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【咲-Saki-SS:菫照】照「貴女が私を好きな理由」

<あらすじ>
なし。リクエストが詳細なのでそちらをお読みください。

<登場人物>
弘世菫,宮永照

<症状>
・特になし

<その他>
以下のリクエストに対する作品です。
・ほんとに私なんかでよかったのか…?と
 自分を卑下する弘世に説教をする宮永照

※小ネタです、特に病んでないのでご注意を。



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 白糸台を卒業する日。私こと宮永照は、弘世菫に告白した。
『菫が居なくなるのはつらい、これからもそばにいて欲しい』と。

 酷くストレートな求愛。なのに菫は、僅かに頬を染めるだけ。
むしろ困惑するように、私の正気を疑ってきた。

「お前、それ……本気で言ってるのか?」

 むしろこっちが正気を疑う。卒業式、一人物陰に呼び出しての告白。
何しろ菫は人気者、ここまで持ち込むだけでも大変だった。
これで冗談だとしたら、もはや狂人レベルだろう。

「菫は私を、こんなドッキリを仕掛ける人間だと思ってるの?」

「思ってない、いないからこそ戸惑っている。
 お前が本当に正気なのかと」

「正気かどうかはわからない、でも本気だよ。私は菫の事が欲しい」

 じっと瞳を覗き込む。菫は瞳を左右に揺らし、
かなりの時間を逡巡に費やした。
でも、最後は私をじっと見つめて、正面から想いを返す。

「わかった。これからもよろしくな」

 そうしてふわりと優しく微笑んだ。
それは私が大好きないつものそれで。
でも、だからこそ私の不安を助長する。

 告白は無事成立、ここに一組のカップルが誕生した。
天にも舞い上がる心地、そんな恍惚を味わってもいい状況。
なのにどうして、言いようのない『わだかまり』が、
私の脳を支配している。

(……ねえ、菫。菫は本当に私の事を愛してる?)

 それなりに勝算はあったつもりだ。
十中八九断られない自信はあった。
でも、どこか心が引っ掛かる。

 菫はただ、世話焼きで親切な性分から、
哀れなポンコツの処分を引き受けただけではないのか。
本当は大して好きでもなくて、
『今までの延長』としか思っていないのではないか。
だって――。


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 あまりにも『普通』過ぎるから。



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 照からの告白は、私にとって青天の霹靂だった。

 出会ってから三年間、それなりに関係を育んできた自覚はある。
誰よりもそばに寄り添い続けたし、私自身照の事を愛していた。
だがその想いは一方通行、
私の初恋はここで終わる――はずだったのに。
なぜか照から告白を受け、今も関係は続いていた。

 正直今でも疑っている、あれは告白だったのだろうか。
そんな甘い要素はなくて、『卒業後もお世話しろ奴隷』、
程度の意味しかなかったのではないか。

 非常に恐ろしい事に、それでも意味は通ってしまう。
事実、照はこの疑念を裏付けるような行動に出た。

 卒業してから数日後。照はルームシェアを提案し、
私の新居に上がり込んできた。
だが雰囲気はまるで変わらず、今まで通りの延長線。
仮にも付き合いだしたなら、多少は甘さが混じるだろうに。

(なあ、照。私はお前の何なんだ?)

 もやもやと、気分の晴れない日々が続く。
それでも私は幸せだった。
本来なら高校を卒業すると同時に切れていた縁が
今もそのまま繋がっている。

 ただ側に居られるだけで満足だった。
余計な藪をつついてこの関係を終わらせるくらいなら、
現状維持で構わない。本気でそう考えていた。

 だが、そう考えているのは私だけだったのだろう。

 もっと話し合うべきだった。
互いに理解を深めるべきだった。だが私はその努力を怠り、
その結果――『大切なもの』を喪う結果となる。



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 同居してから数か月、エアコンの利いた寒い部屋。
私は菫に馬乗りになり、服を強引に剥ぎ取っていた。

