢じゃないんだからさ。
 どう実現するつもりなの?って聞いてんのよ」


まず聞かれると思ってた質問だ。
私は前もって暗記しておいた答えをすらすらと読み上げる。


「望さんに麻雀教室の立ち上げ方を聞いた。
 阿知賀もこの3年で結構な強豪扱いになったし、
 そのメンバーの中核は昔のこども麻雀クラブ出身だろ?
 その辺を学校に説明して先行投資と見てもらえれば
 十分実現できると思う」


『完全に呆れ果てた』、そんな表情だった憧に変化が生まれる。
憧は口角を上げながら、次の質問を口にした。


「ふーん。実現方法自体は考えたってわけだ。
 でも、それで食べてくってのは現実的なの?
 前にも言ったけど、教室の収入なんてたかが知れてるよ?」

「私がプロ雀士になった上で共同設立者になるよ。
 そうすれば収入面では問題ないし、
 麻雀教室自体の宣伝にもなる。
 ちなみに、もう内々定ももらってる」


憧の表情から笑みが消えた。
真剣さを伴った視線が私を貫いてくる。


「あんたがプロ雀士として失敗した場合は?
 まさか根拠もなく成功するなんて言わないわよね?」

「高鴨穏乃の妻って書いてあるだろ?
 数年頑張って雀士で成功できなかった場合は、
 大人しく諦めて和菓子屋を継ぐ。
 その時憧が私と結婚してれば
 『主婦が昔取った杵柄で麻雀教室』できるよね?」

「どう?憧が前に話したリスクは全部潰した。
 憧は私の計画に乗っかるだけで、安全に夢を叶えられる」

「乗っからない手はないんじゃない?」


視線と視線が交錯し、間で軽く火花が散った。
数分にも、数時間にも感じた長い沈黙。
実際には数秒だった静寂の後、憧は突然ぷっと噴き出す。


「あは、あっはははは!!!」

「ちょっ、なんで笑うんだよ!?
 私は真剣に大まじめだぞ!?」

「いやいや、頑張って考えたのは認めてあげるけどさ。
 大前提をすっ飛ばし過ぎでしょ」

「へ?」

「普通、これを書く前に言う事があるんじゃない?」


言いながら、憧はプリントの一か所をとんとんと指で小突く。
つつかれた先は『高鴨穏乃の妻』。うん、そりゃそうだ。
むしろツッコミ待ちだった。


「わかってるよ。というか、これ自体が私のプロポーズだ」


高校3年生で決める進路。
進学であれ就職であれ、それは人生を大きく左右する。
そこに介入するんだとしたら、
人生に責任を取るくらいの覚悟が必要だ。

憧が自分の道を自分で決めるタイプなのは知ってる。
他の人に流されない事も知ってる。
そして私が、いざという時に一歩踏み込めないタイプだった事も。

中学の時はそれで間違えた。
憧が自分で決めた事だから、そう考えて身を引いて。
挙句3年近くを棒に振って、寂しい人生を送ってしまった。


でも、私はもう逃げたりしない。


どんな責任を負ってでも、憧とずっと一緒に居たい。
憧を独り占めしたいんだ。


「だから、私と結婚してください!!」


憧の目が大きく見開かれる。
数秒の沈黙。永遠にも思えた沈黙の後、
ゆっくりと憧の口が開く。


「……ま、そこまで、決意してるならいいわ」


いつも通り勝気な笑みを作って、
でも目の端に涙を滲ませながら。
憧は絞り出すように声を震わせた。


「……わかった。今回の無茶も……付き合って、あげ、る」



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そしてそれから6年後。
私達は夫婦で麻雀教室を営んでいる。

もっともその内容は、私が考えたプランとはまるで異なる。
私が高校時代寝る間も惜しんで考えたプラン。
その詳細を憧に告げたら、
赤ペンでびっしり修正されて突き返された。


『しずが雀士になるのはいいとしてさ。
 プロ雀士なんて遠征ばっかりだから
 まともに定住できないじゃん
 結婚していきなり別居するわけ?』

『で、そんな移動してばっかりのあんたは
 どうやって麻雀教室に関わるの?
 時々イベントでも開いた時にふらっと顔出すだけ?
 それ別にしずじゃなくてもよくない?』

『失敗したら和菓子屋を継ぐってのも正直微妙だよね。
 全然本来の夢と関係ないし、
 そもそも和菓子屋が安泰って保証もないじゃん。
 思考停止してる感じがすごいわ』

