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【咲-Saki-SS:照菫】淡「チーム虎姫に加入したけどもう限界かもしれない」【あまあま】

<あらすじ>
なし。冒頭があらすじそのままです。


<登場人物>
宮永照,弘世菫,大星淡,渋谷尭深,亦野誠子

<症状>
・あまあま(重症)

<その他>
以下のリクエストに対する作品です。
・照菫で誘い受けの菫さん
・めちゃめちゃ甘々な濃厚照菫


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『いやだ、もう耐えらんない!
 私はこの事実を白日の下にさらすよ!』

『ばっ、やめろ大星!私達がどれだけ苦労して
 隠してきたと思ってるんだ!』

『…お願い、淡ちゃん……考え直して』

『知ったこっちゃないよ!ていうか
 二人はそれで平気なの!?
 後数か月、あの状態の二人と一緒だとかさ!』

『それ、はっ……!!』

『ほら!ぶっちゃけた方がいいんだよ!
 このままじゃチーム虎姫は崩壊する!』

『私は言うよ!みんなのアイドル、
 宮永照と弘世菫は――』



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『ヤンデレあまあまバカップルなんだって!!』




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関東有数のお嬢様学校である白糸台高校。
近年では珍しい寮制を継続しているこの高校は、
外界とは異なる性質を持っていた。

女性が女性に懸想する世界。
いやまあ、別に世間一般でも散見される姿ではあるけれど、
こと白糸台においては純度が違う。

『女性に恋するのが当たり前』
『男性と付き合いがある方が稀有』
『むしろ家族以外の男性と話した事なんてほとんどない』

こんな生徒が大多数。端的に言ってしまえば、
恋愛対象に関する感覚が
世間一般と完全にずれているのだ。

そんな白糸台高校だから、
当然恋愛対象は学生であり教師になる。
特にゴシップの中心になる存在と言えば、
現在全国二連覇中、飛ぶ鳥を落とす勢いの麻雀部。
もう少し筆を付け足すなら、宮永照と弘世菫の二人だった。

白糸台におけるスターの双璧。
その人気たるや、二人が通る道の両側に、
自発的に二人を崇めるための列ができるほどで。

その光景はもはや宗教。
二人は『宮永様』『弘世様』なる敬称で呼ばれ、
女神とでも言わんばかりの信仰を集めていた。


もっともそんな人気とは裏腹に、
二人に直接接触を試みる者はほとんど居ない。

あまりに神格化され過ぎた事、
そして元々宮永照が人付き合いを好まない
タイプの人間である事。
これらの理由から、遠巻きに見守るのが
なかば暗黙のルールとして決まっている。


下々の者が二人の寵愛を受けるためには、
まずは麻雀部に入部する事。そして、彼女達が所属するチーム
『虎姫』に勧誘される事が必須となる。

言うまでもなく狭き門だ。ゆえに、
『チーム虎姫』に所属するメンバーは、
『選ばれし者』として羨望の眼差しを
欲しいままにするのであった。



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そんな光栄なる虎姫に、
私、大星淡が加入してまだ二週間。
私は早くも限界に達しつつあった。



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ああ、虎姫の名誉のために断っておくと、
別にチーム内でいじめがあるだとか、
過度の練習に根を上げたとかいう話じゃない。

理由はひとつ。
今この場に居ない『例のお二人』の関係性だった。



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弘世菫誘い受け問題
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「どしたのテルー、菫先輩抜きで
 相談したい事があるって」

