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【咲-Saki-SS:恭郁】『貴女は決してひとりじゃない』 −後編−

<あらすじ>
末原恭子
「この話の続きや」
http://yandereyuri.sblo.jp/article/188348092.html


<登場人物>
善野一美,赤阪郁乃,末原恭子,愛宕洋榎,真瀬由子

<症状>
・発達障害
 (注意欠陥・多動性障害)
 (自閉スペクトラム症)
※リクエストの都合上闇成分はありませんのでご注意を。

<その他>
以下のリクエストに対する作品です。
(欲しいものリストでプレゼントを
 贈ってくださった方のリクエストです。
 ノートPCスタンドありがとうございました!!)

※リクエスト内容が非常に詳細なため、
 内容は末尾に記載しておきます。

※リクエストの都合上、
 本編とは異なる展開になります。

※注意事項。リクエストの都合上、
 赤阪郁乃がやってきたのは、
 『末原恭子が2年生時の春季大会【前】』という設定です。
 (原作では春季大会時で前後は不明)


--------------------------------------------------------



(前編はこちら:http://yandereyuri.sblo.jp/article/188348092.html


◆ ◇ ◆

◆ ◇ ◆


 改めて状況を整理する。

 代行の強みはデータを幅広く集める情報収集能力と、
そうして得た情報を細かく分析できる事。

 対して弱みはそれ以外。コミュニケーション力、
監督としての管理能力、交渉力、何もかもが最底辺だ。
これらを鑑みた結果、私はこう結論づけた。

「代行。今年1年は捨てましょう」

「え、えぇ……?」

 ぶっちゃけよう、今の姫松はボロボロだ。
善野監督が病に倒れた。さらには代行に引っ掻き回され、
夏までの再起は難しい。何より、代行は分析を始めたばかりだ。

 白糸台や千里山のような強豪校はある程度分析したらしいが、
そもそも予選が突破できない。全国以前の問題だ。

「まずは部内の基礎固めをします。春落ちたんも都合がいいです。
 強豪校と練習試合をしまくって、データをごっそり掻っ攫いましょう」

「で、でもな末原ちゃん。私、今年の夏に結果出さんと
 クビになるんやけど〜」

「んなもん交渉で何とでもなりますわ」

 まずは校長の合意を取り付ける。
二人で校長室に出向き、私は熱弁を奮ってみせた。

「――というわけで、代行の真骨頂はここからです。
 努力が花開くのは来年の夏になるかと思います」

「そのためには膨大な分析が必要となります。
 どうかこの夏までと言わず、来年の夏まで待ってください」

 当然ながら校長は鼻白む。『最悪でも予選は突破できる』、
そう思っていたからだろう。明らかに代行の悪影響を懸念していた。

「そうは言っても末原さん。彼女が監督になってからの
 我が校の弱体化は著しいものです。
 その不安材料を覆すだけの根拠は提示できるのですか?」

「できます。こちらの資料を見たってください」

「…………これは……!?」

「代行が就任後2ヶ月で作り上げた資料です。
 今は資料を作った段階、部員に適用するのはこれからです。
 この資料を使うだけでも、去年と同レベル以上にはなるでしょう」

「それでもまだ足りません。残念ながら、
 姫松高校と全国トップはそのくらい開きがある。
 だからこそ1年越しの分析が必要です」

「このままやって、『強豪校止まり』でええんならそれもええです。
 でも、校長が『優勝』を狙うなら……今年一年の猶予をください」

 『強豪』ではなく『頂点』を目指す。
その言葉は校長の胸に響いたのだろう。
校長は深く息を吐き、やがて大きく頷いた。

「…………わかりました。貴女達二人に賭けてみましょう」

 深々と頭を下げて退室、ほっと胸を撫で下ろす。
代行が間延びした声で私の事を褒めそやした。

「末原ちゃんすごいなぁ〜、校長をだまくらかしたやん〜」

「……もう少し言葉遣いっちゅうもんを覚えてくださいよ。
 別に騙してへん、優勝狙うんは事実です」

「これは借金です。でかい口叩いた分、
 来年結果出さんかったらめっちゃ叩かれます。
 そのへん理解しといてください」

「わかったわ〜、全力で分析したろや〜ん」

「……いや、倒れられたらかなわんですし、
 こっちで管理させてもらいますわ」

 まずは第一関門突破、代行のクビ問題は解消された。
次にこの一年を有効活用、今後の方針を決めていく。

「練習試合を組みましょう。相手は春大会の予選トップ。
 いつもの私らなら戦えませんが、
 今回は予選で敗退しとるから大丈夫です」

「練習試合は2年中心、でもあくまで相手の情報収集が目的です。
 公式試合は3年で固めましょう。
 こっちからの情報はシャットアウトして、
 相手の情報だけもらいます」

