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【オリジナル百合SS】 「コネクト」−前編−【共依存】

<あらすじ>
(大人はみんな死んだから)学生が地方自治している世界。
生徒会に属する『ユニ』は、ある日危険な任務を任される。

かつてこの地方を壊滅に追い込んだ危険生物が
近々永い冬眠から覚める事が判明、
『封印もしくは討伐』する必要が出てきたのだ。

一人ではまず達成困難な任務、ユニは仲間を募る事にした。
生徒会長の話では、二人の『異能者』が近くにいるらしい。
でも気を付ける必要がある。
異能者はみな、精神を病んでいるから。
『取り込まれないように』しなければ――。


<症状>
・共依存
・狂気
・境界欠落
・記憶障害

<その他>
・管理人が夢で見たシリーズ。
 元々が夢なので、あまり深く考えず
 雰囲気を楽しんでいただければ。
 ……なのですが、今回の夢はめんどくさかったかも。



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 ほんの数年前の事だ。
突如として飛来した地球外生物に襲撃されて、
人類は滅亡の危機に瀕した。

 世界はほんの一瞬で姿を変えた。
それ以来、人類は『狩られる側』へと回る。
恐怖、そして飢えや貧困と戦う日々を余儀なくされた。

 これはそんな歪な世界で、
一人の少女が人類のために必死で戦い、心を挫く物語だ。



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 今日も世界はすすけている。
半ば崩壊しかけた学校の生徒会室で、
ボクは『会長』から新しい任務を拝受していた。


「というわけで『ユニ』、
 貴女に例のS級危険生物の無害化を命じます。
 現地民と協力の上、速やかに脅威を排除してください」

「了解」


 獲物はかつて、この地方を
壊滅寸前に追い込んだ危険生物の一匹で、
近々永い冬眠から覚める事が判明した。
『封印もしくは討伐』する必要があるが、
死ぬ可能性が高い危険な任務。その白羽の矢がボクに立ったのだ。

 どうして子供がそんな任務を? 理由は単純で残酷だ、
ほとんどの大人は死んでいるからだ。
残存する大人は最年長でも30歳ってところだろう。
だから、ボク達子供が世界を護らざるを得ない。

 子供達が団結する上で『学校』という枠組みは都合がよかった。
ゆえにこの世界では、学校単位で地方自治が行われている。


「こちらの調べでは、LV−47地区に
 『縛り』を持つ少女が一人、
 『能力ブースト』を持つ少女が一人いるはずよ。
 彼女達と『繋がって』封印するのが最善手だと思うわ」

「……戦って倒しちゃ駄目なのかい?」

「『戦える』と思っているなら認識を改めなさい。
 相手はこの地区を丸ごと滅ぼそうとした化け物よ?
 今まで貴女が倒してきたB級とはわけが違う」

「『コネクタ』は使いたくないんだ。精神が汚染されるから」

「現地民の感情を受け止めるのも生徒会の仕事よ」

 ため息を吐いて肩をすくめる。
言っても無駄なのだろう。『生徒会』のメンバーは、
どいつもこいつも狂っている。

 まあ、だからこそ『生徒会』なんか
やっているのだろうけれど――。



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 数年前、『奴ら』は突然現れた。
重火器も効かない奴らを前に、人々は対抗する手段を持たず。
あわや人類滅亡かと思われたものの、
だが人間は生き残った。

 不思議な事が起きたのだ。
人々が次々に塵芥ちりあくたと化してゆく中、
不思議な力を発現する者が現れた。
まさに『魔法』としか呼べない力を操る者が。

 異能を持つその人々は、その力でもって人外を『封印』した。
おかげで今も人類は生き延びている。
でも。地球外生物に対しての切り札となるその異能は、
非常に儚くて扱いづらい代物だった。


(『縛り』に『能力ブースト』かぁ。
 ……ホント、なんで単体で使えないんだろうね)


 例えば先に出てきた『縛り』。これは対象を物理的に捕縛し、
生命活動を停止させる力を持つ。
だがその力はあまりに弱く、単体では小動物にしか効果がない。
とても数メートルに達する地球外生物に
使える能力ではなかった。

 この力を戦闘で活用するには、『能力ブースト』が必要となる。
つまり『縛り』を『ブースト』して強化するのだ。
そんな事ができるのか? 残念ながら普通はできない。
そこで、ボク達『生徒会』の出番というわけだ。