『ていうかさ、そもそもあんたの目的は
 「私と一緒に居たい」じゃないの?
 その結果が遠距離恋愛とか、
 手段と目的が逆転してると思わない?』

『私を縛りたいんだったらもっとちゃんと縛りなさいよ。
 心も体も両方ずっと。やっぱしずは中途半端過ぎるわ』


実際に実践した憧プランはこんな感じだ。

まずは大学に進学し、その過程で教員免許を取得する。
その傍らで赤土先生がやっていた阿知賀こども麻雀クラブを復活させる。
しばらくはお試し期間のボランティアでサービスを提供しながら、
ボランティアの間に赤土先生から講師としてのノウハウを教授してもらう。

ノウハウと資格を手に入れて、大学卒業後からが本格始動。
さらに教員免許を利用して阿知賀女子の高校麻雀部の顧問も兼任し、
阿知賀の麻雀業界を小学校から高校まで全部掌握する。
これによって収入面でも問題が無くなり、
かつ二人の職場が離れる事もないまま一緒に麻雀ができる。

さらに使えるものは何でも使った。
阿知賀のレジェンドである赤土先生の人気はもちろん、
プロになった和を頻繁に誘致。
超デジタルな和の麻雀はオカルトじみた私よりも
よっぽど初心者にとっつきやすく、
宣伝の面でも学習の面でも麻雀教室に大きく貢献してくれた。

松実館ともタイアップして、
観光を含めた合宿プランなんかも展開したりして。
いまや『阿知賀こども麻雀クラブ』は、
地域の麻雀教室を超えた、
全国でも屈指の教室に変貌を遂げつつあった。


そんなわけで。結果として、
望んだ以上の結果を手に入れた私ではあったけれど。
その経緯には不甲斐なさを感じてしまう。


「あーあ。なーんか結局、憧が全部決めちゃったなぁ」

「そんな事ないって。リスクを取ってでも私の夢を叶える、
 その選択をしたのはしずなんだから」

「あの時と同じ。私はしずが選んだ道を、
 私のできる方法でサポートしただけ」

「そう言ってくれるのは嬉しいけどさぁ」


計算のできる憧。私よりずっと頭のいい憧。
そんな憧に捨てられたくなくて、私の道に引きずり込もうとした。
結果として二人寄り添ってはいるけれど、
目的を達成できたとは言い難い。

だって、今からでも憧が私を捨てようとすれば、
それは容易く実現できてしまうのだ。
憧は私が居なくても、一人で生きていけるのだから。

その事実が怖くて仕方ない。
なんて、そんな胸の内は流石に明かせないけれど。


周囲に沈黙が訪れて、憧が私の顔を覗き込む。
なんだか考えを見透かされたような気がして、
私は思わず顔をそむけた。
そんな私のしぐさを見て、
憧は少しだけ眉を下げて苦笑する。


「ごめん。ちょっと、やり過ぎちゃったかもね」

「へ?」


言葉の意図がよくわからなくて、
私は間の抜けた声を漏らす。
なおも憧は苦笑しながら、
そっと私の頬に両手を添えた。


「ま、わかんないならそれでもいいわ。
 とにかく、しずが今抱えてる不安は
 もう考える必要がないって事」

「しずが思ってる以上にずっと、
 私はしずの事が好きなんだから」

「……しずから、未来を奪っちゃう位には、ね」

「????どういう意味?」

「さぁてね。答えが知りたきゃ自分で考えなさいな」

「ま。別に答えがわからなくても。
 私がしずから離れていく事はないけどさ」

「……そっか」


依然として、憧の言っている事はよくわからない。
でも最後にそうしめられるなら、もう考える必要もなかった。

憧は頭がよくて計算が早い。それは私では届かない領域で、
考えを完全に把握する事はできないけれど。
でも、憧が私から離れていかないなら別にいいんだ。
だって、私はどっぷり憧に甘えていればいいんだから。


「ふふ。これからもずっと。
 計算のできないしずで居てね?」


両手を広げ、憧が私をすっぽりと包み込む。
私をがんじがらめに縛った憧は、蕩けるような声音で囁いた。


思う。私は私なりに計算したつもりだったけど、
憧にとってはまるで子供のお遊びだったんだろうかと。

思う。もし私が実際には計算なんてできてなくて、
憧の計算に乗っかっただけなのだとしたら。


(ねえ、一体どこからどこまでが、憧の計算だったわけ?)


