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【咲-Saki-SS:久咲】同情するなら、愛してほしい【共依存】
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<あらすじ>
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両親の離婚を契機に、愛を信じられなくなった上埜久。
全てが薄っぺらに見えてしまう彼女は、
周りからの愛を素直に受け取れなくなってしまった。
彼女は言う。『同情するなら愛を頂戴』。
でもその愛を届けられるのは、
彼女と同じように壊れてしまった人だけで。
愛をくれる人を探し求めて、今日も竹井久は歪んでいく――。
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<登場人物>
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<竹井久>
清澄高校の3年生で学生議会長と麻雀部部長を兼務する才女。
164cmのスリム体型で飄々としている食わせ者だが、
実はプレッシャーに弱い側面がある。
家庭に複雑な事情があり、旧姓は『上埜』だった。
<宮永咲>
清澄高校の1年生で麻雀部のエース。
155cmの慎ましい体型で基本は大人しい文学少女だが、
精神的に危うく時折暴力的な発想を見せる。
家庭に複雑な事情があり、母や姉とは別居している。
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<症状>
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・共依存
<その他>
●FANBOX支援者に送る限定先行公開していた作品です。
5月に公開した作品でそれなりに月日が経過したので公開します。
●pixivFANBOXによる支援を検討くださる方はこちらを参照してください。
https://puchi-drop.fanbox.cc/
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<本編>
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その昔、まだ私が生まれる前の事だ。
『同情するなら金をくれ』。
なんて少女の台詞で有名になった映像作品があったらしい。
内容はよく知らない、でもまあ推して知るべしだろう。
『かわいそう』。いくら上辺で哀れんだって、
決して少女は救われない。助ける気があるのなら、
餌を恵んでやるべきだ。
でも往々にして人は冷たい。
表面上は悲しみながら、『でも自分には関係ない』、
線を引いては去っていく。
私こと『上埜久』も、少女と同じ気持ちだった。
気休めみたいな言葉は要らない、同情するなら愛して欲しい。
それだけで――私はきっと救われるのに。
◆ ◇ ◆
「あー、今日も愛が欲しいわねー」
もはや口癖になったセリフを吐きながら、
私こと『竹井久』は、雀卓の上に突っ伏した。
心がカラカラ渇いてる。人にはいつも囲まれてるのに、
なんとなくどこか人恋しい。人の中に居て孤独を感じる、
これは私だけの感覚だろうか。
「あー、愛が欲しいわねぇ。焼き焦がれるくらいの愛が欲しい!」
何度も繰り返していたら、一緒にいた後輩のまこがため息をついた。
呆れたように、でもどこか寂しそうに。まこはぽそりと言葉を吐き出す。
「わしらの愛じゃ足りんっちゅぅのか?」
「足りないわねー。知ってるでしょ?
私すっごく欲張りなのよ。部員一人じゃとてもとても」
「だったら来年頑張りんさい」
上手く誤魔化せたのだろう。まこの表情が苦笑に変わり、
そこで会話はお開きとなる。だから私は心の中で、そっと小さく吐き捨てる。
(……そう、足りないのよ。貴女の愛じゃ『浅過ぎる』)
まこが薄情な人間だとは思わない。
ううん。世間一般と比較すれば、むしろ情に深いと言えるだろう。
でもそれは、あくまで『正常』の範囲内でだ。
『付き合うに足るから一緒にいる』、結局は打算の延長線。
もし私が付き合いきれない程病的な素養を見せれば、
いつかは諦め離れるだろう。そう、『あの人達』が別れたように。
(ああ、愛が欲しい。何があっても壊れる事のない愛が)
悲しませるのは本意じゃない、だから心の中で呟く。
この言葉を口に出せない、それがまこと私の距離なのだろう。
(ああ、誰か愛を頂戴。狂った程の愛を頂戴。
そしたら私も返すから。その手を掴んで離さないから)
願いは虚しく脳内で消えた。そして私はこれからも、
毎日願いを投げ続ける。今から約半年後、『宮永咲』が現れるまで――。
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
ずっと愛を求めてました。
私こと宮永咲は、とにかく愛に飢えていたのです。
かつてはくれる人が居ました。お姉ちゃん、誰より一番大好きな人。
でも。とある事件がきっかけで、私はお姉ちゃんを怒らせちゃって。
それから何度も追い掛けたけど、愛は一切もらえてません。
追い掛ける事に疲れた私は、本の世界に逃げ込みました。
本には愛が溢れてる。現実ではとても得られない、
綺麗でドロついた愛に満ちています。
今日読んだ本は心中話。人生全てに疲れ果て、恋人は二人身を投げる。
それは明らかに悲恋だけれど、私に灯るは羨望でした。
(いいなぁ、私も誰かと死にたいよ)
願わくばお姉ちゃんと。
そう考えてしまう私はきっと、もう『正常』ではないのでしょう。
自分の異常さは分かっています。だからそっと胸にしまって、
黙して語る事はありません。
なのに。語らず隠した激情を、勝手に読み取る人がいました。
「ふぅん。宮永さんって結構暗い話も読むのね」
つい最近知り合った生徒会――部長さん。
前に図書室で出会った時も、読んでる本を覗かれました。
正直あまりいい気はしません。読んでる本を見られるなんて、
内面を覗き見られるようなもので。思わず声音に棘が混ざります。
「明るい話は苦手なんです、なんだか薄っぺらく感じるって言うか。
現実はもっと非情ですから」
「わお、まったく同意見。ちなみにその本私も読んだわ。
感想としてはどんな感じ?」
声で拒絶は伝えたはずです、なのに食いついてくる部長。
紫の目に捉えられ、なぜだか私は身震いしました。
人懐っこい笑顔の裏に、底知れない『何か』が潜んでいるような。
「……えっと」
返事に窮して黙ります。本音を言えば『異常者扱い』でしょう。
適当にお茶を濁そうか。私が心に蓋をして、妥当な言葉を探していると――。
「ちなみに私は、『羨ましい』と思ったわ」
「……へ?」
――不意打ちが私を貫きました。
「だって普通に羨ましくない?