 どうせ3年は今年で引退、手の内を知られても痛くはない。
実戦経験を積むために練習試合では2年以下を投入するが、
これも本気は出させない。あくまで『場馴れ』目的だ。

 夏負けた事が好機となった。
全国大会の県代表同士は練習試合は出来ない。
姫松高校は全国常連、本来であれば県代表強豪校とは戦えない。

 だが今回は予選落ち、気兼ねする事なく申し込める。
相手も強い相手と練習試合したいわけで、両者の思惑は一致した

「でも末原ちゃ〜ん、練習したいだけなら
 全国大会後の隙間を狙えばええんとちゃうの〜?」

「それやと『隠し玉』は出てこんでしょう?
 でも大会が始まった後は、オーダーがすでに割れとります。
 『大会メンバーと試合がしたい』言えば、
 『隠し玉』も出さざるをえんはずです」

「手配の方は私がやります。代行はまず2年以下が主力になっとる
 全国のチームを洗い出してください」

 そこから1年は雌伏の年だった。
練習試合をしまくって、データを集めては代行に分析をお願いする。
相手の癖や能力を徹底的に分析した。

 もちろん部内の強化も忘れない。
代行と部員の間に立ち、橋渡しを買って出る。
代行の分析結果を私が噛み砕いて部員に伝授する。

 資料の効果は絶大だった。結果として、
『捨てた』はずのインターハイでも全国5位には食い込んだ。
その功績が評価され、部員達の目も変わってくる。

「代行のアドバイス通りにしたらスランプ脱出できたわー」

「うちも和了率めっちゃ上がった! なんや代行凄いんやん!」

「まぁ本人からは直接指導してもらえんけどなー。
 障害持ちらしいから色々アレやし」

「ま、そのへんは『参謀』経由で聞けばええやろ!」

 こうして私達は着々と基盤を固めていく。
そうして1年の年月が流れ、春季大会が終わる頃。
強豪校の分析は、ほぼ完了し尽くしていた。

 これなら夏には勝負ができる。私はほっと一息をつく。
でも私とは裏腹に、代行は硬い表情でパソコンの画面を凝視していた。


◆ ◇ ◆


「あ〜、ねぇねぇ末原ちゃ〜ん。
 私、とんでもない見落とししとったかも〜」

「なんですか?」

「いくつかノータッチの高校があるんよ〜。
 多分この子達、全国でめっちゃ活躍しそう〜」


◆ ◇ ◆


「特にこの『清澄』と『阿知賀』。
 うちらもこのままやと食われるかも〜」


◆ ◇ ◆

◆ ◇ ◆


「え、ど……どうしてです?
 清澄も阿知賀も聞いた事ないんですけど」

「ええとなー、まず清澄高校なんやけどー、
 これ、多分宮永照の妹がおるわー」

「はぁ!?」

 代行は語る。その昔、
『アイ・アークタンダー』なるプロ雀士がいた事。
彼女はもう引退したが、確か結婚して『宮永』姓に変わった事。
その後2人の子供を生んだ事。

「もしかしてと思ったらビンゴやったわ〜。
 長野県の清澄高校に宮永咲って子がおんねん〜。
 多分この子、今年のインターハイに出てくるんちゃう〜?」

「後な〜、阿知賀は過去に一度だけ
 全国の準決勝まで行っとるんやけど〜、
 その時のエースが赤土晴絵って人なんよ〜。
 この人は善野さんも一目置いとってな〜?
 分析力が鬼なんや〜」