(『コネクタ』かぁ。使いたくないなぁ)


 『生徒会』のメンバーは全員、『コネクタ』と呼ばれる装置を
両の手首に埋め込まれている。
『コネクタ』には、装置を付けた人間を媒介として、
複数の能力を繋げる効果があった。

 この装置を発明したのは、かつては存在していた科学者達。
異能の発現条件を解析して、全人類に適用しようとしたらしい。
試みは志半ばで敗れる。みんな死んでしまったから。
唯一遺された副産物がこの『コネクタ』だったという事だ。
……これがまた、とんでもない欠陥装置なのだけれど。


(まぁでも、やらなきゃ駄目か。ボクの存在意義がなくなる)


 両手首に埋め込まれた『コネクタ』をそっと撫でる。
決意に唇を噛み締めると、ボクは前を向いて歩き出した。



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 LV−47地区。会長に教えられた座標に向かう。
廃墟となった小学校に、小さな子供達がうずくまっていた。
目を背けたくなる光景だ。だが、それをする意味はない。
この地区は、これが普通なのだから。

 『LV』は『Low Value』の略。
つまり『価値が低い』地区という事だ。
低評価の理由は単純、『冬眠中の地球外生物が潜伏している』、
これに尽きる。

 当然ながら、LV地区からは人が逃げる。
残されるのは状況を理解できない幼子ばかりだ。
どうして彼らを連れて逃げなかったのか?
それもまたシンプルな理由だった。
全員が全員他の地区に避難されても、今度は逃げた先が回らなくなる。
つまりここは『ゴミ捨て場』。彼女達は『ゴミ』だった。


「おねーちゃん、おねーちゃん。たべもの持ってない?」


 道すがら、何人もの子供達に声を掛けられる。
どいつもこいつも物乞いだ。ボクは餌を与える代わりに、
用意してきた数枚のプリントを渡す。


「全員分の食べ物は持っていないんだ。
 だから、自分達で『作り方』を覚えて」

「あたし、もじ読めない」

「読める子と一緒に読んで。
 どのみちみんなでやらなきゃできない」

「おねーちゃんがおしえて?」

「ごめん、ボクは別の仕事があるから」

「おしごと?」

「そう。ここにいるみんなを護るお仕事だ。
 その仕事で最悪死ぬから、ボクに頼り切っちゃいけない」

「そっかー、わかった」


 ボクが『当てにならない』と悟ったのだろう。
少女はあっさり去っていく。逞しい、残酷とも言うべきか。
まあ泣いてすがられるよりは随分ましだ。

 廃墟を歩く。会長の調べによると、
『異能持ち』は手首にあざがあるらしい。
道行く子供の腕を凝視しながら、時には声を掛けつつ探す。


「ねえねえ、おねえさん、ご飯持ってない?」

「悪いけど、君にあげられるほど持っていない。
 でも、ボクの任務が成功したらご飯も手に入れやすくなるよ。
 だから協力してくれないかな」

「任務って何?」

「人を探して、ここに巣食っている化け物を倒す事だよ。
 まあ、とりあえずは人探しだ」

「どんな人?」

「手首に痣のある子を知らないかな」

「あー……」

「知っているの?」


「知ってるけどー……その人もう死んじゃうかも」


 眉をひそめる。想定の範囲内、でも最悪のパターンだ。
慌てて少女を質問攻めにし、ボクは廊下をひた走る。


『「かなめ」って人に痣があったよ。ここでは結構おねーさん。
 でも今にも死にそうで、生きる気もないって感じだった。
 自分かられーあんしつに歩いてったし』


 LV地区ではよくある事だ。
心身を病んで早逝そうせいする、むしろ『王道パターン』とも言える。
劣悪な衛生環境、手に入らない食事、まるで希望の見えない毎日。
『生きろ』という方が酷だろう。


(でも、今回は生きてもらわないと困るんだ!)


 彼女の死がこの地区全体の死に直結する。
何として繋ぎ止めなければ、最悪『ボクの命に代えても』。
駆ける、駆ける、駆ける、駆ける。
行きつく先は『霊安室』。つまり、彼女はもう『死人』扱いだった。


「かなめ! まだ生きているかい!?
 生きているなら返事をしてくれ!」


 部屋に辿り着くや否や声を張り上げる。
返事はなかった。視界に映るは数多の死体、思わず舌打ちしてしまう。
くそ、これじゃ探すだけでも一苦労だ!

