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【オリジナル百合SS】 「コネクト」ー後編ー【共依存】

<あらすじ>
ユニ「このお話の後編だよ」


<ここまでの登場人物と舞台背景>
・ユニ
 世界が崩壊した後の生徒会メンバーの一人。
 『コネクタ』という装置を埋め込まれており、
 起動する事で他人と全てを共有できる。

・かなめ
 能力者の一人。『能力ブースト』という異能を持つ。
 単体では何の役にも立たないが、
 『コネクタ』を持つ生徒会メンバーを媒介に
 別の異能者と繋がる事で、
 他者の異能を爆発的に強化できる。
 死に掛けていたところをユニと『コネクト』する事で
 命を救われたためユニの事を愛しているが、
 そんなユニをこき使う生徒会の事は毛嫌いしている。

・会長
 生徒会メンバーの一人。
 ユニに『S級危険生物の駆除』を任命する。

・生徒会
 地球外生物の飛来により崩壊した世界で
 唯一秩序を保っている組織。人類を救うため自己犠牲の精神で
 地球外生物と戦い続けている。
 メンバーは全員学生。
 先の大戦で大人はほとんどが死滅しているため。

<症状>
・共依存
・狂気
・境界欠落
・記憶障害

<その他>
・管理人が夢で見たシリーズ。
 元々が夢なので、あまり深く考えず
 雰囲気を楽しんでいただければ……

 →
 のはずなのですが、なぜか今回『続き物』で
 2回夢を見てしまい結構複雑な前後編に。
 ちなみに夢を見ていた時は、
 最初は『ユニ』視点で、最後は『会長』視点でした。
 地獄。



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−『前編』はこちら−



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 まず吉報が一つある。『彼女』は健康そのものだった。
『縛り』を有効に使っていたのだろう、
彼女はそれを『狩猟』に用いて、餌に困る事はなかった。

 同時に凶報も一つある。『彼女』は人間不信を患っていた。
人と関わる事を拒絶して、今は集落から離れた場所で暮らしていた。

 突然の来訪者に、『彼女』は敵意をむき出しにする。
ボクは内心辟易しつつも、努めて優しい声を出した。


「君、『結衣ゆい』だよね。ボク達に力を貸してくれないかな」

「……前から思ってたんだけど、
 ユニさん交渉下手過ぎじゃない?」

「嘘をつきたくないんだ。目的がどうであれ、
 ボクが君達の力を利用する事に変わりはない」

「それはそうだけど。この人には『力を貸して』とか
 『利用する』とか言っちゃ駄目だと思うよ?」

「そ、そっちの子の言う通りですね……私が一番嫌いな言葉です。
 こ、このまま帰ってくれませんか?
 そ、そうすれば……『誰も傷つかずに』済みます」


 おどおどと、でも確かな殺意を籠めて、結衣が睨みつけてくる。
元気そうで何よりだ、死に掛けよりはよほどいい。
とは言えどう切り崩したものか。


「そういうわけにもいかないんだ。君の力を借りれなければ、
 この地区の人類は全滅する。もちろん君も、ボク達もだ」

「そ、そうですか」

「もし君がこれからも生き続けたいのなら、
 ボク達と力を合わせて欲しい」

「そ、そうやって嘘をついてきた人たくさんいました。
 け、結局私を利用して、じ、自分が楽をしたいだけ。
 あ、貴女がそうじゃないって、しょ、証拠はあるんですか?」