そりゃ境遇は不幸だけれど、最後に二人で逝けるのよ?
一緒に死んでもいいくらい愛してくれる人がいた、
それだけでもう幸せじゃない」
ドクンと胸が高鳴りました。
部長の胸に宿るのは、私と同じ暗い羨望。
思わず取り繕うのも忘れ、私は言葉を零していました。
「そのっ、私もそう思いますっ……正直二人が羨ましいです」
にたり。私の返事を聞いた途端、部長の顔が歪みます。
まるで獲物を見つけたような、酷く獰猛な獣のように。
背筋にゾクリと怖気が走り、でも、じわじわと胸が疼いてきました。
「…………そう。なら、私達結構気が合うかもね?」
両の瞳に捉えられ、鼓動が激しさを増していく。
浅い呼吸に喘ぐ私は、『そうですね』、そう返すだけで精一杯でした――。
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
多分恋だったと思う。
咲の『闇』に気づいた私は、瞬く間に溺れて行った。
ほじくり返せばどんどん出てくる。その闇深さに恋焦がれた。
『はい。宮永照は私のお姉ちゃんです』
『えと。実はその、うちって別居中なんです。
お母さんとお姉ちゃんは東京で、私はお父さんと二人きり』
『……はい。急に全国を目指し始めたのは、お姉ちゃんに会うためです』
『もう、普通には口を利いてもくれないから。
麻雀を通してなら会話できるかもって』
狂ってる。それが素直な感想だった。
でもだからこそ愛おしい。咲は悲劇に壊されて、
なのにまだ、『自分を拒絶する姉』を追い掛けている。
(この子、欲しいわ)
私が求める『異常な愛情』、きっと咲なら与えてくれる。
姉は拒絶してるんでしょう? なら、私がもらっても問題ないわよね?
だから私は楔を穿つ。すでに壊れている咲を、さらに瓦解させるため。
『うーん、難しいかもね? だって貴女、麻雀好きじゃなかったんでしょ?
そういうの、お姉さんにも伝わってると思うわよ?』
『……えっと』
『後はさ。お姉さんのいる白糸台って、今年三連覇が懸かってるわけじゃない?
そんな時に牙を剥くとか、むしろ逆効果だと思うけど』
『き、牙って……私は別にそんなつもりはっ……!』
『相手の気持ちを考えなさい? 麻雀嫌いと言ってた妹が、
よりにもよって、三連覇が懸かってる年にだけ出場してくる。
そして敵として立ちはだかるのよ? お姉さんからしたら、
嫌がらせにしか見えないんじゃないかしら?』
『…………そう、かもしれません』
咲はみるみる意気消沈、目には涙が浮かんでいた。
『麻雀を通して会話する』、咲には『起死回生の一手』に見えていたのだろう。
それを『悪手』だと酷評されて、瞳は見事に濁って行った。
『まあ、私には二人の関係性はわからないわ。
もしかしたら上手く行くかもね? だからちょっと試してみましょ?』
『試す……ですか?』
そうだ。『全国大会で一発勝負』、そんな博打を打つ必要はない。
麻雀を通して会話するなら、別に全国じゃなくてもいいはずだ。
『練習試合を組みましょう。白糸台と清澄で。
こっちにはインターミドルチャンピオンの和がいる、
受けてくれる可能性は結構あるわ』
咲の瞳が輝き始める。私がもたらすその提案は、
咲にとって『現実的な救い』だった。
とは言え無償の愛じゃない、私にとっても利のある話だ。
(これでお姉さんと復縁できるならよし。その時はすっぱり諦めましょう)
(でも、もし『私の予想通り』なら――)
きっと、咲はもっと愛らしくなる。
そんな未来を胸に秘め、私は醜くニタリと嗤った。
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
お姉ちゃんの学校と練習試合。
その提案は現実的で、自分が恥ずかしくなりました。
部長の言う通りです。何もわざわざ、
三連覇が懸かった全国大会で戦う必要なんてない。
むしろ会話をするためだったら、余計なしがらみは取っ払う方がいいでしょう。
「んじゃ、今から白糸台高校に電話するわね?