「で〜、去年の冬からその赤土さんが顧問になっとるで〜?
 いきなり過ぎて不気味やろ〜?」

 エトセトラ、エトセトラ。他にも『宮守女子高校』だとか、
聞いた事のない名前が飛び出す。こちらは阿知賀と同じタイプで、
『熊倉トシ』というシニアで有名な雀士が
『今年から』顧問についているらしい。

「はぁぁぁなんやねんそれ……!
 完っっ全にノーマークやん」

 無名校の存在、それ自体は意識していた。
にしても隠し玉が多過ぎる。

「どうする〜? 練習試合申し込む〜?」

「いやいや、多分受けてくれませんわ」

 おそらくこいつらは『ダークホース』、相手も自覚しているはずだ。
そんな中、『突如として強豪校からオファーが来る』。
彼女達はこう思うだろう。

『どうやって自分達を発掘した?』
『驚異的な情報収集能力だ』
『事前に手の内をさらせば死活問題になりうる』

 自分から『マークしてください』と名乗り出るようなものだ。
むしろこちらが徹底的に分析される可能性が高い。

「確かにな〜、でも、ならノーガードで行くん〜?」

「もうちょい考えさせてください。

 何校かは予選後の分析でも間に合うだろう。
それでも時間には限りがあるし、予選では能力を隠す可能性もある。
できるだけ事前に戦っておきたい。

「……せや。それなら罠にかけましょか」

「罠〜? 落とし穴でも仕掛けるの〜?」

「そうです。自分らを餌に引き寄せます」

 こちらから申し出るのではなく、
相手の方から出てきてもらえばいいのだ。
私は早速計画を練り、代行経由で実施させる――。


◆ ◇ ◆


「みんな! 来週は大阪まで旅行するわよ!」

「えぇ!? 急に何があったんですか!?」

「大阪の姫松高校がね、練習試合の相手を無差別で募集してるのよ。
 本来ならうちじゃ相手にしてもらえないビッグネームだもの、
 この機会を逃す手はないわ!」

(手の内知られるリスクはあるけど、
 今の戦力じゃ予選も突破できないしね……)