「証拠を提示する事はできるよ」


 ボクは左手を掲げると、埋め込まれた機械を彼女に晒す。
『コネクト』について説明し、彼女の同意を促した。


「この装置を起動させたら、君と全てを共有する事になる。
 必然、ボクが嘘をついているかも判断がつくはずだ」

「す、全てを……ですか?」

「うん。『記憶』も、『思想』すらも半分こ。
 だから……逆に君がボクを利用したいなら、
 ある程度は可能かもしれないね」

「へ、へえ……」


 暗く澱んでいた彼女の目に光が灯る。猛烈に嫌な予感がした。
彼女からは狂気を感じる。正直繋がりたくはないけれど――。


「わ、わかりました。
 と、とりあえず『コネクト』は受けてもいいです。
 そ、それからの事は後で考えます」


 胸騒ぎがさらに酷くなる。『思想の共有』、
それを彼女に伝えた途端、話に食いついてきた。
一体どんな闇を抱えている? 無意識のうちに後ずさる。
でも、ボクの右手をかなめが押さえた。


「実際には三等分ですよ。私はもうユニさんと共有してますから。
 ……だから大丈夫だよユニさん。
 いざとなったら私がユニさんを護るから」


 かなめは朗らかに微笑んだ。勇気づけられ、そして怯える。
果たして……結衣は『どちら』に近いのだろう。


「わ、私はどうすればいいんですか?」

「ボクの左手首を握ってくれればいい。
 それで機械を起動すれば、自動的にボク達は繋がる。
 色々流れ込んでくると思うけど、
 できれば『拒絶』しないで受け入れて欲しい」

「わ、わかりました」


 こちらから促すまでもなく、結衣がボクの手首を握る。
ぎゅうと強く、『離さない』とでも言わんばかりに。
もう片方をかなめが握った。同じくボクを捕らえるように。


(……これは、続けてもいいんだろうか)


 胸が嫌な鼓動を刻む。その激しさたるや、
まるで『警鐘』のようだった。
だが逃げるわけにもいかない、二人の力は任務に必須だ。
さんざん逡巡したあげく、ボクは機械を作動させる――。



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南方結衣みなかたゆいの人生は、
利用と裏切りの人生だった


小動物を捕縛する程度の微妙な異能
それでも、この極限下では重宝された
農業や酪農の仕組みが壊滅した今、
野生動物は貴重な食糧でしたから
そんな能力の発現は、私の異常な『欲求』が
もたらしたものでした


愛に飢えていたんです
避妊の失敗で生まれた私は、両親から愛をもらえなかった
『大破局』が起きたあの日すら、二人はトロい私を置いて、
我先にと逃げ出そうとしたんです

『いっ、いやだ、ひっ、一人にしないでくださいっ』

想いが形になりました
私の指から黒い影が滲み出て、両親の足をからめとる
そしたら二人は悲鳴を上げて
私を、罵倒して、蹴って、殴って――

気づけば『ボロ雑巾』になっていました
私は避難所に運ばれていて、両親の姿はどこにもありません
失意のまま生きようとして、でもそこは深刻な食糧難

『せめてネズミでも捕まえられたら』
聞こえてきた誰かのぼやき、だから私は『影』を使って、
ネズミを捕らえて見せたんです
力があれば、役に立てれば
今度こそ愛してもらえると思ったから


考えが甘かったと知りました
『利害』が絡むと、人はどこまでも醜くなるのです
時には偽りの愛を囁き、時には力で脅そうとして
誰もが私を『所有』しようと、躍起になって争いました

結局は、誰も私に愛をくれる事はなく
私は一人ぼっちで逃げ出す羽目になったのです

独りで生き続けてはや数年
私は今も、愛を得られず飢えています



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ああ、私が求めるものは、そんなに得難いものなのでしょうか

ギブアンドテイクでもいいんです
ただ私を愛して欲しい、私を捨てないでいて欲しい

そしたら私も愛しますから
例えこの身が千切れても、貴方を敵から護りますから



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だからお願い、私を愛して



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 愛を乞う嘆きが襲う
自然と目尻に涙が浮かび、
ボクは彼女と一緒に嗚咽していた

 駄目だ、今度は耐えられない
だってかなめが同調してる

『この人を愛したい』
『三人で一つになりたい』と



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そして――心の防壁が破られる



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大丈夫ですよ、私達は結衣さんを裏切りません
だって私には結衣さんの気持ちがよくわかるから
私もユニさんに愛されたくて、自分の命を捧げてるもん

ユニさんも裏切らないから大丈夫
だってこの人頭おかしいもん
顔も知らない誰かのために、
自分を犠牲にできちゃう人なんだよ――



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そ、そうですね、お二人なら信用できると思います
愛が深くて素敵です
ああ、私はずっと、ずっとずっとずっとずっと、
お二人のような人を待ち望んでいたんです!