せっかくだからスピーカーホンにするわ。
上手くすればお姉さんの声が聞けるかもしれないし」
降ってわいた幸運に、自然と体が震えます。
こんなにも、こんなにも簡単にチャンスが巡って来るなんて。
どこか現実味がなくて、むしろ恐怖すら感じていました。
『プルルル、プルルル……ガチャッ。はいこちら、白糸台高校受付です』
「突然の電話で失礼いたします。
私、清澄高校麻雀部の部長で竹井久と申します。
この度は練習試合の申し出をしたく、
そちらの部長さんと連絡を取りたいのですが……」
『練習試合の申し出、ですか?』
「はい。なおこちらにはインターミドルチャンピオンの原村和と、
『宮永照の妹がいる』とお伝えください」
『かしこまりました。麻雀部の部長に確認しますので、今しばらくお待ちください』
人当たりのよい女性の声が途切れ、機械音声が続きます。
改めて部長に感謝しました。こんな行動、私ではとても無理だったから。
「門前払いは避けられたわねー。さぁて、吉と出るか凶と出るか!」
「えっと、勝算はありそうですか?」
「半々ってとこかしら? 白糸台の部長なら、
『宮永照の妹』ってキーワードは気になるでしょうし。
おそらくお姉さんに確認を取るでしょう。
後はまぁ、お姉さんがどう言うかよね」
「……お姉ちゃん次第って事ですか」
「そ。向こうにも仲直りする意思があるなら拒まないでしょうし、
そうじゃなければ――――そうね、『覚悟』はしておきなさい」
呼吸が浅くなりました。覚悟。そう、覚悟が必要です。
ここでお姉ちゃんに拒絶されたら、もはや絶縁されたも同じ。
もうお姉ちゃんと仲良くする事はできないでしょう。
張りつめながら待つ事数分。ガチャリ、受話器を取る音が聞こえました。
続いた女性の言葉からは、どこか申し訳なさが滲んでいます。
『お待たせして申し訳ありません。
ただいま麻雀部の部長に確認を取ったのですが、
今回は辞退させていただくとの事です』
「……あの、失礼ながら念押しで確認させてください。
宮永照の妹がいる事はお伝えいただけましたでしょうか」
『はい、伺った内容をそのまま伝えました。ですが、
部長が宮永さん当人に確認したところ――』
◆ ◇ ◆
『「私に妹はいない」と、そう宮永さんに言われたそうで』
◆ ◇ ◆
その後の事は覚えてません。
次に正気を取り戻した時、電話はすでに終わっていて。
私は部長に抱きすくめられ、ボロボロ涙を零していました。
「うっ、うっ……えぅっ、ぇぐっっ」
「ごめんなさい……本当にごめんなさいっ……!
こんな酷い事になるとは思ってなかったの……!」
「関係を見誤った、もっと慎重に動くべきだったわ。
全部私が悪かったの、こんな事を言い出さなければ――」
部長も涙を流していました。部長は何度も謝るけれど、
いいえ、むしろ部長に救われたのでしょう。
もしこれが全国大会まで行った上での仕打ちだったら、
きっと私は耐えられなかった。いや、今も耐えれてないけど、
今よりもっと辛かったはずです。
「ちがっ……いますっ……わた、わたしがっ……
まち、がってたんですっ……」
「もうっ……きっと、おわってたんですっ……」
そう、これは部長のせいじゃない。
私達はもう終わってた。なのに私が追いすがり、
周りを巻き込んで迷惑をかけた。ただそれだけの事なのです。
諦めるべきでした。『あの日』、一言も話してもらえなかった時点で。
「ごめんなさい、それでも私の気が晴れないの。
私にできる事なら何でもするわ、なんでも好きな事言って」
涙に濡れた部長の瞳が、宝石のように輝いています。
その光が悲しくて、でも、『綺麗だな』って思いました。
記憶が脳裏によぎります。
悲しみに暮れ涙する二人、最後に残る希望は『逃避』。
部長は『羨ましい』と言ってくれた、いっそこのまま部長と二人で――。