 死んで担ぎ込まれたわけじゃない。
なら、その辺に転がってはいるはずだ。
近場の人体、手を取っては確認する。
ほとんどが腐り落ちていた。


「くそっ……もしかしたら、もう……!」


 入り口付近の人体は確認済み、その全てが腐っていた。
心が絶望に染まり始める。いや、まだだ。
手首に痣のある死体はなかった。


「かなめ、頼む! 生きているなら返事をしてくれ!」


 なかば半狂乱で喚き立てる。何度も何度も大声で。
静寂。死者だけがボクの叫びに耳を傾けている。
……駄目か。流石にこの死体の中で生きているとは思えない――。


『…………だれ、ですか?』


 弾かれた様に顔を上げる。今、確かに声が聞こえた。
声がした方に身体を向ける。そして戦慄。そこにあるのは死体の山。


(え……? こ、『ここ』に居るのか?)


 狼狽しながらもおずおずと近づく。腐臭が酷い。
死臭に慣れたボクでさえ、気を抜いたら吐きそうだ。


「かなめかい? 君に用があって来た。
 まずはとりあえず君を助ける。それから話を聞いて欲しい」

『助けて、もらわ、なくても、いいです』

「このまま死んだ方がいいのかい?」

『生きてて、意味、あり、ますか?』

「…………ある。少なくともボクには、だけど」

『私、には?』

「わからない。でも、ボクは君に生きて欲しい」

『…………』


 死体の山がわずかに蠢く。本当にこの『中』に居るのか。
死体を一体丁寧にどけると、中で少女が縮こまっていた。
一目見て悟る、彼女は瀕死だ。
『どうしてこんなところに』、そう問い掛ける時間も惜しい。
一刻も早く『繋がら』なければ。

 少女を山から抱え上げる。
こびりついた腐肉を払いのけ、霊安室を飛び出した。
廊下に彼女を安置して、ボクの手首を握らせる。


「いいかい? これから君とボクは『繋がる』。
 『いろんなもの』を共有するんだ。
 生命力すら共有するから、
 死に掛けの君も蘇生できるだろう」

「多分言葉では理解できない。実際やった方が早いと思う。
 ただ繋がり始めたら、できれば『拒絶』しないで欲しい」


 やはり理解が及ばないのだろう。もしくは、
もうまともな思考力が残っていないのかもしれない。
かなめは虚空を眺めたままだった。その目はとうに死んでいる。


(頼むから、繋がってる最中に死なないでくれよ……?)


 祈りながら、ボクは『コネクタ』を起動させる――。



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絶望が流れ込んでくる
苦痛が、悲しみが、病が、飢餓が、
濁流のように押し寄せてくる
生命力と引き換えに与えられたそれに、
ボクは血反吐を吐いて悶えた


秋月要あきつきかなめ、14歳
本来は明るくて人懐っこい女の子
彼女は親に捨てられた
違うよ、お父さんとお母さんは、私を護るために死んでいったの


お父さんを喪って、お母さんを喪って
友達のみーちゃんも先に逝っちゃった
身体がどんどん痩せていく
咳をすると血の味がした


みんなはいつも『生きたい』って泣く
そんなみんなが羨ましかった
だって私は、ちっともそうは思えなかったから


そもそも私、何のために生まれてきたの?
苦しむため? 悲しむため? ただ絶望するために?



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こんな地獄に産み落とされて
どうして『生きたい』なんて思えるの?

どうして? 私はさっさと死にたいよ



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ね? 『あなた』も……一緒に逝きませんか?



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絶望の洪水に押し流される

思ってしまった
これ以上彼女を苦しめるの?
このまま逝かせてあげた方が
彼女は『幸せ』じゃないのかな

このまま二人、手を取りあって
ねえ、どうせ『あなた』だって
似たり寄ったりの人生なんでしょ?



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駄目だ、『彼女』に取り込まれるな!



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君は大勢の人を救うんだ
『皆の希望の光になる』、それが君の生まれてきた意味
だからここで死んではいけない


それになんの意味があるんですか?
私が霊安室に行こうとしても、
誰も止めようとしてくれなかった
そんな人達を助けたところで、
それで私は救われますか?