でも――



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ユニさんの考え方は危険です




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救う対象が『人類全部』だなんて、
いくらなんでも博愛過ぎます
そこだけは改めてもらいませんと


だよね? 全員を愛するなんて、
誰も愛してないのと同じだよ
そこはきっちり、『私達だけ』に変えてもらわないと――



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いやだ、やめてくれ! 二人でボクを塗り替えないで!!




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 強制的に電源を落とす。
『バチンッ』、乱暴な音が鳴り響き、
ボクらは3つに切断された。

 涙が溢れて止まらない。
怖い、嬉しい、逃げたい、抱き締めたい。
相反する感情が、ボクの脳みそを掻き回していた。


(最悪のパターンだ……っ)


 結衣の思想はかなめ寄りだった。
いいや、ほとんど同じだと言ってもいい。
その愛情は深く、狭く。最愛の人とだけ深く繋がって、
それ以外は笑顔であっさり切り捨てるタイプ。


「き、君達はおかしい……狂ってる!」

「えぇー……どう考えてもユニさんの方がおかしいよ。
 例えばユニさんって、『会長』を見殺しにしてでも
 『人類』を優先するんでしょ?」

「それで世界が平和になったとして、
 ユニさんは幸せになれるんですか?
 大好きな人を喪って、
 独りで生きる事に何の意味があるんです?」

「そ、それが『生徒会』の役割だから」

「だからぁ、『生徒会』自体がおかしいんだってば。
 頑張る人が苦しんでただ犠牲になる組織とか、
 そんなの長続きするはずないよ」

「というか――ユニさんはどうして『生徒会』にこだわるの?
 ……ねえ、見せてよ。ユニが『隠してる』一番深いところ」


 核心を突かれて狼狽する。確かにボクの記憶には、
『封印されている』部分がある。ボク自身内容を知らないから、
『コネクト』で共有される事もなかった。


「ずっと気になってたんだよね。今までは怖くてさわれなかった。
 でも、もうれないわけにもいかないよね?」

「私も見たいです。全部共有するんですよね?
 ちゃんと全部さらけ出してください」

「い、いやだ。ボクは見たくない。どうせろくな内容じゃない!」


 他者に封印された記憶。いい思い出のはずがない。
知りたくない。知れば、ボクは壊れてしまう気がする。


「大丈夫。もしユニが壊れちゃったとしても、
 私達が埋め合わせしてあげるから。
 ほら、いいから早く『コネクト』しようね」



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 泣きじゃくるボクの手を取って、かなめが装置を起動した。
二人の意識が侵入してきて、ボクの奥底を暴いてくる――。



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――――ブチリッ



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ボクには『大破局』以前の記憶がない
記憶も、思想も、正体すらも空っぽだった

思い出せる最古の記憶は、
『会長』がボクにコネクトしてきたその瞬間
流れ込んできた会長の想いは、
悲しみと決意にまみれていた


『これ以上、こんなかわいそうな子を増やしてはいけない』
『人類を救う』
『我が身を犠牲に変えてでも』


人格の欠片は残っていたのだろう
『狂ってるな』そう思った事は覚えている
それでもボクは飛びついた
自己を完全に捨てた博愛精神
何もないボクにはお似合いだと思ったから

名前すら憶えていなかったボクは、
会長に名前を付けてもらった

『ユニ』

ユニオンから2文字を取った
共通の目的のため、個を無視して『繋がる』存在
空っぽのボクにぴったりだ



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 与えられた『尊い使命』、ボクはすがりついて邁進する
死を前提にした特攻を繰り返し、人類の生存可能領域を広げてきた
肉体の損傷と引き換えに