「ここ最近、私の頭を悩ませている問題がある。
 虎姫の知恵を貸して欲しい」

「そーゆー事ならまっかせといてよ!
 虎姫一の頭脳と私に呼ばれた大星淡が
 ズバッと解決しちゃうから!」

「……まあ、大星のアレは置いておいて。
 今度はどんな弘世先輩案件ですか?」

「最近気づいちゃったんだけど。
 もしかして菫って、誘い受けなんじゃないかなって」

「「「はぁ?」」」

「三人揃ってハモるのはやめて」

「…宮永先輩は、どうしてその
 面白見解にたどり着いたんですか?」

「ここのところ、私の部屋で菫と
 二人っきりで勉強してるんだけど。
 妙に菫が色っぽい」

「はぁ」

「『なあ照、この部屋暑くないか?』とか言って
 胸元パタパタしてみたり」

「妙に露出が高いホットパンツはいてたり。
 その恰好は淑女としてどうなのってツッコミしたら、
 『お前にしか見せないからいいんだよ』とか言い出すし」

「なんなのもう。正直誘ってるとしか思えない。
 何?食べられたいの?実は誘い受けお姫様なの?」

「ええと、それを聞いて私達はどうすればいいの」

「今まで私はてっきり菫が食べる側だと思って待ってた。
 でも、もしかしたら菫は食べられる側で、
 私の方から食べに行かなくちゃいけないのかなって」

「有識者の意見を聞かせて欲しい」

「いやそんないかがわしい知識持ってませんけど」

「まー知識がどうかは別として、
 どっちからでもいいから
 襲っちゃえばいいんじゃないかな」

「菫から襲ってくれるならそれがベスト。
 というかどう考えても普通菫からでしょ。
 私じゃ菫をお姫様抱っこできないんだし」

「もうやだこのテルめんどくさい」



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弘世菫甘やかし過ぎ問題
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「どしたの菫先輩、テル抜きで
 相談したい事があるって。
 またノロケだったら髪の毛でベチベチ叩くからね」