「ほんとうに……なんでも、いいん、ですか?」
「ええ。私にできる事なら何でも。
一緒に死ねと言われたら、二人で湖に飛び込むわ」
まるで心を読むかのように、部長はピタリと言い当てました。
期待に胸が膨らんで、でも。『それだけはやっちゃ駄目』、
どこかでブレーキが掛かります。
「『いまは』、そこまではいいです……でも……」
「でも?」
「しばらくのあいだ……あまえさせてください」
死の誘惑は酷く甘美で、でもまだ早いと思いました。
今は何も考えたくない、ただただ甘やかして欲しい。
そう。それこそ――『昔お姉ちゃんがしてくれたように』。
「そう……わかったわ。所詮は代替品だけど、
私の事を『お姉ちゃん』と思ってくれていいから」
またも部長はピタリと言い当て、私の事をかき抱きます。
優しい腕に包まれながら、私はそっと瞼を閉じる。
ぼたりと涙が零れ落ちて、気分が楽になりました。
今でも胸は酷く苦しい。まるで全身を裂かれたように、
痛くて悲鳴を上げている。それでも部長がいてくれるなら、
乗り越えられる気がしたんです。
「……おねえ、ちゃん」
無意識に吐いたその言葉。それが一体『誰』を指すのか。
もうわかりませんでした。
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
わかってた。一度千切れてしまった絆は、そう簡単には戻らない。
いっそ捨ててしまうが得策、新しい関係を作る方が簡単だと。
咲の話を聞いた時、私にはある種の確信があった。
『お姉さんはきっと拒絶する』。素直に好意を受けとる人なら、
ここまでこじれはしないから。
咲は完全に壊れてしまった。『私に妹はいない』、その言葉を受け入れた。
そして今では私に抱き着く。満面の笑みで甘えながら。
「お姉ちゃーん!」
「はいはい、咲は甘えん坊ねぇ」
記憶を改ざんしたのだろう。咲の中にもう『宮永照』は存在しない。
いるのは『久お姉ちゃん』、『義理の姉』で『最愛の人』。
歪で苛烈な愛だった。宮永照が穿った穴を、必死で埋め合わせるように。
咲は私に傾倒し、溺れ、全てを独占しようとする。
「さてと、そろそろ予鈴のチャイムが鳴るわね。
咲も自分の教室に戻りなさい?」
「えー、まだもうちょっとー」
「そう言ってこの前もサボったでしょう?
大丈夫、また休み時間に覗いてあげるから」
「ぶーっ、お姉ちゃんは私と離れ離れになっても平気なの?」
「平気なわけないでしょう? 何ならこのまま心中でもする?」
「んー、それはまだいいや。今がちゃんと幸せだから」
咲と私の熱愛は、既に噂になっている。
休み時間のたび逢瀬を重ね、熱く愛を語り合う。
不気味なものを感じたのだろう。大半の人は眉を顰め、
ひそひそ小声で何かを語った。
人がどんどん離れていく、その疎外感が心地いい。
冷たい人は要らないの、欲しいのはただ苛烈な愛だけ。
だから――咲以外はもう要らない。
「ねえ、咲。貴女は私を愛してる?」
「もちろん」
「じゃあ、もし私が一緒に死にたいって言ったら死んでくれる?」
「うん。……なに、お姉ちゃん死にたいの?」
「いいえ、今は大丈夫。でも――『その時が来たら』一緒に死んで?」
「うん! 私もお姉ちゃんと一緒に死にたい!」
咲は当然のように笑って返す。
『狂ってる』、心から素直にそう思った。
だからこそ愛おしい。だって私も狂っているから。
◆ ◇ ◆
『同情するなら金をくれ』、そう言った子はどうなったのか。
私は結末を知りはしない。でも何となく思う。
その子はきっと、私と同じ結末を『選んだ』んじゃないだろうか。
お金も愛も答えは同じ、ただ願っても手に入らない。
他人任せじゃ駄目なのだ、自分で掴みに行く必要がある。
(だから私は自分で掴んだ。別に問題ないでしょう?