私は言葉を飲み込んだ。
どうせ、聞いても答えてくれないだろうから。

ま。わからなくてもいいや。
だって今、こんなに幸せなんだから。


(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2018年02月10日 | Comment(17) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
憧穏ください!憧穏ください!憧穏ください!
Posted by at 2018年02月10日 22:43
憧が小学校で受験を目指しだした頃から穏乃との未来を描いてただろうけど、
本気で狙いだしたのは高校で再開した頃とか……?
あと、意外と憧も何も考えてなかったり……。
真相期待
Posted by at 2018年02月10日 23:15
これは真相に期待できる
真相期待!真相期待!真相期待!
Posted by at 2018年02月11日 02:06
久さん愛してるぜ〜
Posted by at 2018年02月11日 03:04
読み進めるうちに憧の手のひらの上で踊らされてるだけ?っていう感じでした!
憧Sideがすごい気になります!
Posted by at 2018年02月11日 08:45
アコチャーかわいい!!アコチャーかわいい!!アコチャーかわいい!!久さんかわいい!アコチャーかわいい!!!アコチャーかわいい!!!!
Posted by at 2018年02月11日 17:12
真相は読めたけどヤンデレのヤンの成分が足りないのでヤンパートくらさい(*´﹃`*)
Posted by at 2018年02月11日 22:54
穏憧きてた.........相変わらず素晴らしい。
いつも楽しく読ませて頂いております。

真相が気になることはもちろんだけど、何でナチュラルに憧のスリーサイズ知ってるのかの真相も気になりますねぇ
Posted by at 2018年02月12日 00:57
これは憧ちゃんsideも見ないといけない!
いい感じには病んでそうだなー
Posted by at 2018年02月12日 01:47
アコチャーかわいい!しずかわいい!
病みパートほしすぎる…
Posted by at 2018年02月12日 02:59
アコシズありがとうございます!真相希望!
Posted by at 2018年02月12日 10:47
正直しずも結構病んでると思う…
これで憧の方がずっと病んでるのなら相当ヤバイ……
読みたいですお願いします(土下座)
Posted by at 2018年02月12日 11:15
おのしずかわいい!続きを下さいお願いします
Posted by at 2018年02月13日 10:53
やっぱりあこしずは最高やで...
真相はもちろん知りたい見たいし単純に別視点でこのssを楽しむと言う贅沢を味わいたい
Posted by at 2018年02月13日 15:55
真相希望ですー
Posted by at 2018年02月14日 18:28
真相あるやつはタグで分けて欲しいなぁ
Posted by at 2018年02月19日 10:44
コメントありがとうございます!
真相希望系コメント以外はできるだけコメント。
真相希望コメもありがとうございます!

憧が小学校で受験を目指しだした頃から>
憧「……鋭い」
穏乃
 「それ出会ってからほぼずっとじゃん!」

憧の手のひらの上で踊らされてるだけ?>
穏乃
 「どこから計算だったか聞いたけど、
  普通に酷い話だった」
憧「こっちはこっちで必死だったのよ」

ヤンデレのヤンの成分が足りない>
穏乃
 「割と意図的です!私パートだと
  なんかほのぼのに見える、みたいな!」
憧「私視点で見るとしずも真っ黒なんだよね。
  ま、どんな黒さかは真相編で」

憧のスリーサイズ知ってるのか>
憧「そうよね!ここ重要よね!
  ツッコミ入ってよかった!」
穏乃
 「毎日抱き着いて測ってるからね!」

いい感じには病んでそう>
憧「まあ私は自覚有りだけど
  しずも無自覚に病んでるわ」
穏乃
 「二人して病んでるならいいじゃん」

正直しずも結構病んでると思う>
憧「だよねー。あ、私は
  しずの数倍病んでるわ!
  詳細は真相をどうぞ!」
穏乃
 「私が病むのも含めて憧の計算でした!」

単純に別視点でこのssを楽しむ>
穏乃
 「一粒で2度美味しい!」
憧「結構違った感じで見えるはずなので
  お楽しみください!」

久さん>
久さんかわいい!>
久「なんで私の名前が出てくるのよ」
咲「真相を求める時には久さん
  かわいいって言う。
  もう暗黙の了解ってことですよ」
Posted by ぷちどろっぷ@管理人 at 2018年02月24日 21:06
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