◆ ◇ ◆


「はーい注目、今週末は大阪の姫松高校と
 練習試合するから」

「超強豪じゃん。ハルエ、どんな裏技使ったの?」

「それがさ、向こうが募集してたんだよ。
 『練習相手を募集してます!』ってブログでさ」

「……姫松は正直かなり不気味だ。去年のインターハイなんか、
 わざわざ愛宕を抜いて3年生で固めてたしね。
 ここらできっちり分析したい」


◆ ◇ ◆


「聞け諸君! 我々有珠山高校は、
 来月姫松高校と練習試合をする事になった!」

「どこそれ」

「大阪だよ。ほら、Weekly麻雀TODAY。
 ここに載ってるだろ。去年の全国5位の高校だ」

「はぁ? なんでそんな強豪校が、
 うちみたいな無名を相手してくれるわけ?」

「知らない相手と戦いたいだってさ。
 ここで名を売っとけば、ユキのアイドルデビューにも繋がるぞ!
 揺杏、衣装を準備してくれ!」

「練習試合でコスプレさせる気なの?」


◆ ◇ ◆


 この作戦は功を奏した。危険視していた清澄高校と阿知賀、
さらには有珠山高校という
完全ノーマーク校を見つける事に成功したのだ。

 宮守女子は掛からなかった。でも、
こちらは情報収集部員を派遣、直接選手を調べ上げる。

「ごめんね〜、こんな雑用押し付けて〜」

「全然ですわー、赤坂監督の分析能力は皆が信頼しとります。
 その監督が見つけた高校、こらもう当然要チェックですわ!」

「ばっちりがっつり調べてきます! 後の分析頼んます!」

 結果、驚きの事実が明らかになる。
岩手の山深くに隠れた村、『彼女』は
『バケモノ』と呼ぶべき能力を持っていた。

「はぁ〜……『背向(そがい)のトヨネ』なぁ。
 マジでこういう奴おるねんな」

「はい! 聞けば追っかけリーチすると
 先制リーチ者から直撃を取れるそうで。
 後はこう六曜言うて、他にもいくつか教えてもらいましたわ!」

 こうして部員が一眼となり、代行の分析をサポートする。
代行が対戦データを分析した後は、
それを部員全員でアイデアや意見を出し合った。

 去年から続けてきた風習だ。ただでさえアレな代行は、
普段は部員とコミュニケーションを取れない事が多い。
だからあえて得意分野で議論させ、意識を共有させるのだ。

 当初は『除け者』だった代行も、おかげで皆と打ち解けた。
今では代行が困っていると、部員が助け舟を出してくれる。

「あ、監督。ちょっとここ聞きたい事が――」

「しーっ。ちょぉ待て新人、今は話し掛けたらあかん。
 この時間の監督は集中モードや。
 話し掛けるとパニックになる、質問タイムまで待っときや」

 医師から聞いた情報によれば、発達障害の人間が生きていくには
周りのサポートが必要不可欠となるらしい。
障害固有の特性を理解し、『生きやすい』環境を提供する必要がある。

 今の姫松ならそれができる。そのせいか、代行の表情も変わり始めた。
以前の貼り付けたような笑顔から、自然で柔らかい笑顔へと。

「末原ちゃんのおかげや〜」

「……礼を言うのはまだ早いわ。優勝した時までとっとき」

 それを『嬉しい』と思うのは、きっと『世話役』だからだろう。
それ以外の理由はない。でも――気づけば常に代行を、
目で追うようになっていた。


◆ ◇ ◆


 代行が見つけた高校は、どこも予選を突破した。

 それも強豪を押しのけてだ。長野は風越と龍門渕が、
奈良には晩成高校が。北海道には琴似栄あったというのに。

 心底代行に感謝する。ノーマークでぶつかっていれば
苦戦は必至だったろう。まあ、宮守の分析はこれからだけど。

「よーし、宮守の分析めっちゃ頑張るで〜」

「あかんあかん、昨日も3時まで徹夜したやろ。
 今日は絶対睡眠や。22時になっても起きとったら電話するで?」

「恭子、そんなんどうやって把握しとるん?」

「スマートウォッチ着けさせとります。
 入眠時間とか記録されるんで、
 その情報をうちのスマフォと連携しとるんですわ。
 寝とらんかったらうちのスマフォに通知が着ます」

「はー、睡眠まで管理しとるんか」

「そうでもせんと無茶しよるんで」

「気遣いの鬼やな」

「もはや夫婦のレベルなのよー」

 『夫婦』。その言葉を聞いた途端、胸の鼓動が早くなった。
違う、そういう関係じゃない。あくまで自分は『世話役』で、
そうせざるを得ないだけで――。

 なのに。こいつは平然と真に受ける。

「末原ちゃ〜ん、うちら二人夫婦やって〜」

「ああもう由子、こいつの前でそういう事言ったらあかん!」

「えぇ〜、末原ちゃん、私と夫婦になってくれんの〜?
 私、もう末原ちゃんおらんと生きていけんけど〜」

「なっ……!? だっ、だからお前は言葉を選べやっ!!」

 一瞬にして部室は騒然、にわかに皆が色めきだった。

『やっぱりあの二人付き合うとるんや』
『うちはわかっとった。もう雰囲気が完全に熟年夫婦やし』
『いっつも一緒におるねんな!』

 私はそれで撃沈し、真っ赤になって俯いた。

(ちゃうねん、うちには善野監督が……)

 でも。どれだけ邪念を払い除けても、
代行の『のほほん』とした顔が溢れ出す。

(うち……どうしてしまったんやろ)