「失礼な。私がいつノロケたっていうんだ」

「割と四六時中」

「まるで身に覚えがないんだが」

「……自覚がないならもう結構です。
 おそらくは不治の病でしょうし。
 さっさと相談という名のノロケを吐き出してください」

「なあ尭深、なんかお前私に対する風当たり
 異常に強くないか?
 ああ、わかったからそう強くにらむな」

「早速本題に入るとしよう。
 問題は照の不調についてだ」

「ほら最近の照は苦しそうに顔を
 ゆがめる事が多いだろう?
 この前も私の顔を見てしかめっ面してたし」

「原因を突き止めて問題を解消してやりたいが、
 私には理由を教えてくれなくてな」

「体調面にも影響が出始めているし、
 早急に解決してやらなければ」

「……それが本当なら一大事だけどさー。
 二人はどう思う?」

「ええと、まずそれ以前に、
 顔をゆがめる宮永先輩を見た記憶がないんですが」

「……右に同じです」

「なっ!?お前達も一緒にいたじゃないか!
 ほら、昨日のおかしタイムの時だよ!
 思いっきり顔しかめてだろ?」

「あー、突然宮永先輩の事心配しだしたと思ったら、
 『普段と違い過ぎるんだよ』とか言ってたあれですか。
 私には全然違いが判りませんでしたけど」

「……右に同じです」

「なっ!?」

「あーまた出たよ菫魔鏡。あのね、菫先輩。
 普通の人はテルの表情なんて読み取れないんだよ?」

「なんでわからないんだ。もしかしてお前達、
 照の事が嫌いなのか?だから無意識に顔を見ないように」

「いや割とがっつり見てましたけど。
 ぜんっぜん顔変わってませんでしたよ?」

「ぐっ……表情の事が伝わってなかったのは理解した。
 だが、身体的な面でも顕著に表れていたじゃないか」

「……具体的には?」

「照が食べたおかしのカロリーだよ。
 いつもなら6000kcalは摂取するのに、
 あの日は4800kcalに留まった」

「何か心配事があって喉を通らなかったに違いない」

「むしろ今までよく生きてましたね宮永先輩。
 糖尿病が全力ダッシュでしがみついてくるレベルですよ」

「……なんで太らないんだろ」

「ていうかカロリーなんて計算してたの!?」

「そりゃするだろう。照はおやつ時に6000kcal
 摂取しないとふにゃふにゃになって
 可愛くなってしまうんだ」

「ごめん、何言ってるかよくわかんなかったから
 うん、別にもう一回言わなくてもいいや」

「お菓子の量が足りないと私の服をくいくい引っ張ってきてな、
 『足りない、もっと頂戴』とか上目遣いで訴えて来るんだ」

「言わなくていいって言ったじゃん!」

「あんな様子を他の部員に見られたら
 虎姫の威厳台無しだ。あまりの可愛さに部員が昏倒したり
 宮永照ファンクラブなんてものが設立されかねない」

「……自分はファンクラブあるくせに」

「私のはミーハーなファンが多いだろう。
 照のファンクラブとなると、なんかこう、
 本気っぽいじゃないか」

「カロリーが足りなかった事を心配する以前に、
 減量する方向にはもっていかないんですか?
 普通に健康を損なうレベルだと思いますけど」

「できればそうしたいんだが、げっ歯類のように
 モックモックしてる様を見せられるとどうもな……」

「って減量の話は今いいんだよ。
 問題は照の元気がない事なんだ。
 どうしたらいいと思う?」


(これって多分、例の誘い受けのアレで
 耐えてただけなんだろうなあ)

(自分が食べられそうになってた事には
 絶対気づいてないよね)

(流石に食べられたら解決、とは言いにくいなぁ)


「……宮永先輩にぺろりと食べられてください。
 あ、もちろん性的な意味で。それで事件は解決です」


「「言った!?」」



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宮永・弘世付き合ってない問題
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「せ、性的な意味って。そもそも私達は
 そういう関係じゃないんだが」

「えぇ!?でもこの前ほっぺ舐め回されてたよね!?」

「……あれで付き合ってないとしたら
 逆にドン引きなんですが」

「何でもかんでもいかがわしい目で見るな。
 あれは私の口元にソースがついてたのを見て
 照が舐め取ってくれただけだ」

「……例えばさ、仮に私が口にソース付けてたら、
 菫先輩同じ事できる?」

「できるわけないだろう気持ち悪い」

「そこまで言う事ある!?」

「……よしよし、淡ちゃんは悪くないよ。
 でもこれで、宮永先輩の行動が
 普通じゃない事はわかりましたよね?」

「いやでもあいつの感覚も独特だからな……。
 ほら、あいつなんか猫っぽくないか?
 恋愛感情がなくても
 毛づくろい感覚でやってきそうじゃないか」

「……猫の毛づくろいはストレートな愛情表現なんですが」

「ていうかお二人って最近
 毎日二人っきりで勉強されてますよね?」

「ああ。照と同じ大学に行きたいからな。
 照も同じ気持ちらしいし」

「それって遠回しな告白じゃないですか?」

「同じ大学を志願したら両想い、
 なんてのは飛躍し過ぎだろう。
 たまたま志望校が被っただけかもしれないじゃないか」

(そんなわけないじゃんヘタレ)

(二人してプロ蹴ってまで進学するだもんなぁ。
 これは流石にヘタレ認定だよなぁ)

「……ヘタレですね」

「「言った!?」」



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とまぁ、万事がこんな感じなのである。
ノロケにつぐノロケ、それでいて
付き合ってないという意味不明な供述。

毎日のように両者から個別に相談されて、
いい加減堪忍袋の緒が切れた。

虎姫内はもちろん、部全体に
相談内容を共有してしまおうと訴える私に対し、
先輩二人は難色を示す。


「どうして二人は邪魔するの?
 損する事なんて何もないでしょ」


二人が両想いになってしまえば、
わけのわからない相談も減るはずだ。
二人の仲が部内に広まって犠牲……
もとい聞き手が増えれば、
私達が対応する時間も削減できる。

いいことづくめだと思うのだけど、
何がそんなに気になるのだろう。


「あ、もしかして二人のうちどっちかが好きだとか?」
 それとも、『自分達で気づくべき』とかそういうアレ?」

「いや、そういうのはないんだけどさ……ただ」

「ただ?」

「……今のタイミングでバラしちゃうと」

「バラしちゃうと?」


「「先輩の不順同性交友で出場停止になりそうで怖い」」


「……」
「……」
「……」

「インターハイ終わってからにしよっか」

「「異議なし」」


満場一致で可決。かくして暴露の決行日は、
二人が麻雀部を引退する日と定められた。
その頃にはチームも再編されるだろうし、
何より自由登校日も目前だ。

後は二人でいくらでもイチャつきまくってもらおう。
私達の知らないところで。



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全てが終わった今ならわかる。
どうせ暴露するのなら、
むしろこの時が最善だったのだと。