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救う ボクが君を救って見せる



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 他者の異能を繋ぐ装置、『コネクタ』。
決して万能な機械じゃない、むしろ欠陥だらけのポンコツだ。

 接続した者は記憶、健康状態、精神状態、
ありとあらゆる状態を共有する。
足して2で割るようなものだ。
それは怪我や病気すらも対象となる。
あげく、生命力や寿命すら。

 彼女は極度の飢餓状態で、おそらく病気も患っていた。
精神状態も劣悪。当然、それらを共有する事になる。


(ああ、だから嫌だったんだ……)


 ゴポリと口から血が零れる。
血の色は茶色、胃潰瘍か胃炎だろうか。
なのに異常なまでの飢餓を覚える。
……こんな状態で食べても大丈夫なんだろうか。

 でも、それにも増して最悪なのは精神汚染。
目の前の彼女が酷く愛おしい。
惨めで、哀れで、思わず抱き締めてしまう。

 世界がどうでもよく思えた。人類を救う使命すらも。
今はただ、目の前の少女だけを愛したい。
彼女も同じなのだろう。震えながら縋りついてくる。


「……まずは食べよう。多少の食糧なら持ってきている。
 次に病院だ。できれば胃炎だとありがたいけど」

「その後。戦って殺されるんですか?」

「死ぬ気はないよ。二人で……ううん。
 もう一人見つけて、ちゃんと三人で生き延びる」

「でも、ユニさんは戦死するまで戦うんですよね?」

「……奴らを追っ払ったら戦いは終わるよ」


 彼女は胸に顔をうずめて泣いた。
わかっている。こんな詭弁、何の意味も持たない事は。
ボクが彼女を覗いたように、彼女もボクを覗き見た。
だから彼女は知っている。ボクの記憶や思想すら。


「正直、ユニさんの生き方は理解できません」

「だから、ユニさんと心中するのはいいですけど……
 名前も知らない誰かのために死ぬのは嫌です」

「私はユニさんだけに協力します。
 『生徒会』には協力しません。そこだけは忘れないでください」

「……了解」


 前途多難だ。どうやら厄介な子を引き当てたらしい。
違うか、彼女の考えはごく自然で納得のいくものだ。
むしろ『生徒会』の方がおかしい。
ボク視点で見てもこの組織は狂っている。

 必要不可欠な組織なのは間違いない。
ああ、けれど、だからって、
顔も知らない他人のために、平気で犠牲になるなんて――。


(……ああ、駄目だ。精神汚染が酷い)


 信念にひびが入っている。かなめの思想を取り込んだからだ。
彼女は危険だ、想いが深くて狭過ぎる。

 今後はできるだけ『繋がらない』ようにしよう。
ただでさえ、まだあと一人繋がらないといけないんだから。

 栄養を摂り、二人で抱き合うように眠る。
健康状態を足して割る2、かなめも何とか歩ける程度には回復した。
気を抜くと、二人して意識を失いそうだけど。


「病院に行こう。胃炎なら薬で治せるはずだから。
 生徒会関係者なら無料ただで薬をもらえる」

「その後は、『縛り』を持つ人を探すんですよね。
 そして、あのS級を封縛する」

「……理解が早くて助かるよ」

「記憶、共有しましたから」


 ボクらは二人肩を寄せ合い、足を引きずりながら歩いていく。
願わくば、今触れ合う少女が味方であり続けん事を。
祈りながら、ボク達は二人病院を目指す――。



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 残念ながら、かなめの患っていた病気は『胃潰瘍』だった。
出血を伴う潰瘍で手術が必要、もちろんそんな技術者はいない。
結果として、薬物療法と自然治癒に頼るほかなかった。

 それでも、『コネクタ』を使用したのは正解だったのだろう。
病気を二人で共有した分、一人あたりの症状は軽症化した。
もう少し重い症状だったなら、死を待つしかなかったらしい。


 二週間後。なんとか任務を遂行できるレベルに回復したボク達は、
二人で病院を後にする。ボクの横を歩きながら、
かなめがはにかむように笑った。


「ユニさんに救われちゃったね」

「かなめは救って欲しくなさそうだったけどね」

「今は感謝してるよ?」

「なら力を貸してくれる?」

「誤解しちゃ嫌ですよ? 今回は、放っておくと
 私達まで死んじゃうから協力するけど。
 私、ユニさん以外はどうでもいいんですから」

「……わかってるよ」


 あれ以来、かなめとは急速に仲良くなった。
何回か『コネクト』を強要された結果、
お互いをより深く把握している。
元々は人懐っこい子だ。ボクにも懐いてくれている。
少し恐怖を感じるほどに。