 答えは正直もう出てる。それでも心に封をした。
そういう事を考えるのは、後。まずは全国大会だ――。


◆ ◇ ◆


 そして全国が始まった。開会式は無事終わり、
次に対戦相手の抽選。代行は緊張しっぱなしだ。

「あぁ〜どうしよう末原ちゃん〜。
 ここでコケたら全部台無しや〜」

「ああもう、シャキッと座っとれ!
 やるだけの事はやってきたんや」

「でも〜」

 代行の気持ちはよくわかる、実は私も緊張していた。
1年間、この大会に全てを懸けてきたのだ。
それが一瞬で水泡に帰す、考えるだけで恐ろしい。

 でも、だからこそ私は胸を張る……たとえ足が震えようとも。

「……自分の事を信じてください。
 それが無理や言うんなら、うちと部員を信じてください。
 代行の必死の努力、きっと無駄にはさせません」

 くじ引きによる抽選の結果、
なんとマークしていた無名校の全てと戦う事になった。
清澄と宮守女子は2回戦。
有珠山とも準決勝で、そして阿知賀は決勝で。

「まさか全国で竹井と会うとはなー」

「あら? 私は最初からそのつもりだったわよ?」

「抽選の時めっちゃ緊張しとったやん?
 今日は大丈夫なんか? 木偶(でく)やと正直つまらんからな」

「ふふ、たっぷり『おもてなし』してさしあげるわ」

 2回戦の中堅戦、舌戦を交わす主将と竹井。
その様子を見たアナウンサーが、目ざとく実況で口を挟んだ。

『あれ? なんかあの二人親しそうだね。
 すでに面識あるんじゃない?』

『姫松高校は今年の春から夏にかけて
 全国の高校と練習試合を行っています。
 その時清澄高校とも試合していますね』

『えぇー、でも言っちゃ悪いけどさ、
 清澄って今年出てきたばっかの
 完全ノーマーク校だったじゃん?
 姫松もよくそんな練習試合受けたね』

『それだけ姫松高校に先見の明があったのだと思います。
 姫松高校と練習試合をした高校は他にも
 阿知賀女子学院と有珠山高校がありますが、
 どちらも全国出場している上に1回戦も突破していますし』

『うわ、姫松やっばいねー!
 すこやんは清澄の事も全っ然知らなかったのに!』

『別に私を下げなくても良かったよね!?
 これは姫松高校を褒めるべきだよ!』

 小鍛治プロの言う通りだ。何しろこれらの3校は、
予選を突破するまで麻雀記者ですらノーマークだったのだから。
あえて言うなら清澄には原村和が居たが、
団体戦で勝ち上がってくると予想した者はいなかった。

「代行褒められとりますよ」

「私の手柄やないよ〜、練習試合できたのは
 末原ちゃんのおかげや〜ん」

「……ほな、二人の手柄っちゅう事で」

「ツッコミにノロケられるとつらいのよー」

 対局は終始有利に進んだ。竹井久は特徴的で、
知っていれば対策しやすい。素直だったはずの捨て牌が、
急にキモくなったら危険のサインだ。
事前に情報を得ていた主将は、危なげなくトップを守った。