だってお姉さんは『要らない』って言ったんだから)
私の腕の中で眠る咲は、年より随分幼く見えた。
愛情に飢えていたのだろう。姉が注がなかった分、私が愛を注ぎたい。
(そして私に返してね? 私だって愛されたいから)
一人でクスリと微笑むと、咲の額にキスを落とす。
咲はわずかに身もだえるも、幸せそうに小さく笑った。
(完)
<あらすじ>
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両親の離婚を契機に、愛を信じられなくなった上埜久。
全てが薄っぺらに見えてしまう彼女は、
周りからの愛を素直に受け取れなくなってしまった。
彼女は言う。『同情するなら愛を頂戴』。
でもその愛を届けられるのは、
彼女と同じように壊れてしまった人だけで。
愛をくれる人を探し求めて、今日も竹井久は歪んでいく――。
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<登場人物>
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<竹井久>
清澄高校の3年生で学生議会長と麻雀部部長を兼務する才女。
164cmのスリム体型で飄々としている食わせ者だが、
実はプレッシャーに弱い側面がある。
家庭に複雑な事情があり、旧姓は『上埜』だった。
<宮永咲>
清澄高校の1年生で麻雀部のエース。
155cmの慎ましい体型で基本は大人しい文学少女だが、
精神的に危うく時折暴力的な発想を見せる。
家庭に複雑な事情があり、母や姉とは別居している。
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<症状>
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・共依存
<その他>
●FANBOX支援者に送る限定先行公開していた作品です。
5月に公開した作品でそれなりに月日が経過したので公開します。
●pixivFANBOXによる支援を検討くださる方はこちらを参照してください。
https://puchi-drop.fanbox.cc/
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<本編>
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その昔、まだ私が生まれる前の事だ。
『同情するなら金をくれ』。
なんて少女の台詞で有名になった映像作品があったらしい。
内容はよく知らない、でもまあ推して知るべしだろう。
『かわいそう』。いくら上辺で哀れんだって、
決して少女は救われない。助ける気があるのなら、
餌を恵んでやるべきだ。
でも往々にして人は冷たい。
表面上は悲しみながら、『でも自分には関係ない』、
線を引いては去っていく。
私こと『上埜久』も、少女と同じ気持ちだった。
気休めみたいな言葉は要らない、同情するなら愛して欲しい。
それだけで――私はきっと救われるのに。
◆ ◇ ◆
「あー、今日も愛が欲しいわねー」
もはや口癖になったセリフを吐きながら、
私こと『竹井久』は、雀卓の上に突っ伏した。
心がカラカラ渇いてる。人にはいつも囲まれてるのに、
なんとなくどこか人恋しい。人の中に居て孤独を感じる、
これは私だけの感覚だろうか。
「あー、愛が欲しいわねぇ。焼き焦がれるくらいの愛が欲しい!」
何度も繰り返していたら、一緒にいた後輩のまこがため息をついた。
呆れたように、でもどこか寂しそうに。まこはぽそりと言葉を吐き出す。
「わしらの愛じゃ足りんっちゅぅのか?」
「足りないわねー。知ってるでしょ?
私すっごく欲張りなのよ。部員一人じゃとてもとても」
「だったら来年頑張りんさい」
上手く誤魔化せたのだろう。まこの表情が苦笑に変わり、
そこで会話はお開きとなる。だから私は心の中で、そっと小さく吐き捨てる。
(……そう、足りないのよ。貴女の愛じゃ『浅過ぎる』)
まこが薄情な人間だとは思わない。
ううん。世間一般と比較すれば、むしろ情に深いと言えるだろう。
でもそれは、あくまで『正常』の範囲内でだ。
『付き合うに足るから一緒にいる』、結局は打算の延長線。
もし私が付き合いきれない程病的な素養を見せれば、
いつかは諦め離れるだろう。そう、『あの人達』が別れたように。
(ああ、愛が欲しい。何があっても壊れる事のない愛が)
悲しませるのは本意じゃない、だから心の中で呟く。
この言葉を口に出せない、それがまこと私の距離なのだろう。
(ああ、誰か愛を頂戴。狂った程の愛を頂戴。
そしたら私も返すから。その手を掴んで離さないから)
願いは虚しく脳内で消えた。そして私はこれからも、
毎日願いを投げ続ける。今から約半年後、『宮永咲』が現れるまで――。
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
ずっと愛を求めてました。
私こと宮永咲は、とにかく愛に飢えていたのです。
かつてはくれる人が居ました。お姉ちゃん、誰より一番大好きな人。
でも。とある事件がきっかけで、私はお姉ちゃんを怒らせちゃって。
それから何度も追い掛けたけど、愛は一切もらえてません。
追い掛ける事に疲れた私は、本の世界に逃げ込みました。
本には愛が溢れてる。現実ではとても得られない、
綺麗でドロついた愛に満ちています。
今日読んだ本は心中話。人生全てに疲れ果て、恋人は二人身を投げる。
それは明らかに悲恋だけれど、私に灯るは羨望でした。
(いいなぁ、私も誰かと死にたいよ)
願わくばお姉ちゃんと。
そう考えてしまう私はきっと、もう『正常』ではないのでしょう。
自分の異常さは分かっています。だからそっと胸にしまって、
黙して語る事はありません。
なのに。語らず隠した激情を、勝手に読み取る人がいました。
「ふぅん。宮永さんって結構暗い話も読むのね」
つい最近知り合った生徒会――部長さん。
前に図書室で出会った時も、読んでる本を覗かれました。
正直あまりいい気はしません。読んでる本を見られるなんて、
内面を覗き見られるようなもので。思わず声音に棘が混ざります。
「明るい話は苦手なんです、なんだか薄っぺらく感じるって言うか。
現実はもっと非情ですから」
「わお、まったく同意見。ちなみにその本私も読んだわ。
感想としてはどんな感じ?」
声で拒絶は伝えたはずです、なのに食いついてくる部長。
紫の目に捉えられ、なぜだか私は身震いしました。
人懐っこい笑顔の裏に、底知れない『何か』が潜んでいるような。
「……えっと」
返事に窮して黙ります。本音を言えば『異常者扱い』でしょう。
適当にお茶を濁そうか。私が心に蓋をして、妥当な言葉を探していると――。
「ちなみに私は、『羨ましい』と思ったわ」
「……へ?」
――不意打ちが私を貫きました。
「だって普通に羨ましくない?