問題の先延ばし。それがとんでもない失策である事に、
その時の私達は気づくことができなかった。



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「と、言うわけで。テルー、菫先輩、
 今までお疲れ様でした!」

「二人の引退に伴って我らが虎姫も再編……って事で、
 今まで言えなかったあれやこれやを
 ぶちまけちゃおうと思います!」

「まず初めに。毎日個別に相談受けてたけど、
 テルも菫もお互いの事好き過ぎで
 砂吐きそうでした!」

「さっさと告白してくっつけばいいのに、なぜか私達にだけ
 『菫は誘い受けなんじゃないかな』とか
 『この前口元についたソースを舐められた時
  舌が唇に当たったんだが
  これってもしかしてファーストキスなのか?』
 とか報告してきて、
 何度も髪の毛でベチベチしたくなりました!」

「後テルーは菫先輩が仮眠してる時に
 ちょっと寝がえり打っただけで
 『これ、本当は起きてるよね?私の事誘ってるよね?』
 とか聞いてくるのやめて!」

「菫先輩はインハイ中に一人だけ髪の毛嗅がれなかったからって
 私と同じシャンプーにしてこないで!
 あれのせいで
 『菫から淡のにおいがしてなんか悔しい』
 とか言って3回もギギギされたんだからね!」

「あの時菫先輩だけ匂い嗅がれなかったのも、
 『菫のにおい嗅いじゃうと我慢できなくなるから』
 ってもうどうしようもないアレだったんだから!」

「と、言うわけで!ぶっちゃけビョーキレベルで両想いなんで、
 いい加減くっついちゃってください!」



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3年生の引退日。私が全てをぶちまけた結果、
晴れてテルと菫先輩は付き合う事になった。

そして、私達は自分達の過ちに気づく。
端的に言ってしまえば、
二人の愛情を甘く見積もり過ぎていたのだ。

部長とエース、お互いに責任のある立場。
前人未到の三連覇が掛かったプレッシャー。
ファンクラブ会員を筆頭にした衆目への配慮。

様々な重圧が二人の想いに蓋をしていた。
それらの全てが霧散して、身軽になった瞬間
白日のもとに晒された驚愕の真実。

二人が愛に溺れるのは必然で、
ブレーキが壊れるのも必然で。
そうなるとどうなるかと言うと――



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『宮永照と弘世菫熱愛発覚!
 インターハイが終わり肩の荷が下りて油断した?
 校内で抱き合う姿をファンが目撃!』

『宮永照と弘世菫、まさかの大学向け
 フリーエージェント宣言。
 二人一緒に特待推薦をくれる大学を募集』

『弘世菫は誘い受け?先日熱烈恋愛を発表した宮永照、
 意外に可愛いシャープシューターの秘密を激白』

『白糸台の両名が募集大学に条件を追加。
 二人の交際を許容する旨を文面に追加する事を希望』

『牌のお姉さん動く?今話題の白糸台カップルを
 史上初の百合アイドルとしてプロデュースしたらどうかと提言』



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二人の暴走はある種社会現象にまで発展した。

二人の関係はあっという間に全国に知れ渡り、
もはや隠すものなど何もない二人は
どこまでもそのバカップル道を邁進していく。

二人に触発されたのか。千里山でも
似たようなバカップルが発見されたのを皮切りに、
全国で百合バカップルブームが花開く。

当然校内は騒然となった。弘世菫ファンクラブは解体、
改めて『弘世宮永を見守る会』が発足。

詳しい事情を知ろうと大量の生徒が元虎姫の元に殺到した。
そう、結局私達が平穏を得る事はなく、
今まで以上に二人に翻弄される結果になったのだ。



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『大星さん。この前宮永さんが雑誌で告白していた、
 弘世様誘い受け発言なのだけれど。
 貴女が知っている事があれば教えてくれない?』