 終盤戦、私についても問題はない。
危険視するは『背向のトヨネ』、こちらも対策は至って簡単。
追っかけられないよう闇聴で通せばいい。

 他にも裸単騎だと確実に上がれるらしいが、
鳴きの速攻なら望むところだ。

 宮永妹も問題はなし。カンをして手が進む場合、
宮永は必ず嶺上牌に視線を送る。
そのタイミングでずらしてやれば、
彼女は勝手に調子を崩す。

 事前調査が功を奏した。終始有利に勝ち上がる。
準決勝、さらに決勝へと駒を進めた。
そして、そして――。


◆ ◇ ◆


『試合終了ー!! 姫松高校の末原恭子、
 得意の速攻で喰いタン和了!
 そして同時にこの瞬間、大会覇者が決定だーっ!!』


◆ ◇ ◆


『何と何と大番狂わせ! インターハイの団体戦、
 強豪姫松高校が白糸台の三連覇を阻止、
 悲願の全国優勝ですっ!!!』


◆ ◇ ◆


 私達の、1年越しの挑戦が見事結実したのだった。


◆ ◇ ◆


『優勝おめでとうございます!
 監督とメンバーへのインタビューをお願いします!』

 姫松に記者が殺到する。興奮冷めやらぬ記者達は、
まずは立役者である『監督』を狙い撃ちした。

 早速アレな事を口走ろうとする代行。
そんな代行の口を塞いで、記者の前に立ちはだかる。

「すいません。代行はしゃべるのが苦手なので、
 私が仲介する形にさせてください」

「一人ずつ順番にお願いします。
 まずはそちらの記者さんからどうぞ」

『ありがとうございます。今年の姫松高校は、
 終始試合の流れを読んで先手を打っていたと感じました。
 監督としてはいかがでしたか?』

 特に問題のない質問だろう。
私は代行に目配せすると、小さく頷き回答を促す。

「えっとぉ〜、ほぼほぼ予想した通りでした〜。
 末原ちゃんのおかげです〜、末原ちゃん大好きや〜」

「ちょっ、おま!?」

『なるほど。監督と末原選手の「夫婦のような連携プレイ」が
 勝利の鍵だったという事ですね!』

「まだ結婚はしてませんけどね〜、
 私はそうなったら嬉しいけど〜」

「あーもう代行はしゃべらんといてください。
 次の記者の方お願いします!」

 キラーパスばかり飛ばす代行を肘で小突きつつ、
次々に記者をさばいていく。それを見ていた隣の主将が、
小声でこっそり呟いた。

「……なんや二人の結婚会見みたいになってきたな」

「末永くお幸せになのよー」

「その声マイク拾っとるで!? お前らまでボケに回んなや!!」

 孤軍奮闘が延々続く。声を張り上げ続ける私、
代行はずっと笑っていた。でも、そのヘラヘラした笑みの端には、
わずかに涙が煌めいている。それを見て、わずかに目の奥が熱くなる。

 今から1年と少し前。代行はクビ寸前だった。
発達障害がもたらす部内不和。
誰にも助けを求められず、一人で床に倒れ込んだ。

 後から善野さん経由で聞いた。代行は、
最初から『自分には無理だ』と訴えていた事を。

 でも代行は成し遂げた。そして見事に証明したのだ。
発達障害を患っていても、周りと互いに助け合えれば――。


◆ ◇ ◆


 日本の、頂点に立つ事だって可能な事を。


◆ ◇ ◆

◆ ◇ ◆

◆ ◇ ◆


 数年後。末原ちゃんは教師になって、その後私と結婚した。
今では末原ちゃんと二人、姫松の名物コンビとして活躍している。

「麻雀部顧問の末原恭子や。最初に言っとく事がある」

「うちには別に監督があるけど、
 こいつに管理を期待したらあかんで。
 郁乃は基本ポンコツや」

 時には衝突もするけれど、基本はうまくやっている。
『名監督』と呼ばれる事も増えてきた。
時には『迷監督』なんて言われもするけど。

「んじゃ、まずは新入部員の自己紹介と行こか。
 一年生は右から順に、一言ずつしゃべってや」

「あ、あの、その、えと。い、1年3組、三島楓です。
 その、わ、私も発達障害で――」

 私が発達障害な事は、特に隠さず公開している。
それがきっかけになったのか、
こうして発達障害の子がよく入学してくるようになった。

 自然と末原ちゃんを見る。彼女は穏やかに微笑んでいた。
そして私に頷くと、優しく新入生に語り掛ける。

「そか。まー知っとると思うけど、うちの学校は
 『発達障害者と共存できるモデル高校』としても有名や。
 あんたは決して一人やない。
 何かあったら遠慮なく助けを求めてええからな」

 声を掛けられた一年生は、ただそれだけで涙ぐむ。
気持は痛いほどよくわかった。基本発達障害者は、
助けを求めてさまよってるから。

「私も発達障害やから、気楽に話し掛けたってな〜。
 ま〜私とでは会話にならんかもしれんけど〜」

「そこは監督としてばっちり決めろや!?」

 ドッと笑いに包まれる、一年生も笑顔になった。
思わずこちらの涙腺も歪む。
こんなふうに笑える日が来るなんて思わなかったから。

 ずっと独りぼっちだった。最期まで独りぼっちだと思っていた。
でもそれは間違いだった。善野さんの笑顔が浮かぶ。

『な? なんとかなったやろ?』

 私はもう独りじゃない。ううん、
最初から独りではなかったのだろう。
敬愛する先輩と、支えてくれる部員達と、
そして何より――最愛の妻がそばにいる。

「末原ちゃん。これからも末永くよろしくな〜」

「うん? うん、まあ、よろしくな?」

「なんでいきなり二人で告白しあっとるんですか」

「これだから凸凹コンビは……」

 またも笑いに包まれる。ああ、本当に幸せだ。
どうかこの幸せが、末永く続きますように。
そして――。


◆ ◇ ◆


 どうかこの幸せが、『仲間』にもおすそ分けできますように。
私はそう願いつつ、今日も姫松で働いている。


(完)