そりゃ境遇は不幸だけれど、最後に二人で逝けるのよ?
一緒に死んでもいいくらい愛してくれる人がいた、
それだけでもう幸せじゃない」
ドクンと胸が高鳴りました。
部長の胸に宿るのは、私と同じ暗い羨望。
思わず取り繕うのも忘れ、私は言葉を零していました。
「そのっ、私もそう思いますっ……正直二人が羨ましいです」
にたり。私の返事を聞いた途端、部長の顔が歪みます。
まるで獲物を見つけたような、酷く獰猛な獣のように。
背筋にゾクリと怖気が走り、でも、じわじわと胸が疼いてきました。
「…………そう。なら、私達結構気が合うかもね?」
両の瞳に捉えられ、鼓動が激しさを増していく。
浅い呼吸に喘ぐ私は、『そうですね』、そう返すだけで精一杯でした――。
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
多分恋だったと思う。
咲の『闇』に気づいた私は、瞬く間に溺れて行った。
ほじくり返せばどんどん出てくる。その闇深さに恋焦がれた。
『はい。宮永照は私のお姉ちゃんです』
『えと。実はその、うちって別居中なんです。
お母さんとお姉ちゃんは東京で、私はお父さんと二人きり』
『……はい。急に全国を目指し始めたのは、お姉ちゃんに会うためです』
『もう、普通には口を利いてもくれないから。
麻雀を通してなら会話できるかもって』
狂ってる。それが素直な感想だった。
でもだからこそ愛おしい。咲は悲劇に壊されて、
なのにまだ、『自分を拒絶する姉』を追い掛けている。
(この子、欲しいわ)
私が求める『異常な愛情』、きっと咲なら与えてくれる。
姉は拒絶してるんでしょう? なら、私がもらっても問題ないわよね?
だから私は楔を穿つ。すでに壊れている咲を、さらに瓦解させるため。
『うーん、難しいかもね? だって貴女、麻雀好きじゃなかったんでしょ?
そういうの、お姉さんにも伝わってると思うわよ?』
『……えっと』
『後はさ。お姉さんのいる白糸台って、今年三連覇が懸かってるわけじゃない?
そんな時に牙を剥くとか、むしろ逆効果だと思うけど』
『き、牙って……私は別にそんなつもりはっ……!』
『相手の気持ちを考えなさい? 麻雀嫌いと言ってた妹が、
よりにもよって、三連覇が懸かってる年にだけ出場してくる。
そして敵として立ちはだかるのよ? お姉さんからしたら、
嫌がらせにしか見えないんじゃないかしら?』
『…………そう、かもしれません』
咲はみるみる意気消沈、目には涙が浮かんでいた。
『麻雀を通して会話する』、咲には『起死回生の一手』に見えていたのだろう。
それを『悪手』だと酷評されて、瞳は見事に濁って行った。
『まあ、私には二人の関係性はわからないわ。
もしかしたら上手く行くかもね? だからちょっと試してみましょ?』
『試す……ですか?』
そうだ。『全国大会で一発勝負』、そんな博打を打つ必要はない。
麻雀を通して会話するなら、別に全国じゃなくてもいいはずだ。
『練習試合を組みましょう。白糸台と清澄で。
こっちにはインターミドルチャンピオンの和がいる、
受けてくれる可能性は結構あるわ』
咲の瞳が輝き始める。私がもたらすその提案は、
咲にとって『現実的な救い』だった。
とは言え無償の愛じゃない、私にとっても利のある話だ。
(これでお姉さんと復縁できるならよし。その時はすっぱり諦めましょう)
(でも、もし『私の予想通り』なら――)
きっと、咲はもっと愛らしくなる。
そんな未来を胸に秘め、私は醜くニタリと嗤った。
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
お姉ちゃんの学校と練習試合。
その提案は現実的で、自分が恥ずかしくなりました。
部長の言う通りです。何もわざわざ、
三連覇が懸かった全国大会で戦う必要なんてない。
むしろ会話をするためだったら、余計なしがらみは取っ払う方がいいでしょう。
「んじゃ、今から白糸台高校に電話するわね?