「ちょっ、どうした照、いきなり何を……!」

「どうしたもこうしたも。一体いつまで待たせる気なの」

 理由は単純、いつになっても菫が襲ってこないからだ。
私なりに誘惑もした、露骨に挑発した事もある。
でも菫は受け入れず、『今まで通り』を保ち続けた。
それがどれほど私の心をかき乱したか、菫はきっと知らないだろう。

「てっきり菫が『する』側だと思ってた。
 でもこれ以上はもう待てない。
 菫には今日から『ネコ』になってもらう」

 強引に唇を奪う。もちろん私だって『不本意』だ。
でも菫からのキスを待っていたら、
私はおばあさんになってしまう。
最悪、一生唇が重ならない可能性すらあった。

「んっ……んぅっ……むちゅっ」

 唇を押し当てる。二度、三度、
回数を数えるのが馬鹿らしくなるくらいには貪った。
やがてそのまま舌を差し込み、咥内すらも蹂躙する。
舌を巻きとり、唾液を擦りつけ、全てを私で汚染した。
今後菫が私を拒絶したとしても、
『菫の初めては全て私が奪い取った』、
せめてそう主張したかったから。

「はぁっ……」

 菫は抵抗しなかった。数分たっぷり口辱を続け、
ようやく唇を解放する。互いの舌に繋がる糸の橋、
それがぷつりと切れる頃。肩で息を続ける私に、
菫は戸惑いながら言葉を紡いだ。

「ほんとに私なんかでよかったのか……?」

 ああ、何なのこの女は! 襲われたのは自分だろうに、
文句を言う立場だろうに! なのにどうして私を気遣う?
まるで――自分には価値がないとでも言わんばかりに!

「……『私なんか』って何。というか前から思ってたけど、
 菫ってどうしてそんなに自己評価低いの?」

「実際、私など大した事ないだろう」

 まるで意味が分からない。容姿端麗文武両道温厚篤実、
あげく家は富豪という混じりっけなしの『お嬢様』。
自分にファンクラブがある事も知ってるだろうに、
どうしてそんな評価になる?
菫が『大した事ない』なんて評価になるなら、
私あたりはミジンコか?
人間として評価されないに違いない。

 私の視線に気づいたのだろう、菫は僅かに視線を逸らす。
でも最後には口を開いた。
……『ずっと思い悩んでいた』とばかりに。

「そう、私は大した事がないんだ。
 『白糸台の黄金時代を築いた』なんてよく言われるが、
 結局はお前に乗っかっただけ。私自身に大した価値はない」

「正直今でも疑問だよ。お前はどうして私を選んだんだ?」

 今度は恐怖で身体が震えた。
この女は。弘世菫と言う女は、全ての価値を
『麻雀の強さ』で決めているのか?

 例え他にどんな優れた素養があろうとも、ただ『麻雀が弱い』。
それだけで全てが無価値になるとでも?
いいや、それどころの話じゃない。この女は恐ろしい事に、
『トップレベルでなければ無価値』と主張するのだ。

 今さら言うまでもなく。菫は白糸台高校において、
三年連続で団体戦レギュラーを務めあげた傑物だ。
単なるレギュラーなどではない、
『全国三連覇を成し遂げたチームの主力』だ。

 戦略的な様子見で軽く凹む事はあったけど、
基本的にはプラスの成績。
つまり菫は普通に『全国区』で、だからこそ、
白糸台高校麻雀部の部長に抜擢されたのだ。

 そんな自分を無価値と断ずる。つまりそれは
『ある程度の強さ』など眼中になく、
『トップしか見えていない』という事。
それはあまりに歪で異常で、私に恐怖を抱かせた。

 握る拳に力が入る、思考の矯正が必要だ。
菫が誰かになびく前に、『別の基準』を植え付けなければ。

「菫の考え方は異常。今すぐ矯正を開始する」

「な、なんだそれ!? 質問の答えになってないだろ!
 まずは私の質問に答えてくれよ!」

「答える価値すら感じない。
 私が菫を選んだ理由は、単に菫が好きだから。
 麻雀なんて関係ない。私にとって麻雀は、
 あくまで『手段』に過ぎないから」

「菫は違うの? 自分の身の回りで、
 一番麻雀が強い人間だから選んだの?
 だったらお金で三尋木プロでも呼べば?
 もしくは小鍛治プロでもいい。菫なら簡単に会えるでしょ」

 菫の思考は『そういう事』だ。
私より強い人などいくらでもいる。
事実、私は直接対決で戒能プロに負けているし、
三尋木プロや小鍛治プロには手も足も出ないだろう。
そんな雀士が――菫を見初めた場合どうなる?

