現在リクエスト消化中です。リクエスト状況はこちら。
欲しいものリスト公開中です。
(amazonで気軽に支援できます。ブログ継続の原動力となりますのでよろしければ。
『リスト作成の経緯はこちら』)

【咲-Saki-SS:久咲】久「死んでみる?本の中の二人みたいに」【ヤンデレ】【狂気】【いただきものイラスト付き】

<あらすじ>
本の虫仲間である宮永咲と竹井久が、
お互いに本の貸し借りをしながら
交流を深めていく心温まる物語です。

<登場人物>
宮永咲,竹井久

<症状>
・狂気
・依存
・ヤンデレ

<その他>
おらんだ15さん(@31001522)からいただいた久咲イラストに
ミニSSをくっつけました。
(ご本人から許可いただき済み)
おらんださん、すばらなイラストをありがとうございます!



--------------------------------------------------------



本の虫仲間ができた。相手は麻雀部の部長で、
学生議会長でもある竹井久さん。

本の趣味が合うのだろう。
彼女が誇る本棚は、私の心を鷲掴んだ。
彼女の本を借りるため、
好きでもない麻雀を再度始めるくらいには。
無論、それだけが理由ではないのだけれど。

「ここにあるのが全てじゃないわよー?
 とっておきの本は家に隠してあるの」

秘蔵。間違いなく垂涎の品だろう。
私が興味を持つのも至極自然な事だった。



放課後、教室に呼び出された。

三年生の教室は居心地が悪い。
おどおどと周囲を伺う私の前で、
部長がぽん、と自分のカバンを叩いて見せた。

「持ってきたわよー」
「あっ…ありがとうございます!」

例の秘蔵本だろう。確かに借りる約束をしていた。
喜び勇んで受け取ろうとする私。

「あー、でもその前に……」

でも、部長はすぐに渡そうとはせず。
なぜか窓際に近寄ると、開いていた窓を閉めて。
カーテンの裏に隠れてしまった。

「……?」
「咲、こっちこっち」

その行為の意味がわからず、でも誘われるがまま近づくと。
部長は私の手を引いて、カーテンの裏に閉じ込めた。

「ぶ、部長?」
「大っぴらに渡したくないの」

なんて片目を閉じて微笑むと、
部長はカバンから本を取り出す。

「そ、そんないかがわしい本なんですか?」
「そういうわけでもないんだけどねー」

僅かに頬を赤らめながら、部長は眉を下げて笑う。

「読んでる本を見られるのって恥ずかしくない?
 心の中を覗き見られてるみたいでさ」
「それが、大好きな本ならなおさら」

理解できない感覚だった。でも、素敵な感性だなとは思う。
同時にある事実に気づき、胸の鼓動が高鳴った。

つまり、私は部長の心に触れる事を許されたのだ。

「わかりました。返す時もこっそりしますね」
「お願い」

渡された本を抱き締める。誰にも見られないように。
そして私達は微笑むと、元居た世界に戻っていった。



部長が貸してくれる本。その結末は大半が悲劇。
心を揺さぶり、切り裂いて。
涙を絞り出すような本ばかりだった。

「部長。借りた本持ってきました」
「そ。じゃ、あっち行きましょ?」

返す時も同じ儀式が必要となる。
部長は私をカーテンの裏に閉じ込めた。

「ありがとうございました」
「はいどうも。……で、どうだった?」

脆弱なカーテンが、外界から私達を隔離する中。
部長が囁きかけてくる。
奇妙な錯覚に陥った。まるで、部長と私でただ二人、
世界を共有しているような。

「えと、そうですね……泣きました」
「そっか。私も泣いたわ。
 報われない悲劇って好きじゃないのよね」
「わかります。でも、感動しました」
「うん。私も」

否、それは錯覚ではないのだろう。
今この瞬間、本を通して。私達だけが通じ合っている。

「どうする?次の本も貸して欲しい?」
「……はい」

まるで誘惑するような囁きに、
不思議と呼吸が浅くなる。
なぜか悪い事をしているような背徳感。

脳が警鐘を鳴らしていた。どうして?
ただ本を借りるだけなのに。
自問の答えを見つけられない私は、
次の約束を取り付ける。

「そっか。じゃ、次はちょっと攻めた奴を持ってくるわね」
「もうちょっとだけ『重たい』話を」

部長は舌を見せて笑う。その笑顔があまりに蠱惑的で、
背筋を怖気が駆け抜けた。



部長と貸し借りを繰り返す。
私も部長に本を貸すようになり、
カーテンに隠れる機会は増えていった。

今なら部長の心情を理解できる。
本当だ。大切な本を大切な人にお薦めする、
それは想いを告白するに等しい。

「これが咲一番のお気に入り?」
「え、えと。小手調べです。
 一番を教えるのはまだ怖いって言うか」
「ふふ。まるで私みたいな事言うのね」

「やっぱり、私達って似てるわ」

くすくすと、声を押し殺しながら部長が笑う。
また少し、部長の心に触れた気がした。



そんなやり取りを繰り返すうち。
いつしか部長は、本の貸し借り以外でも、
私をカーテンの奥に誘うようになった。

吹けば飛ぶような弱いカーテン。
でも真っ白なその布は、世界から私達を覆い隠す。
白い秘密空間で、私達は言葉を重ねた。

「ねえ咲。貴女って、もしかして親が離婚してる?」
「……っ、い、え。まだ、してません」
「まだ、ね」
「その。どうしてそう思ったんですか?」
「私はね、両親が離婚してるんだけど」
「……っ」
「貴女から同じ匂いがしたのよね」
「そう、ですか」