せっかくだからスピーカーホンにするわ。
上手くすればお姉さんの声が聞けるかもしれないし」
降ってわいた幸運に、自然と体が震えます。
こんなにも、こんなにも簡単にチャンスが巡って来るなんて。
どこか現実味がなくて、むしろ恐怖すら感じていました。
『プルルル、プルルル……ガチャッ。はいこちら、白糸台高校受付です』
「突然の電話で失礼いたします。
私、清澄高校麻雀部の部長で竹井久と申します。
この度は練習試合の申し出をしたく、
そちらの部長さんと連絡を取りたいのですが……」
『練習試合の申し出、ですか?』
「はい。なおこちらにはインターミドルチャンピオンの原村和と、
『宮永照の妹がいる』とお伝えください」
『かしこまりました。麻雀部の部長に確認しますので、今しばらくお待ちください』
人当たりのよい女性の声が途切れ、機械音声が続きます。
改めて部長に感謝しました。こんな行動、私ではとても無理だったから。
「門前払いは避けられたわねー。さぁて、吉と出るか凶と出るか!」
「えっと、勝算はありそうですか?」
「半々ってとこかしら? 白糸台の部長なら、
『宮永照の妹』ってキーワードは気になるでしょうし。
おそらくお姉さんに確認を取るでしょう。
後はまぁ、お姉さんがどう言うかよね」
「……お姉ちゃん次第って事ですか」
「そ。向こうにも仲直りする意思があるなら拒まないでしょうし、
そうじゃなければ――――そうね、『覚悟』はしておきなさい」
呼吸が浅くなりました。覚悟。そう、覚悟が必要です。
ここでお姉ちゃんに拒絶されたら、もはや絶縁されたも同じ。
もうお姉ちゃんと仲良くする事はできないでしょう。
張りつめながら待つ事数分。ガチャリ、受話器を取る音が聞こえました。
続いた女性の言葉からは、どこか申し訳なさが滲んでいます。
『お待たせして申し訳ありません。
ただいま麻雀部の部長に確認を取ったのですが、
今回は辞退させていただくとの事です』
「……あの、失礼ながら念押しで確認させてください。
宮永照の妹がいる事はお伝えいただけましたでしょうか」
『はい、伺った内容をそのまま伝えました。ですが、
部長が宮永さん当人に確認したところ――』
◆ ◇ ◆
『「私に妹はいない」と、そう宮永さんに言われたそうで』
◆ ◇ ◆
その後の事は覚えてません。
次に正気を取り戻した時、電話はすでに終わっていて。
私は部長に抱きすくめられ、ボロボロ涙を零していました。
「うっ、うっ……えぅっ、ぇぐっっ」
「ごめんなさい……本当にごめんなさいっ……!
こんな酷い事になるとは思ってなかったの……!」
「関係を見誤った、もっと慎重に動くべきだったわ。
全部私が悪かったの、こんな事を言い出さなければ――」
部長も涙を流していました。部長は何度も謝るけれど、
いいえ、むしろ部長に救われたのでしょう。
もしこれが全国大会まで行った上での仕打ちだったら、
きっと私は耐えられなかった。いや、今も耐えれてないけど、
今よりもっと辛かったはずです。
「ちがっ……いますっ……わた、わたしがっ……
まち、がってたんですっ……」
「もうっ……きっと、おわってたんですっ……」
そう、これは部長のせいじゃない。
私達はもう終わってた。なのに私が追いすがり、
周りを巻き込んで迷惑をかけた。ただそれだけの事なのです。
諦めるべきでした。『あの日』、一言も話してもらえなかった時点で。
「ごめんなさい、それでも私の気が晴れないの。
私にできる事なら何でもするわ、なんでも好きな事言って」
涙に濡れた部長の瞳が、宝石のように輝いています。
その光が悲しくて、でも、『綺麗だな』って思いました。
記憶が脳裏によぎります。
悲しみに暮れ涙する二人、最後に残る希望は『逃避』。
部長は『羨ましい』と言ってくれた、いっそこのまま部長と二人で――。
「ほんとうに……なんでも、いいん、ですか?」
「ええ。私にできる事なら何でも。
一緒に死ねと言われたら、二人で湖に飛び込むわ」
まるで心を読むかのように、部長はピタリと言い当てました。
期待に胸が膨らんで、でも。『それだけはやっちゃ駄目』、
どこかでブレーキが掛かります。
「『いまは』、そこまではいいです……でも……」
「でも?」
「しばらくのあいだ……あまえさせてください」
死の誘惑は酷く甘美で、でもまだ早いと思いました。
今は何も考えたくない、ただただ甘やかして欲しい。
そう。それこそ――『昔お姉ちゃんがしてくれたように』。
「そう……わかったわ。所詮は代替品だけど、
私の事を『お姉ちゃん』と思ってくれていいから」
またも部長はピタリと言い当て、私の事をかき抱きます。