(その時点で私は『無価値』、私は菫に捨てられる?)

 そんな結末許せるか。麻雀では勝てないかもしれない。
でも――菫を想うこの気持ちは、誰にも負けないと断言できる。
誰にも分けてやるものか、菫は全部私のものだ。

「菫の事を愛してる。私を助けてくれた菫を。
 『あの時』貴女が声を掛けなければ、麻雀部に誘わなければ、
 私は今も、暗い目をしたままだった」

「貴女は私の人生を変えてくれた、だから貴女を愛してる。
 その順位が今後変動する事はない。
 菫はずっと、ランキング一位に位置し続ける」

「なのに菫は――私の立ち位置を、麻雀の強さ如きで
 コロコロ変動させるつもりなんだよね?」

 菫をじっとねめつける。狂気を感じ取ったのだろう、
菫は僅かにたじろいだ。だが逃げる事は許されない、
私は今も馬乗りしている。

「そんな暴挙は許さない。悪いけど、
 今ここで『既成事実』を作らせてもらう」

 私は右手を唸らせて、菫の服を剥ぎ取った――。



--------------------------------------------------------



 照の暴走から数時間後。私達は二人揃って、
裸でベッドに転がっていた。

 最初こそ威勢よく私に噛みついていた照だったが、
何しろ身長にして16cm差だ。
本気を出した私に勝てるはずもなく、
形勢を逆転した後は素直にニャンニャン鳴いていた。

 まあ照自身は元々『される側』のつもりだったようだし、
むしろ襲われるのは『願ったり』だったのだろう。
今もほら。『してやったり』と言わんばかりに、
珍しくドヤ顔の無表情を決め込んでいる。

「菫のせいで傷物にされた。責任を取って一生面倒見てもらう」

「それは別に構わないが……
 本当にこんな『初めて』でよかったのか?」

「それはもちろん、私にだって理想はあった。
 でも菫がヘタレだったから仕方がないでしょ?」

「私からすれば、そもそも恋仲なのかも疑問だったんだよ。
 てっきり『お嬢様と召使』くらいの感覚なのかと」

「卒業式に告白までさせておいて?」

「自分の吐いた言葉をよく思い出してみろ。
 あれじゃ、『これからも面倒見てください』と同義だぞ」

「菫が勝手にそう解釈しただけでしょ?
 卒業式に呼び出して『これからも一緒に居て欲しい』、
 『私は菫の事が欲しい』だよ?
 告白以外の何があるって言うの」

「っ……お前がそこまで私に執着してるとは思わなかったんだよ」

 そう。正直自信が持てなかった。
だって私は――お前を救ってやれなかったから。
心の闇を見たのだろう、照は表情を曇らせる。

「菫はさ。やっぱり私が『麻雀が強いから』好きなの?」

「違う。その要素がゼロとは言わないが、お前だから好きなんだ。
 だが、自分に自信を持てないのも事実ではある」

「麻雀で私に勝てないと駄目なの?」

「ああ、正直怖いんだ。いつかお前が、
 私から去って行くんじゃないかと」

 照の人生において、麻雀が大きな意味を持つ事は間違いない。
姉妹の絆を繋いだのは麻雀で、
私達の関係を作り上げたのもまた麻雀だ。
そんな大切な要素において、私は照に及ばない。

 例えば今後、照がプロ雀士の世界に足を踏み入れるとしよう。
私はそばに居られるだろうか。答えはノー、今のままでは論外だろう。
もし照が日本代表に選ばれて、世界で戦うとしたら?
きっと物理的にも引き離される。

