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【咲-Saki-SS:怜竜】『明日天気になーれ』【狂気】
<あらすじ>
小ネタなのでなし。
『その他』を参照してください。
<登場人物>
園城寺怜,清水谷竜華
<症状>
・ヤンデレ
・狂気
・共依存
<その他>
・誕生日の方に送った超小ネタSSです。
お題は以下。
『明日に天気になーれ』
--------------------------------------------------------
その日は朝から雨だった。
私は予定を全てキャンセル、怜の家に慌てて飛び込む。
いつも通りの怜だった。
私の心配などよそに、怜はぼんやりこう呟く。
「微妙な天気やなー」
「……せやな」
それきり会話は途切れてしまった。沈黙が訪れる事はなく、
ただただ、しとしと降る音だけが、二人の部屋を支配する。
私はこういう雨が嫌いだ。
どっちつかずが気持ち悪い。このまま天気は晴れるのか、
それとも――『より酷い方向へ』暗転してしまうのか。
(……今でも思い出してまうな)
『あの日』の事を思い出す。
昔と言うほど前じゃない。怜は私の前で倒れた。
冷たいストレッチャーで運ばれる怜。
私はただただ動転し、泣きじゃくりながら後を追う。
あの日もこんな雨だった。
『いやや!! 怜ちゃん、逝かんといてぇ!!!』
まるで泣くように降り注ぐ雨は、凶事を暗喩するようで。
目を閉じ耳を塞いでも、雨音はまるで呪詛のよう、
いつまでも耳にこだまし続ける。
怜はICU(集中治療室)に運び込まれた。
危なかったんだと思う。私はただガタガタ震え、
信者のように祈りを捧げる。
(お願いです、神様。どうか、うちから怜ちゃんを奪わんといてください)
結果として怜は生還した。ICUから帰って来た時、
天気もからっと晴れたのを覚えている。
だから私は確信したのだ。
雨が、怜を殺そうとしたのだと。
「怜。こういう日は気をつけなあかんで?」
「なんで?」
「雨の日はな、みんな体調悪くなるんや」
正確には、急に天気が変わった日。
前日はすごく晴れていたのに、次の日急に寒くなるとか。
天気の変化が急激すぎると、自律神経が対応できない。
交感神経と副交感神経の失調に繋がり、人は体調を崩してしまう。
健康体ならいいのだろう。でも。怜のような持病持ちは、
それだけで『命取り』になる可能性がある。
だから――。
「うち、雨は嫌いなんよ」
怜が死ぬかもしれないから。
ぽそりと呟く私の瞳は、相当濁っていただろう。
なのに怜は小さく笑い、肩をすくめておどけて見せる。
「私は結構好きなんやけどな」
「…………なんで?」
自然と眉根が寄っていく。
理性ではちゃんとわかってる、好き嫌いは人それぞれだ。
私が怜の感性にケチをつける資格はない。
それでも、負の感情は拭えなかった。
自分を死に導く雨など、どうして好きになれるのか?
「だって、竜華が心配してくれるやん」
「『死なんといて』って、必死に縋ってくれるやろ?」
にっこり微笑む怜の瞳は、どこまでも黒く、黒く、黒く。
私ですら気圧されるほど、闇に塗れて狂っていた。
ああ、やっぱり雨は嫌いだ。何もかもを狂わせる。
私は窓に視線を送り、そっと小さく呟いた。
決して怜に聞かれぬように。
『明日、天気になーぁれ』
雨は、止む気配がない。
(完)
小ネタなのでなし。
『その他』を参照してください。
<登場人物>
園城寺怜,清水谷竜華
<症状>
・ヤンデレ
・狂気
・共依存
<その他>
・誕生日の方に送った超小ネタSSです。
お題は以下。
『明日に天気になーれ』
--------------------------------------------------------
その日は朝から雨だった。
私は予定を全てキャンセル、怜の家に慌てて飛び込む。
いつも通りの怜だった。
私の心配などよそに、怜はぼんやりこう呟く。
「微妙な天気やなー」
「……せやな」
それきり会話は途切れてしまった。沈黙が訪れる事はなく、
ただただ、しとしと降る音だけが、二人の部屋を支配する。
私はこういう雨が嫌いだ。
どっちつかずが気持ち悪い。このまま天気は晴れるのか、
それとも――『より酷い方向へ』暗転してしまうのか。
(……今でも思い出してまうな)
『あの日』の事を思い出す。
昔と言うほど前じゃない。怜は私の前で倒れた。
冷たいストレッチャーで運ばれる怜。
私はただただ動転し、泣きじゃくりながら後を追う。
あの日もこんな雨だった。
『いやや!! 怜ちゃん、逝かんといてぇ!!!』
まるで泣くように降り注ぐ雨は、凶事を暗喩するようで。
目を閉じ耳を塞いでも、雨音はまるで呪詛のよう、
いつまでも耳にこだまし続ける。
怜はICU(集中治療室)に運び込まれた。
危なかったんだと思う。私はただガタガタ震え、
信者のように祈りを捧げる。
(お願いです、神様。どうか、うちから怜ちゃんを奪わんといてください)
結果として怜は生還した。ICUから帰って来た時、
天気もからっと晴れたのを覚えている。
だから私は確信したのだ。
雨が、怜を殺そうとしたのだと。
「怜。こういう日は気をつけなあかんで?」
「なんで?」
「雨の日はな、みんな体調悪くなるんや」
正確には、急に天気が変わった日。
前日はすごく晴れていたのに、次の日急に寒くなるとか。
天気の変化が急激すぎると、自律神経が対応できない。
交感神経と副交感神経の失調に繋がり、人は体調を崩してしまう。
健康体ならいいのだろう。でも。怜のような持病持ちは、
それだけで『命取り』になる可能性がある。
だから――。
「うち、雨は嫌いなんよ」
怜が死ぬかもしれないから。
ぽそりと呟く私の瞳は、相当濁っていただろう。
なのに怜は小さく笑い、肩をすくめておどけて見せる。
「私は結構好きなんやけどな」
「…………なんで?」
自然と眉根が寄っていく。
理性ではちゃんとわかってる、好き嫌いは人それぞれだ。
私が怜の感性にケチをつける資格はない。
それでも、負の感情は拭えなかった。
自分を死に導く雨など、どうして好きになれるのか?
「だって、竜華が心配してくれるやん」
「『死なんといて』って、必死に縋ってくれるやろ?」
にっこり微笑む怜の瞳は、どこまでも黒く、黒く、黒く。
私ですら気圧されるほど、闇に塗れて狂っていた。
ああ、やっぱり雨は嫌いだ。何もかもを狂わせる。
私は窓に視線を送り、そっと小さく呟いた。
決して怜に聞かれぬように。
『明日、天気になーぁれ』
雨は、止む気配がない。
(完)
この記事へのコメント
すばらな共依存です
Posted by at 2020年05月22日 12:30
めっっっっちゃ良いです…
Posted by at 2022年10月23日 03:33
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