『なのに、どうしてボクの記憶を封印するの?
 ボク何か悪い事した?
 悪いところがあるなら言って、全部言われた通りに直すから』

『貴女は生き急ぎ過ぎなのよ。きっと、
 自分が空っぽだと思ってるからなんでしょうね。
 だから記憶を封印するの。封印された記憶があれば、
 貴女も少しは安心できるでしょう?』



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『その中身が空っぽだとしても、
 何が入っているかわからないのだから』



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 ああ、ああ、思い出した
そうだ、ボクには『何もなかった』んだ



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記憶も、思想も、大切な人も何もかも
生きるために必要なものが一つもない

でも、だからこそ、ボクは『人類』のために頑張れる
素晴らしい事じゃないか
自身の損得で動く事のない、完全なる『人類を救うための存在』
それがボクの存在意義なんだ

そう、ボクは人類を救う『道具』になる――



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――ねえ それって、『ユニ自身』の想いなの?



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違うよね? 自分自身が空っぽだから、
会長の思想をコピーしてるだけだよね?


これじゃ本当にロボットじゃないですか。
そもそも貴女自身もおかしいと思ったからこそ、
『狂ってる』と評したんでしょう?


そうだよ、本当のボクは空っぽだ!
でも仕方ないじゃないか!
ボクには記憶すらなくて、
他にする事も、生きる意味すらなかったんだ!
だから、ボクを助けてくれた会長のために――



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――それって、本当に『助けるため』だったんですか?



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え?


だってそうじゃないですか
記憶を失って、思想も失って、
だから優秀な道具になった
会長に都合が良すぎませんか?





逆なんじゃないかな?
記憶を失ってて便利な道具にできるから、
あえてコネクトしたんじゃないの?


やだ、もうやだ、聞きたくない


ユニさん、辛いとは思いますけど
逃げないでください
おかしいのはやっぱりユニさんの方です


やだ、許して、ごめんなさい


いい加減目を覚ましてよ!
聞いてユニ! 会長はユニの事を愛してない!
もし本当に好きだったら、
コネクタが必要な任務なんかさせるはずないんだよ!
だって壊されちゃうんだもん!


だから、会長はユニの事を――



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――本当に、『道具』としか思ってないんだよ!



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もうやだぁあ゛ぁぁぁあ゛ぁあ゛っ゛ぁ゛っっっ!!!



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ユニ?……ねえ、ゆに? その、壊れちゃった?



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やだ、もうやだ、もういじめないで
やだ、こわい、やだ、やだ、やだ



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心が、脳が悲鳴を上げる

二人による糾弾が、ボクの心をズタズタに壊す
拠り所を奪われて、再び白紙に戻されて
もう、抗う事なんてできなかった



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……大丈夫だよ、ユニ むしろ逆だったの
『今までが虐められてた』んだよ ユニはようやく気付けたの

はい そして、これからは私達が居ます
ユニさんを全力で護りますから



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ホント……に? でも、ボク、空っぽだよ?



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いいじゃん空っぽで その分、
私達でユニを埋め尽くしてあげるから!



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……え、えへへ……うれしい……♡



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どこまでも深く依存していく
もう抜け出せはしなかった

二人が注いでくれる愛
それはやっぱり異常だけれど
疑う余地はなかったから

二人はボクのためだけに生きてくれて
ボクのためだけに死んでくれる
そんな人きっと他にはいない



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だからボクもこれからは、この二人のためだけに――



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「あれが噂の地球外生物?」

「うん。じゃあ、手はず通りに」

「はい。まずは私が『縛り』を掛けて」

「私が『ブースト』すればいいんだよね!」

「うん。ボクが二人の力を『繋ぐ』。
 力が効きそうならそのまま封殺しよう」

「効きそうになかったらどうしますか?」

「その時は――」



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「もちろんさっさと逃亡する。
 命を懸けてあげるほど、ここに愛着もないからね」