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<いただいていたリクエスト>

病気で倒れた善野さんは赤阪さんを呼び私の代わりの監督をするよう頼む
赤阪さんは私は発達障害だから迷惑かけるので断る

発達障害の特性で高校を転々として前の高校も散々迷惑かけてしまった
善野さんもよく知っているはず
善野さんは
不器用だからこそ偽る事なく直向きに真面目に部員の為に頑張るあなたこそが監督適任と言う

赤阪さんはそれでも断るが善野さんが強引に後任手続きをしてしまったので仕方なくやる事に
初日から不適切な発言・遅刻する・机は散らかっているから物は無くす・意思疎通出来ない
みんな麻雀で吹き飛ばして指導にならない
電話やコミュニケーションが苦手など
高校から孤立してしまう

末原さんも赤阪さん嫌いで部が円滑にいく訳もなく
不協和音のオンパレードの状況で全国大会に行けるはずもなく
春大会予選敗退と異例の事態に

OBや周りからの批判の嵐が凄まじく赤阪さんにぶつけられる
末原さんは発達障害を疑うけど
赤阪さんは自分が発達障害なのは知っていて
小さい頃から診断されて以来涙ぐましく足掻いたけど
どうすることも出来なかった

末原さんはだったら監督やるなと怒りに任せて突き放す
ある日赤阪さんは突然倒れて病院へ
原因は過集中による寝不足と過労にストレス
末原さんは赤阪さんが
全部員の細かい分析データや全国の対戦相手の分析データと情報収集を見て
直向きに真っ直ぐ私たちの為に戦っているのに
私は障害者だと線引きしてソッポを向てしまった
恥ずかしい自分をぶん殴ってやりたい
ここから気持ちを入れ替えて
赤阪さんをサポートする為に本や医師に相談して
対処を勉強して二人三脚で歩む決意をする

不規則な生活に偏食に何か突発的な事が起こると
エラーしたみたいにあたふたする
過集中になって体調不調を起こし無理に止めると癇癪を起こすなど
苦労したけど彼女の強さも分かった


赤阪さんの強みはデータを幅広く集める情報収集と細かく分析する事
末原さんは一計を案ずる
春全国大会の県代表同士は練習試合は出来ない
そこで全国大会常連の姫松高校が県代表強豪校にアプローチする
相手も強い相手と練習試合したいので両者の思惑は一致した

春負けた事が思わぬ好機だった
データを集めては赤阪さんが分析する
相手のくせや能力を分析
赤阪さんの頑張りと末原さんの協力のおかげで
部員達も赤阪さんの障害を理解してくれて部員の為に頑張ってくれている事に好感を持つ


春の全国大会は終わり私たちの需要は落ち着いてきた
赤阪さんの細かい情報収集で無名だか全国へ行く高校を発見する

『↓----ここからは整合性が取れなくなるので修正しました----』

そこで今度はダークホースへの対処情報収穫の為
岩手長野奈良北海道の高校へ練習試合を申し込む
が上手くいかない

赤土さんや獅子原さんや熊倉さんに竹井さんも
こんなにも早く活躍する事を見越して試合申し込む事に驚き
手の内を見せれば死活問題になるからと渋る
赤阪さんは駆け引きがとても苦手
そこで末原さんは一計を練る