 ただ、お互いの目的は大きく異なる。
ボクの目的はシンプル。二人の能力者と繋がり、
いずれ目覚める地球外生物を駆逐する事だ。
対してかなめの目的は、もう一人の能力者と力を合わせ、
ボクを洗脳して『生徒会』を退会させる事だった。


「……もう一人の子が、正義感に溢れる
 ヒーローである事を願うよ」

「ユニさんのは正義じゃないよ。
 会長にこき使われてるだけだもん」

「彼女は人類のために頑張っている。
 そのためなら自分の命を捨てる事も厭わない。
 立派だ。そんな彼女と志を同じくして、
 何がいけないっていうんだい?」

「だからぁ、そういう謎の自己犠牲が嫌なんですってば。
 急に『人類』とか言われても、
 そんな得体の知れない存在なんか知りませんよーだ」

「得体の知れないって……ボク達そのものの事じゃないか」

「こーゆー事ですよ。例えば、『目の前で私が死にかけてる』。
 でも同時に、『殲滅対象の化け物も逃げようとしてる』
 としましょう」

「ユニさんは私を見殺しにすれば化け物を倒せます。
 でも私を助ければ、その間に化け物は逃げて、
 いずれたくさんの『人類』を襲うでしょう」


「ねえ、ユニさん。その場合、私と『人類』どっちを助けるの?」


 口籠くちごもる。『コネクト』以前だったなら、
ボクは即答できただろう。『そんなの人類に決まっている』と。
最大多数の最大幸福だ、より多くの人命を助ける方が正義。

 でも、今のボクは――。


「えへへ、嬉しいな」

「……ボクはまだ回答してないよ?」

「即答できなかったでしょ?
 つまりそれ、ユニさんの中で
 『私と人類が釣り合ってる』って事だもん」

「もちろん私はユニさんを助けるよ。
 だから、ユニさんも私を助けてね」


 正面から覗き込む二つの目、瞳は爛々と輝いていた。
ああ、先が思いやられる。『能力ブースト』でこれなのだ、
『縛り』の方はもっと酷い可能性が高い。

 会長から聞いていた。異能者が持つ能力は、
個々の人格に大きく左右されるのだと。
だから人探しも『能力ブースト』の方を優先した。
誰かを助ける前提の能力、ならば
その持ち主は『人格者』に違いないと。

 実際間違ってはいない。かなめは確かに健気な子だ。
命を救われたとはいえ、当然のように私に命を捧げるのだから。
想いの対象が狭いだけ。結局はかなめも、
他人のために生きる性分なのだろう。

 対して『縛り』だ。『相手を縛り付けて殺す』、
どう考えても攻撃的。一体どんな人格だと、
そんな能力に結びつくのか。今から頭が痛くて仕方がない。


「どんな人は知らないけど……
 少なくとも、ユニさんよりはわかりやすいと思うよ?」

「呑気だね。最悪敵に回るかもしれないのに」

「それはないんじゃないかなぁ」

「どうして?」

「んー。だって、何となく共感できそうから」


 凶報だ。かなめともう一人が意気投合、
それすなわち、かなめのプランが成立する事を意味している。

 どうか、かなめの予感が外れますように。
願いながらボクは再び、LV地区へと足を踏み入れた――。



(後編に続く)
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posted by ぷちどろっぷ at 2019年10月15日 | Comment(4) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
夢シリーズ好きです
Posted by at 2019年10月16日 22:29
オリジナルで前編と後編があるのは初めてですね、楽しみです
Posted by at 2019年10月16日 22:35
ワクワクする設定ですね〜
ユニちゃんが堕とされる未来しか見えない…
Posted by at 2019年10月17日 07:06
感想ありがとうございます!

夢シリーズ好きです>
書いたものを後から読む分には自分も好きなので
一応書き残していますね。
夢を見たその日は割と地獄ですが!

オリジナルで前編と後編があるのは初めてですね>
恐ろしい事にこれ、実際に2回に分けて
見たんですよね……一度飛び起きて、
寝直したらまだ続いたという……

ユニちゃんが堕とされる未来しか>
明日には後編をアップするので
明言は避けますが、まぁこの設定だと……
なお夢を見た時はユニ視点だったので
割と本気で泣きそうでした。
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2019年10月17日 22:51
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