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「会長。LV−47地区に向かっていた
 ユニから連絡がありました」

「なんて?」

「『封殺に成功した、これで5年は大丈夫だろう』と。
 ただ――」

「ただ?」

「『自分は、ここで死んだ事にして欲しい』との事です。
 つまりは退会希望でしょう」

「そう。いいわ、そのまま受理してあげて頂戴」

「……会長。どうしてユニだけに任せたんですか?
 『コネクタ』を使用する場合、
 異能者と同数以上の生徒会員で臨むのが鉄則でしょう?」

「なのにユニ単独で任せた結果、あの子は異能者に壊された。
 ……一体何が目的だったんですか?」

「私の目的なら知っているでしょう?
 『人類を救う』事。もちろんユニも例外じゃないわ。
 でも私は『空っぽ』だから、あの子を救ってあげられない。
 だから二人に任せたのよ」

「あの子はもう十分頑張った。いい加減、
 人として幸せを掴むべきだと思う」

「……その理屈で言うのなら、
 会長こそさっさと解放されるべきですよね?」

「私はいいのよ、どうせ他にやる事もないから。
 『人類』に尽くしていればそれで幸せ」

「……私は会長を愛してますけど、
 そういう事を言う会長は大嫌いです」



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「そうやって――自分を『人類』に勘定しないあたりが」



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 電話一本で生徒会を抜けたボクは、
でも引き止められはしなかった。

結局二人が言う通り、会長にとってボクは
その程度の存在だったのだろう。
その事実が悲しくて、ボクは余計に狂ってしまった。


「二人は違うよね? ボクが居なくなったら悲しいよね?
 血眼になって探してくれるよね!?」

「もちろんだよ! むしろ
 勝手に居なくなるとか絶対に許さないから!」

「絶対しないでくださいね?
 もし私達から一度でも逃げたら、
 四肢を拘束して一生自由を与えませんよ?」

「ホ、ホントだよね? 嘘じゃないよね?
 ちゃんとボクを縛ってくれる?
 こ、コネクタで確認させて」


 毎日二人に縋っては、愛を確認してしまう。
何度も意味なく『繋がって』、二人を束縛してしまう。

 だってボクは空っぽで、もし二人から捨てられちゃったら、
本当に何もなくなってしまうから。


「なんだか、すっかり立場が逆になっちゃったね」

「でも気持ちはわかりますよ。
 誰からも愛してもらえないって悲しいですから」

「そんなに心配しなくても、
 私達はちゃんとユニの事愛してるのに」

「……それだけ、ユニの中で会長の存在が大きかったのでしょう。
 何しろ、完全にまっさらな状態で思想を植え付けられたんですから」

「……なんだかそれって悔しいね」

「ええ。だからもっと繋がって、
 ユニから会長の存在を除去しないと」


 二人はにたりと笑みを浮かべて、ボクの両手首を掴み上げる。
そして機械を作動して、三人の脳を直列させた。
心が流れ込んでくる。二人の想いが濁流になって、
悲しみを洗い流してくれる。

 ああ、どうかもっと壊して欲しい。
ボクからボクを取り去って、二人の思想で染めて欲しい。
会長の記憶すら奪い取って、二人の記憶で埋め尽くして欲しい。


『かなめ、好きだよ。愛してる。
 だから、もっとボクを愛して』

『結衣、好きだよ。愛してる。
 だから、もっとボクを縛って』

『二人の事が好きなんだ。他の事は考えたくない。
 悲しいのはやだ、捨てられたくない』

『だからお願い――』



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『ボクを全部塗り替えて』



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 数十年が経過した。

 地球外生物との戦いが、どうなったのかはわからない。
完全に決着がついたのか、まだ戦っているのかすら。
とはいえ復興の足音が聞こえて来ないあたり、
『人類』の先行きは今も暗いままなのだろう。