「お前自身も言っただろう? 麻雀は『手段』に過ぎないと。
 私にとってもそうだ。 お前と繋がり続ける手段。
 だから怖い。その手段に乏しい事が、自分が酷く弱い事が。
 ……お前に遠く及ばない事が」

 それはまさしく本心だった。でも、無様な嘆きを聞いた照は、
呆れたようにため息を吐く。

「わかったよ。じゃあ私は、表舞台の麻雀をやめる」

「……は?」

「菫を不安がらせるくらいなら、公式試合への参加をやめる。
 元々私は――『家族麻雀』が打てればそれでいい」

「忘れたの? そもそも私、麻雀好きじゃなかったんだよ?」

 思わず目を見開いた。そうだ、確かにそうだった。
麻雀部に入る事すら嫌がっていた照。
それを私が無理矢理引っ張ってきて、
咲ちゃんとの接点を見出すために打たせ続けていたんだった。

(……そうか。私は、大切な『大前提』を忘れていた)

 結局は照の言う通りだったのだろう。いつの間にか私は、
照の強さに縛られていた。常軌を逸した強さに憧れ、目が眩み、
本質を見失っていたのだ。
あまりにも情けない。これでは照に、
疑心を抱かれても仕方がない。

「そうだな。私は大事な事を忘れていたようだ。
 私がお前を好きになった理由は、
 決してそこではなかったのに」

「ねえ。そもそも菫って、どうして私を好きになったの?」

 そうか。そう言えば、そこすら話してなかったか。
照の思いを聞いたのも、さっき襲われる寸前だった。

 私達は言葉が足りない。積み上げてきた3年の年月に甘えて、
伝え合う努力を忘れかけていたようだ。

「そうだな。いい機会だから伝えよう。
 私がお前を好きになった理由は――」

 何度でも愛を囁こう。私を理解してもらうため。
どれだけお前を愛しているのか、ちゃんとわかってもらうため。
もう二度と、お前に対するこの愛情を、見失う事のないように――。

 数時間後、照が青ざめた顔で私を止めた。

「ごめん、菫。わかったから。もうわかったからこのくらいで」

「何を言ってる、まだ半分も伝え終わってないぞ」

「お願いもう許して、このまま続けたら日付が変わる」

「ふふ、今夜は寝かさないぞ?」

「お願い。もうちょっとだけ、
 処女喪失したばっかりの彼女を思いやって」

 そう言われたら仕方ない。続きはまた今度にしよう。
私は照を腕枕して、ぐいと身体を引き寄せた。

 情交に汗ばんだ身体。その身体はあまりに華奢で、
すぐに折れてしまいそうなほど細い。

 ああ、今頃になって実感する。
今私の横に居るのは、ごくごく普通の女子大生。
『ただの小娘に過ぎない』のだと。

 二度と忘れないようにしよう。隣に居るのは『ただの恋人』。
決して――『高校麻雀界の王者』ではない事を。

 私はゆっくり目を閉じる。やがて意識があやふやになり、
意識を手放そうとして、そして照に引き戻された。

「ちょっと、何で勝手に寝ようとするの。
 こんな汗だくで寝たくないし、
 あそこも大変な事になってるんだけど?」

「今すぐお風呂を沸かして欲しい。
 で、お姫様抱っこで浴室に連れてって、
 私の身体を丁寧に洗って」

 訂正、『ただの恋人』ではないな。
『わがままで注文が多いお姫様な恋人』だった。
これからも細心の注意を払って尽くすとしよう。

 私は小さく微笑むと、照の頭を持ち上げる。
そしてよろよろ起き上がると、自動湯沸かしのボタンを押したのだった。

(完)
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posted by ぷちどろっぷ at 2019年11月30日 | Comment(2) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
好き以外に繋がっていることの利点があると関係が長続きするよと言われたことがあります。
Posted by at 2019年11月30日 21:47
うーん、じれったい!すれ違う2人がめんどくさ可愛かったです。
Posted by らみー at 2019年12月01日 00:10
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