『えぇー、そんなの本人に聞いてくださいよー』

『そうしたいのはやまやまなのだけれど。
 お二人は今引退記念旅行で逃亡……もといお休み中だから』

『二人の秘密を公表したのは貴女だし、
 個別に相談も受けてたのよね?
 むしろ二人以上に色々知ってるはずよね?
 とりあえず、このページの
 《菫は匂いで私を誘惑しようとする》について
 詳しく教えて欲しいのだけれど』

『語るほどの事じゃないですよー。
 テルがにおいフェチなのと
 菫先輩の事好き過ぎたのが高じて、
 菫先輩のシャンプーの香りに
 発情したってだけですし』

『じゃあこっちの《菫は日常的に誘ってくる》というのは?』

『菫先輩が足組んでただけですってばー。
 私からしたら事あるごとに菫先輩のにおい嗅いだり
 口元ペロペロしてるテルの方が
 誘ってると言うか襲ってると思うけど』

『ペロペロについて詳しく』

『ああもう、きりがないから勘弁して!!!』



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ひっきりなしにやってくる生徒達。
その対応に辟易して、私はテーブルに突っ伏した。


「あー今日も疲れたーーっ。
 ていうかなんでみんな私に聞いてくるの?
 二人が帰ってきてから直接聞けばいいじゃん」

「あーあ、思ってた結果と違うなぁ。
 まあでも、あの二人を
 相手してるよりはましなのかなぁ」


そう、なんだかんだバカップルが居ないだけまし。
その点では当初の目論見は達成できたじゃないか。
そう自分に言い聞かせる私。
でも、そんな私を無情にも嘲笑う存在が。


『ピロンッ♪』


そう、これだ。通知を告げる携帯電話。


「あーもう、誰……って、またテルじゃん」


学校の組織的に解散したとはいえ、
培ってきた絆はいろんな形で残る。
そう、例えばこの『虎姫グループLINE』とか。

嫌な予感がしたものの、とはいえ放置する気にもなれず、
私はアプリの画面を開く。
そこには『おすそわけ』の5文字と共に、
妙にトロピカルなジュースの写真が。
当然のようにストローは2本突き刺さっていた。


「たかがジュースの写真だけで
 胸やけさせるとは、流石だねテルー……」


ピロン。さらに新しいメッセージが届く。
今度は二人寄り添ってストローを咥える二人の姿。

ピロン。通知はなおもさえずり続ける。
ちょっとジュースをこぼした菫先輩の口元に
顔を寄せるテルの姿。

ピロン、ピロン、ピロン、ピロンッ♪。


「ああもう!なんでわざわざ
 バカップル実況中継してくるの!?」


ピロン、ピロン、ピロン、ピロンッ♪
ピロン、ピロン、ピロン、ピロンッ♪
ピロン、ピロン、ピロン、ピロンッ♪


「どうしよう。チーム虎姫は解体したけど、
 私はもう限界かもしれない」

鳴り響く携帯の電源ボタンを長押しすると、
私はつらい現実から逃亡すべく
亦野先輩の部屋に歩き始めた。



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「気持ちは痛い位にわかるけど。
 それで私のところに来ても現実逃避はできないぞ?
 こっちも携帯鳴り響いてるし」