 それでもありがたい事に、ボク達の人生は幸福なまま終わりそうだ。
最近身体が動かなくなってきた。もちろんかなめや結衣も同じだ。
コネクタは寿命も共有する、三人同時に逝けるだろう。


『もうすぐだね』

『うん。まさか、こんなに長生きするとは思わなかった』

『もしかして今の私達、普通に最年長なんじゃないですか?』

『かもしれないね』


 コネクタを使い過ぎた弊害だろう。
ボク達はもう『個の境界』がわからない。
今発言したのはボクなのか、それともかなめか結衣なのか。
それすらもうわからない。
混ざりあって、融け合っている。だから全然寂しくなかった。


『これからは、ずっとコネクトしたままでいよっか』

『そうだね。死ぬ瞬間離れちゃうのが怖い』

『いいですね。どうせもう後少しでしょうし』


 生死の境界がぼやけてくる。
三人一つの塊になって、いずれ来るであろう『その時』を待つ。
ああ、ボクは幸せ者だ。空っぽで意味のなかったボクが、
こんな風に人と混ざり合って逝けるだなんて。


『『『…………』』』


 言葉はもう必要なかった。想いは一つ、心も一つ。
ボク達はもう完全に一つなのだから。
ただ幸せに包まれながら、意識が遠のいてゆく――。



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(ありがとう、君達のおかげで、ボクは――)



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 今日も世界はすすけている。
半ば崩壊しかけた学校の生徒会室で、
『私』は調査員から緊急通信を受けていた。


「え、LV−47地区の廃墟で死体が3つ見つかった?」

『はい。そのうちの一つが旧式コネクタを付けています。
 おそらく生徒会の関係者だと思いますがどうしますか?』

「コネクタのIDを教えて頂戴。こっちで照会してみるから」

『了解です。ええと……
 「UNI−MYPRIME」と記されていますね』


 一瞬頭が真っ白になる。照会するまでもなかった。
そのIDを登録したのは、他でもない私だったのだから。


「…………ああ、そう。そのIDなら覚えてるわ。
 懐かしいわね。そう、あの子最近まで生きていたのね」

『……遺体を持ち帰りますか?』

「いいえ、その必要はないわ。
 そのまま丁重に埋葬してあげて頂戴。
 もちろん残りの二人も一緒に」

『了解です。では、以上で通信を終わります』

『ピッ』


「……そう。最期は『人として』逝けたのね。
 あの時手放して本当によかったわ」

「……」


 通信を切断すると、ぐったりと全体重を背もたれに預ける。
言葉とは裏腹に、全身を虚脱感が包んでいた。


「…………もし、私があの子に執着していたら。
 『帰って来て』って泣いて縋っていたら。
 あの子は今も、私のそばにいてくれたのかしら」


 口に出した言葉に驚く。こんな壊れた自分にも、
まだ『感情』が残されていたのか。
嘲笑する。久々に発露した感情が『執着』とは。
愚かだ。本当に救えない。


「なんて、馬鹿ね。私と同じ地獄を味わわせてどうするの?
 これが最善手だったのよ」

「でも――」


 言葉が溢れて止まらなかった。ああ、『ユニ』。
空っぽで何もなかった子。私と全てを共有した子。
私の『一番大切な』子――。



--------------------------------------------------------



「いいなあ…………私もユニと死にたかった」



--------------------------------------------------------



 漏れ出た言葉の滑稽さに、思わず噴き出し高らかに嗤う。
だが素晴らしい、完璧だ。私が今も生きる目的。
それは『人類』を救う事。

 こういう子達を増やすのだ。
世界を『ハッピーエンド』で埋め尽くせ。
私自身が羨むほどの、完璧で幸福な結末を。
増やせ、増やせ、増やせ、増やせ――。

 そのために私は生き続ける。
それだけが、『空っぽ』な私にできる唯一の事だから。


(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2019年10月18日 | Comment(8) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
2つの夢の繋がりが非常に絶妙でした。
前編では殆ど絡みがなかった、或は黒幕とさえ書かれていた会長が後編を経てかなり重要なキーパーソンとしての頭角を現すのは読んでいてなかなかおどろきました。