優しい腕に包まれながら、私はそっと瞼を閉じる。
ぼたりと涙が零れ落ちて、気分が楽になりました。
今でも胸は酷く苦しい。まるで全身を裂かれたように、
痛くて悲鳴を上げている。それでも部長がいてくれるなら、
乗り越えられる気がしたんです。
「……おねえ、ちゃん」
無意識に吐いたその言葉。それが一体『誰』を指すのか。
もうわかりませんでした。
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
◆ ◇ ◆
わかってた。一度千切れてしまった絆は、そう簡単には戻らない。
いっそ捨ててしまうが得策、新しい関係を作る方が簡単だと。
咲の話を聞いた時、私にはある種の確信があった。
『お姉さんはきっと拒絶する』。素直に好意を受けとる人なら、
ここまでこじれはしないから。
咲は完全に壊れてしまった。『私に妹はいない』、その言葉を受け入れた。
そして今では私に抱き着く。満面の笑みで甘えながら。
「お姉ちゃーん!」
「はいはい、咲は甘えん坊ねぇ」
記憶を改ざんしたのだろう。咲の中にもう『宮永照』は存在しない。
いるのは『久お姉ちゃん』、『義理の姉』で『最愛の人』。
歪で苛烈な愛だった。宮永照が穿った穴を、必死で埋め合わせるように。
咲は私に傾倒し、溺れ、全てを独占しようとする。
「さてと、そろそろ予鈴のチャイムが鳴るわね。
咲も自分の教室に戻りなさい?」
「えー、まだもうちょっとー」
「そう言ってこの前もサボったでしょう?
大丈夫、また休み時間に覗いてあげるから」
「ぶーっ、お姉ちゃんは私と離れ離れになっても平気なの?」
「平気なわけないでしょう? 何ならこのまま心中でもする?」
「んー、それはまだいいや。今がちゃんと幸せだから」
咲と私の熱愛は、既に噂になっている。
休み時間のたび逢瀬を重ね、熱く愛を語り合う。
不気味なものを感じたのだろう。大半の人は眉を顰め、
ひそひそ小声で何かを語った。
人がどんどん離れていく、その疎外感が心地いい。
冷たい人は要らないの、欲しいのはただ苛烈な愛だけ。
だから――咲以外はもう要らない。
「ねえ、咲。貴女は私を愛してる?」
「もちろん」
「じゃあ、もし私が一緒に死にたいって言ったら死んでくれる?」
「うん。……なに、お姉ちゃん死にたいの?」
「いいえ、今は大丈夫。でも――『その時が来たら』一緒に死んで?」
「うん! 私もお姉ちゃんと一緒に死にたい!」
咲は当然のように笑って返す。
『狂ってる』、心から素直にそう思った。
だからこそ愛おしい。だって私も狂っているから。
◆ ◇ ◆
『同情するなら金をくれ』、そう言った子はどうなったのか。
私は結末を知りはしない。でも何となく思う。
その子はきっと、私と同じ結末を『選んだ』んじゃないだろうか。
お金も愛も答えは同じ、ただ願っても手に入らない。
他人任せじゃ駄目なのだ、自分で掴みに行く必要がある。
(だから私は自分で掴んだ。別に問題ないでしょう?
だってお姉さんは『要らない』って言ったんだから)
私の腕の中で眠る咲は、年より随分幼く見えた。
愛情に飢えていたのだろう。姉が注がなかった分、私が愛を注ぎたい。
(そして私に返してね? 私だって愛されたいから)
一人でクスリと微笑むと、咲の額にキスを落とす。
咲はわずかに身もだえるも、幸せそうに小さく笑った。
(完)
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ピッタリ重なったふたりの心の内は、まさしく歪んだ愛そのもの。素敵でした。
発想と表現の巧みさにはただただ頭が下がります。いらないのなら私がもらう。冷酷なほど現実的で、非情なほどの久さんの狂気が、もう。
ふたりの「心の中」がいつ終わりへ向かうのか、語らずとも遠からずの破滅を予感させる。狂的で病的な余韻が妖しく胸に響きますね。
とても良き作品、ありがとうございました。
自分と同じ量の熱を持った相手を待っていたのがいじらしくてすごい可愛いです。
ひっささき!ひっささき!
ふたりの「心の中」がいつ終わりへ向かうのか>
久「案外寿命まで持つかもしれないけどねー。
咲の愛が尽きなければ」
咲「まあ、どちらにせよどっちかが
死んだら『おしまい』ですけどね」
自分と同じ量の熱を持った相手を待っていた>
久「作ろうと思えば作れたと思うわ。
でも、それじゃ人形と変わりないもの」
咲「お姉ちゃんって、いつも肝心なところで
相手がきてくれるのを待っちゃうよね……」
ひっささき!ひっささき!>
久「ひっささき!」」
咲「ひ、ひっさ、さき……?」