言葉にはしない。でも、私も同じ事を思っていた。
部長からは孤独の匂いがすると。
血を分けた家族との訣別。隠し切れない危うさが、
部長から滲み出している。

気づくのは、同じ匂いを纏う者だけ。

「ま。だったらどう、ってわけじゃないんだけどね」
「ううん、わかります。確認したくなるの」
「……そっか。わかっちゃうか」
「はい」

部長はぽそりと呟いた後、そっと私を抱き締める。
そのぬくもりが温か過ぎて。
私はつい、腕を背中に回してしまった。



部長との距離が縮まっていく。
同時に、他人に言えない秘密が増えていった。

今でも本は借りている。
部長が笑顔で薦めてくる本。
その内容は、どんどん重苦しく
歪なものへと変わっていった。
さながら、部長の内面に沈み込んでいくように。

読破した本が増える度に、
纏わりつく闇が深くなっていく。
気のせいではないと思った。

「……」

今日借りた本を見る。表紙も裏も真っ黒で、
タイトルすら書かれていない本。
直感で理解した。これが部長の最奥なのだと。
震える指でページをめくる。

世界が終わりを迎える話。
二人の少女が、自ら終止符を打つ話だった。

肌で感じ取る、これは禁書だ。
読む者の精神に異常をきたしかねない。
こんな本を持っていて、
あまつさえ人に貸し与えるなんて。
正気の沙汰とは思えなかった。

だがどうしてだろう、本から視線が離せない。

結末は酷くシンプルだった。
互いにナイフを突き刺す少女。
飛び散る鮮血、真っ赤な血を
ぐちゅぐちゅと混ぜ合って、
二人は抱き合い、そして笑う。

『これで私達は一つになれる』
『私達だけの世界で』

二人はそう囁き合って、
口づけを交わして事切れた。

漆黒の本を閉じ、ほぅ、と小さくため息を一つ。
吐いた息は自分でも驚く程熱かった。

「……」

結局、冒頭から末尾まで余す事無く狂っていた。
本から滲み出る狂気、それを受容する事は許されない。
唾棄すべき、理性がそう訴える中、
心の奥底で思ってしまった。

『羨ましい』だなんて。

誰より愛する人と二人、互いに命を捧げ合う。
非の打ち所がないハッピーエンドだ。
羨ましくて、憎しみすらこみあげてくる程に。

問いただしたいと思った。
どうして部長は、この本を私に読ませたのだろう。



カーテンが必要だった。
それ程にこの本の闇は深く、何より私を傷つけたから。
こんな醜く歪んだ顔、部長以外に見られたくない。

oranda_san_hisasaki_book.jpg

「面白かった?」部長は私に問い掛ける。
「いいえ」私は仏頂面で返す。

偽りのない本音だった。この本は重過ぎる。
あまりに共感でき過ぎて、なのに結末は幸せ過ぎる。

部長は笑った。私の感想を聞いて笑った。

「やっぱりね」

そう呟いて、にたりと口角を釣り上げた。

「私もそう思ったの」

顔を近づけ、耳元でそう囁いて。
さらに言葉を流し込む。私にだけ聞こえる声で。

「――――――――――――――――」
「っ!?」

部長が私を抱き寄せる。全身を支配した感情は恐怖。

気づけば窓は開いていた。奥歯がカタカタ音を鳴らす。
刹那、カーテンが風ではためいて、
外界が僅かに顔を覗かせた。今ならまだ逃げられる。

でも、私は動けなかった。

それで手遅れ。カーテンは再び閉じられて、
私達を閉じ込めた。もう逃げられない。

部長の腕の中で縮こまる。
唇が近づいて、初めてを奪われた。
同時に思考も食い取られる。
逃げようとする意志すらも。

「んっ……んんっ…はぁっ」

何度となくついばまれ、
お互いの唾液で舌がどろどろに蕩けた頃。
透き通る糸の橋を架けながら、
部長はにっこり微笑んだ。

「ふふ、冗談よ、冗談」
「今は、まだ」

戦慄が駆け抜けた。全身から力が抜ける。
もはや自重を支えきれず、私は部長に寄りかかった。
怖い。なのに、部長の体はどこまでも温かくて。
ぞわぞわと体を這い上がってくる余韻は、
甘い恍惚すら伴っていた。

ああ、駄目だ。もう逃げられない。
どんどんこの人に囚われていく。

これから私達はどうなるのだろう。
天を仰いで何かに祈った。
せめてこの物語が『ハッピーエンド』で終わらん事を。


(完)
 Yahoo!ブックマーク
posted by ぷちどろっぷ at 2018年10月13日 | Comment(5) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
ひ…ひさ、久咲だぁ…
Posted by at 2018年10月14日 01:17
よすぎやろ

久さんかわいい
Posted by at 2018年10月14日 03:14
やっぱり久咲なんだよなぁ…
Posted by at 2018年10月14日 10:08
咲ちゃんかわいい!
Posted by at 2018年10月15日 00:57
すごい…やはりじわじわ溶けるような久咲は最高だ
Posted by at 2018年10月19日 01:22
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/184675262
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
 なんかブログランキング参加してみました。
 押してもらえると喜びます(一日一回まで)。