「ケータイなんて電源切ればいいじゃん。
 積もり積もるストレスを亦野先輩で解消したい!」

「なんで!?」

「……わかる。私達のこの苦しみを受け止められるのは
 (物理的に)誠子ちゃんだけ」

「私だって釣りが趣味なだけの
 ごく一般的な女子高生なんだけど!?」

「青々と茂る芝生の女子高生が
 屈強じゃないはずはない!髪の毛ベチベチを喰らえ!」

「理不尽っ!!!」


ひとしきり亦野先輩を打ち据えて満足すると、
タカミが出してくれたお茶をすする。
三人でほう、と息をつく中。
不意に思いがポツリとこぼれた。


「ていうかさ、どうしてLINEしてくるんだろうね。
 やっと想いが成就したんだから
 二人っきりでイチャイチャしてればいいじゃん」

「幸せな自分達を見せつけたいとか?」

「うーん、ありがちな発想だけど。
 あのテルと菫先輩に限ってそんな事あるかなぁ」


確かに二人はヤンデレで、お互いの事になると
ちょっとポンコツになっちゃうけど。
それでも、基本的には尊敬できる人達だ。
そんな嫌がらせ目的で
爆撃してくるとは思えないんだけど。


「……感謝の気持ち、なんだと思う」

「感謝?」

「……うん。前にちょっとだけ聞いたんだ。
 お二人とも普段からクールだから
 あんまりそんな風には見えなかったけど、
 本当に、本当に色々苦しんでたんだって」

「……特に弘世先輩は名家の家系って事もあって、
 すごく悩んでたみたい。
 女同士の恋愛なんて許されるのか、とか。
 仮にも部を統べる部長が一人に傾倒していいのか、とか」

「……そんな時に、淡ちゃんが全部ぶちまけて、
 いろんな垣根を取っ払ってくれて。
 涙が出るくらい嬉しかったって」

「……だから。これは、
 『おかげで幸せになれました』っていう、
 感謝の表れなんじゃないかな」


そこでタカミは言葉を区切ると、ずっと湯呑みを傾ける。
広がる沈黙。私は二人の顔を覗き見る。
困ったような、呆れたような。でも、二人とも笑顔だった。


「……ずっこいなぁ。そんな事言われちゃったら
 許したくなっちゃうじゃん」

「まあでも実際2年6カ月越しの恋だもんな。
 いくら両想いっぽかったと言っても、
 本人同士ではわからないって事もあっただろうし。
 正直、そんな長い時間片想いとか想像もできないよ」

「……そうだね」


二人の顔を思い浮かべる。

正直幼い私では、片想いの気持ちどころか、
恋すらよくわからない。

けどいつか、私もあの二人みたいに悩んだりするんだろうか。
そしてうっかり結ばれちゃったりしたら、
二人みたいに、皆にメッセージを送りまくったりするのだろうか。

今はわからないけれど。二人のメッセージを読み続けてたら、
いつかわかる日が来るのかもしれない。

そう思ったら、今は沈黙を守る携帯の電源を
入れてやろうかなって気になった。



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……数か月後。




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「どしたの菫先輩、わざわざ学校まで来て、
 テル抜きで相談したい事があるって。
 言っとくけどまたノロケだったら
 髪の毛ベチベチベチベチするからね」

「深刻な悩みなんだ。
 ぜひ一緒になって対策を考えて欲しい」

「……ふーん。まあ聞くだけは聞いてあげるよ」

「恩に着る。実は照の事なんだが、
 最近あいつの事が好き過ぎてな。
 学業がままならないんだ」

「具体的には一晩中朝まで愛し合ってしまって、
 大学に行く体力が残らない」

「……」

「……どうしよう。尊敬する先輩の相談がアレすぎて、
 私はもう限界かもしれない」


(おしまい!)
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posted by ぷちどろっぷ at 2018年06月14日 | Comment(5) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
淡までもが照菫側に堕ちそう……。
淡、南無……。
Posted by at 2018年06月14日 20:42
めちゃめちゃあまあまで読んでて幸せでした!ありがとうございます!
Posted by at 2018年06月14日 21:46
髪の毛でベチベチ…
Posted by at 2018年06月14日 22:55
めちゃくちゃ面白かったしめちゃくちゃ可愛かったです!
照菫ちゃん濃厚なノロケしんど……最高すぎますね!
大星淡ちゃんにも恋をしてほしい……!
Posted by at 2018年06月15日 11:41
限界とか言いつつ結局尊敬する先輩のために相談にのるあわあわ
やっぱなんだかんだでコイツ弘世様が好きなんすねぇ〜
Posted by at 2018年06月18日 19:15
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