素晴らしい作品をありがとうございましす!!!
Posted by at 2019年10月18日 23:21
私は月1回くらいの頻度で悪夢を見ます。悪夢を見るとなぜか早朝に目が覚めてしまい、鮮明な悪夢の記憶でもう一度眠ることもできず…。その日は寝不足になります…。
ひたすら恐ろしい何かに追われる夢ばかりなので、ぷちさんの物語調の夢が少しうらやましいです。
Posted by at 2019年10月18日 23:41
これは…なんというか…凄まじい破壊力ですね…
あまりにドストライク過ぎて影響がやばいです…
大名作をありがとうございました。もう一生忘れられそうにないです
Posted by at 2019年10月19日 02:55
感想ありがとうございます!

会長が後編を経てかなり重要な
キーパーソンとしての頭角を現す>
ユニ
 「前半はボクとして夢を見てたからね」
会長
 「後半は私。正直当事者としては
  結末を書き換えてやりたかったけれど、
  見た通りにそのまま書いたわ。
  私だけ救いがないのはそのせい」
かなめ
 「別に『4人』で死んでもよかったのに」

ぷちさんの物語調の夢が少しうらやましい>
ユニ
 「いつも『こう』ではないみたいだよ。
  追い掛けられる夢も見るし、
  殺される夢も見る」
会長
 「ただ慣れてるおかげで『あ、夢だ』って
  分かった時点で『自殺による強制終了』が
  できるからまだましなのかも。
  ……お勧めはできないけれど」

あまりにドストライク過ぎて影響が>
ユニ
 「実際見た時は自分も精神への
  影響が大き過ぎて、耐えられなくて
  泣きながら『強制終了』したんだよね」
会長
 「まさか寝直したら続いたうえに、
  さらに酷い結果になるとは
  思わなかったけれど」
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2019年10月19日 14:20
ユニ達の依存もすごいですけど会長の執着や想いもすごいですね
Posted by at 2019年10月20日 00:07
初めてコメントさせていただきます!
今回のお話もすっごくよかったです!
共依存ものは本当に好きな作品なので、めちゃめちゃ刺さりました。
今後も楽しみにしています!
Posted by 葵影楼 at 2019年10月20日 15:25
一体何をどうしたらこんな夢が見られ(ry
今回も辛い…重い…
精神と身体を共有する装置って恐ろしいですね。でも寿命も共有だから三人揃って逝けるのは良いかも。
足りなかったものを埋め合う感じが好きです。
Posted by at 2019年10月21日 10:33
感想ありがとうございます!

会長の執着や想いもすごい>
かなめ
 「もしユニが自分のコネクタIDを知ってたら、
  全然違う結果になったんだろうね」
結衣
 「UNI-MYPRIME。『私の一番大切なユニ』
  ですもんね。本人に言えばよかったのに」

共依存ものは本当に好きな作品>
ユニ
 「ありがとう。一方の愛が異常な領分だと、
  相手側も釣り合いが取れてないと
  難しいと思うんだよね」
会長
 「今後もこういうお話が多くなると思うわ」

精神と身体を共有する装置って恐ろしい>
ユニ
 「狂気だよね。考える方も使う方も」
会長
 「寿命も共有できるのは嬉しくない?
  意外と普通に使われる気がするわ」
結衣
 「使われるわけありませんよ……
  普通の人は『寿命を奪われる』って
  考えると思いますよ?」
かなめ
 「ある意味愛の証明になるかもね!」
Posted by ぷちどろっぷ(管理人) at 2019年11月13日 15:41
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