宮守女子には狭い世界で打つより
今後羽ばたく事を見据えて外の経験をつんでみてはと誘い
 [変更理由]
  熊倉トシは明確に手の内を隠す方向で動いている。
  さらに熊倉トシの人脈を考慮すれば、
  プロ雀士を対戦相手にピックアップする事も可能そう。
  姫松に手の内を見せる必要がない。
-----------------
清澄には咲と照が姉妹らしい事は赤阪さんの調べで分かっているので
全国目指すなら照や他の強豪の情報も欲しいはず
 [変更理由]
  過去の牌譜は竹井久でも入手可能。
  こちらの手の内を晒すに足る情報かと言われると微妙。
-----------------
ある程度なら情報を融通するから練習試合して欲しいと頼み
有珠山は来年爽が抜けた後に備えて
部活運営のノウハウ教えるから試合して欲しいと口説き
 [変更理由]
  時期的に無理。予選が終わるまでに有珠山を見つけるための情報が皆無。
  予選終了後は県代表同士になっているので試合ができない。
-----------------
阿知賀には全国目指すなら2位の所だけでなく
一位の強豪とも戦って実戦の経験はつける方が良いのではと誘う
 [変更理由]
  阿知賀が2位チームと戦ったのは予選終了後。それまで情報は皆無。
  姫松も1位で県代表になっているので戦えない。
-----------------
『↑----ここからは整合性が取れなくなるので修正しました----』

赤阪さんが対戦データを分析してそれを
部員みんながアイディアや意見を言い合ったりと一致団結する
赤阪さんがトラブルや困っている時に部員達が助け舟を出したり
過集中でまた倒れないように末原さんが体調管理をしたりする

予選突発していよいよ全国大会
赤阪さんはビクビクするも
末原さんは自分を私達部員を信じて欲しいと言う
ダークホース達とはもう知り合っている事に解説者も驚く中
対局は大激戦だけど相手の能力は調べ尽くした上での
ダークホース対策や強豪対策したので見事優勝する
記者が殺到して赤阪さんは混乱するも末原さんがテキパキ捌いていく
部員はマネージャーみたい恋人みたいと思っていた

その後
末原さんは教師になり赤阪さんとは結婚して
2人で衝突しながらも二人三脚で指導する
赤阪さんは迷監督名監督として有名になる
迷監督なのは普段からのトラブルや困った時に
生徒が赤阪を支えている関係であるから
赤阪さんの所に同じく発達障害の人がたくさん来て伸び伸びと活動している

周りも生徒も受け入れ体制意識知識ができている
姫松高校は障害者と共存できるモデル高校としても有名になる
前回リクエストした「仲間を求め、地球で独り」のハッピーエンドで終わる感じ。
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posted by ぷちどろっぷ at 2021年02月04日 | Comment(4) | TrackBack(0) | 咲-Saki-
この記事へのコメント
リクエストしたものです
リクエストした物を整合性が取れるものにしていただいた上にリクエスト以上の作品にしてもらいありがたいです

前回リクエストした赤阪末原さんの共依存のものを読んで違いを楽しむ事もできるので一度で二度楽しめるのも良いですね

末原さんの校長への直談判や罠を仕掛けたりなど参謀並の働きでとても生き生きした感じでした
全体的にどれも凄く良いですがやはり最後の数年後の状況がとても好きで
発達障害者の方も姫松高校に来るようになって
末原さんの一人じゃない頼っていいよと言って相手が涙ぐむ所がとても良かったです

障害によって自信を無くしたりと赤阪さんみたいに苦労してる方が多いと思いますが末原さんみたいな方と出会って部員さんみたいにサポートしてもらって明るく生きて欲しいなと切に願っていました

現実の世界でも貴女は決して一人じゃないのように周りや学校や社会でも障害を理解してもらい末永く仲間にお裾分け出来るくらいに幸せになって欲しいです

SSを読んでとても元気をいただきました、ありがとうございました
コロナ禍で大変かと思いますがご自愛ください
Posted by at 2021年02月04日 23:01
いつもすばらしいssをありがとうございます!
このサイトの新年初の作品でこんなに心が温まるとは思ってもおらず、今も充足感でいっぱいです。
このご時世で大変な中、更新助かります。
ゆったり次回作待ってます。応援してます!
Posted by shrimp at 2021年02月05日 00:15
最高のハッピーエンドやないですか!!
代行がサポートを受けながらもちゃんと麻雀部の一員になってる所で感動しました。
いわゆる"普通"でない部分をちゃんと理解して向き合ってくれる子がいるのは幸せなことですよね。
Posted by at 2021年02月05日 19:01
いつもすばらしいssをありがとうございます
現実だと、自分のおかしさの原因が障害であるって気づけなかったり、理解者が居なくて壊れることが多いので、ハッピーエンドになれて良かったです。
Posted by at 2021年03月11日 12:40
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